ハイスクールD×D ~銀白の剣士~
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第14話
Side 渚
誰も一歩も動かず、ただ兄さんの倍増を待つ。コカビエルに隙でもあればよかったのだか、そんなものは見当たらなかった。さすが聖書に記される堕天使だろう。
「―きた!」
赤龍帝の籠手が一層眩い光を発する。倍増の限界に達したようだ。
「で、誰に譲渡する?」
興味津々な様子のコカビエルが訊いてきた。
「部長・・・・・・・」
兄さんがリアス先輩に問いかけた。
「・・・・・・・ナギ、お願いできるかしら?」
「・・・・・・・わかりました」
「ふむ。いささか予想外だな・・・・・・・いくら感じられる魔力が魔王に匹敵すると言っても人間に任せるとはな・・・・・・・」
嘲笑うようにコカビエルが言う。誰も反応を返さなかった。さすがにコカビエルのこの物言いにはカチンとくるものがある。
「兄さん」
「ああ」
兄さんから力を譲渡される。元から、膨大な魔力量が跳ね上がった。今までにない高揚感を感じる。断言できた。コカビエルごときなら負けることはない。
「フハハハハハ! 人間! ただの人間でありながらよくそこまでの魔力を持った! 最早お前の魔力は魔王を凌駕している! たかが人間だと思っていたが、お前は違うようだ! 認識を改めるぞ」
コカビエルの声を聞きながら、ライザー戦の時のように足元に魔方陣を展開。この場に漂う聖なるオーラや魔力をすべてかき集める。そして、コカビエルを見据えた。すると、『すべてを知るもの』による直感が働く。
(これは・・・・・・・)
感じ取った先に視線を少しだけ向ける。強化された視力は上空に白い鎧を纏った何者かをとらえていた。どうやらこちらの様子をうかがっているようだ。少し考えて、牽制程度には攻撃をしておくことにした。
「『神討つ剣狼の銀閃』ッッ!!」
おそらく他の人からしたら“これが牽制?”と思われるであろう魔力砲を撃ちこむ。
「さあ! 俺に・・・・・・・」
僕の攻撃を受け止めるつもりだったらしいコカビエルは、僕の攻撃が見当はずれの方に放たれたのを見送った。リアス先輩たちも何事かと僕も見ている。
「どういう―――」
『Divide』
機械音声がどこからか発せられた。その音声が聞こえると『神討つ剣狼の銀閃』の大きさが半分くらいになってしまった。小さくなった神討つ剣狼の銀閃は真っ白い何かに弾き飛ばされる。
「これは・・・・・・・『白い龍』か」
「その通りだ。コカビエル」
そう言って現れたのは、白い龍を模した鎧を身に纏った青年だった。
「『神滅具』の1つ、『白龍皇の光翼』・・・・・・。鎧ということは『白龍皇の鎧』ということか。『赤龍帝の籠手』同様忌々しい限りだ」
コカビエルは嫌悪感を隠さずにそう言った。兄さんたちは新たな闖入者に警戒していた。
「俺はお前を回収してくるようにアザゼルから言われたんだが・・・・・・・どうやら俺が手を下すまでもなさそうだな」
青年は僕を値踏みするように見ると、満足そうにうなずきながら言った。
「コカビエルごときだったら、キミで十分倒せそうだ。傍観でもさせてもらおう」
「ふんっ! ならそこで見ているがいい! 構えろ人間!」
青年の発現を歯牙にもかけずに、槍を投擲する体制にコカビエルが移行する。
「お互い全力の一撃を撃ち合いましょう。まさか、断りませんよね?」
少し挑発するようにコカビエルに言った。
「ふん。いいだろう。受けて立ってやる。さあ! こい!」
コカビエルが体育館を消し飛ばした時より大きな光の槍を構える。
対する僕は散らばったオーラや魔力、譲渡された力、自身の魔力を一度に放出できる限界量まで高め、圧縮する。ライザー戦の時のおよそ10倍は僕に上乗せされた。それほど以外ではないが、兄さんから譲渡された力がとても大きい。割合的には5割を占めている。これが神滅具の力と言うことだろう。
そして、緊張感が高まる中、僕はその一撃を放った。
「『神討つ剣龍帝の咆哮』ッッ!!!」
聖なるオーラ、各人の魔力が兄さんから譲渡されたオーラによって、全体的に赤みを帯びた虹となる。今の僕が放てる最高の一撃がコカビエルに向かって突き進んだ。
「ハァァァァァァァァァッッ!!!」
コカビエルが巨大な光の槍を投げる。渾身の投擲と言っていい一撃だった。
