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魔笛

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第一幕その十三


第一幕その十三

「素早い足取りとです」
「臨機応変の勇気と」
「敵の企みと憤怒から護り」
 そう話して行くのだった。そうして。
 魔笛の音を聴いたのだ。ここで二人は顔を見合わせる。
「あの音です」
「そうなのね」
「はい、あれです」
 まさにそれだというのだ。
「タミーノ様が来られています」
「じゃあそこに行って」
「はい、行きましょう」
 こう話してだった。二人はさらに急ぐ。しかしその後ろにモノスタトスとその仲間達が来たのだった。
「やい待て!」
「逃がさないぞ!」
「うわっ、もう来た」
「困ったわ」
 二人は彼等の方を振り向いて苦境の中にある顔になった。
「もう来たなんて」
「一体どうすれば」
「お仕置きだ」
 モノスタトスは高らかに言う。
「悪い奴にはお行儀を教えてやる」
「そんなことができるものか」
「何としてもここは」
「逃がすか!」
 言いながら捕まえようとしてきた。しかしであった。
「そうだ、ここで」
「どうするの?」
「これです」
 今度はあの鐘を出してきたのだ。それをパミーナに見せて話すのだ。
「これを使ってです」
「これを使ってなのね」
「はい、やってみれば大当たりだってあります」
 この辺りは適当な彼らしい言葉だった。
「さあ、それじゃあ美しいグロッケンシュピールよ」
「グロッケンシュピールを」
「御前の小鈴を鳴らすんだ。奴等の耳が歌いだす程」
 そうして鐘を鳴らすとだった。すると。
「!?この鐘の音は」
「この音は何と」
「何と素敵で綺麗なんだ」
「聴いたことなんて今までなかった」
 モノスタトスと仲間達は言いながら自然と踊りだしてしまった。
「何て綺麗な」
「心の正しい人が皆」
「この鐘を持っていたら」
 パパゲーノとパミーナは怒りと憎しみを忘れ踊りだした彼等を見て言うのだった。
「敵は苦もなく消え失せて」
「敵のない世を最上の調和のうちにもたらすだろう」
「手を取り合った友情だけがこの世の苦労を和らげる」
「いたわりを抜きにしてこの世に幸福は有り得ない」
 そう言い合っているとだった。ここで。
「ザラストロ様万歳!」
「ザラストロ様万歳!」
 何処からか誰かを讃える声がしてきた。
「あれっ、この声は」
「ザラストロ?」
「逃げよう」
「けれど何処に」
「おいらが鼠だったらどんなに隠れたがることだろう。蝸牛みたいに小さかったら家の中に隠れるところだ」
 言いながら何とか隠れる場所を探すが何処にもない。
「けれどないな」
「こうなったら正直に言いましょう」
 パミーナが言うのはこのことだった。
「例えそれが罪になっても」
「そうしろというんですね」
「嘘はいけないわ」
 だからだというのだった。
 
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