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【完結】剣製の魔法少女戦記

作者:炎の剣製
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第四章 空白期編
  第百十二話    『とある魔導魔術師の教導体験記』

 
前書き
halchan様からのリクエストで『一隊員の教導体験記とか是非』というのを題材に書いてみました。 

 
Side ???


俺の名前は“アルテア・スティング”。
俺には管理局ではまだ数が少ない魔術師という少し胡散臭げな力が宿っているという。
だか、そんないまいち信用に劣る能力より魔導師の方が断然良いに決まっている。
…とは言ってみても俺の魔導師ランクは低いし空戦適正もない。
魔導師訓練校ではまずまずの成績で卒業はしたもののそんなに活躍できそうにないしこれからどうしようかと思われたそんな時に一人の女性が俺のところにやってきた。

「あなたがスティング二等陸士かしら…?」
「そうですけど、あなたは、もしかして…」
「ええ。知っていると思うけど、航空戦技教導隊及び魔術事件対策課所属の魔導魔術師のシホ・E・S・高町です」

シホ・E・S・高町といえばあの『エース・オブ・エース』の高町なのは二等空尉と義理の姉妹で、『魔弾の射手』の二つ名で有名な人じゃないか。
そんな有名人が俺になんの用があるっていうんだろう…?
でも一応話は最後まで聞いてみることにする。
もしかしたら俺の力が開花するかもしれないという予感を感じたからかもしれないからだ。
それからシホ・E・S・高町二等空尉に色々と話を聞く。

「もう知っていると思うけどあなたには魔術師の才能があると診断されているわよね?」
「はい、まぁ…」
「それでものは相談なんだけど、私達魔術事件対策課に所属する気はないかな…?」
「それっていわゆるヘッドハンティングってやつですか?」
「まぁ、そんなところね。もちろん断ってもいいわ。そこのところはあなたの判断に任せる。
でも、もし今以上の力を身に付けたいと思ったなら私に連絡してみて。
その時にはあなたにとっておきを教えてあげるわ」

それで俺はシホ・E・S・高町二等空尉の連絡先を教えてもらい今日一日は家に帰って考えてみることにした。
そして家に帰宅後、色々と考え込む俺。
魔導師ランクが低い俺でも魔術師でならもしかしたら活躍できるかもしれない…そんな思いを抱く。
なにかこれといって魔力値が高いとか、変換資質があるとか、レアスキルがあるとか、そんな目立つ長所もない俺にも伸ばせる力が発見できるかもしれない。
色々と考えてみて翌日のこと、今の部署の仕事が終わった後に俺はシホ・E・S・高町二等空尉に連絡をとってみることにした。
連絡してみて、

『あ、スティング二等陸士? よく連絡を入れてくれたわね。それでどう…? 私達の対策課に来てみる気になってみたかしら?』
「あ、そ、そうですね。昨日帰ってから色々と考えてみたんですけど、その話、受けてみることにしました」
『そう、よかったわ。それじゃさっそく明日にでも魔術事件対策課の隊舎に来てもらっても構わないかしら?』
「わかりました。えっと、場所とか行く時間とかを教えてくれませんか?」
『わかったわ。今から場所を転送するわね』

それから場所と明日の時間を教えてもらい、その翌日に俺は魔術事件対策課の隊舎に来ているのだった。
受け付けではシホ・E・S・高町二等空尉が待ってくれていた。

「来たわね。スティング二等陸士」
「はい。シホ・E・S・高町二等空尉。
それでさっそくですが魔導師ランクが低い俺でも役立ちますかね…?」
「それはこれからのあなたの努力次第よ」

それでシホ・E・S・高町二等空尉は人懐っこい魅力ある笑みを浮かべる。
それに対して俺は思わず顔を赤くしてしまった。
しかもそれが気付かれてしまったのかそうでもないのか、

「…? スティング二等陸士、顔が赤いけどどうしたの?」
「い、いえ、なんでもありません!」
「そう…? それと私の事はシュバインオーグ二尉かシホさんかのどちらかで構わないから。固っ苦しいのも嫌でしょ?
私もアルテア君で呼ばせてもらうとするから」
「は、はい。シホさん…」
「ん。まだ固いけど十分ね」

それから一つの部屋に移動した俺達。
二人っきりというのも緊張するものである。

「さて、それじゃまずアルテア君の中に眠っている魔術回路を起こす作業をしましょうか」

そう言ってシホさんは色々と準備を始める。
なにやらキラキラしたビー玉サイズの球状の宝石?を取り出すシホさん。

「まずは魔術回路を自覚するとこから始めましょうか。まずはこれを飲んでみて」

飲む…? この、宝石もどきを…?

