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暗殺者の誇り

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第三章

「間違いないですね」
「ああ、獲物だ」
「議員ですね」
「それとです」
 いるのは彼だけではなかった、周りには多くのボディガードがいて。
 妻と思われる年齢の女性が彼の横にいる、そしてもう一人。
「綺麗な娘ですね」
「そうだな」 
 二十五位のだ、艶やかなまでに整った顔立ちの女もそこにいた。
「あれは娘か」
「議員の」
「そういえば娘がいると聞いた」
「はい、資料によれば」
 マルカーノが議員について話す。
「娘が二人いまして」
「そのうちの一人か」
「一人はハイスクールに通っています」
「そちらが妹だな」
「そうですね、あの娘が姉ですね」
「成程な、娘もスタッフに入れているか」
 自身の政治スタッフ、そしてやがては後継者か。そうした立場の娘だと考えていく。
「わかった、ではだ」
「今からですね」
「はじめる」
 ライフルのスコープに目をやる、十字の照準の中央に議員の姿が入った、入ったまさにその瞬間にだった。
 プリマッティは引き金を引いた、するとほぼその瞬間に議員は血飛沫をあげ倒れた。
 見たのはそこまでだった、即座にだった。
 プリマッティはマルカーノに顔を向けてこう彼に言った。
「逃げるぞ」
「はい、もうルートは確保しています」
「俺もだ」
 ライフルを素早くケースの中に収める、そしてそれを肩に担ぎ。
 部屋を出る、それから二人で下の騒ぎを他所に姿を消した。
 仕事を終えてファミリーのアジトに帰るとそこにはドンがいた、ドンは二人を己の部屋に呼び微笑んでこう話した。
「よくやった、議員は即死だったそうだ」
「そうですか」
「頭を撃たれてな」
「苦しまなかったですか」
「いつも通りな」
 ドンはプリマッティにこのことも話した。
「今は天国、いや地獄か」
「俺達と結託していたからですね」
「悪党と手を結んでいい思いをしたからな」
 それでだというのだ。
「地獄かもな」
「そうなりますか」
「とにかくあいつは死んだ、後はだ」
「もみ消しですか」
「もう警察には話した」
 マフィアと癒着している警官にだ、こうした警官はどの国にもいてその国の治安を腐らせてしまっている。
「すぐに議員の事務所に入って捜査と称してな」
「俺達のことをですか」
「首尾よくそうしてくれる」
 彼等にとって不都合な証拠を全て消してくれるというのだ。
「後は何の問題もない」
「ですか」
「そして俺達とあいつの関係を知っていたのはあいつだけだった」
 その殺した彼だけだというのだ。
「あいつの妻も娘達も、主なスタッフ達もな」
「誰も知らないですか」
「しかし念には念を入れるという言葉がある」
 ドンは懐から葉巻を出した、そしてそれの先を切って火をつけ己の席で美味そうに吸いながらプリマッティに問うた。
「若しかしたらな」
「スタッフなりが知っているかですか」
「あいつの娘かも知れない」 
 こう思わせぶりに言うのだった。
「その場合はどうする」
「それは確かでしょうか」
「そうかも知れない」
 やはり思わせぶりな笑顔で言う。
「今動くか、仕事をするか」
「仕事なら」
 その場合はだとだ、プリマッティはドンに表情を消して答えた。 
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