魔法少女リリカルなのは平凡な日常を望む転生者 STS編
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第24話 零治VSエリオ
「立て、エリオ!!もう終わりか?」
「ま、まだまだ………」
地面にうつ伏せで倒れていたエリオはストラーダを杖がわりにして立ち上がった。
「恐ろしいわ零治君。エリオはスピードなら六課の中でも上位に入る程速いんや。せやけど………」
「格が違うね………」
はやてとフェイトは驚愕しながら話していた。
フラフラなエリオに対して零治は無傷………とは言えないがそれでもまともな攻撃を一度も受けていなかった。
「それに零治君、まだ魔法を使ってない」
なのはの言う通り、零治はまだ魔法を使っていない。刀こそ抜いたが、刀と鞘の攻撃だけでエリオを圧倒していた。
「それにあの動きってお兄ちゃんやお姉ちゃんに少し似ている様な………」
「レイの奴完全に見切ってるな………」
「私にはサッパリよ………」
「私も………ものすごい速さでエリオ君が零治君に突っ込んで行ったと思ったら吹っ飛ばされたり地面に倒れていたりして………」
アリサとすずかの戸惑いの言葉を受けて、星やライもうんうんと頷いた。
「星達も見えないの?」
「いいえ。私達はもっと速いライと模擬戦していますからあれくらいのスピードなら問題ないです。ただ………」
「ただ………?」
「レイのあの対応は凄すぎるよ………いくら僕より遅いからってあんなに易々とカウンターじみた攻撃は難しい筈だもん」
「これは前に言っていた事かもな」
「そうですね、きっとこの事を言っていたんですよ」
「うん絶対そうだよね!!」
「この事?一体何の事よ?」
「実はですね………」
アリサの質問を受け、星は語りだした………
「くうっ!?」
「もらった!!」
「!?いや、今!!!」
2人の木刀が交錯する。
しばらくすると恭也が木刀を下ろし零治の方を向いた。
「成長したね零治君」
「あ、ありがとうございます………」
そう呟いて零治は地面に倒れ伏した。
「まさか3年足らずでここまで成長し、しかも神速までもものにするとはね………」
「といっても魔力強化してですけどね………結局恭也さんみたく生身では無理です」
「それでも君の目的は達成出来たんだろ?」
「はい。どうせ3年じゃ生身で出来るようになるとは思っていませんでしたから………」
「魔力強化ってそんなに凄いものなのか………そうだ、せっかくだし魔力強化した状態で戦ってみよう!」
「本気ですか!?」
「ああ。別に魔法を軽んじている訳じゃない。こっちだって本気で行く」
そう言われ、渋っていた零治も覚悟を決めた。
「………分かりました、やりましょう」
「そうこなくっちゃな!」
嬉しそうに木刀を持って、道場の真ん中へ移動する恭也。
零治も木刀を拾い移動する。
「さあ始めよう」
「はい!!」
そう力強く返事をし、集中する。
(あれ………?)
魔力強化しない状態では全く歯が立たない恭也さんの本気。神速が出来るようになる前に一度戦ってみたが、何とか付いていくのに精一杯だった。
なのに………
(見える………!!)
