ハイスクールD×D ~ 元聖女の幼なじみはエクソシスト ~
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プロローグ
前書き
どうも。元にじファンユーザーで今は主にアットノベルスに作品を投稿させていただいてますラドゥと申します。
この作品は元はにじファンに投稿していた作品で現在はアットノベルスとハ―メルンにも投稿している作品です。
暇つぶしにでもお楽しみください。
辺り一面に広がる花畑の中にある2つの影。
金色の髪を持つ和やかな雰囲気を持つ少女は、一生懸命に手を動かしてなにかを作っており、もう1人の銀色の髪を持つ少年は、そんな少女を微笑ましげに見ていた。
『できましたー!』
少女はいままで作っていたもの、花輪が完成したので勢いよく少年にむかって掲げてみせたが、
『…壊れたぞ』
『ああっ!?』
造りが甘かったのか、花輪はすぐにバラバラになってしまった。
『はうぅ~。また失敗してしまいました』
『くくく、本当に不器用だなアーシアは』
ーーーー それは未だに私が『魔女』とも、そして『聖女』とも呼ばれていなかった時のお話
『むぅー!笑うなんて酷いです!!』
少女、アーシア・アルジェントは頬を膨らませて少年を睨みつけるが、可愛らしい彼女がそのような真似をしてもまったく迫力がない。
『あはは、悪い悪い。どれ、貸してみろ』
そういうと、少年はアーシアの手にある壊れた花輪を器用に直し始める。
『ここをこうしてっと。ほらできた』
『わぁ~。凄いです!』
『ほら、頭だせ。かけてやるから』
ーーーー それは私の宝物。
『どうでしょう、似合いますか?』
アーシアは花輪を首にかけてもらい、ご満悦だ。
『ああ、似合ってるぞ。とても可愛らしい』
『そうですか!えへへ』
ーーーー 初恋の人との大切な思い出。
『これ大切にしますね、■■■■君!』
『…いや、そのくらいならすぐ作ってやるから、そこまでしなくても』
『いーえ、宝物にします!』
『そ、そうか…』
ーーーー あなたは、今の悪魔を見ても同じことをいってくれますか?
『ねぇ、■■■■君?』
『うん?』
『いってしまうんですね…』
『……………』
ーーーー あなたは今どうしていますか。
『教会の人がいうには、俺には才能があるらしい。ーーーーーー俺の両親を殺した、人ならざるものたちと戦える才能が』
『…でも危ないです。死んでしまうかもしれないんですよ!?』
『死なないさ』
『!?』
そういって少年はアーシアを抱きしめる。
『俺には帰る場所がある。待っててくれる人がいる。だから俺は頑張れる』
『■■■■君…』
『なぁ、約束してくれアーシア。俺は必ず生きて帰る。だからお前は俺の帰りを待っててくれるって』
『…わかりました。でも■■■■君も必ず無事に帰ってきてくださいね?』
『わかった』
ーーーー あなたは約束を破った私を許してくれますか?
『さぁって、そろそろ日もくれてきたし帰るぞ、アーシア』
そういって少年はアーシアに手を差しのべる。アーシアは笑顔でその手を掴んだ。
『そうですね、帰りましょう■■■■君』
ーーーー 許してくれなくてもいい。でもできたなら、
『…ねえ、■■■■君?』
『ん?どうした?』
『えっと、…な、なんでもないです!』
『?変なやつだな』
ーーーー もう一度だけ、あなたに会いたいです。
ーーーーーー■■■■君…
☆
☆
「アーシア!」
「ほぇ!?」
突然の声に私、『アーシア・アルジェント』はびくりと体を震わせる。
「もう、これから球技大会の打ち合わせなんだから寝ちゃだめでしょ!」
そういって、窘めるような口調で頬を膨らませているのは『リアス・グレモリー』先輩。私も所属している『オカルト研究部』の部長さんをしている方です。って、はわ!?
