| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ゲルググSEED DESTINY

作者:BK201
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第三話 厄介な状況

MSにはそれぞれ自分にとって得意な戦場というものが存在する。初期に開発されたジンなどはコロニー周辺や宇宙などといった無重力下での運用を元に造られているため、当然無重力での戦闘が得意であり、セカンドシリーズなどはその得意な戦場というものが顕著に現れている。
空中、宇宙などといった空間戦闘を得意とするカオス。どのような悪路であろうとも駆けることの出来るガイア。水中において圧倒的な性能をみせるアビス。
このようにセカンドシリーズには己にとって得意な戦場が存在しているが、現在それらの機体が戦闘を行っているここはどの機体にとってもメリットを出し辛いコロニー内という環境である。逆に一方で対峙している機体は汎用性の高さからどのような環境下でも一定の能力を発揮できるゲルググとインパルス。
それらの条件は彼らを追い詰める条件としては十分なものだった。そんな中でスティングはどうやって状況を変化させようか考える。

「クソッ!?」

悪態をつきながらも何とか脱出しようと画策する。勝っている点を見れば先程脱出したザクを抜くことで現状では三対二だ。しかし、時間が掛かるほど数のアドバンテージは失われていく。さらに言えば純粋な技量でも互角以上。むしろ相手の方が上と言えるかもしれない。

「アウル、脱出するぞ!壁に穴を空けろ!」

ステラは先程から新たに介入してきた機体に向かって突撃している。なら火力が高いであろうアウルの機体で隔壁に穴を空けるのが最前手だと判断する。

「オラァ、いけッ!!」

ポッドを出撃させ、自身はサーベルで接近戦を仕掛ける。リスクは高いが、動きを止めるには距離を詰めて、動きを狭めるしかない。
ポッドのミサイルやビーム、自身のサーベルで斬りかかることで敵は動きを封じられていく。
何とかなるかとそう思い始めた直後、敵の増援が再びやってくる。

「畜生!?」

赤と白の二機のゲルググが援護射撃をしながら突っ込んできていた。そちらに気を取られたせいでシールドが破壊され、更に左手に構えていたライフルも撃ち抜かれる。

『スティング!!』

時間を稼いでどの程度の時間がたったかは分からないがアウルが脱出路を確保することに成功していた。

「よし、アウル、ステラ!撤退するぞ」

敵の増援も既に到着し、こちらを囲み始めている。急いでステラと対峙している機体に攻撃し、追撃を行おうとするステラを無理矢理撤退させる事となった。








レイやルナマリアがようやくたどり着いた時には敵は既に撤退を始めていた。

『逃がすかッ!』

『チッ、舐めた真似をッ!』

シンとマーレは奪取されたセカンドシリーズを追う為に穴に飛び込む。

『ちょっと、シン!マーレさんまで!?』

ルナマリアの叫びも空しく二機は颯爽と宇宙へ駆けていく。

「こちらレイ。ミネルバ、応答を願う」

『こちらミネルバ。どうぞ』

「シンとマーレが奪取された三機を追いに行った。俺とルナマリアも追撃に出る」

すると、通信を受け答えしていたメイリンではなく、グラディス艦長が答える。

『ふう、わかったわ。これよりミネルバも追撃に出ます。レイ達は一旦下がって。バックパックを外していることは聞いているわ。シンとマーレの二人なら撃墜されることはないはずよ』

「……了解した。聞いたな、ルナマリア。ミネルバに戻るぞ」

『分かったわ。それにしても、いったいどこの誰よ。あいつ等?』

「さあな、少なくとも表立った部隊でないことは確かだろうさ」

そう言って、レイとルナマリアはバックパックの換装をしなおす為にミネルバに帰還する。その後、彼らが避難場所を求めてきたカガリやアスランともめ事になるのは、また余談であろう。








「シン、来るぞ。油断するな!」

奪取されたセカンドシリーズを追う為にシンのインパルスはフォースシルエットに、俺も肩に掛けていたビームバズーカを構えるものの、奪われた新型の追撃は不可能となっていた。

『くそッ、こいつら!!』

敵はステルス性を重視しているであろうダガータイプとガンバレルを装備した旧式然としたMA。腕はMAを除いてさっきの奴等より下だが、厄介さではこいつらの方が上だった。

「この、ナチュラル風情が!劣等種の分際で刃向ってくんじゃねえぞォ!!」

右手首の速射砲で牽制すると同時に左手のビームバズーカを放つ。しかし、ダガータイプの機体はガードを固めながらビームバズーカの射線から逃れる。そして、後ろのもう一機がダガーナイフのようなものを投げ、MAのガンバレルが二機の僚機の隙を塞ぐかのように放たれる。

