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『もしも門が1941年の大日本帝国に開いたら……』

作者:零戦
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第三十一話






 炎龍を追い払ったという知らせはダークエルフの間を瞬く間に駆け抜けていった。

「茶や草の人が来た。ロゥリィ・マーキュリーと魔導師の娘までいる」

 炎龍に一方的に捕食されるだけであったダークエルフ達にとってそれは朗報となった。

 炎龍を退治し、安心で快適な森の生活を取り戻そうという掛け声に誰も彼もが武器に手を伸ばした。

 こういった動きに、周辺の谷や野に、山に隠れていたダークエルフ達が復讐心に燃えてロルドム渓谷へと続々と集まりだしたのだ。

 夜半になると狭い渓谷の川原にダークエルフの姿で一杯になってしまった。

 そして第三偵察隊の歓迎のために食料庫が開け放たれて工夫を凝らした様々な料理が振る舞われていた。

 しかし、伊丹の表情はあまりよくなかった。

「どうしましたか隊長?」

 伊丹の表情を読み取った栗山が伊丹に問う。

「テュカの事だ。お父さんお父さんと俺が幾ら否定しても頑として聞かないんだ。絶対に認めないような感じだ」

「まぁ……無理もないですね。父がいないと壊れそうですね」

「そうだな……栗山は父親は?」

「……関東大震災で亡くなりました」

「……済まない。変な事を聞いたな」

「構いません。自分は幼かったですからね」

 栗山はそう言って水を飲んだ。ダークエルフ側は酒を提供したが、伊丹は作戦の影響が出ると言って断った。その代わり、炎龍を倒した時に飲もうという話になったのだ。

 そして、離れた場所ではロゥリィと長老が話をしていた。

「言い伝え通りでしたか」

「………」

「……いやお怒りはごもっともですがそんなに悪い話ではないと存じますが……」

「どうして私ぃがあんな奴のお嫁さんにならないといけないわけぇ? 要は自分の駒に出来る肉の身を持った亜神が欲しいだけでしょぉ。そんな詰まらない事に残りの約四十年を費やすのは嫌よぉ。まぁお陰で興味深い男とは出会えたけどねぇ」

「おや。聖下のお心を射止めた者がおりましたか?」

其奴(そいつ)がどんな老い方をして死んでいくかぁ、看取ってやりたいくらいにはねぇ」

 長老は伊丹を見たがロゥリィは首を振った。

「イタミじゃないわぁ。あいつよ」

 そう言ってロゥリィの視線は樹に向けられた。

「ほほぅ、中々見処がある者ですな」

「でしょぉ。でもぉ、どうしてハーディはあんな大穴をアルヌスに開けたのかしらぁ?」

「穴? アルヌスに?」

 長老が呟く前にロゥリィは樹の側に寄り添うように腰を下ろした。隣ではヒルダがロゥリィを睨んでいるが……。

 長老はロゥリィの言葉の意味を問う事は出来なかった。



「明日の朝には本隊が到着します」

「戦士らも随伴させる」

「ですが……」

「道は険しいですぞ。それに周辺の様子なども……」

 そう言って長老は伊丹に説明すると、伊丹は申しでを受ける事にした。

「では明日の朝に……」

「恐縮です。荷物運びなんてさせて……」

「なあに、炎龍退治の場に居合わせたいと思う者がこれ程に集まったのです。何か仕事の一つでも言いつけてやりませんと拗ねかねませんぞ」

 長老達はそう言う。ちなみに日本軍の作戦は炎龍の住み処に八百キロ陸用爆弾や五百キロ陸用爆弾を爆薬と共に多数設置して炎龍が住み処に戻ると爆破して吹っ飛ばす『い号作戦』と海軍航空隊がテュバ山を爆撃して炎龍を住み処から外に出してそこを砲兵隊が一斉射撃をして吹っ飛ばす『ろ号作戦』があった。

 しかし、い号作戦は現実的に不可能だろうと思案していた。まず爆弾をどうやって住み処まで運ぶかだ。

 例え、爆弾を設置して爆破しても火山が噴火する可能性もあったのだ。

「……確実に考えればろ号作戦だが……」

「その分、犠牲はありますがね」

「戦に犠牲があるのは必然的だよ」

 伊丹は栗山にそう言った。そして翌日、加茂大佐率いる本隊が到着した。

「おぉ、これだけの人数が……」

 集結した部隊に長老達に笑みが溢れた。

「カモ大佐とやら。我等のダークエルフも九人、参加します」

 選ばれたのはヤオを含めた九人である。

「お心使い感謝します。全員出撃するッ!!」

 そして第三偵察隊と合流した炎龍討伐隊はテュバ山へと向かった。

 テュバ山へは四日の夜半に到着した。加茂大佐は辺りを見渡す。

「……硫黄の臭いがするな。やはり火山か」

 そして航空機の爆音が響いてきた。零戦二七機、一式陸攻九機が飛来してきたのだ。

 一式陸攻九機は高度千でテュバ山へと侵入して爆撃を開始した。

 投下される爆弾は火山を考慮して六十キロ陸用爆弾であるがそれでも威力はある。

「ち、海軍め。仕事が早すぎるぞ。戦闘用意だッ!!」

 加茂大佐はそう命令して砲兵隊が慌てて射撃準備に入る。火山の上空二千で零戦隊が警戒飛行をしている。

「……いないのか?」

 零戦のパイロットがそう呟いた時、黒煙の中から炎龍が飛び出してきた。

「炎龍出現ッ!!」

 そして炎龍はそのまま近場にいた零戦に火炎を吐いた。

「ウワァァァァァァァーーーッ!!!」

 零戦パイロットは炎に包まれ、零戦が爆発四散するのであった。






 
 

 
後書き
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