相変わらずスピードには付いていけないが、相手の攻撃が見えていた。
「うん?これは………」
「止められた………」
恭也の斬撃を受け止める事ができ、思わず呟いた。
剣速の圧倒的な速さに、感に近い直感で防いでいた前とは違い、速くとも前みたいに直感に頼らなくても防げるようになっていた。
「神速の恩恵かな………」
「それは面白い。その恩恵が本物かどうか続きをやろう!!」
「はい!!」
その後、1時間に渡る激戦の末、2人が使う木刀が耐えきれず折れてしまった所で終了となった………
「神速の恩恵?」
「はい。言葉じゃ難しいと言ってましたが、要するにかなり目が良くなったと思ってくれればいいです。あの目で見極めているため、単純であればその分だけ見極められると言うことです」
「そうなると………」
「エリオはまだまだと言うことだ」
「がはっ!?」
周りからは苛めと思われてもおかしくない状態が続いている。
エリオはこれで5回目のダウン。
「動きが単調すぎる。これじゃあダメージを与えることすら無理だぞ?」
そんなエリオとは違い零治はかなり余裕がある。
まだ一度たりともダメージらしいダメージを受けていないのだ。
既にボロボロになっているのもあるが、エリオの攻撃は既に最初程のキレは無かった。
しかしエリオも諦めていない。
(思い出せ………バルトさんは自分の魔力を電気に変換し、それを自分に流し雷撃の様なスピードとパワーを得ていた………もう少し、もう少しでその感覚を………)
そう思いながらエリオはストラーダを杖代わりにして立ち上がる。もはや立っているのもやっとだ。
(エリオの奴………やっぱり何か試してるな。俺に一撃を入れるために何か見つけたのかもな………これも才能だな)
エリオの唯一絶対の長所。それは絶対的なセンス。
魔法でも槍術でも、一度見た技、魔法を真似出来るセンス。流石に自分の実力以上の事は出来無いみたいで、出来るようになるまでの時間もバラバラみたいだが。
………しかし飲み込むスピードは断然速い。
(だからこそ実戦に近い模擬戦形式で訓練をしてきた。そして六課で揉まれた事でエリオ自身の地力があがっている。それに手本になる魔導師は多い。後は物に出来るかだが………)
「見せてみろエリオ、お前はまだまだこんなものじゃないはずだ!!」
「はい!!はああああああああああ!!」
気合を入れて地面に着く足に力が入る。
エリオの周辺に雷が発生し、地面を揺らす。
「これは………!!」
その内エリオの周辺に発生した雷がエリオを包み込む、まるで一体になっているように見える。
「雷を体に………そして筋肉に電気を………これで………!!」
そう言ってストラーダを向けて地面を蹴ったエリオのスピードは先ほどとはまるで違うスピード。
「このスピードは!!!」
まるでバルトマンや、ライを相手にしているときの感覚。
「くっ!?」
鞘でエリオの突きを防いだ零治。
「レイがかろうじて防いだ!?」
「速い!!」
「私にはまるで見えないわ!!」
ライの驚きと共に、夜美が同じタイミングで答える。
アリサに関してはエリオの動きについて行けないみたいだ。
「まだまだ!!」
「くっ、裂空刃!!」
ここに来て零治が初めて魔法を使った。
高速の抜刀により発生した無数の刃はエリオの体から発生している雷によって打ち消され、エリオの勢いを止めることは出来ない。
「だがそれでいい」
裂空刃の斬撃が打ち消された事により、エリオの位置がある程度特定出来た、
「後は!!」
そう叫んですぐに刀を鞘へと戻す。
そして同タイミングでエリオが零治に向かって来た。
「さよならだ!!」
神速の抜刀。零治の抜刀術の中でも上位に入る神速の抜刀術『葬刃』が放たれた。
2人の攻撃が交錯する。
そして地面に着いたのは………
「あれ………?」
「「エリオ!!」」
「エリオ君!!」
ゆっくりとうつ伏せに倒れたエリオに駆け寄るフェイト、ルーテシア、キャロ。
エリオの手にはストラーダは無く、エリオの後方の地面に刺さっていた。
「駄目だった………」
「いや、良い一撃だった。俺も魔法を使わなくちゃいけないくらいにな」
「えへへ………!!うぐっ!?」
零治に誉められ笑顔だったエリオの顔が豹変する。
「エリオ、大丈夫!?」
すかさず近くに来たフェイトが慌てた声で話しかけた。
「か、体が………」
「いくら電気変換気質でもいきなり体に電気を流し、無理矢理筋肉を酷使すれば動けなる。それにそれまでで既に筋肉を酷使してたからな」
「零治、それを分かってて………何で止めなかったの!!」
