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ソードアートオンライン VIRUS

作者:暗黒少年
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試合前の午前

 あの後ナナミのマシンガントークのような質問攻めから何とか抜け出しログアウトに成功したあと、体を起こして時間を確認する。

「まだ、登録してから二時間しかたってないのか」

 現在の時刻は午後十時。登録しに言った時間が七時だったはずだからそれほど時間はたっていない。

「たく、本当に厄介な人物にあっちまったな。少し仲間を選ぶときはもうちょっと考えてからのほうがよさそうだし。即席のパーティーもメンバーを選んだほうがいいな」

 そう呟いてからベットにごろんと寝転ぶ。

 しかし、ナナミの言っていたことを思い出す。前大会の優勝者は自分と同じあのゲリラNPCを一撃で葬れるようなパワーを持っている。そいつが今年も参加するかわからないがそんな奴がその世界ではごろごろしているのかと思うとわくわくしてきた。

「やべー、そんな奴が大会に出るのか。早く戦いてぇ~」

 なぜか血が騒ぐような感覚がある。やはり皆が言うように自分も戦闘狂(バトルジャンキー)なのだろう。

と、自分の部屋のふすまの前に誰かの影が映ってるのに気付いた。影の大きさからして女性、そしてお袋の身長じゃないからして奈美だろう。

「優さん、起きてますか?」

「起きてるよ、どうしたんだ?」

 そう言ってベットから起きてふすまを開ける。奈美が持っているのは料理本だった。

「ちょっと、このレシピでわからないところがあったから教えて欲しいですけど」

「ОK、俺の部屋よりも実際にやったほうがいいだろ。キッチンに行くか」

「はい」

 キッチンへ向かい、そのレシピを見せてもらう。それは、ケーキであった。

「何でケーキ?」

「えっと、私の友人が明日の休みにうちで作ろうって話しになったんだけど、実際ケーキなんか作ったことないし」

「俺も数えるくらいしかないぞ。ちょっとしたお祝いの時とか、誕生日とか」

「それだけでもいいです。少し教えてください」

 奈美はお辞儀をして頼んでくる。さすがにここまでされちゃやらなきゃいけないだろうと思い了承する。

「ありがとう」

「どうせなら、俺も一緒に明日作るからそれでいいだろ」

「うん」

「じゃあ、俺、明日も朝早いからもう寝るな。おやすみ、美奈」

「おやすみなさい、優さん」

 そして、優は床に就いた。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 次の日の朝、いつもどおり稽古を終わらせてシャワーを浴びて汗を流すと着替えてキッチンへと向かう。そこには、エプロンを着た美奈と友達と思われる一人がいた。

「あ、優さん」

「え、この人が美奈の言ってた人!?」

「初めまして、奈美の義兄の如月優って言うんだ。よろしく」

「こ、こちらこそよろしくお願いします!私、美奈の友人の久野三咲って言います!」

「おっけー、三咲さんね」

「もう、三咲ったら」

 美奈はあきれて苦笑する。

「じゃあ、ケーキ作りを始めるか」

「「うん」」

 優がそう言ってケーキ作りの準備に取り掛かる。美奈と三咲は思った以上に手際と物覚えがよく、自分が教えるとすぐに覚えていく。

「二人とも、普通にうまいじゃん」

「いや、優さんの教え方が上手なんですよ」

「そうですよ、優さんの教え方が上手だから私たちがこんなにもできるようになったんですよ」

 上から奈美、三咲が褒める。すると、奥のほうからお袋が出てくる。

「あ、お義母さん」

「おばさん、お邪魔してます」

「あら、三咲ちゃん来てたの。いらっしゃい。しかし、なんだか珍しい組み合わせね。優が女の子たちといるなんて。直葉ちゃんとしかいたところなんて見たことなかったのに」

「お袋、それはあっちであんま遊び行ってなかった時だろ。普通に学校じゃ結構話して他方だぞ。それに、前に言ったじゃないか。彼女があっちにいるって」

「「ゆ、優さん、彼女がいるんですか!?」」

 彼女の単語に反応する二人。まあ、女子はすきそうな話題だがそんなに驚くことなのだろうか?