「群れなきゃ、何も出来ないナチュラル共がァッ!?」

ダガータイプとMAは連携によって隙を補い合っていた。ステルス性を重視していることもあり、回避性能も高く、こちらも攻撃を殆ど受けていないとはいえ厄介な相手だと言える。

『マーレさん!このままじゃ―――』

「分かってる!」

敵の狙いは奪った新型の奪取。その為に足止めとして敵は防御重視で戦っているのだろう。だが、それだけが目的じゃない。狙いのもう一つはおそらくこちらのエネルギー切れだ。
VPS装甲はPS装甲より効率が良いとはいえ、エネルギーを食う。ビーム兵器も同様だ。だからこそ、ゲルググには実弾兵装もあり、インパルスはデュートリオンビームによる補給を可能としているのだ。

「バズーカはあと二発……」

エネルギーの消費を避けるためにENパックを使うビームバズーカと実弾の速射砲を使っているものの、弾数も両方共に尽きかけている。
特にインパルスなどはソードで戦っていた時も含めてかなりのエネルギーを消費しているのだろう。こちらのエネルギー切れでの敗北の可能性は目に見えていた。

「―――仕方ねえッ、シン!俺が囮になってやる。その間にMS共を蹴散らせ!」

そう言った直後、シンの返事を聞くこともせずに機体を加速させ、一気に距離を詰める。

『えッ、マーレさん!?』

二機のダガーの内一機はこちらを迎え撃つつもりなのかシールドを構え、バズーカを乱射する。だが、狙いを絞り切れてないバズーカが当たるはずもなく、曲線軌道を描きながら回避し、ナギナタを出し、振り切ろうとする。

「さあ、こい!!」

しかし、俺はナギナタを振り下ろさず、あえて蹴りを入れ、後ろへと距離を取った。そして、一瞬前までいた所にビームとマシンガンが通り抜ける。MAとダガーの射撃だ。避けられたことで撃った方のダガーが一瞬動きを止める。

『今ッ、落ちろ!』

インパルスのビームライフルが撃ち抜いた。その様子を見て、他の機体も動きを止める。或いは回避行動を取ろうとする。俺は先程蹴って、バランスを崩していたダガーに対し、ビームバズーカを撃ちこんだ。








「―――ッ不味いねぇ、こりゃ」

ガンバレルを搭載したMA、エグザスに乗っていたパイロット、ネオ・ロアノークは内心で舌打ちする。

(厄介な相手だとは思っていたが、ここまでとはな……)

元々、作戦時間を大幅に過ぎて、撤収してきた三人を見て、嫌な予感はしていた。少しでも長く足止めするためにネオ自身もエグザスに乗って敵を討とうとしたものの、逆にこちらの機体が迎撃されたのだ。

「おっと、そろそろ時間切れかな?敵の母艦が来ちまいそうだ。お前ら、撤退するぞ!」

『は、はい!』『了解しました……』

味方が討たれたことで精神的疲労が溜まっていたのだろう。残ったダークダガーのパイロット達は撤退できることに明らかな安堵を見せていた。

「ガーティ・ルー。聞こえるかい?今より撤退を開始する。敵の新造艦がこちらを追ってきているからな。一つ派手に見せてやろうじゃない」

『派手に、ですか?』

不敵な笑みを見せながらネオは自分の補佐官に作戦内容を伝え、指示していた。








「インパルス、ゲルググ共に収容完了しました」

艦橋では忙しなく動いていく状況にタリア・グラディスは溜息をつきそうになる。
エネルギーの残量が既に少なくなっていた二機も無事に帰還することができ、とりあえずは現状を良しとすることが出来たと言えよう。

「艦長、これからどうするんですか?」

「どうもこうも、追うしかないでしょう、アーサー。ハーシェルもフーリエも落とされた以上、追えるのは私達だけよ」

アーモリーワンの警備にあたっていた二隻が撃沈したとの報告を受けた以上、動ける艦はこのミネルバしかなく、またセカンドシリーズと対等に戦えるのも現状ではこのミネルバのMS部隊しかいない。
そう思って、追跡の命令を下そうとした瞬間、艦橋への唯一の出入り口が開き、四人の人間が連れてこられる。