「フェイト、あまりエリオを甘やかすな。エリオも分かっててやったんだ。負けたくない、諦めたくないってな」
「でも………!!」
飛び掛かりそうな勢いのフェイトにエリオが口を開いた。
「そうだよフェイトさん………これは僕の我侭なんだ。もっと強くなりたい、みんなを守れる力を付けたい。そしてそのきっかけを掴めた」
「だがあまりその戦い方はしない方が良い。今のエリオならただ体に負担をかけるだけだ。元々の地力がなさ過ぎる。もっと大きくなって筋肉を付けないとな」
「はい………そしていつかレイ兄にもきっと勝ってみせます」
「その意気だぞエリオ」
俺に撫でられ一瞬笑顔を見せた後気を失った。
「キャロ、ルー、悪いが回復を頼む。まあこの分じゃ夜はキツいかも知れないけど、参加できるように頼むな。加奈の奴ギリギリかもしれないしな」
「う、うん!」
「わ、分かった!」
零治に言われ、キャロとルーはエリオに回復魔法をかけ始める。
「フェイト、エリオも男なんだ。多少の無茶を許すもの良い女の条件だぞ?」
「………覚えとく」
そう言ってフェイトはエリオの方へ集中してしまった。
「………さて、それじゃあこの模擬戦も終わりで………」
「いや、次は俺とやってもらうぜ」
そう言われ、声の方を向くと、ヴォルフバイルを構えたバルトがいた………
「いやぁ、面白かった。まさか俺の十八番を真似されるとはな………将来楽しみだ」
「………誰ですか?」
「………まあそうか、こうやって会うのは初めてか。俺はバルト、バルト・ベルバインだ」
「俺は有栖零治です」
冷静に自己紹介をし合う2人だが、内心はかなり混乱していた。
(おい、やっぱりこの人は………あの言い方は黒の亡霊が俺だって……)
「ヴィヴィオが話しててよ………一度会って見たいと思ってたんだ。そしてなのはと友達と聞いたからもしやと思ったが………やはり思った通りかなりの実力だな!!」
「どうも………」
「そして悪いんだが、俺もテンション上がっちまってな………萎えてた気持ちの憂さ晴らしに付き合ってもらうぜ零治」
「憂さ晴らし?………くっ!?」
飛んで来た雷の槍を鞘で受け止めた零治。
「さあ油断してんなよ?本気で来いよ!!」
ヒートアップするバルトに零治は小さくため息を吐いた。
「さて、またもハッキリさせるチャンスが唐突にやって来た。やるぞラグナル」
『はい、マスター!!』
ラグナルの返事を聞いて、抜刀の構えで身構える。
「いいねえぇ、そうこなくっちゃな!!」
そう言いバルトはもうスピードで零治に向かって突貫する。
それと同時に零治もバルトに向かって地面を蹴った。
「えっ!?」
「待って攻撃するんじゃない!?」
スバルとギンガみたいに機動六課の皆が驚く中、バルトだけは違った。
「そう来ると思ってたよ!!」
分かっていたかの様に斧で零治の抜刀を防いだバルト。
「抜いたな?そのまま納刀させねえ!!」
零治に攻撃の隙を与えないほどの猛攻撃。
「くっ………」
「どうした、もう終わりか!!」
「……調子に乗るな!!」
一瞬の隙を突いて鞘でバルトのみぞおちを突いた零治。
一瞬動きが止まったバルトに回し蹴りを食らわせ距離を取った。
「ちっ、油断した………そんでまたその構えか………まるで刀の結界だな」
「来いよ、バルト・ベルバイン」
「へっ、呼ばれちゃ行くしかねえよな!!」
嬉しそうに先程と同じく斧を構えるバルト。
しかし先程とは違いその場から動かない。
「バルトー頑張れー!!」
「零治君、愛してるで~」
ヴィヴィオの応援やはやてのくだらない冗談が聞こえる中、2人の集中力はピークに達していた。
「行くぜ!!」
そう言って雷を溜めた斧を担いだまま零治の上空へ高速で飛んでいくバルト。
『マスター、真上を取られたら!!』
「分かってる!!」
逆に零治は地面を蹴り、先程までバルトのいる方へと駆けていった。
「ちっ、やはり思い通りにいかねえか!!逃がすか!!」
反転し、先ほど自分が居た地点に向かって溜めた魔力とは違い、先ほどと同じ雷の槍を放った。
『マスター!!』
「くっ、次の攻撃展開が速い!?」
振り向き抜刀すれば斧に溜めた魔力が放たれる。
このまま後ろ向きで居ても避けられるような攻撃でも無い。
「ならば!!」
そう叫んで、振り向く零治。
「レイ!?」
「どうする気ですか零治さん!?」
優理とリンスが心配する中、零治はその場から動こうとしない。
(集中………神速開放………)
視界がモノクロに代わり、世界がスローモーションに映る。
(動きを少なくすれば負担も減る………最低限の動きであの槍を避ける!!)
