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MASTER GEAR ~転生すると伝説のエースパイロット!?~

作者:小狗丸
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008

「あ、あの! それで僕はこれからどうしたらいいんですか?」

 何やら妙な感じになった場の空気を変えようとハジメが声を大きめにして聞くと、コロネル大佐はすぐに表情を引き締めて答える。

「はっ。この件を上層部に報告したところ『イレブン・ブレット少将と思われる人物を速やかにベット・オレイユに連れてくるように』という返信が返ってきまして、イレブン少将には当初の予定通り私達と同行してもらいたいと思います」

 コロネル大佐の言った内容はハジメにも納得できるものだった。

 軍からしたらゴーレムの群れを単機で殲滅できるハジメの力は決して無視できるものではないだろう。うまく軍に取り込むことができれば戦力に、少なくともゴーレム戦には使えると考えてもおかしくはない。

(それに僕もこの世界で生きるのだったら、お金とか住む場所とか必要になるし……やっぱりこの人達と一緒にいた方がいいよね)

 自分でも驚くくらい前向きに、この世界で生きることを考えて結論を出したハジメは、コロネル大佐に頷いてみせる。

「分かりました。ベット・オレイユまでの道案内、お願いします。……それでコロネル大佐? すぐに出発するんですか?」

「いえ、我が艦には多数の損傷があり、すぐには出発できません。艦の応急処置を行い、先程のゴーレムとの戦いで要請した救助部隊と合流するまで三時間程かかります」

「そうなんですか。それだった僕、一度リンドブルムに帰ってもいいですか? あの艦の内部も調べたいですし……」

 この世界に転生してすぐに二度のゴーレムとの戦闘に参加したハジメは、自分の艦であるリンドブルムの内部を全く把握していなかった。知っている場所といえばブリッジに第一格納庫、それに第二格納庫ぐらいだ。

「いえ、それはその……」

「あー……。もし僕が逃げ出す心配をしているんだったら、艦のクルーも来てもいいですよ? ほら、ファムさ……ルナール少尉にティーグル少尉、ラパン少尉もリンドブルムのブリッジに来ましたし」

 コロネル大佐にハジメがファム達の名前を言うと、コロネル大佐は納得した表情となって今名前が上がった三人を呼ぶ。

「そういうことでしたら……。ルナール少尉、ティーグル少尉、ラパン少尉。聞いての通りだ。貴官らには今からイレブン少将の護衛を務めてもらう」

『はっ!』

 コロネル大佐に命令を受けてファム達三人が同時に敬礼をして、ハジメ達四人はリンドブルムに戻ることにした。



 それからしばらくして、ファム達三人と一緒にサイクロプスに乗ってリンドブルムに戻ってきたハジメは、艦内の通路を歩いて部屋の様子を見ていく。

「さてと……まずは少し休みたいから、休める部屋を探さないとな」

 だが通路にある部屋は全て、何も置かれていない殺風景な部屋ばかりで人が住んでいた形跡は全く見られなかった。

「ん~。見事に何もない部屋ばかりですね。椅子や机どころかベッドすらないなんて……。イレブン少将、こんな艦でどうやって生活していたんですか?」

「ちょっとファムさん。イレブン少将は記憶喪失だから……」

「そうだぞルナール少尉。それに伝説の戦艦であるリンドブルムを『こんな艦』とは何事だ!」

 ぼやくファムをフィーユとソルダが止めるが、ファムは悪びれる様子もなく挑発的な視線をソルダに向ける。

「おやおや~? 最初にこの艦に乗った時は、その伝説の戦艦とマスターギアを『偽物』扱いしたソルダがそれを言いますか?」

「そ、それは……!?」

「あらあら、どうしました? イレブン少将のサイクロプスを『偽物』扱いしたあげく、ブロンズクラスのゴーレムには勝てないと言ったティーグル少尉?」

「うう……」

 痛いところを突かれて黙ってしまうソルダとそれを見て口元に嗜虐的な笑みを浮かべるファム。そんな二人にハジメはため息をついて話しかける。

「はぁ……。二人共、それぐらいにしてください。でも本当に何もないな。せめてベッドくらいほし……い……?」

 ハジメが呟くと部屋の床の一部が光りだし、そこから一台のベッドが文字通り「生えて」きた。

『……ウソ』

 床から生えたベッドを見て一達四人が目を丸くして驚き、その後にハジメが試しとばかりに「椅子、机」と言うと、次は椅子と机がベッドと同じように床から生えてきた。

「……何でもアリだな。この艦」

「程度がありますよ。ビックリ箱ですか、この艦?」

 思わず呟いたハジメにファムがつっこみを入れる。どうやらこの艦は、家具の類いは普段どこかに仕舞われていて、ハジメが希望するとどこにでも現れるらしい。

「とにかくベッドが出るんだったら、ファムさん達はここで休んでください。僕は隣の部屋で休みますから、何かあったら呼んでくださいね。リンドブルムの探索は休んだ後にしましょう」

 ハジメは更に二台のベッドを呼び出すと、ファム達にそう言い残して部屋を後にする。その姿を見送ってからファム達三人は肩から力を抜いた。

「ふぅ……。それじゃあ、早速休みましょうか? 私、もうクタクタです」

 ハジメに助けられたゴーレムとの戦闘からろくに休まず、いい加減疲れが溜まっていたフィーユが言うとソルダも頷いて同意する。

「そうだな。ここはイレブン少将のご好意に甘えるとして……ルナール少尉?」

 ソルダの視線の先では、すでにベッドの一つに腰かけたファムが、掌ほどの大きさの携帯端末を持って画面を覗きこんでいた。

「……軍がイレブン少将を引き込もうとするのはほぼ確実で、本人も軍と行動するのに前向きのようですし、イレブン少将が軍に復帰するのはまず間違いないでしょう。そうなると軍がイレブン少将の横に立たせようとするのは、彼のデータ収集を兼ねた身体面のサポート役の専門医のはず……。幸い私は軍医ですけど、確実に専門医になるためには御父様と御爺様に根回ししてくれるように頼まないと……」

 携帯端末にスケジュールを入力しながら何かを考えているファムは、ソルダとフィーユが今まで見たことがないくらい真剣な表情をしていた。

「る、ルナール少尉? 一体何をしているんだ?」

「何って、決まっているでしょう? イレブン少将が軍に復帰した後、彼のサポート役になるための計画を立てているんですよ」

 携帯端末から目を離すことなくソルダに答えるファム。だが彼女の答えがあまりにも予想外だったソルダとフィーユの二人は一瞬、今聞いた言葉の意味を理解出来なかった。

「……イレブン少将のサポート役になる? ファムさんが?」

「ルナール少尉、貴官は本気で言っているのか? イレブン少将は記憶を失っているが、それでも我が国の英雄なのだぞ?」

「当然本気です」

 そこでようやく携帯端末から目を離したファムはソルダとフィーユを見るが、この時のファムの目は狩人のように冷たく、口元には肉食獣のような獰猛な笑みが浮かんでいた。

「ようやく見つけた私好みの上物のイケメンさん………絶対逃がさねぇ」

((うわぁ……))

 これ以上なく黒い笑みを見せるファムにソルダとフィーユは思わず引いた後、この会話をコロネル大佐に報告すべきか否か、しばらく悩むことになった。 
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