「ああ。そんなに驚くことか?」

「ちょっと、いきなりだったんで驚きました……」

「そっか~、優さんって彼女いたんだ~……残念だな~……」

 何が残念なのかはわからないが、まあ気にしないほうがいいところだろう。

「それよりも、三咲。アミュスフィアちゃんと持ってきたよね?」

「もちろん、ちょっとやらしてもらったけどなかなか楽しかったよ」

「へー、二人ともVRMMOやってるんだ」

「うん、ちょっとおじいちゃんから言われてね」

「私はもうすぐ買うけどいろいろと規制がかかっててどれを買うか迷ってるんですよ」

 美奈はおじいちゃんということは確実にBFOだろう。抜かりのない人だ。自分の娘にもやらせているなんて。っていうことは確実に純もBFOだろう。部屋にアミュスフィアがあるのを確認している。

「うーん、三咲ちゃんは買うならALOとかどう?あの事件があった後だからやりたくない気持ちもあるかもしれないけど今度、別の会社がサーバーを管理するんだけどそこはだいじょうぶなはずだよ」

「そうなんですか?でも、親がなんていうか……」

「まあ、そんなに急にじゃなくて大丈夫だから」

「そういえば、優さんも今VRMMOをしてるんですよね?」

「ああ、俺もおじいさんに頼まれてちょっとBFOをな」

「あ、そういえば、奈美。昨日、夜BFO始めてやらせてもらったけど、すごい人に合ったよ。何かあのゲリラNPCを一撃で倒したって言うプレイヤーに」

 ……ん?どこかで聞いたことあるような言葉だな。いや、聞いたことある台詞とかじゃなくてもうすでに理解している。しかし、ALOみたいにこんな近くにも昨日知り合った少女がいたことに正直頭がついていけてない。

「どうしたんですか、優さん?もしかして、そのプレイヤーを知ってるんですか?」

 三咲が興味があったのか聞いてきた。

「ああ、知ってる。っていうより実際にやったということを言われて正直なんて返事を返そうかと思ってた」

「「……えぇ~!!」」

 さすがの大声にお袋も自分も少し驚く。

「つまり、優さんが昨日私のアバターがあったゲツガなんですか!?」

「たぶん、三咲さんのアバターがナナミならそうだな」

「ほぇー、こんなに近くに、それにさっき知り合ったばっかりの人がVRMMOの有名人なんてびっくり」

「ん?有名人?」

 そう聞いて優は三咲に問い返す。

「知らないんですか?あのゲリラNPCを一撃で倒した謎のニュービーって騒がれてるんですよ」

「そうなのか、喧嘩を簡単に買うのはよくなかったな……」

 あの戦いを受けなかったほうがよかったと後悔する。まあ、過去のことは気にしてもしょうがないかと前向きに考える。

「大会で勝ったほうが目立つんですけどね。優さんは大会出るんですか?」

「ああ、ちょっとおじいさんたちとの約束をな」

「やっぱりおじいちゃんたち、優さんにも言ったんだ」

「みたいだな。美奈も純も言われてるんだろ?」

「はい。でもお兄ちゃんはちがうの。お兄ちゃん、前の大会で優勝してるから」

「へぇー、純の奴優勝したのか。つまり、あいつもゲームの中じゃゲリラを一撃で倒せるやろうか」

「うん。それでお兄ちゃんもう一つの方の優勝商品選んじゃって……」

「もう一つのほうはなんなんだ?」

「確か、一時的なパワーアップ装備でした」

 となるともしも純に当たるとなると少し厄介になるな。締め技を使ってどんどんその時間を潰していくしかないかもしれない。

「そういえば、純さん、プレイヤーが奈美って知らないで前の大会は倒したんだっけ?」

「うん。でも、今年はお兄ちゃんに負けない。もちろん、優さんにもね!」

 そう言って奈美は拳を握る。

「ああ。こっちも負けないからな。もし当たったら俺は手加減しないで行くからな」

「私だって負けません」

「二人とも、そろそろ片付けなさい。ケーキが悪くなるわよ」

 お袋に言われたのでテキパキと片付ける。ケーキは普通に美味しかった。

 そして、午後一時、BFO大会予選が始まる。 
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