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銀の呪い

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第三章

「果たして」
「では銀をより多く掘らせましょう」
「是非共」
 貴族達は王のそうした言葉を聞かなかった、そしてだった。
 銀はさらに産出され原住民達は酷使されていった、だが銀も植民地の富もスペインを通過するだけになりトルコとの戦争にも浪費された。
 スペインは傾いていった、しかも。
 スペインの植民地統治の有様を見た心ある者達がその惨状を訴えだしたのだ。
 スペインの名声も落ちた、欧州中からあまりもの虐政が批判され攻撃材料に使われた。ネーデルラントの独立や無敵艦隊の敗北よりもさらに深刻なものだった。
 それは今も残っている、スペインの植民地統治を肯定する者は殆どいない。
 ある歴史学者がポトシ銀山の跡地に来て共にいる学生達にこう言った。
「ここがあの銀山だよ」
「スペインが植民地の原住民達を酷使して掘らせていた銀山ですね」
「ここがですね」
「そう、スペインは確かにこの銀山から多くの富を得たけれど」
 植民地全体からでもある。
「それは原住民のインディオ達の犠牲によってのものだった」
「そして多くの原住民達が死んでいった」
「そうですね」
「そう、そしてその銀もね」
 スペインに富をもたらした筈のその富もだというのだ。
「スペインを通過するだけになってスペインの産業を空洞化させてね」
「そしてですね」
「スペインを衰退させましたね」
「そう、そうなったうえに原住民達へのあまりにも酷い行いが世界に訴えられてね」
 そしてだった。
「スペインはその国力も名声も落としていくことになったんだよ」
「それを聞くと何か」
 学生の一人がその今はただの歴史的な跡地となっている銀山を見て言った。
「呪いみたいですね」
「呪い?」
「はい、征服されて虐待されて殺されていった原住民のインディオ達の」
 呪いでないかというのだ。
「スペインに対する」
「そうかも知れないね、スペインは実際に衰退したし」
「はい」
「すぐに世界帝国から滑り落ちて今もその植民地政策が批判されているから」
 人類の歴史における最大の一つとさえ言われている、欧州各国の植民地統治全体がそう批判されているが。
「それを考えるとね」
「そうなりますよね」
「そうだね、まあ呪いを受けても仕方ないね」
 スペインはそれだけのものをしたからだ。
「それもね」
「そうですね、本当に」
「この銀山だけを見ても」
 皆その銀山を見て言う、今はそこには誰もいない。 
 しかし彼等の言う通りこの銀山では多くのインディオ達が酷使されて無残に死んでいった、その彼等が呪いを感じていても全く不思議ではなかった、誰もがそう思うことだった。


銀の呪い   完


                           2013・3・24 
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