ハイスクールD×D ~銀白の剣士~
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第7話
Side 渚
エクスカリバーの捜索を始めて三日目。エクスカリバーを所持していたフリードを探すが一向に手がかりすら掴めない。僕は気分でなんとなく一人で捜索をしていた。
人通りの少ない所や、人気のない所を中心に探しているが、見つかる気配はない。
そこで、一旦道を外れて公園に向かうことにした。遊具も少なく、人が来ないという意味ではこの場所も探したほうがいいだろう。
「はぁー・・・・・・。少し疲れたな・・・・・・」
ベンチに座って公園の景色を見つめる。子供が遊ぶ時間をすぐ立公園は閑散としていた。数秒ほど景色を見つめて、目を閉じた。
「よっし! 探すのを再開しよう!」
閉じていた眼を開けて、立ち上がる。そこで違和感を覚える。
「いつのまに・・・・・・?」
目を閉じていた時間はほんの数秒だ。この静かな公園では足音も聞こえるはず。なのに、僕の視線の先には黒を基調に紫の装飾が施されたのゴスロリを着た少女がいる。そしてその少女は僕を真っ直ぐ見つめていた。
「見つけた」
決して大きくない声だが、僕の耳に届いた。
少女はこちらに歩いてくる。
そして彼女は僕を指さして言った。
「興味がある」
この子にあったのは初めてのはずなので、そんなことを言われても困ってしまうのだが・・・・・・・。
「人の身でありながら、桁違いの魔力を秘めているお前はグレートレッドを倒すのに使えるかもしれない」
ッ! 関係者か・・・・・・・・。しかし「グレートレッド」? かすかに記憶に引っかかるが、思い出せない。それによくよく見てみればこの子どこかで見たことあるような・・・・・・。
「えっと・・・・・・・力を貸してほしいのかい?」
「・・・・・・・・・・(こくん)」
僕の質問にうなずく少女。
「とりあえず、キミの名前を教えてもらえないかな? 僕は兵藤渚、ナギでいいよ」
名乗りながら、少女の名前を訊く。
「我はオーフィス。『無限の龍神』オーフィス」
オーフィス? ・・・・・ってちょっと待て! この人(?)名前は忘れたけどテロリストのトップで世界最強のドラゴンのオーフィスじゃん!! そうだよ思い出した! グレートレッドは『真なる赤龍神帝』。またの名を『真龍』、次元の狭間を飛び続けるドラゴンのことだ!!
ちょっ!? なんでそんな龍が僕に接触してくるわけ!?
「それでナギ。力を貸してくれるのか?」
首をかしげながら、尋ねるオーフィス。見た目美少女なのでちょっとドキッとした。
(これ断ったら何されるかわからないし、承諾したら犯罪者扱いだよね? 何この選択肢!? どっち選んでも危険だろ!?)
内心とても動揺しながら、なんとか口を開く。
「と、とりあえず、こんな所じゃなんだから、どこかでゆっくり話そう」
「わかった」
僕にできたのは少しの間、問題を先送りにすることだけだった。
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移動してやってきたのはどこにでもファミレスだ。ただ、オーフィスの格好のせいで目立ってはいる。僕は、着ていた神父服を脱いで制服に戻っている。
「それで・・・・・・なんで力を貸してほしいのかな?」
「我はグレートレッドを倒したい。そして、静寂なる世界へ戻りたい」
とりあえず、メニューを見てオーフィスがガン見していた、チョコレートパフェと飲み物を頼んで話を進める。
「静寂なる世界?」
「次元の狭間。我の故郷」
ふむ。自分の家に帰りたいけど、そこには他のドラゴンがいるから戻るために力が必要・・・・・・と言うことか。・・・・・・ホームシック?
「え、えと、僕以外にそういう仲間はいるのかな?」
オーフィスはしばし考えるようなそぶりを見せる。
「仲間ではないけど、グレートレッドを倒すのに力を貸すから、力を貸してほしいと頼まれたから、それに同意している」
おそらく『禍の団』のことだろう。そもそもの疑問なのだがグレートレッドを倒さないと、そこに住めないのだろうか?
「どうしても、そのグレートレッドを倒さないといけないのかい?」
オーフィスは無言でうなずいた。
「協力してくれてる人たちは何をしてるのさ?」
「我は知らない。興味がない」
あ~・・・・・・・。思いっきり利用されてるわけか。
「お待たせしました。チョコレートパフェです」
お姉さんが注文していたパフェを持ってきた。
「ごゆっくりどうぞ」
お姉さんはパフェと伝票を置いて去っていた。僕はパフェをオーフィスの方に移動させる。
「?」
「食べていいよ」
どうやら、オーフィスは僕が食べると思っていたらしい。しかし、僕がオーフィスの方にパフェをやると、スプーンで食べ始めた。
「おいしいかい?」
「・・・・・・・・(こくん)」
無表情のように見えるが、少しだけ笑みを浮かべているように見えた。外見相応に甘いものが好きなのだろうか?
