インフィニット・ストラトス ~天才は天災を呼ぶ~
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第14話
「織斑君、クラス代表就任オメデト~!!!!!」
パンパン!!! っと、クラッカーのなる音とともにクラスメイト達の祝いの言葉が聞こえる。
「は?」
いきなり食堂に連れてこられたかと思ったら、クラッカーの襲撃を受けた。
なんだ、これ?
「え~っと? 『織斑一夏 一年一組クラス代表就任パーチー』? おい、あの垂れ幕書いたの誰だ? パーティだろパーティ」
「いやいや、織斑君、そこは突っ込むところじゃないよ、というかどこも突っ込むところはないよ……」
いきなりのクラッカー攻撃に目を白黒させて周りを見回してしまった。
それにしてもあの垂れ幕……、ついつい癖で突っ込んじまった。 あの垂れ幕を作ったやつ、なかなか策士だ。 それと、俺に突っ込みを入れてきた『クラスメイト?』さん(ヤベー、顔は見たことあるけど名前は覚えてねえ!!)、よく見ろ、突っ込みどころ満載だぞ!!
「いやいや、突っ込みどころはめちゃくちゃあるぞ!? まず、一組の代表就任パーティなのに明らかに一組じゃないやつが混じっている。 クラスメートの名前は覚えてないけど、顔は覚えている俺が言うんだから間違いない。 あの辺の異常に盛り上がっている集団は一組のやつじゃない」
おい、あの集団、一組じゃないのに「これでうちのクラスは安泰だねー」とか盛り上がってるぞ!? お前、何組だよ。 ついつい、昔の不良漫画みたいな突っ込みをしてしまったじゃないか。
「次に、セシリアと箒がすでに馴染んでいる。 あいつらこのこと知らなかったんだよな? 俺がまだびっくりしているのに、もう普通にパーティ楽しんでるって何!? 適応力どんだけだよ!」
あいつら、クラッカーがなった瞬間は、俺と一緒に「は?」、「なんですのいったい?」とか言ってたはずだ。 というより、いつの間に移動しやがった?
「最後に、気づけばどこから持ってきたのかわからないが異常にフッカフカのソファの真ん中に座らせられている俺!! あれ!? ついさっきまで入り口にいたはずだぞ? 瞬間移動か? キンクリか? マジで訳が分からん。 で、ちゃっかり横についているセシリアと箒はいったいどこから現れたんだ?」
マジでいつ移動したんだ? それにこの二人もさっきの突っ込みを入れてるときには飲み物とか取りに行ってたはずだぞ!?
「あはは……。 確かにね。 まぁ、今日は織斑君の就任パーティだから楽しんでよ。 主役が楽しまないとみんな楽しめないよ?」
それもそうk……いや、俺いなくても十分盛り上がってるように見えるんですけど……。 まぁいいか、楽しめるだけ楽しもう。
学生だけで用意したとは思えないほどの豪華なパーティに戸惑いながら、ぎこちなく周りのみんなと交流を進める。 クラスメイトの子と話をするたびに、箒とセシリアから尋常じゃない殺気が漏れ出てるけど、気のせいだよな?