ゆっくり向かってくる雷の槍。
それを零治は体を逸らす程度の動きで全てを避けきった。
「ぐうぅ………!!」
『マスター!!』
「大丈夫だ、負担は全然………」
『違います、敵が!!』
「近距離から避けて見せろ!!ボルティックブレイカー!!」
バルトは零治の避けきったのを確認する前に、既に零治に向かって反転、加速。
そしてクロスレンジに差し掛かろうとしたときに前方に一回転し、勢いそのまま零治に向かって溜めた魔力を放った。
『マスター、転移間に合いません!!!」
「くっ、ちくしょう!!!」
砲撃魔法が放たれた後、その場に大きな砂塵が舞い上がった………
「レイ!!!!」
「ちょっと星、大丈夫なのあれ!?」
「だ、大丈夫です、レイならきっと!!!」
「だけど完全に不意をつかれてたよ!?この模擬戦止めた方が………」
「くそ、何故あんなにレイの行動が把握出来たのだ、やはり奴は………」
星や、ライが動揺している中、夜美は必死に動揺を抑え、今の戦いについて振り返っていた。
まるで零治の手の内を知っているかの様な攻撃。初めて会った筈なのに零治の上を行く戦法。
エリオとの戦いを見ているだけでは決して出来るとは思えない戦い。
「バルト・ベルバイン………奴は本当に………」
「バルトさん、何て無茶苦茶な攻撃するんや………」
「あれじゃ自分まで巻き込まれちゃう………」
「零治大丈夫かな………?」
「バルトさん本当に容赦無いんだから………!!」
はやて、看病を一旦終えたフェイト、ヴィヴィオの3人が心配している中、なのはだけバルトに対して怒りのボルテージが上がっていく。
エリオとの模擬戦に乱入しただけでも怒りが上がっていたのに、更に拍車を掛ける様に容赦無い攻撃になのはも流石に黙っていられなかった。
「バルトさん、オハナシなの………」
「フェイトお姉ちゃん、なのはお姉ちゃんが………」
「ああ、始まっちゃったね。みんな避難しないと………後結界も張って………」
「フェイトちゃん?どないしたん?」
「はやて、新人のみんなとアリサ達をペンションに戻して。この様子だと長くなりそうだから………」
「な、何が始まるん?」
「なのはのオハナシタイム」
「はは!!やっぱりそうでなくちゃな!!!」
嬉しそうに叫ぶバルトに零治は肩で息を吐きながら睨めつけた。
『マスター、大丈夫ですか?』
「くそっ、油断した………一度使って直ぐに使ったのは初めてだし、その影響か普通に使った時よりも頭が………!!」
頭を抑えるのを我慢するが、鼻血が流れ、腕で拭う。
「………しかしあのタイミングでは転移で逃げられねえと思っていたが、一体どうやって………」
バルトの呟きは小さく頭を痛みに手一杯な零治には聞こえなかったが、その呟きの後、桜色の砲撃がバルトの目の前を通過した。
「おっ!?ちっ、何するんだ、なのは………!!」
「楽しいオハナシタイムだよ………」
「今、俺は楽しんでるんだ後にしやがれ!!」
「うるさいの、調子乗りすぎ………頭冷やそっか」
そう言うとなのははアクセルシューターを360°バルトを囲むように逃げ道を塞いだ。
「ちっ、毎度同じ手は食わねえぞなのは!!」
自分の魔力を全体に放出するバルト。その魔力の衝撃波で全ての誘導弾が落とされる。
「なっ!?」
そんなバルトに再びピンクの砲撃魔法が襲った。
「ちぃ!!」
なのはの得意魔法と言うこともあり、なおかつ何度も受けているだけあってバルトはタイミングがかなり遅れていたにも関わらずギリギリで躱す事が出来た。
「私だっていつも同じだと思ったら大間違いですよ………次、ディバインバスターワイドシフト」
続いてディバインバスターを放つなのは、バルトは今度は不意をつかれる事も無く、ちゃんと対応していた。
「ワイドシフト!?クソっ、また面倒な砲撃を!!」
向かってきた砲撃魔法をいつも通り、斬り裂く訳じゃなく向かってくる砲撃魔法に更に距離を取る。
それでもディバインバスターはバルトに容赦なく向かっていく。
「枝分かれしない!?くそっはめられた!!」
「簡単に手の内を見せるわけ無いですよバルトさん?」
「このおおおおお!!!!」
強引に振るった一閃はディバインバスターを斬り裂いたものの、タイミングが遅れた影響もあり、裂かれた魔力がバルトを襲った。
「ぐうう………!!」
「さあ、まだまだ行きますよバルトさん」
「くそっ、この悪魔………いや、魔王め………!!いつまでもいい気になるんじゃねえぞ!!!」