しかし、槍と魔力砲は数秒間拮抗したように見えたが、『神討つ剣龍の朱閃』によって、コカビエルの光の槍は消し飛ばされる。コカビエルは光の壁を作ったが、即席の壁では持ち堪えられるはずもなく、魔力の嵐に飲み込まれた。
『DivideDivideDivideDivideDivideDivideDivideDivideDivide』
「・・・・・・さすがにやり過ぎだろう。これでは連れて帰ることができん」
さっきと同じ機械音声が連続ですると、コカビエルを飲み込んでいた魔力がみるみる小さくなっていく。僕の放った一撃は普段の神討つ剣狼の銀閃以下まで半減させられた。
そしてコカビエルは魔力嵐の中から落下する。受け身を取ることもできないようで、ボロボロの様子で地面に衝突した。
「フフフフフ、お前名前は? 俺はヴァーリ」
「兵藤渚だ」
「覚えておこう。お前の名を」
そう言って、地に降り立ちコカビエルが立っていた辺りに歩いていく。
「いいざまだな、コカビエル。アザゼルに言われたとおりお前を回収するぞ」
コカビエルは全身傷だらけというか、辛うじて原形をとどめていると言っていいだろう。両腕は崩壊し、十枚あった翼も見るのも無残になっている。
ヴァーリと名乗った青年はコカビエルを担ぎ、さらに転がっているフリードも担いだ。そして、光の翼を展開し、空に飛び立とうとする。
『無視か、白いの』
すると、兄さんの『赤龍帝の籠手』の宝玉が光って、そこから初めて聞く声がした。
『起きていたのか、赤いの』
アルビオンの鎧の宝玉も光って声を発した。どうやら、二天龍同士のお話らしい。
『せっかく出会えたのにこの状況ではな』
『いいさ、いずれ戦う運命だ。こういうこともある』
『しかし、白いの。以前のような敵意が伝わってこないが?』
『赤いの、そちらも敵意が段違いに低いじゃないか』
『お互い、戦い以外の興味対象があるということか』
『そう言うことだ。こちらはしばらく独自に楽しませてもらうよ。たまには悪くないだろう? また会おう、ドライグ』
『それもまた一興か。じゃあな、アルビオン』
二龍の会話はこれで終わった。青年が宙に浮かんでいく。
「キミがもっと強くなるのを待っている。俺の宿敵くん」
最後に兄さんに向かって言い放ち、二人を抱え青年は飛び去っていた。
「これで、終わりか」
ボロボロの校庭を見渡した。きっと僕が神討つ剣帝龍の咆哮を地上に向けた撃ったらもっとボロボロになっていたに違いない。まあ、あれは兄さんからの譲渡があって初めてできるような技なので、そうそう使う機会もないだろう。
「やったじゃねぇか、色男! へぇー、それが聖魔剣か。綺麗じゃないか」
緊張が抜けたのか、兄さんは祐斗へと駆け寄って、聖魔剣を見ている。白と黒、反する色が混じってできた剣は確かに美しかった。
「イッセーくん、僕は―――」
「今は言いっこなしだ。いったん終了でいいだろう?」
「・・・・・・・そうだね」
祐斗ももとに戻ったようでよかった。
「祐斗」
リアス先輩が祐斗に声をかける。
「祐斗、よく帰ってきてくれたわね。それに禁手なんて、私も誇れるわ」
「部長・・・・・・・・。僕は改めて誓います。僕、木場祐斗はリアス・グレモリーの眷属『騎士』として、あなたと仲間を終生お守りします」
「うふふ。ありがとう。でも、私のだけ『騎士』は自分で選ぶわ。だから、あなたはみんなを守るのを優先しなさい」
そう言いながら、僕の方を見てくるリアス先輩。祐斗も僕の方を見てきた。何事だろう?
「なるほど、そうでしたか」
祐斗はしたり顔でうなずいている。滅多にしないようなニヤニヤした顔だった。
「そういえば、先にやらなければいけないことがあったわ」
リアス先輩はそう言いながら、手に魔力を纏わせる。
「なんですか?」
疑問符を頭の上に浮かべる祐斗。兄さんが思い出したようにお尻を押さえた。心なしか顔も青い。
「祐斗、勝手なことした罰よ。お尻叩き千回ね」
そうして、すべてが終わった後に魔王様たちが到着した。
到着するまでに、祐斗はお尻を叩かれ、それを見て兄さんは指をさしながら爆笑。
お尻を千回叩かれた後の祐斗の顔は、彼岸へと旅立ちそうな顔をしていた。お尻の激痛は余程のものだったらしい。
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