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とある碧空の暴風族(ストームライダー)

作者:七の名
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虚空爆破
  Trick11_室内だから、うまくいくといいんだけど


「御坂さん、信乃さんはどこに行ったですか?」

「ああ、水着なら男はいない方がいいって時間つぶしにどこか行ったわ」

「佐天さん、そんなに信乃さんにこの水着を見てほしかったんですか?」

「ちょ、違うわよ! 少し気になっただけだし、それに」


プルルル

「あ、すみません。少し電話に出ます」

「タイミングが悪いわね」

怒りの矛先を失って佐天は睨んでいる。

初春はそうとは知らずに携帯電話の通話ボタンを押した。

「はい、もしも『初春!! グラビトン事件の続報ですの!』

電話は白井からだった。

『学園都市の衛星が重力子の急激な加速を観測しましたの!』

「か、観測地点は!?」

『第7学区の洋服店、≪seventh mist≫ですの!』

今、初春たちがいるまさにこの場所だった。

「ちょうどいいです!

 私達今ここにいますから、すぐ避難誘導を開始します!」

『ちょっと待ちなさい初は』

ピッ!

初春はすぐに通話を切り、アドレス帳の『風紀委員』の欄から
“西折信乃”の名前を探して通話ボタンを押した。





同時刻

「すみません。風紀委員です。店内で不審な人物を見つけたので防犯カメラを
 見せてください! 協力をお願いします!」

≪seventh mist≫の1階にある警備室に信乃は来ていた。

もちろん不審人物を見たというのは嘘であり、爆弾を仕掛けるのに都合の良い場所を
防犯カメラで検討をつけるために来たのだ。

風紀委員という事もありseventh mistのガードマンも快く協力。
信乃がカメラを操作しているところに

プルルルル

信乃の携帯電話が鳴った。

「すみません。少し失礼します。

 こちら、西折です。初春さん、どうしました?」

『信乃さん! 大変です! 重力子の急激な加速が観測されました!
 場所はここ、seventh mistです!』

「・・やっぱり間違いじゃなかったか・・・

 けどもう少し早く気付くべきだったな」

『え?』

「独り言です、気にしないでください。それよりも、私は“偶然”にも警備室にいます。
 デパート側への対応は私がしますので、直接の避難誘導はお願いします。
 こちらが終わりしだい、私も避難誘導をします」

『わかりました!』

プツッ

初春側から電話が切れたのを確認し、こちらも携帯電話を収める。

「すみません、ガードマンの方々。落ち着いて聞いてください。

 実はですね・・・



・・・・・・

・・・・・

・・・・

・・・

・・



「これで避難は完了ですね」

初春、御坂は誰もいないフロアで逃げ遅れの人がいないか確認していた。

「ここは終わりみたいですし、私達も「ビリビリ!」

初春の声を遮ったのは上条だ。

「あんたまだ逃げてなかったの!?」

それに驚いて御坂は上条を怒鳴りつけた。

「それよりも、あの子見なかったか!?」

「あの子ってあんたと一緒にいた?」

「それなら急いで探しましょう!」

「いえ、御坂さんたちは右の方に言ってください!」

話に入ってきたのは信乃だった。こちらに向かって走ってくる。


「このフロアには私たち4人以外に3つの魂があります!
 奥の1つは私が行くので、右側の2つは御坂さんたちで!」

そう言って信乃は3人を通り越して走っていく。

「魂ってあいつ何を言ってんだ?」

「いいから早く行くわよ! 信乃にーちゃんが言ってるから間違いないと思うわ!」

上条は信乃の発言に疑問を持ったが、緊急事態な事と言っている人物が
西折信乃のため、御坂はすぐにデパートの右側へ走り出した。

初春も何も言わずに御坂を追い、

「ちょっと待て!」

上条も後に続いた。




「西折の言っていた2人ってどこにいるんだ?」

「わからないけど、もしかしたらあんたが探してる子かも知れないじゃない!」

「一体どこに・・」

3人で信乃に言われた場所についたが、誰も見当たらないので更衣室などを
手分けして探していた。


「違います! もっと右、その階段の方です!」

声をした方向を見ると、信乃が走って向かっている。
距離が遠いので大声だけで指示を出した。


信乃に言われて階段の方を見ると、ちょうど女の子が走って来た。
上条が捜していた少女。

一番近くにいた初春に向かって走ってくる。

「おねーちゃーん! メガネかけたおにーちゃんがおねーちゃんに
 渡してくれって!」

初春へとぬいぐるみを差し出した。


その瞬間、信乃の背筋に寒気が走った。



先程からの嫌な予感が現実になった時の寒気・・・・この感じは、

「初春さん! それを投げ捨てて! 爆弾はそれだ!!!」

「え?」

信乃はいつもの口調ではなく大声で叫んだ。

次の瞬間、ぬいぐるみが縮み始めた。


信乃の言葉、今回の事件、そこから出る答えは簡単。

このぬいぐるみがグラビトンの爆弾だ。


初春はとっさに少女の持つぬいぐるみを投げた後、少女を庇うようにして
投げた反対側へと飛んだ。

しかし、今までの爆発事件の規模を考えると、この距離では無事では済まない。

御坂はポケットからコインを取り出し、超電磁砲(レールガン)を発射しようと
したが、慌てた為にコインが手から落ちてしまった。

(タイミングが間に合わない!)

御坂はあきらめた。

だがその時、上条が3人の前へ出た。

そして右手を前へかざして・・・





ぬいぐるみが縮み始めたとき、一人だけ冷静な人物がいた。

西折信乃。彼は15歳にも関わらず、くぐってきた修羅場がかなりある。

そのため状況が困難なほど冷静になる性格になっていた。

爆発が作動する直前に信乃は対処の方法を・・・否、この後に起こる結果を
予想できていた。

(琴ちゃんなら爆弾を撃ち落とせる。重力子による爆弾だから問題ないはずだ。
 それに上条も前へ走り出している。琴ちゃんがミスしてもあいつの右手が
 あれば問題ない)

この結果から、信乃が行った行動は2人の手助けではなく自分自信の避難だった。

(この距離だとA・T(エア・トレック)があれば間に合うかもしれないが
 今日は持ってないからな・・・・それに、2人がいれば初春たちは大丈夫だ。
 後は俺自身も柱に隠れないと)

信乃がいる位置は初春たちと爆弾との方向が違い、上条が爆弾を無力化しても
その無力化範囲には信乃は入らない。

つまり4人が無事でも信乃が危険なことに変わりないのだ。

信乃が柱に隠れるために動き始めた。


しかし、次の瞬間。

「まだ下に降りませんの?」

後ろから声が聞こえた。

「な!?」

そこにいたのは常盤台の制服を着て、扇子で口元を覆った少女。

先程、信乃が言った3人の内の1人。信乃が向かった奥の方にいた少女だ。

初春たちに合流するよりも早く少女を見つけ、先に避難するように指示をしたが
少女はなぜか下りずに信乃の後を追ってきていた。

爆発の範囲に常盤台の少女も入っており、もちろん信乃が柱に連れていくのに
間に合うタイミングではない。

絶体絶命の状況。

「・・・・あれをやるしかないか」

それでも信乃は落ち着いていた。

焦りは少女に気付いた一瞬だけだった。

すぐに対処法を考え、導き出す。

「室内だから、うまくいくといいんだけど」

そう呟き、信乃は両手を前へ構えた。




つづく
 
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