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クエスト

 オレがギルドに加入して早一週間。
 最低ランクFからEランクに史上最速昇級を決め、お使い系クエストからついに冒険者らしいクエストに挑戦することが許可された。
 早速エリカの指南を受けつつ依頼書が貼ってある掲示板でどれを受けるか相談する。

「ゴブリン討伐、ダンジョン探索、盗賊退治etc……。」
「お使い系もあるよ?」
「いやいや、背伸びくらいさせてよ。」

 とは言うものの今のランクでこなせるものはお使い系がまだ多い。
 と、掲示板の真ん中あたりにひっそりとほかの依頼書に隠れた依頼書があった。

「ゴブリン討伐?」

 掲示板から剥がすと依頼書には『ランクE~』と書いてある。報酬もランクEからすればかなりいい。そして受付期間が今日まで。こんなおいしい仕事を逃そうか、いやしない!

「それでいいの?」
「ああ。」
「わかった。あたしの名前で登録しとくわ。」

 依頼を受けるにはギルドにその依頼を受ける責任者を申告しなければならない。
 万が一事故や事件に巻き込まれた際に証拠とするためだ。
 この国は思っていた以上に治安がよく、警察組織もある。

「あ、いや、オレが……。」
「いいの。討伐系は初めてなんだからいろいろ教えてあげるよ?」
 
 そう言ってエリカは依頼書を手にしてギルドカウンターに向かった。
 ややあってエリカが戻ってくると早速出発すると言われ急いで宿に戻り、出発の支度を整えた。そして宿の前でエリカが出てくるのを待つ。

「お待たせ。」

 暫くしてエリカが出てきたが、荷物の量が違った。

「それは?」
「うん?これ?」
「それ。」
「武器と着替え。カズヤ君武器持ってないでしよ?だから、そのため。で、着替えだけどゴブリンの血ってかなり臭いから返り血を浴びたときのための。」
「オレも持ってきた方がいいかな?」
「いらないよ。あたしが持って行くから。」

 しかし男として女性に大荷物を持たせるのは忍びない。

「じゃあそれは俺が持つ──。」
「いいの!あたしが持ちたいの!」

 エリカの剣幕に気圧され引き下がる。

「じゃあ行こっか。」
「お、おう……。」

 先ほどと打って変わって楽しそうに言ってきたため拍子抜けだった。

 その後依頼書にあったポイントに赴き、エリカから武器を拝借する。
 渡されたのは銅の片手剣。道場の入門者がはじめに渡される物だが、耐久力があり激しく打ち合っても簡単には折れない。

「ゴブリンなんてそれより粗末な物を持って立ち向かってくるんだから、それで十分でしょ。あたしが切り込むから援護お願いね。戦場の空気を感じればいいから。」

 なんだか悔しいが確かにオレは初心者だ。一番前にいられては邪魔者になる。

「じゃあ、お願いね。」
「は、はい!」

 エリカがオレに微笑んだ!オレにだ!燃えてきたぁ!!
 などと供述する単純な頭でも今やるべきことはわかる。突入するエリカを援護しなければ。

「Flamme・Magier!(焔の矢)!」

 オレの保有するチートな量の魔力が多数の焔の矢を生成し、ゴブリンの群れに飛来する。別に狙ったわけではないが全弾命中し、ゴブリンのみが焼かれ形容しがたい臭いが発生する。
 これにはエリカも顔をしかめた。

「無茶するねぇ。」

 そういいながらもゴブリンの群れに吶喊して、剣を以て千切っては投げ千切っては投げを繰り返す。

 途中何があったかはグロすぎてオレには表現できない。しかし彼女は何事も無かったように剣に着いた血糊を払っている。

「大丈夫?」
「大丈夫に見えますか?」

 こんなグロッキーな状態を見て大丈夫に見えるなら眼科に行くことをおすすめしたい。

「歩ける?」
「一応歩けます。」

 クエスト成功の証拠として記録魔法を使ってゴブリンの亡骸を撮影し、エリカに肩を貸してもらいつつギルドに帰還した。 
 

 
後書き
男泊める女の思惑
過去を知りて、時創る

次回 過去 
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