問題児たちが異世界から来るそうですよ? ~無形物を統べるもの~
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The PIED PIPER of HAMERUN 再開
一輝は自分に割り当てられた部屋でパソコンをいじっていた。
まだ薬を作るために使った血がほとんど戻っておらず、フラフラしているため、音央と鳴央から部屋でおとなしくしているよう言われ、ドアの前に監視に付かれたため、二人ともが監視から離れるまでの間、初日に撮った写真の整理をしている。
すると、途中である写真を目にし、ずっと気になっていたことを思い出す。
「そうか・・・あいつらはこうやって、この会場に潜り込んだのか。」
その写真は、見かけるたびに撮っていた、会場のあちこちに飾ってあった、ステンドグラスの写真だ。
「とすると・・・これがヴェーザー、これがラッテン、これがシュトロムで・・・。」
一輝は、それぞれの写真のタイトルを変更していく。
「んで、これがペストで・・・ん?」
一輝の手は、子供が描かれているステンドグラスがに連続できたところで違和感を感じた。
「この写真・・・なんか違う?」
一輝はその二枚を交互に表示したり、同時に表示したりして、その二枚を見比べる。
「やっぱり違う。子供のイメージが強かったせいで同じものかと思ったけど、片方は苦しむ子供でペストだが、もう片方は狂いながら踊ってるんだ!」
一輝は自分の発見に喜ぶが、まだ大事なことを見失っている。
《大事なことって?》
言うわけがないだろう。
《まだ何か大切なこと・・・》
一輝は最近聞いた情報や見たものなどを必死になって思い出し、何かにひらめいたかのように“契約書類”を手に取り、全体をざっと眺め、一つの項目を見つける。
「砕き、掲げる。それが出来るものは、これだ!」
ようやく気づいた。
「この情報は伝えないといけないよな。ついでに、五人目がいるのかも聞きに行かないといけないよな!」
一輝はいい口実が出来たとばかりに、窓から飛び出した。
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コンコン。
「おじゃましま~す、って十六夜?オマエここにいていいのか?」
一輝が耀の部屋に来てみると、耀はぐっすりと寝ており、ベッドの脇で十六夜が本を読んでいた。
感染しないのだろうか・・・?
「別に、この程度のものに俺がかかるわけがないだろ。」
「それはこの病気にかかった俺と耀にけんかを売ってるのか?」
一輝はフラフラしながらそんなことを言う。
「そんな状態のやつにけんかを売って何の得があるんだよ。んで?何か用か?」
「まあそうだな。二つほど質問があってきた。」
一輝はいすを引っ張ってきてすわり、耀の容態を見ながらたずねる。
「一つ目に、砕き掲げるものの正体はつかめたか?」
「ああ。不自然なほどに大量のステンドグラスが、今回のお祭りに展示されてたからな。間違いないだろ。」
どうやら、わざわざ来る必要はなかったようだ。
「ならいいや。んじゃあ、二つ目の質問に移ってもいいか?」
「どうぞ。」
「では・・・今回の魔王の軍勢って、ペスト、ヴェーザー、ラッテン、シュトロムのほかにもう一人いる?」
「ああ、いるぜ。まだ誰も会ったことのない、五人目がな。」
十六夜の返答に、一輝は予想が当たっていたことを知る。
「そいつについて、何かわかってることは?」
「あいつらには“ダンス”って呼ばれてるってことだけだ。」
「ハーメルンの伝承の中で踊りが関わってきそうなものは?」
「“ハンチントン舞踏病”って病気だな。これに感染した子供達がウイルスを広げないために、町をさったってな。」
「どんな能力か検討もつかんな。」
「ああ。だから今、黒ウサギやサラマンドラの連中が必死になってこうではないかって議論をしてる。」
「じゃあ、黒ウサギに会ったら伝えといてくれ、そいつの相手は俺がするってな。」
「勝算は?」
「もちろんある。」
十六夜が珍しく驚いたような顔をする。
「ってことは、そいつの能力のあてがあるってことか?」
「いや、予想はついても確信に至る材料はいっさいない。」
「じゃあ、どこに勝算があるんだよ。」
「別に、ただ俺が、一番多くの事態に対応できるってだけの話だ。」
「確かにそうだな・・・。了解。オマエが自信満々に言ってたって伝えとく。」
「自信満々ではない気もするが・・・よろしく。」
《まだ血も戻ってないし。》
それから、一輝がハーメルンの伝承について聞いていると、耀が目を覚ました。
「う、ん・・・十六夜に一輝?」
「お、起きたか。黒ウサギが心配してたぞ。」
「黒ウサギ、耀がペストにかかったことをそこまで気にしてたのか?」
一輝の質問に対して、十六夜がこいつ名に言ってるんだ?という顔をする。
「オマエ、ここ五日間、何も聞いてないのか?」
「ずっと部屋に閉じ込められてたから、情報が一切入ってこなかった。」
「ならしかたねえか。春日部は自分がどんな状態だったのか自覚あるか?」
「ない・・・。」
「そうか。なら言っとくが、春日部はずっと、この五日間気絶してたんだ。」
は?という顔をする一輝と、原因に気がついたのか、マズイという顔をする耀。
そんな耀の顔を見て、一輝はジトッとした目を向ける。
「耀・・・お前まさかとは思うが・・・」
「たぶん、そのまさか・・・」
一輝は頭を押さえながら、ゆっくりと立ち上がる。
そして薬を入れていた瓶を持ち上げ、確信する。
「気絶の原因でもわかったのか?」
「ああ、解ったよ。間違いなくこれだってのがな・・・」
一輝はあきれを通りこし、もう何も考えなくなった。
「さて・・・明日に向けて式神とお札の準備でもしとくか。ってことで俺は帰る。耀は、確実にやすむこと。いいな?」
「うん。わかった。」
一輝は部屋を出て、自分の部屋へと帰っていった。
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《さて・・・お札を作れる時間にはまだ早いし、まずは式神の整備をしておくか。》
そんなことを考えながら歩いていると、前方から二人の怒った声が聞こえてくる。
「一輝ー!部屋でおとなしくしてなさいって言ったでしょう!!」
「どうして部屋を出ているのですか!」
一輝は本気でこの場から逃げることも考えたが、自分の血の量から考えて無理だと判断する。
「ちょっとお見舞いと確認をしにいってた。」
「だとしても、せめて私たちについていかせなさい!」
「あなたのからだは、いつ倒れてもおかしくないんですよ!」
一輝は二人の必死な剣幕にかなり反省しつつ、自分のやったことに後悔はしていない。
「了解。それじゃあ、俺はゲーム再会まで部屋にこもってるから、二人ももう休んで。」
「「たった今まで脱走してた人が、それを言う?」言いますか?」
「それを言われるとつらいが・・・それでも言う。どうせ俺は今からお札を作ったり、式神の整理をしたりして、やりたい放題する時間がなくなるんだ。
だったら、お前らも明日に向けて少しでも休んどいたほうがいい。俺達は、まだ誰も会ってない悪魔と戦うことになるからな。」
そういい残して、一輝は自分の部屋へと入っていった。
「・・・どうする?」
「この状況で一輝さんが嘘をつくとはさすがに思えませんし、明日に向けて休むとしましょう。」
「それもそうね。ここ毎日ほとんど寝ないで働いてたから、今日が休みになったんだし。」
そう言って、音央と鳴央も自分達の部屋へと向かっていった。
そして20時間後。
魔王とのギフトゲームは再開する。
後書き
こんな感じで、次回からゲームが再開します。
では、感想、意見、誤字脱字待ってます。
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