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久遠の神話

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第四十五話 二度目の激突その五

 それでだ。構えたまま言うのだった。
「君も刀を出さなければだ」
「闘わないですか」
「戦意のない相手もだ」
 そうした相手も即ちだった。加藤の中では。
「俺には何の関係もない」
「じゃあ僕は若し」
「剣を捨てるなら好きにしろ」
 そしてその瞬間にだというのだ。
「俺はもう君には何の関心もなくなる」
「そのお考えはわかりました」
「理解したか」
「はい」
 上城はこう返す。
「よく」
「そういうことだ。俺は戦いたい」
「弱いものいじめとかはですね」
「しない、したこともない」
 それこそ一度もだというのだ。
「むしろそうしたことをしている輩はだ」
「お嫌いですか」
「見るのも嫌いだ」 
 また己の一面を話す加藤だった。
「心からな」
「そうですか。それは僕もです」
「俺は確かに武器を持たない相手とは戦わない」
 それは絶対だった。だがそれでもだというのだ。
「しかしだ、気に入らない奴はだ」
「どうするんですか?」
「いじめに限るがだ」
「痛めつけておられるんですか」
「そうしてきている」
 こう話す。そしてだった。
 上城に剣を向けながらさらに言った。
「君はどうだ」
「僕もですよ」
 いじめについては考えは一致していた。彼と加藤は。
「そうしたことはしてはいけないです」
「いい答えだな」
「碌なものじゃないですから」
「そうだな。実にな」
「止めています」
 そのいじめをだというのだ。
「そうした人を見つけると」
「それならいいがな。俺と君は一致する部分がある」
 いじめを嫌う、それはだというのだ。こうした観点では加藤もまた良心がある様に見えたが彼は上城にこうも言うのだった。
「しかし君は道徳から言っているが」
「貴方は違うんですか」
「俺は気に入らないからだ」
 いじめもいじめをする者もだというのだ。
「そうした輩は叩きのめすことにしている。つまりだ」
「つまり?」
「これも掃除だ」
 奇麗にする、それになるというのだ。
「ゴミを始末しているだけだ」
「ゴミをですか」
「人の中にもゴミはいる」 
 そしてそのゴミこそは。
「醜い行いをする奴はな」
「ゴミだから叩きのめしてですか」
「二度と立ち上がれない様にしてやっている」 
 その際何の容赦もしないのが加藤だ。こうした時でも相手のことを考えてしまう上城とはそこが違っていた。
「ゴミだからな」
「それ故にですか」
「何度も言うが俺の趣味は戦いと掃除だ」 
 あくまでこの二つだというのだ。
「それ故にだ」
「そうですか。わかりました」
「俺のことは語り終えた。それならだ」
「はい、それじゃあですね」
「はじめるか」
 加藤の剣に宿った。その魔が。 
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