バルトの方も怒りがヒートアップし、溢れんばかりの魔力がその怒りを露にしていた。
「オハナシはまだまだですよ………?」
「上等だ!!来い魔王!!!」
その後、残されたのは崩壊寸前の結界と仲良く背中合せに寝ている2人の姿だった………
「………ってな訳で、バルトさんとなのはちゃんは完全ダウンで今回の作戦不参加や」
現在夕方を過ぎ、ペンションにいる全員がリビングに集まり、今回の作戦会議をしていた。
しかしその前にはやてが話したのはなのはとバルトの件についてである。
「何しに来んだよあの2人………」
ヴィータの言葉に反論するものは誰もいない。
「バルトさんとなのはちゃんどっちも参加するってごねてるんやけど、アリサちゃんたちに押さえさせとるから、2人はいないもんだと思ってな。………それじゃあ今回のロストロギアの概要を詳しく聞きたいんやけど………ライちゃん、ぬらさんはまだなんか?」
「えっと………うん見てな………」
「ワシはここにいるぞ?」
いきなり聞き覚えの無い声が聞こえたと思い、全員一斉にキッチンに目を向けると黒髪の長髪で、袴を着た男性が冷蔵庫から出したお茶を飲んでいた。
「ほう………この会社の緑茶美味いな」
「ぬらさん、いきなり現れるのは勘弁してほしいんやけど………」
はやての呟きに皆が頷く。唯一例外が「あれが出来るようになればダーリンの家で………ムフフ………」と笑うウェンディと「凄ぇ………認識されないで人の家に入るって事はあの人がぬらりひょんだよな………」と感動しているエローシュであった。
「はっはっは!!済まん済まん!!しかし大人になったものだはやて嬢」
「あれ?嬢なんてつけてたかしら?」
「そう言った気の強そうなお前はアリサ嬢だったな。で、そっちでおしとやかに座っている美人はすずか嬢、金髪の美人はフェイト嬢だったな」
「正解です」
「よく覚えてましたね」
「まだ3、4年位しか経っていないからな、そう簡単に忘れんさ」
そう言いながらはやての隣に来るぬらさん。
「さて、先ずはワシの自己紹介をするかの。ワシはぬらりひょん、妖怪の総大将をやっておる」
「妖怪の………?」
「総大将………?」
ティアナとスバルが不思議そうな顔をしており、ギンガも言ってる意味がよく分かっていなかった。
「そうか、ミッドには妖怪って言葉も無いんやったな………まあ簡単に言えば『人ならざる者』ってところやな」
「人ならざる者………」
「警戒せんでええって3人共。ぬらさんは良い人やから」
はやてにそう言われて3人も警戒を解き、ぬらさんを見た。
「ふっ、それじゃあ今回の事件の説明をするとしよう。事の発端は1人の妖怪があるものを見つけた事から始まった。そ奴は頭が低い妖怪で直ぐに力の強い妖怪にペコペコしておった。しかしある時に奴は崇徳院と言う怨霊が封印された場所を見つけてしまったのだ」
「崇徳院?誰ですか?」
「私も知らんわ………」
ティアナに聞かれたはやてだったが、はやても分からなかった。
「崇徳院とがかつて昔、天皇になった事のある人物だったのだが、父親に好ましく思われず、戦争になり、負けて島流しにあった人物なのだが、その時の怨みを持ち続けたまま死に、怨霊となった者なのだ。恐らく日本最強の怨霊と言っても過言では無いな。現に500年前にワシの親父、先代総大将はこれと対峙し、組の半分の犠牲を出して何とか封印した。そしてその怨霊の封印が今回解かれてしまったのだ」
「それは大変な事態ですね………」
ギンガも事の重大さにいっそ真剣な顔になる。
逆にライトニングのキャロと真白は震えながら話を聞いていた。
「そして更に厄介な事にその封印を解いた奴が持っていた宝石が何かの力を持っていて、ワシや先代が倒した筈の妖怪、そして伝説になっている人物、生物を生み出す事が出来るようなのだ」
「伝説になっている人物?生物?」
「例えば、日本伝記にあるスサノオミコトが退治したヤマタノオロチは知っておるか?」
「はい!!首が多くある蛇ですね!!」
何故かテンションの高いエローシュが高々と手を上げてそう答えた。
「まああながち間違いでは無いが、そ奴の姿を見たと言っていた妖怪もいるのじゃ。他にもそのヤマタノオロチを退治したスサノオミコト、国を守護する筈の四神や、外国の英雄など色々おる」
「何やねんそのオールスター的な感じは………妖怪と関係あらへん者もおるやんか………」