「えっと、これを飲むんですか?」
「えぇ、飲むの。そうすればすぐに何が起こるか実感できるわ。
魔術師みんなはほとんどが通ってきた道だから安心していいわよ」

それで俺は少し躊躇しながらもそれを一飲みで喉に飲み込む。
しばらくして、

「うっ!? なんだ、体の中が熱い…! まるで熱を出したみたいだ…」
「気をしっかりと持ってね? しばらくはその症状が続くから」
「は、はい…」

それでしばらく俺はその気の遠くなるような苦しみに耐えた。
シホさんはじっと見てくれているけど本当にこれは正しいのか?
そんな事を思っているときだった。
頭のなかになにかのイメージが沸いてきたのだった。

「あ、あのシホさん。さっきよりは楽になったんですけど、その代わりになにか頭に変なもののイメージが出てきたんですが…」
「…早いわね。それじゃ次はそのイメージを保ったままあなたの内にあるリンカーコアとは別の魔力を探してみて。すぐに見つかると思うわ」
「わ、わかりました…」

それで俺はイメージを保ったままで魔力を探してみた。
これかな…?
そんな事を感じ、自然と俺はイメージに魔力を流すさらなるイメージを重ねた。
瞬間、俺はリンカーコアとは別の体を循環する魔力路を自覚する。

「…はぁ、はぁ…これが魔術回路をイメージするって事ですか?」
「えぇ、そうよ。初めてにしては上々よ。それじゃ魔術回路も開いたことだしいつまでも魔力を垂れ流しておくのもなんだから、次はその魔術回路を閉じるイメージをしてみて」
「閉じる、ですか…?」
「そう。魔術回路は閉じている間は魔力の消費をカットしてくれて他人にも気づかれにくくなるのよ。
リンカーコアはそこら辺が曖昧だから結構便利よ。
さ、やってみて」
「は、はい…」

そしてまたイメージして閉じる動作をやってみる。
するとさっきまで感じていた魔力が感じなくなってしまった。
でも、また開けば感じるということはなんとなくわかった。

「うん。上出来ね。その感覚を覚えておいてね? そして自然とすぐに開けるように努力していこうか」
「わかりました」
「よし。それじゃ今日半日は魔術回路を開いた影響で熱が体を駆け巡っていると思うから、しばらく休んでいようか。
それで午後からは本格的に魔術について講座を開いて教えていくわ」
「はい、シホさん」


◆◇―――――――――◇◆


それから午後になりある程度熱も抜けてきた頃に俺は魔術の勉強室だと言われている教室に呼ばれた。
そこには俺以外にも数人の人がいてそれぞれメモ用の端末などを準備している。

「あら? あなた、新顔?」

そこに一人の女性が話し掛けてきた。
黄色い髪をポニーテールにしている少し勝ち気そうな女の子だ。

「あ、あぁ…。俺は今日からここに来る事になったアルテア・スティング二等陸士、十四歳だ」
「そう。それじゃ私の魔術師の後輩になるわけね。自己紹介をしておくわ。
私は“セラ・アスコット”二等陸士。十五歳。
シホさんに魔術の力を見込まれて魔術事件対策課にやってきた新米魔術師よ。ちなみに魔術属性は雷。
あなたは知らないだろうけど私が目指している魔術師はアリシア・T・ハラオウン三等陸尉よ」
「ハラオウンって…確かクロノ・ハラオウン提督と、そして『金色の閃光』で有名なフェイト・T・ハラオウン執務官の…」
「そう。そのフェイトさんの姉の人よ。魔術事件対策課では前線で出張っているエリートなのよ?」
「へぇー…」