「わ、私寝てましたか!?」
「うふふ、ええぐっすりと」
そう笑いながらこちらを見ているのは『姫島朱乃』先輩。うぅ…寝ていたのは悪かったですけどそんなふうに微笑ましいものをみるような目で見ないでください…。
「まあまあ、部長。アーシアも悪気はなかったでしょうし」
そういって私のフォローをしてくれるのは『兵藤(ひょうどう)一誠(いっせい)』さん。この町に来てなにもわからない私に親切にしてくれて、堕天使から助け出してくれた私の恩人さんです!私にとても優しくしてくれて。…もしあの人がいなかったら、私はイッセーさんを好きになっていたかもしれませんね。
「しかし気持ちよさそうに寝ていたね」
「…………なにか良い夢でも見てたんですか?」
そういってこちらを見てくるのは、同じ学年の『木場(きば)祐斗(ゆうと)』さんと、一年年下の『塔城(とうじょう)子猫(こねこ)』さん。どちらも新参者の私によくしてくれるとても親切な人です。
「えっと、昔の夢を見てたんです」
「昔の?」
「ええ。私がまだ教会のシスターになる前の、孤児院にいた時の話なんですけど…」
「けど?」
一瞬話していいかどうか迷いましたが、皆さんの視線に負けてしまい話すことにします。
「その時の幼馴染の子が夢に出てきたんです」
「アーシアに幼馴染がいたの?」
「ええ。とても優しい大切な人です」
本当に元気にしているでしょうか、■■■■君…。私が思い出にふけっていると、
「…アーシアってその人のこと好きなの?」
「ぶっ!?」
な、な、なにをいってるんですか、部長さん!?
「な、なにをいきなりいいい!?」
「だってねえ。今みたいな笑顔を見せられちゃあ、そうも思うわよ」
「ですわねぇ」
2人がほほ笑みながら私のことを見ている。うぅ…恥ずかしいですぅ。
「あ、アーシアに思い人だと…!?そんな…Orz」
「…………無様」
「ぐはっ!?」
………あの2人はなにをやっているんでしょうか。イッセーさんはなにやらショックを受けているみたいですけど、どうしたんでしょう?
「アーシアさんは気にしなくてもいいと思うよ」
「は、はあ」
祐斗さんがそういうなら。
「それで?その人はどういう人なのですか?」
「あ、私も気になるわ」
リアス先輩と朱乃先輩は興味しんしんに■■■■君のことについて聞いてきます。
えっと、ですねえ。
「私って昔っからとろくって。孤児院の他の子供からいじめみたいなことを受けてたんです」
「いじめ!?」
「あ、といっても子供特有のいじわるみたいなものですけど」
イッセ―さんが声を荒げたので、私は安心させるようにいう。優しいのはいいのだけれど、イッセーさんは時々過保護な気がします。
「でも、その孤児院の子供たちのまとめ役のような立場にいたその子が私を護ってくれて。それ以来よく私のことを気にかけてくれたりして」
「それで好きになっちゃったと」
「…(こくん」
私はリアス先輩の問いにこくんと頷く。うう~、恥ずかしいです。
「それで、そのアーシアの思い人は今なにをやってるの?」
その質問に私は顔が暗くなるのを感じた。それにイッセ―さんは訝しげに私の顔を覗きこんでくる。
「どうかしたのか?」
「い、いえ!彼は、その…今はたぶん教会の退魔師(エクソシスト)になってると思います」
私のその言葉に部室の空気が変わるのが感じた。
「…どういうこと?」
「私たちがまだ子供だった頃、孤児院のお金が足りない時に教会の方が視察に来て、彼のことを勧誘したんです。『君には神の敵と闘う才能がある』といって。彼は孤児院へのお金の出資を条件にその勧誘にのりました」
「それって…」
「ええ、彼は…自らを教会に売ったんです。私たちのために」
私の言葉にオカルト研究部の皆が驚愕するのを感じた。でもそうでもしなくちゃ、私たちのような田舎の孤児院は生きていけませんでしたから。
「でも、彼はそんなことがなくてもいずれは悪魔払い(エクソシスト)になっていたかもしれません」
「え?なんでだ?」
「彼のご両親は、…悪魔に殺されたんです」
『!?』
皆が息をのむ。それもそうだろう。私の言葉が正しければ彼は私たちの敵ということになるのだから。
「彼はもう両親を殺した悪魔のことを怨んではないといっていましたが、どこかでそういう気持ちはあると思うんです」
「アーシア…」
「だ、大丈夫ですよ!彼も皆さんのようにいい人ならわかってくれます!」
私は気づかうような部長さんの声に元気よく答える。ちゃんと笑顔になってるか心配だが、それでも心配はかけたくないし。
「…………」
祐斗さんはなにか複雑そうな顔をしているようですが、どうしたんでしょうか?