グ、グルルルロルロロロルロゥゥゥゥゥォ……
飲み物などをチビチビと飲みながらソファにゆったりと座っていると、放課後の訓練後で空いていたお腹が咆哮をあげた。
チョット、ハズカシイデス。
「ぷ、すごい音だね。 織斑君お腹空いてるんだ、じゃぁ、これどうぞ。 友永さんが作ったとってもおいしいキノコのキッシュ(卵とクリームを使って作るフランスの郷土料理)だよ」
そう言って、俺の前に一切れのキッシュを置いてくれる。 ふっくらとしたキッシュはとても旨そうで、ボデイビーストが暴れまわっている今の俺にはとてつもなくうまそうに見えてしまった。 しかし……、しかしだ諸君、風音が作ったというのが引っ掛かる。 考えてもみてくれ、あの『風音』が作ったものだぞ。 きっと何かあるに違いない。
「風音が作ったもの? おいしいって本当か? 実は料理が下手とかそんな落ちはないよな? 見た目だけいいとかそんな落ちは……」
「え? とってもおいしいよ? 友永さんおいしいものが食べたいからって自分で作っちゃうらしいよ!! しかもすごくおいしいの。 試食させてもらったけど、お金払って食べてもいいぐらいだと思ったからね!!! セシリアさん、篠ノ之さんも食べてみて!!!」
ものすごく押してくるクラスメイトの子。 そこまで言うほどの旨さなのか……、ちょっとだけなら……。 いや、でも……。 ほら、やっぱり……ねえ。
「む? 風音が作ったものだと? いただこう!!」
「ええ、風音さんが作ったものとあれば食べないわけにはいきませんわ!!」
俺を挟む二人は何の躊躇もなく目の前に置かれたキッシュを口に運ぶ。 何も疑っていないその表情がどれだけゆがむのか、それを見極めるために、俺はすまないと思いながらも二人の反応を注視してしまった。
二人の口が、ほぼ同時にキッシュを食む。 その瞬間、あの箒とセシリアの顔が極限まで緩んだ!!!
「ほぁ」
「ふぇ」
とてつもなく緩んだ顔でキッシュをほおばる二人。 どんだけ旨いんだ!!? セシリアとか、めちゃくちゃ良いもん食ってんじゃないのか? ちょっとまて、じゃあ俺も食う!!! そこまで美味いんだったら俺も食う!!!
「うんうん、おいしいでしょ? みんなそんな反応になるんだよねぇ。 織斑君はやっぱりいらない? じゃあ、ほk「食う!!!!!!!!」……あ、ど、どうぞ……」
おっと、ついつい大声を出してしまった。
ごめんごめんと謝りながらキッシュを受け取る。 においも見た目も実に旨そうだ。 おいコラ、箒とセシリア。 そんなに物欲しそうな目で見るな。 これは俺のだ。 そんなに欲しいならとってくればいいだろう!? え、一人一切れずつしか用意されてない? そうか、それは仕方ないな……。 しかし、これは俺のだ。 これは俺のだぞ。 大事だから2回言ったぞ!!
「では、いただきま~す」
ぱくりとキッシュを食べる。 口に入れる瞬間に、セシリアと箒が「あぁぁぁぁ」とか言ってたけど知らん。
歯がタルト生地のベースとふんわり卵を挟み、噛み切る。 チーズの芳しい匂いが鼻を通り体に広がる。 具はひき肉のうまみがしっかり閉じ込められていて、口の中で解放されたうまみ成分が口いっぱいに広がっていく。 細かく切られた野菜やきのこもしっかりと火を通してあり、香ばしい。 極めつけはやはりチーズだろう。 芳ばしく香り、鼻を突き抜けていくほどの濃厚なチーズの味がひき肉、野菜に絡みつき、とてつもないハーモニーを口の中に生み出していく。
こ、これは……!!!!
「う……」
「う?」
「どうどう?」
期待のこもった目で見てくるクラスメイト一同。 ここはしっかり意思表示をしておかないと。
「う、う」
「ふんふん」
「うをろぉぉぉぉぉぉぉぉぉ……、まずぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!!!!」
「えええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!」
なんだこれ!!! めちゃくちゃ旨い感じできてたくせにめちゃくちゃ不味いぞ!!!! え!? みんなマジでこれ旨いって思ったの!? これ、人間の食いもんじゃねぇだろ!!!
うそ、俺だけ味覚が変なの? もしかしてこれ男だけまずくなるようにプログラミングされてるとか!?
「あっはっはっは!!!! まさか一夏にあたるとは!!! 流石、クラス代表!! おいしいところを知ってるね!!!」
驚愕の表情を浮かべる俺とクラスメイト達、その時、大笑いと共にこの惨事を仕掛けた張本人がやってきた。 てか、やっぱり風音が作ったもんには罠があったか!!!!!
