グラールの神機使い
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4-2
「なんだと?」
「考えてみろ。君の人権登録内容では、君は異世界人として正式に認められている。君ならそんな人間、雇うか?」
「む……」
異世界からやってきた人間。
自分が会社を営むなら、たとえそれが奴隷並みの働きだったとしても、気味悪くて雇う気にはならない。
ましてや相手は戦闘主力の神機使いだ。その道以外ではあまり期待もできないだろう。
「その点、リトルウィングは『来る者拒まず』の上、並大抵の仕事ならすぐできる。君も、すぐ元のように傭兵として戦える」
「俺は傭兵じゃない」
「同じさ。戦いたいんだろ?」
望んでやってるわけがあるか、と突っ込もうとした時だった。
「あぁ、ここにいたのね」
「……あんたは確か、マヤさん」
「えぇ、覚えて頂けて光栄。ちょっと、来てくれない?」
3人同時に立ち上がる。そして、手招きするマヤに付いて、奥へと歩いていった。
しばらくしてたどり着いたのは、重厚な扉の前。
「まずは、これ」
マヤが扉の横のボタンを押すと、音を立てて扉が開いた。
中に入り、そこにあった物を見る。
「俺の……」
「この剣……神機の事を色々調べさせてもらったわ」
マヤは近くにあったコンピューターを動かす。
すると機械のアームが神機を持ち上げた。
「でも、解らなかった。材料も、構造も、何もよ。私達ガーディアンズの検査能力も、全く役に立たなかったわ。全てが未知の、私たちのあずかり知らぬ存在……」
アームが神機をクルクルと回転させ、様々な角度に傾ける。
「あなたはさっき、これは生きた武器だと言ったわね」
「あぁ」
「そして、この武器がないとあなたは偏食因子を摂取できず、アラガミ化すると」
「そうだ」
今度はアームが動く。
そのまま神機を、リュウジに差し出した。
「返すわ」
「マヤさん!」
エミリアが声を上げるが、マヤの言葉がそれを遮った。
「でも使う事は許せない」
「何だと?」
「原生生物を気絶させるのではなく、ただ殺す武器……悪いんだけど、ガーディアンズとしてこれを許すわけにはいかないのよ」
「し、しかし!」
「無論、これの管理はあなたに任せるわ。特定の任務、例えばスタティリア破壊などなら使用も許可できる。でも基本的には、フォトンを利用したこの世界の武器を使ってちょうだい」
「……断ると言ったら?」
「武器は封印し、あなたは牢獄に送り込まれるわ。一日後には宇宙に射出され、グラールの外」
殺す、という事なのだろう。リュウジに拒否権があるとは思えなかった。
「わかったよ。この世界の武器を使う。所属も、リトルウィングでいい」
そう言った瞬間、エミリアの顔が少し明るくなった。
「次はこれよ」
マヤは既に、次の扉を開いている。
リュウジは神機を手に取ると、次の部屋に向かった。
「……エレベーターか?」
「そう。ちょっと、2人はまたカフェで待っていてくれない?」
そう言われ、シズルとエミリアは黙って部屋を出た。
「どこに行くつもりなんだ?」
「決まってるじゃない。ガーディアンズ統括、ライア・マルチネスさんの所よ」
「……支部長みたいな物か?」
「そんな所ね」
リュウジは鼻で笑った。
しばらくして、エレベーターが目的の階にたどり着く。
エレベーターの扉を出ると、そこは短い廊下で、突き当りに白い扉があった。
「統括、例の異世界人をつれてきました」
「入れ」
マヤが扉の機械に話しかけると、返事と共に扉が開いた。
真っ白な部屋に、机が1つ。いやに殺風景だ。
「よく来てくれた。私はライア・マルチネス。このガーディアンズを統括している」
「……荒鋼リュウジ、ゴッドイーターだ」
「話はマヤを通じて聞いた。アラガミに食い荒らされた世界と、それを狩る神機使い」
リュウジはライアの容姿が気になりだしていた。
割れた上唇や、尖った耳。黒い肌。
先程エミリアから聞いた話から察するに、これがビーストと呼ばれる種族なのだろう。
そして、気になったことがもう一つ。
「君は特に異例な存在だ。ただ異世界人というだけでなく、特殊な細胞を取り込んだ極めて特殊な……」
「………」
「……何をそんなにニヤニヤしてるんだ?」
「別に畏まらなくても、普段通りの喋り方でいいぞ? 隠してるの見え見え」
気配からも、明らかに喋り方を偽っているようだった。
「……ぷ、あははははははは!」
そして、それは大当たりだったようだ。
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