| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

幻想の運び屋外伝 天覇絶槍が幻想入り

作者:アーミー
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
< 前ページ 目次
 

第一部
出会い編
  第一話 天覇絶槍が幻想入り

ここは幻想郷。忘れ去られたものが最後に辿り着く楽園である。
その幻想郷の東の端に存在する神社がある。
その神社は“博麗神社”。楽園の素敵な巫女こと、博麗霊夢がいる神社である。




「さて、することもないし。掃除でもしようかしら?」
 ある日の朝、境内を掃除しようとした私は、見慣れない服を着た茶色い髪の青年が倒れているのを見つけた。
 青年は人里で見かける者とは違い、頭には鉢巻が巻かれ、上半身は赤い革の上着のみを羽織り、火炎模様の入ったズボンにまた赤い臑当て(すねあて)と足袋(たび)を帯びていた。
 人里でこんな人を見かけたことはないし、ましてやこんな姿の妖怪も見たことはない。
 でも…この人を人間って呼んでもいいのか疑問に思うくらいに放っている雰囲気が違う。
 一体この人は何者なのだろうか……。
「ホント、面倒くさいわ……」
 私は溜息を吐きながらも彼を母屋の中へと運んで行った。


 徐々に差し込んでくる光の眩しさに目を覚ました。最初に眼に入ってきたのはよく見る木の天井。ここは上田城……なのか?
「あ、やっと起きた」
 半身を起こした所で某から見て右手にある襖が開く。そこには袖のない変わった巫女服で、肩と腋を出して白の袖を別に括り付けている黒髪の女子が立っていた
「アンタ、人の家で何日寝ているのよ」
 あんた? 多分某の事であろう……。
「……巫女殿、某はどれ位寝ていたのでござるか?」
「五日よ。全く、死んでいるのかと思ったじゃない」
「い、五日!」
 俺はそんなに長い間眠り続けていたというのか……?
「まあそれはいいとして……アンタは一体何者?」
「? それはどういう意味で……?」
「言葉通りの意味よ。見た目は人間だけど妖怪じゃない……なんていうか“アンタを人間って言っちゃいけない”ような気がするのよ」
「某は間違いなく人ですぞ!」
「人間だってことは判っているわよ。でも、なんというか……ねぇ?」
 巫女殿の妖怪発言も気になるが俺を人と言ってはいけないという言葉はあんまりだ!
「ところでアンタ、名前はなんて言うの? いい加減アンタっていうのも失礼だと思うし」
「! 失礼をいたした。某、“真田幸村”と申す」
「“真田幸村”ね……!」
 俺の名前を告げた途端、巫女殿の顔がコロっと変わったが…いかがしたのでござるのか?
「あの……巫女殿?」
「ふぇ! あ、私の名前ね。私は霊夢、博麗霊夢よ。そういえばなんで、境内で倒れていたのよ?」
「境内? するとここは神社かお寺かなにかで?」
「ここは博麗神社よ。私はここで巫女をしているわ」
「そうでござったか……」
「で、なんで幸村はなんで倒れていたのよ?」
「確か……」
 政宗殿と勝負をしていた時…死んだはずの松永に襲撃されて……。
「某は……殺された筈……」
「え!」
 そして俺は、霊夢殿に己に降りかかった出来事を話した。霊夢殿は嫌がるそぶりを見せずに真剣に聞いてくれた。
「そう。つまりその松永っていうやつに殺された筈なのに、ここにいると…………先に言っておくけど、ここは死後の世界じゃないからね」
「……なら、ここは日ノ本のどこ辺りでござるか……?」
「そういえば言ってなかったわね。ここは“幻想郷”。幸村からしてみれば別の世界ね」

少女説明中&熱血漢理解中

「最後の楽園、でござるか……」
「そうよ。」
 どうやら俺は、己の想像すら付かぬ非常識なところに来てしまったようだ。
「とりあえず、暫く家に居なさいよ」
「え? ……な、何故にござるか?」
「この世界は幸村のいた世界じゃないし、行く宛もないのでしょ」
「まぁ……確かに」
 この世界、俺の知っている人はいない。霊夢殿が某に手を差し伸べてくれるのは嬉しいのだが……。
「真に……よいのか? 霊夢殿がその……人間じゃないと思われる人を置いても」
「だからよ、もし幸村がさっき松永って奴と戦った感じに、ここ幻想郷で同じく暴れないように監視しなくちゃいけないからね」
 まぁ俺の武は人を簡単に吹き飛ばすなど容易だからな。
「もし、某が暴れたとして霊夢殿は止められるでござるか?」
「舐めないで頂戴。こう見えて私は幻想郷のバランス、均衡を保つ役割を担っていて、異変や妖怪退治は私の仕事なのよ」
「……つまり、その手の専門家ということでござるな」
「そうよ」
「…………」
「……? どうしたのよ幸村」
「それってつまり、某を遠回しに妖怪かなんかの化け物と一緒にしていると言うことでござるか?」
「ハァぁ~~~~~~~~」
 なんで霊夢殿は溜息を吐くのだ?
「あのね……幸村の話を聞いたら誰でもアンタを化け物みたいに言うわよ! 槍の先から火を出すとか、気合で自分の百倍はある巨大兵器を槍二つで破壊するなんて。この世界も外から見れば非常識だけど、あんたも十分“非常識”よ!?」
「…………(汗)」
「……話が逸れたけど、取り敢えず、今幸村はここにいる! わかった?」
「う、うむ! 了解した……」
「それならいいわ。それじゃあ食事作って持ってくるから待ってなさいよ」
 そういう霊夢殿は少し微笑んでいた。
「承知したでござる……」
「あ、それと。ここに居させるけど、色々働いてもらうからその積りでね」
「ああ、居候させてもらう身ですからそれ位はしかとやりますぞ!」
「なら安心だわ。それじゃぁ待っていてね」
 俺がそう返事すると、霊夢殿は部屋から出て行った。
 さて、これからどうするべきか……
「……ってあれ? 首にかけてある六文銭がない!?」
 あの時の戦いで無くなったのか、それとも霊夢殿が外したのか?
 悩んでもしかたないか。今はこうして生きている……。
「お館様……某はまだ、生きていろということでございますか?」
 誰もいない部屋で一人、お館様のことを思い出していた。


 
 

 
後書き
ニコニコ動画で投稿している幻想の運び屋の外伝に当たります 
< 前ページ 目次
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