「風音!! いったいどういうことだ!?」
「風音さん!? これは一体!?」
風音に問いただす箒とセシリア。 ま、まて、きっととんでもない切り返しが待っている……。
「これ? 『ロシアン・キッシュ』だよ? 同時に焼いたはずのキッシュなのに切り分けたときどこかの一辺だけが異常に不味くなるように作ってあるんだ。 すごいでしょ!!」
すごい。 確かにすごいが、なんで今出したんだ!? そして、なぜおれにそれがあたったんだ!? 明らかに何かしらの悪意を感じるんだが……。
「まぁ、セシリンの見た目めちゃくちゃおいしそうなサンドイッチなのに味がめちゃくちゃなサンドイッチに比べればなんてことはない料理だけどね」
いやいやいやいや、サンドイッチなら意図的に一つ不味くするとかできるけど、キッシュみたいに一気に焼いて切り分けるような料理でロシアンはふつうできないだろう!! 後で一つだけにタバスコをぶっかけるとか細工はいろいろできるかもしれないが、それだと匂いとかでわかっちまうもんな。 確かにあれはただのキッシュだったはずだ。
「風音さん!! わたくしのサンドイッチが不味いとでもおっしゃるの!?」
「ん~、どっちかっていうと個性的な味だったねぇ」
それは不味いって言ってるようなもんじゃないのか? よくある料理番組とかのレポーターがいうようなセリフだろう?
「そうですわ。 わたくしの料理は個性的ですの!! 決して不味いなんてことはありませんわよ」
必死に弁解? するセシリア。 なんでこっちをチラチラ見てるんだ?
なんて、風音と箒たちのやり取りを眺めていたら徐々に不味さが抜けてきた。 不味さで動かなくなっていた体が徐々に動くようになっているのが証拠だろう。
動くようになったが、まるで鉛のように重くなった体を持ち上げて深くソファに腰掛ける。 たった数十センチの移動だったはずなのにものすごく疲れる。
いや、これ、明日ヤバくね? てか、体が動かなくなるほどの不味さってなんだよ!!
なんて思っていたら風音がやってきて、「よかったね、明日は体がすっきりしてるから」とか言って去っていきやがった。 いやいや、これ、確実に明日も引きずるダルさだから。 マジで……。
深くソファに腰掛け眺めるだけになってどれぐらいの時間がたっただろうか? 会場に一人の女生徒が入ってきた。
新聞部副部長で2年生の『黛 薫子』と名乗ったその女生徒。 テストの時、名前書くだけで大幅にタイムロスしそうな名前である。
黛先輩はどうやらインタビューに来たようである。 「俺より御神のほうがこういうインタビューによく答えてくれると思うんですけど……」という俺の発言は、「うん、彼にも話を聞こうと思うけど、なんか気持ち悪いから、適当にねつ造しておくよ♪」と返答をもらった。 インタビューする気はないんだろうなぁ……。
俺へのインタビューが終わった後、セシリアへインタビューを始めた。 俺の時もそうであったが、ねつ造しすぎじゃないだろうか?
大丈夫か『IS学園新聞』……。
「なるほど……。 どうもありがとう!!! おおっと!! あれは噂の【謎のIS操縦者】『友永 風音』さんじゃないかな? よし!! インタビューだ!!!」
俺とセシリアという一応ホットな話題を抑えられたことで帰っていくかと思われた黛先輩は、風音を発見したことにより、さらにテンションが上がったのか、目にもとまらぬ速さで風音の前へと移動した。
「どうも!! 新聞部です!! 友永さん!! いきなりですが質問です!!! あなたは何やらISについて知っているようですが、もしや、篠ノ之博士と何かしらのつながりがあるのではないでしょうか!!」
いきなり超弩級の爆弾を放り投げていく黛先輩。 会場中の視線が風音に集まっていく。 そうだ、セシリアの時は冗談だと言っていたらしい(セシリアから教室での一件は聞いていたのである)が、千冬姉からは風音がIS開発者の一人だということは聞いている。 ということは最低でも、束さんと何かしらつながりがあるはずである。
ゴクッ!!