そう感心していると魔術の授業が始まるのだろう、シホさんが教室に入ってきて、

「さて、それじゃ魔術授業を始めます。いつもはアリサ・バニングス二等陸尉が講義を開くけど今日は新人もいる事だし魔術師の基礎を教えていくわよ」

それから開かれる講義。
その内容を聞くたびにそんな事が、と感心する内容がいくつもあり、そのたびに端末にチェックを入れていく俺。
そんな事をしている時だった。

「…さて、それじゃ新人のアルテア君のために属性魔術を調べようと思うわ。属性によって教えてくれる先輩が変わるから最初が重要ね」

それでシホさんが俺に向かって歩いてくる。

「それじゃちょっと私の魔力を解析魔術で流すから受け入れるイメージをしてね?」
「わかりました」
「それじゃ、解析開始(トレース・オン)

するとなにか俺の魔力とは別の魔力が流れてくる感覚がした。

「ふむふむ…アルテア君の属性魔術は風ね」
「風、ですか…?」
「そう。風を操って空気による切断や天候操作、他にも色々と応用が効く力ね。
起源に関してはもう少しじっくりと調べてみないとわからないけどとりあえずアルテア君の上司は魔術事件対策課の隊の部隊長であるミゼ・フローリアン三等陸佐になるわ。
ミゼさんも得意魔術は空気による切断だから色々と風属性に関しては学べると思うわ。後で顔出ししておくといいわ」
「わかりました」
「それじゃ今日の講義はここまで。
私はこれから航空戦技教導隊の方に出向かないといけないからみんな、別々の属性、得意魔術に分かれて担当の上司の場所に向かうように。以上よ」
『わかりました』

それから教室にいた様々な人達が移動を開始している中、

「それじゃスティング君、私はこっちだからあなたも頑張りなさいよ?」

そう言ってセラは違う教室へと向かっていった。
俺も移動するか。


◆◇―――――――――◇◆


それから部隊長のミゼという人に会いにいく。
でも到着してみて驚いた。
なんかミゼ部隊長?ともう一人、えっと跳ねた赤い髪の女性がなにか知らないけど語り合っていてお互いに涙を流し合っていたのだ。

「わかる、わかるわ。カレンさん。あなたもパートナーを失った痛みがあるのよね」
「はい、ミゼ部隊長。なんか私達、分かり合えますね…」

どうにも入りずらそうな場所に立ち合ってしまったな、と思ったけどあちらもこっちに気づいたのか、

「あ、ごめんなさいね。あなたがシホさんが言っていた新人魔術師の子ね」
「は、はい。アルテア・スティング二等陸士です」
「そう。私がこの魔術事件対策課の部隊長をしているミゼ・フローリアンよ。よろしくね。
そして…」
「あ、私はカレン・ルージュ三等陸尉よ。よろしくね。カレンで結構よ」
「よろしくお願いします」
「しかし、シホさんもまた可愛い子を対策課に連れてきたものね」
「ミゼ部隊長。男の子に可愛いは失礼ですよ…?」
「ま、そうね。それじゃあなたも風属性の魔術師で間違いないのね?」
「はい」
「シホさんが言うには風属性の魔術師は希少だという話だからお互いに頑張っていきましょうね」
「はい、ミゼ部隊長」

それから希少というだけあり風属性は俺とミゼ部隊長だけみたいで個人レッスンになるみたいである。

「ところで、仕事とかはいいんですか…? 部隊長なのに…」
「部隊長だからといっていつも仕事をしているわけではないわ。それに、私自身まだまだ魔術を鍛えるのに熱心だからね」
「ミゼ部隊長は魔術の分野になるとほかの技能が霞むくらい能力を発揮しますからね」

カレンさんがそう言う。
どういうことか聞いてみるとミゼ部隊長は俺と同じ魔導師でもあるらしいがそっち方面はからっきしらしくシホさんに鍛えてもらって今の力を開花させたという話なのだ。

「俺以上に、才能がなくて苦しんでいたんですか…」
「あなたはまだまだマシよ? 私はどんなに学んでもあんまりできなかったんだから…出来て転移魔法が得意だったってくらいかしら?」
「はぁ…そうなんですか」

俺にとっては転移魔法もかなりの高位魔法だと思うのだが、そこのところはどうなのだろうか…。
怖い返事が聞けそうだから空気を読んで聞かないことにした。
そして始まる実技レッスン。
でも、属性魔術別に分けたといってもやることは対して変わらないらしい。
まずは基礎の魔術である強化や暗示系の地味な魔術の習得から開始するという。
でも、一口に言って強化といっても奥が深いという。