「だが事態はかなり不味い状態だ。各地の妖怪達が危険視し、崇徳院を倒そうと躍起になり始めてる。このままだと人間界にも被害が出そうなのだ。唯一の救いが奴等は日の光を好まないらしく夜にしか行動しない。だがそれでもワシの組員ではこのペンション近くの山に押さえつけるのが精一杯なのだ」
「そんなに酷い状態なんですか?」
「ああ、既に三分の一が戦闘不能状態だ。これではもう崩れるのも時間の問題だ………」
ルーの質問に悔しそうに言うぬらさん。
「ワシ等の組だけでは手に負えそうに無いのだ。だからこそ力を貸して欲しい」
そう言ってぬらさんは六課の面々に深々と頭を下げた。
「い、良いですよ!頭を上げて下さい!!私達の仕事はロストロギアの回収なんですから当然ですよ!!」
「スバルの言う通りや。だからぬらさんはそんなに気にせんでええで」
「ありがとう、助かる」
少し安堵したのか息を吐いてそう言った。
「よしゃ、それじゃあ作戦やけど………今回は敵は無限に現れると考えた方がええな」
「無限に………ですか?」
「そや、ロストロギアの性能が分からん以上、最悪の事態を想定して動くべきや。だから先ず、私を含めた、ロングレンジで強力な魔法を使えるメンバーが遠距離から集中砲火する。敵の居場所は特定されているから楽チンや。その後はクロスレンジが得意なメンバーが一気に崇徳院が居る場所へ向かい、ロストロギアの奪取。崇徳院の対処はぬらさん達にお任せや。………魔力が効く相手なら相手してもええけど、怨霊となると妖怪と違うって事でええよねぬらさん?」
「ああ、そう解釈してもらっていい」
「だからこそ無理せんで欲しい、今回相手にするのはいつもと違う事を頭から離さんようにしてな。そしてそれは最初に砲火する私達も一緒や。この作戦は魔力が効くという前提の作戦やからそれが駄目なら撤退や。ロストロギア回収は次の日に回す。………ええか皆?」
そんなはやての説明にしっかり頷く六課メンバー。
「先ずロングレンジのメンバーやけど………私、後程来る予定の加奈ちゃん、キャロ、真白、そして有栖家から星ちゃん、夜美ちゃんや」
「あの人達も戦うんですね」
「当然やギンガ。腕は信用してええで、やった事は無いんやけど恐らく隊長達といい勝負や」
「ほ、本当ですか………」
そんなはやての言葉に苦笑いして答えるティアナ。
「そしてクロスレンジのメンバーやけど、これは2班に別れてもらう。先ずA班がスターズの3人とヴィータ、零治君、ライちゃん。B班がフェイトちゃん、大悟君、エリオ、エローシュ、ルーとガリュー、そしてぬらさんや 」
名前を言われた者達はそれぞれ頷く。
そんな中、有栖家で固まっていた場所で小さい手が上がった。
「どうしたんやリンスちゃん?」
「あの………私達はどうすれば良いんでしょうか?」
私達とは優理とリンスの2人である。
優理に関しては名前を呼ばれなかったことに腹を立てていた。
「リンスちゃんと優理ちゃんも戦えるん?零治君からは何も聞いておらんけど………」
「レイ………?」
零治を睨む優理だが、零治は零治で真面目な顔で優理に向かい合う。
「だめだ。未知数な敵相手にまだ未熟なお前達を戦わせられない」
「大丈夫、やらせて!」
「私達足引っ張りませんから!!」
リンスまで反論するとは思っていなかったので少し戸惑う零治。
「だけどな………」
「良いじゃないですか。優理はロングレンジで、リンスがクロスレンジの部隊で、私と夜美が優理を、レイとライがリンスを見てれば」
「しかしだな………」
そう呟きながら頭をかく零治。
下には良い答えを期待する優理とリンスの期待に満ちた顔で零治を見ているため、下を見れない。
(だけど訓練ばかりの2人にとってこれは良い機会になるか………)
「はやて、悪いがコイツらも連れてって良いか?良い経験になると思うんだ」
「まあええけど………大丈夫なん?」
「ああ。いざというときは自分達が何とかするからはやて達は気にしなくて良い」
「分かった。そんなら優理ちゃんはロングレンジの部隊、リンスちゃんはクロスレンジのA班で頼むな」
「「はい!!」」
「よしゃ!それじゃあ作戦開始は23時から。それまでにご飯を食べて英気を養う事にしよか」
はやての一言でミーティングが終わり、バーベキューの準備を始めるのだった………
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