誰かの唾をのみこむ音さえ聞こえてきそうなほど静かになったパーティ会場。 誰もが風音を見つめるそんな空気の中、風音がゆっくりと顔に手を当てて、語りだした。
「ふふ、それを聞いてどうするつもりですか? 黛先輩」
普段の風音からは想像もできないほど冷たい視線と冷たい声音で黛先輩に問いかける風音。
こえぇぇ!!! 会場の空気が5度は下がったぞ!!!
「え……いや、どうするといわれても……、え、あ」
「ええ、教えていただけますか」
あまりの迫力にのまれたのか、黛先輩がしどろもどろになり始める。 しかし、そんなこともお構いなしにズイズイと詰め寄る風音。 笑顔で詰め寄っているが、言葉は氷の様に冷たく尖っているようであった。
風音に詰め寄られ、涙目になり始める黛先輩。
「ええっとぉ……、私はぁ……、し、新聞部だしぃ、校内のみんなの声を拾うのが仕事で……、悪いのは私じゃなくてぇ……校内の友永さんのことを知りたい人たちでぇ……」
そして、黛先輩はついに空気に耐え切れなくなったのかとんでもない責任転換を行いだし、ありえないことに、自分の知りたいことを他の生徒たちに罪をなすりつけ出したのである。
ピクリと眉根を取り上げ剣呑な空気を強める風音。 その眼光が徐々に強くなり、場の空気はどんどん冷えていく。
「そう……、私の秘密を探るのはあくまで仕事の一環で、自分の意志ではないというのね?」
「……そ、……そうでしゅ……」
あまりにも濃密な殺気の前に、か細い声で絞り出すように小さく答える黛先輩。 顔はもう半泣きだ!!
「そう、ふふ、面白いことを言うわね。 ほんと、とっても面白いわ。 ふふふ、笑いが止まらなくなりそう。 ……ふふ、ふふふ、あーはっはっはっはっは!!!!」
ビクゥ!!
突然大声で笑い出した風音に会場中がびくりと反応をしめす。
「あーっはっはっはっは!!!! 久しぶりにとても面白いよ!! こんなに笑ったのは久しぶりだね!! 私と束さんの関係が知りたいだって? はーっはっはっは!!! そんな国家機密に土足で上がりこみブレイクダンスを決め込むようなことをこんな機密がいっぱいの学園で聞こうだなんて!!! 面白すぎて、面白すぎて!!! 『いっくん』に突っかかったそこの『金髪』より阿呆なことを言う子がいたもんだね!?」
顔に手を当てて大声で笑い続ける風音。 急に口調が変わり、その動きもどこかいつもの風音と違う、何やら俺や箒にとって懐かしい動きに変わってきた。 そして、徐々にではあるが、烏の濡れ羽色と言える髪の毛が現実のものとは思えないピンク色に変化し始めている。
そして何より、『いっくん』という呼び方。 セシリアをセシリンではなく『金髪』と呼んだ口調……。 それを聞いた俺と箒の顔は驚愕の色に包まれていたことだろう。 なぜなら……、
「そうそう、私と束の関係だったね……、個人で聞きに来ているなら何でも適当に言ってごまかそうかとも考えたけど、仕事で聞いているんなら仕方ないわね。 私と束の関係……、そんなの聞くまでもないよ、『友永 風音』は仮の姿、そう何を隠そう私が超絶天才にしてISの生みの親、『篠ノ之 束』だからね☆ あ、いっくん、ほーちゃん、おっひさ~☆」
ISの生みの親にして、箒の姉であり、俺にとっても近所のお姉さん的存在だったあの人が……、その頭脳ゆえに世界から狙われ、笑顔で行方をくらませると語ったあの人が、いなくなった前日と何の変りもない笑顔でこちらに手を振っていたのだから……。
後書き
ネタ解説
瞬間移動:七玉集めバトル物語のあれです。
キンクリ:また出てきたか厳つい仮面の物語が……。 ネタ豊富ですよねぇ。
大事だから2回:このネタって本当によく見かけます。 でも最初はどこなんでしょう? 私は知りません。
個性的な味:まずいとは言えないレポーターたちの苦肉の策。 この言葉に近い言葉はすべてそういうことなのだと察せる最強の殺し文句です。
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