モノや物質を強化する硬度強化魔術。
身体や体の一部を強化する身体強化魔術。
炎や水、風などを強化する属性強化魔術。

…と、強化の種類を上げていけばキリがないという。
そして応用で強化しすぎると劣化現象を起こしてしまうという。
さらに強化するといっても意味合いは異なっていく。
例えばナイフを強化すれば切れ味が上がり、食材などに使えば栄養度が上がり、メイドに使えば萌え度が上がるという。
ナイフと食材は…まぁ、信じられるが、さすがにメイドはないと思うけどね…。
暗示に関してもどんな暗示をかけるのか、どんな方向性を示すのかと色々と複雑らしい。
すごい暗示使いの魔術師は人を死に至らしめるほどの暗示も可能だという。
ちなみにシホさんがよく使う暗示は犯罪者から情報を無理やり引きずり出すほどらしい。
やっぱりすごいなぁ…。


閑話休題


そしてレッスンは進んでいって何度かランプを割ってしまうということがあったがそれでも強化の魔術は教え方がうまいのか物質強化はできるようになってきた。
お次はやってきました風属性の特訓。

「それじゃ見本を見せるから見ていてね?」

そう言ってミゼ部隊長は拳に風を溜めていく。
ちなみに魔力が集中していくのが分かるから見えるのであって実際見ただけでは空気の変化などわかるわけがない。
そして手刀の構えをすると振ること一閃!
すると目に見える風の刃が出現し、目標物を真っ二つに切り裂いてしまった。

「これが単純に空気による切断よ。切断といってもやっぱり強度具合によって威力は変わっていくからやっぱり強化の魔術は疎かにしてはいけないということね。わかったかしら?」
「はい、勉強になります」
「ここで豆知識だけどよく風で体が切れるっていう話、聞かない?」
「あ、はい。ソニックブーム現象ですか?」
「そうね。あれもやろうと思えば人為的に風属性の魔術師はできてしまうから扱いには注意が必要ね。
魔導と違って魔術は非殺傷がないからある意味危険な術なのよ。すべての魔術は…」
「へぇー…そうなんですか」

…ん? でも、それだとよく管理局はそんな危険な力を採用したものだな。
そこのところを聞いてみると、

「ああ、その件ならもう解決済みなのよ。シホさん達が使う魔術式デバイスのおかげで魔術もデバイスを使えば非殺傷になるように調整ができるようになったのよ。
でも、やっぱり魔術は魔導と違って神秘の塊だからどうやって非殺傷になっているのかがまだ解析が不十分らしくて魔導師のように出力リミッターがかけられないのが今の現状。
だからね? うちに所属している魔術師は数が多いから魔術事件対策課は十分危険な集団と見られているのもひとつの顔でもあるの…」

それはそうだ。部隊によって出力リミッターがかけられてやっと今の管理局は安定した実力で拮抗している。
それなのに魔術事件対策課の魔術師はそのリミッターをかけられないから、ある意味どこまでも戦力を増やすことが可能になってくるのである。

「だからそのうち、魔術事件対策課も第二、第三と隊の規模を増やしていくかもという話が検討されているのよ」
「なるほど…。増えるなら増える前に分けてしまえばいいというわけですね」
「そうよ。まぁまだ将来的な話ではあるけどね。魔導師に比べればまだ圧倒的に魔術師は数が少ないから。
でも、シホさんの話だと第97管理外世界『地球』にはたくさん隠れ魔術師が潜んでいるという話。
だからそのうち地球も管理外という枠組みから逸脱して管理世界に変わるかもという話があるわ」
「そうなんですか…。大変な話ですね」
「最悪、説得するためにひとつの戦争が起きるかもね?」
「その冗談はさすがに笑えないんですけど…」
「あら、意外と冗談でもないのよ? 地球は次元世界で使用を禁止されている質量兵器を多く扱っている世界でもあるから意見が合わずに衝突すれば世界の一つくらいは滅ぶと私は予想しているわ」