そのまま、オーフィスは一心不乱にパフェを食べ続けた。少しだけほほえましく感じたのは胸にしまっておこう。
「それで、力を貸してくれるのか?」
「そんなことより、少しじっとしてて」
そう言いながら、備え付けらえているナプキンを取って、口の横についていたクリームを拭ってあげた。
「ん・・・・・・・」
なすがままにされる様子は、小さな子供を連想させる。
「これで良し。綺麗になった」
「ありがとう」
お礼を言われたのを少し意外に感じたのは、たぶん彼女に失礼だろう。
「それで、ごめん。協力はできないよ」
今の仲間を裏切ることはできない。僕が出した結論だ。
「・・・・・・そう」
心なしかしょんぼりした様子のオーフィスを見ていると、なんだか罪悪感が湧いてきた。
「あと、一つ訊きたいんだけどさ」
「何?」
「次元の狭間って何があるの?」
しょんぼりしたオーフィスにふと浮かんだ疑問を問いかけると、少し考えた後に口を開いた。
「・・・・・・古い時代の遺跡。それ以外は何もない」
「何もないの・・・・・・なら、そんな場所に戻る意味はあるの?」
僕はそう聞いた。
「それは・・・・・・・」
オーフィスはうつむいてしまった。どうやら、簡単に聞いていいことじゃなかったみたいだ。空気が重くなる。
「・・・・・・我にはあそこしか帰る場所がないから」
僕がこの空気をどうしようかと思っていると、オーフィスはゆっくりと口を開いた。
「我を受け入れてくれる場所はそこしかない・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
僕は何か言おうとして口を開いたが、何も言わずに閉じた。
(神すら凌駕する力を持ったが故に、きっと同族からも忌避されたのかな? 誰もが自分と違うものは恐れて迫害する。オーフィスはずっと故郷からも追われて、独りぼっちだったのか・・・・・・)
オーフィスは依然うつむいたままだった。
「じゃあ、僕が受け入れるよ」
うつむいたままのオーフィスを見ていられなかった僕は思わずそう言った。上手くいけば、テロ組織の弱体化につながるかもしれないと思ったことは内緒だ。
「ナギ?」
「僕が君を受け入れてあげる」
そう言いながら手を差し出した。
「・・・・・・本当?」
うつむいていた状態から顔を上げ、差し出された手を見つめながらオーフィスはそう言った。
「うん。僕とオーフィスは・・・・・・えっと、友達。そう友達だ」
一瞬、僕とオーフィスの関係をどう言い表そうか悩んだが、無難に友達ということにすることにした。
「ともだち?」
オーフィスは首をかしげた。意味が分からないのだろうか?
「友達って言うのは、どちらかが困っていたら助けたり、今みたいに一緒に何か食べたり、遊んだりする間柄の人のことだよ。あと、友達が間違っていることをしようとしていたら、止める存在でもあるかな?」
言葉にすると難しいが、間違ってはいないと思う。概ねこんな感じだ。
「我で、いい?」
「僕から言ってるんだ。嫌なんて言わないよ」
差し出しっぱなしの手を上下に揺らして握手を促す。
さすがに握手は知っていたのか、オーフィスは差し出された手を握った。
「よろしく、オーフィス」
僕はオーフィスの手を放す。オーフィスは握手をした右手をじっと見つめていた。
「とりあえず、連絡先を教えるから。何かあったら連絡してくれればいいよ。まあ、なくてもかまわない。気軽に連絡していいから」
ケータイの番号を持っていた紙に書いて渡した。友達なんだ、連絡先くらい教えるべきだろう。
「わかった。何かあったら連絡する」
「それじゃあ、僕は用事があるからこれで」
今はフリードの捜索の途中だ。あまりサボるのもよくないだろう。
「我もそろそろ戻る」
会計を済まし、オーフィスとファミレスの前で別れる。
「さて、どうしようかな・・・・・・・」
いろいろな想いが詰まったつぶやきがもれた。オーフィスと友達になるという予想外の出来事が起こった。それが今後にどう影響するか全くわからない。
「・・・・・・まぁ、なるようになるだろ」
とりあえず、そう結論付けて、僕はフリードの捜索に戻った。
ちなみにちょっと打算があったとはいえ、家に帰ってからオーフィスに言った発言を思い出して、恥ずかしさで悶絶。ベッドで転げ回ったことを追記しておく。
Side out
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