「ええ!?」

アーサーが叫び声を上げ、それを叱責、或いは突然の来訪者に対して文句でも言うべきかとタリアが振り返ると、そこにいたのは最高権力者二名とその関係者の二名だった。

「私のことは構わなくともよい。それより状況はどうなっている?」

一人はそんな事を言いながら現状を確認しようとしているプラント最高評議会議長ギルバート・デュランダル。

「議長、構わないとか、そういうの無理ですから。むしろ他国の首相がいるので構ってください……」

もう一人は新型機ゲルググを開発した第一人者であり、二十代前半という若さで開発主任と赤服クラスのパイロット技能を持つ、最近になって議長のお気に入りと揶揄されているクラウ・ハーケン。

「いや、そのそう言ったことは気にしないでほしい。私としても現状は把握しておきたい」

クラウの反応に対し、気にする必要はないと擁護するオーブ連合首長国代表首長カガリ・ユラ・アスハ。
そして、その後ろで沈黙を続ける護衛のアレックス・ディノ。
厄介ごとが次から次へと、そうタリアは思いつつも、言うべきことは言わなくてはなるまい。

「現在、本艦は新型機を奪取した母艦であろう敵艦を追跡中です。ライブラリーに存在しない艦であり、識別も確認出来ないためボギーワンと名付けておきます。このボキーワンを追撃するか否かに関してですが、いかがいたしましょう?」

本来、艦長職というものは自艦における指揮権限が高く、同じ白服だった場合や黒服、赤服であった場合に上級階級扱いである白服を相手にすることになっても艦内での指揮権は優先されることとなる(尤も、ザフトの場合、階級制度でないため、そこまで厳密ではないのだが)。
とはいえ、流石に他国や自国のトップの人間に対してあれこれと命令する権限はなく、追撃するかどうかは二者に定められていると言っていい。

「姫、どうやら我々に判断が任されているようなのだが、私としては追撃に出たいのだが、姫としての意見を聞かせていただきたい」

「私としても戦争の火種を止めるために追撃に関しては賛成だ、議長」

「ありがとうございます。では追跡を頼めるかね?」

追撃の決定に色々と言葉に表せない感情が入り乱れるものの、職務を全うするために彼女は命令する。

「分かりました。御二方の寛大な処置に感謝を。―――本艦は、これより敵所属不明艦、ボギーワンの追跡を行う。目的は奪取された新型とボギーワンの確保、或いは撃破。各員の奮闘に期待する」

ミネルバが加速し始める。二機のMSも収容し終えた今、これ以上この宙域で減速する理由もない。ボギーワンの速度は速いが、ミネルバほどではなく見逃すことはないはずだ。そう思い、距離を詰め始め、そろそろ射程距離にボギーワンが入るかと思われたその時、

「ボギーワン、後部の一部を切り離しました」

「軽くするため―――速度を上げるつもりなの?」

態々このタイミングで切り離す理由が思い浮かばす、タリアが訝しんでいると―――

「後部―――予備の推進剤か?だとしたら…爆薬のつもりだ!?」

クラウが叫び、その言葉にハッ、とするタリア。

「撃ち落とせ!!」

すぐさま命令を下す。トリスタンによって撃ち抜かれた後部推進タンクは誘爆を起こし、大きく爆発するものの寸でのところで爆発からは逃れた。しかし、

「―――距離を取られてしまったわね」

「追い付けるかね?」

デュランダル議長がタリアに問いかける。離されてしまった距離は決して小さくはない。しかし、追い付けない程、離れていたわけではないのだろう。

「向こうは爆発の反動で加速した分もあるようですが、ミネルバも足自慢です。追い付くことは可能かと」

「では、追跡を続けてくれ」

そう言いながら彼は先程とっさに発言したクラウとカガリの護衛であるアレックスを見て、誰にもわからない程度にほくそ笑んでいた。 
 

 
後書き
マーレ機の特徴…右肩はビームキャノン、左肩には砲身が上を向いた状態でビームバズーカが掛けられている。また左手には三連装ミサイルランチャー、両腕の下腕部には実弾の速射砲が取り付けられている。作戦時の状況によっては腰にシュツルムファウストを装備することも。
主兵装はビームライフル、ビームマシンガンのどちらかになることが多い。
ビームキャノンはエネルギーを喰うものの威力が高い。
ビームバズーカは威力が高く、さらにENパックを使用することで機体のエネルギーの消費を最小限に留めるが、その分弾数が少ない。
ミサイルランチャーは弾速が遅いが追尾性が高い。
速射砲は完全に牽制用。しかしバルカンなどよりは威力がある。
シュツルムファウストはある意味一撃必殺の兵器。当てればかなり有効……当てれば。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