本当に、笑えない…。

「ま、そんな事を今から言ってもしょうがないから今できることをやっていきましょう?」
「…はい」

ミゼ部隊長にそう言われて俺は修行に明け暮れるのだった。


◆◇―――――――――◇◆


そして次の日にシホさんが魔術事件対策課に勤めている魔術師を全員集めて合同の特殊教導を行うという。

「はい、それじゃ各種属性隊に分かれて練習を開始するわよ」
『はい!』

シホさんの教導は凄いの一言である。
まだ勤めて二日目の俺でも実力が少し上がったという感想が持てるのだから。
時には親身に、時には厳しく教えてくれてそれでも優しく監修してくれるのはありがたいと思う。
そしてあらかた半日魔術の練習を終えて次に行うのはシホさん達地球の武術である中国拳法という独自の動きを教えてくれる。
そんなに力を込めていないのに吹き飛ばされる人を見てすごいと思った。
まだシホさんレベルの動きは無理でも将来的には浸透勁と瞬動術は最低でも会得してもらいたいという。
これを覚えれば高位犯罪者にも有効だという話だから。
でも、まだやり始めたばかりの俺には厳しいものであるのは変わりない。
それで訓練終了後に少しへばっているとそこにセラさんがやってきて、

「スティング君、これくらいで参っていたらこれからをやっていけないわよ?」
「わ、分かってはいるんだけどね…」
「もう、男なのにだらしがないなぁ…。しょうがない、ここはシホさん謹製の塗り薬を出しますかね?」

そう言うとどこから取り出したのか分からないがセラさんがなにかの塗り薬を取り出していた。
シホさん謹製の塗り薬…?
なんか、危なそうな雰囲気が伝わってくるんだけど…。
その予想は正解で塗られた瞬間に体に響き渡るピリッとした痛みがッ!?
それで思わず悶絶していると、

「あら? やっぱり最初は慣れないものなのかな?」
「そ、そういうセラさんは慣れてるのか…?」
「うん。これって爽快感が半端じゃないんだよね。私のお気に入りなの♪」
「そ、そうなんだ…」
「ええ」

そこにシホさんがやってきて、

「アルテア君。ちょっと疲れているところ悪いんだけどいいかしら…?」
「はい? なんでしょうか」
「(あ、これはあれだね。よかったわね、スティング君。シホさんのカウンセリングを受けられるわよ)」
「(カウンセリング…?)」

セラさんが小声でそう話しかけてくる。

「(シホさんってメンタルにも精通していてよく入ってきたばかりの人には親身になって対応してくれるのよ)」
「(そうなんだ…)」
「(シホさんは弟子思いのいい人だからね~。それじゃ私はもう戻るから頑張ってね、スティング君)」

それでセラさんは先に帰っていった。
代わりにシホさんが近寄ってきてへばっている俺の隣に座り込み、

「もうセラと仲良くなったのね。絆を深めておくのはいいことだから私はいいと思うわよ」
「は、はい」
「それで昨日、今日とここで働いて特訓してみてどう? なにか実感わいた?」
「まだまだですね。でも、なんか楽しいです」
「そう。それじゃ一つ心得を教えておくわね。
魔術の力は裏返せば外道の力と言ってもいいわ。
だから魔術師による犯罪も最近増えてきているわけだしね。
それを止めるのが私達正しく魔術を使う魔術師の本分。
決して悪の力に使ってはいけない。これは魔導師も魔術師も共通の想い。
だからデバイスで非殺傷になるからといって油断していたら当たり所が悪ければ死ぬ可能性もあるんだから用心して魔術は使用してね?」

優しい笑みを浮かべながらシホさんはそう俺に教えてくれる。
そうだ。魔導も魔術も結局は非殺傷を外せば人殺しの道具になってしまうんだからちゃんとした使い方をしないといけないんだ。
俺も、そう自信を持って人のために使っているということを証明できる人間になろう。

「シホさん! これからも教導のほど、よろしくお願いします!」
「ええ。あなたも将来は立派な魔術師になれるように育ててあげるわ。覚悟しておきなさいね?」
「はい!」

これは、シホさんのおかげで新たな道を開けた俺ことアルテア・スティングの魔術事件対策課での日々の始まりの話である。


 
 

 
後書き
アルテアとセラは将来のパートナーの予定です。 
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