「どうかしましたか、祐斗さん」
「い、いやなんでもないんだ」
「?そうですか」
私は部室の窓から広がる蒼い空を眺める。彼と別れた日もこのような青空だったと思いだす。
―――――― ■■■■君。あなたは今どこにいますか?
☆
☆
―――― とある空港
???サイド
「ここが、日本か」
俺は今、教会の命令を受けて部下二人ととある任務で、極東の島、『日本(ジャパン)』に来ている。
「確か、イリナの故郷だったな」
「ええ。私が教会に入る前に住んでいた町が今回の任務の場所になります」
俺の部下の1人の『紫藤(しどう)イリナ』から今回の任務についての書類を受け取る。どことなく嬉しそうだ。しかし、
「『リアス・グレモリー』。魔王の妹の縄張りに逃げ込むとは。また、面倒だな」
「どこに逃げ込もうと、我々は神の敵を打つだけの話。そうだろう、シオン」
そう意気込むのは、もう1人の部下である『ゼノヴィア』。この2人は両者とも貴重な聖剣使い。今回の任務に選ばれた教会の精鋭たちだ。…ただ信仰心が強すぎて、暴走しないかが不安だが。
「それはお前のいうとおりだがな。その前にリアス・グレモリーに接触しなくてはならない。いくら悪魔が教会の敵といえど、他人の縄張りで活動するのだから許可をとらなくては」
「面倒だな。その悪魔も叩き斬れればいいのに」
俺はゼノヴィアの言葉に苦笑する。
「確かに楽だが、その場合悪魔との戦争になる。教会はいまのところ悪魔たちとの戦争は望んでいないからな。―――――――それに今戦争が起きれば確実に一般人が巻き込まれる。お前もそれは本意ではないだろう?」
「わかってるよ。いってみただけだ」
そんなことはわかってるといわんばかりにゼノヴィアは肩を竦める。
「わかってるならいい。――――――――それじゃあ、とりあえず拠点を確保しないと。数日かかるかもしれんからな」
「あれ?でもお金はどうするんです?」
「…本部からちゃんと予算はもらってある」
本来なら部下であるこいつらにやらせてもいいんだが、こいつら金銭関係は疎いからなあ。募金でなんとかしようとするだろうし。
「それじゃあいこうか」
俺はとりあえずホテルでも探そうとするが、
「あ、ごめんなさい。その前にちょっと行きたいところがあるんだけど」
イリナのやつが少し申し訳なさそうにいってきた。
「?なにか買うものでもあるのか?」
「いえ、せっかく来たんだから、昔の知り合いに挨拶しておきたいと思って」
「ふむ、なるほど」
確かに今回の任務先の町に住んでたといってたからな。
「まあそのくらいならかまわんか。わかった。とりあえず俺が拠点を探しておくから、お前はゼノヴィアを連れて、その知り合いのところに行くといい」
これから行くの悪魔の本拠地の一つだからな。万が一のこともあるだろうし。しかし彼女は私の申し出を笑いながら断った。
「ああ、私なら大丈夫よ。襲われても帰り打ちにできるし」
腕で力こぶを作り、俺を安心させるような仕草を見せるイリナ。
しかし俺は首を横に振る。彼女の腕は知っているが、それとこれとは話が別だ。
「いくら穏健派といわれてるグレモリー家の領土といえども悪魔の領土には変わりない。用心はしておくべきだ。では頼むぞ、ゼノヴィア」
「了解したよ、シオン。ほら行くぞイリナ」
「は~い」
そうして彼女たちは去って行った。
さて、とりあえず拠点の確保といくか。
「適当にホテルでも借りればいいだろう」
そう決めた俺は空港の出口に歩みを進める。
ふと、空港から見える蒼い空を眺める。
(そういえば、彼女と別れた日もこんな青空だったな)
「お前は今どうしているんだ ―――――――――
――――――――― アーシア」
そう呟く少年。教会特務部隊小隊長、『シオン・ラザフォード』の髪は銀色に光り輝いていた。
後書き
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