ヘタリア大帝国
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TURN70 ドクツ軍の崩壊その八
「ドクツ軍は確かに強いです」
「速さも攻撃力も桁違いだからな」
「しかしそれでも圧倒的な数があれば」
「押し切れるんだな」
「その通りです。兵器の質で多少劣っていても」
「そういうことだな。それじゃあな」
「はい、我々も数で攻めます」
パリを守るドクツ軍は二個艦隊だ。それに対してエイリス軍は三十個艦隊、最早数は話にならない。
圧倒的な数で押し彼等を倒していっていく。ドクツ軍はそのまま壊走していく。
パリは何なく解放されエイリス軍は入城を達成した。
だがここで彼等は奇妙なものを目にした、その奇妙なものはというと。
「おお、パリに戻って来たな」
「はい、遂にですね」
「我等は帰ってきました」
ルイ八十一世と貴族達がパリで満面の笑みを浮かべていた。そして。
ルイ八十一世は即座に即位してオフランス王となった。そのうえで勝利宣言をして再び平和路線を提唱しだしたのだ。
その彼を見てイギリスは微妙な顔で述べた。
「フランスは今枢軸国にいてな」
「シャルロット殿下もですね」
「ああ、しかもフランスの妹さんもな」
彼女もだった。つまり今のオフランスは国家不在なのだ。
だが彼等は有頂天で祖国に戻れたことを喜んでいた、しかも。
まだ戦争は続いているというのにこの平和宣言だ、イギリスは難しい顔でロレンスに言うのだった。
「何考えてるんだろうな」
「実は伊勢志摩が枢軸につくという話もあります」
「だったら伊勢志摩も引き込むなりしないといけないんだがな」
「ですがオフランスが平和宣言をしたとなると」
「伊勢志摩にも行けないな」
「はい、防衛ならともかく侵攻の為の軍の領内の通過は許してくれませんから」
「伊勢志摩はこっちからの侵攻を気にすることなく枢軸に入られるな」
イギリスはこのことを懸念していた。
「そしてその間にな」
「伊勢志摩はオフランスとの国境に防衛ラインを施設します」
「それで護りにしてくるな」
「オフランスにはせめて共に戦って欲しいですが」
「ったく、ここでああ言うなんてな」
「困ったことです」
オフランスの絶対的な平和主義はエイリスにとては難しいことだった。だが今はそれに構っている暇はなかった。彼等はドクツへの本格的な攻勢をはじめていた。
ナポリも陥落しモンゴメリーとイギリス妹は遂にローマに迫っていた。その彼等を見て。
ムッチリーニはその決断を己の官邸において今ユーリに告げた。
「もう皆に迷惑かけたくないから」
「降伏ですか」
「うん、そうしよう」
悲しいが決意した顔で己の前に立つユーリに告げたのだ。
「もうね」
「ですがそれですと」
「私が?」
「はい、エイリス軍の捕虜になり」
そしてだというのだ。
「最悪処刑されますが」
「それでもいいの」
俯いた顔でユーリに述べる。
「だって。これ以上戦っても皆が苦しむだけだから」
「降伏してですか」
「皆の安全を約束してもらおう」
「確かにエイリスはそうしたことは律儀に守ってくれますが」
「だから私のことはいいから」
ムッチリーニは己のことはいいとした。そして。
ユーリにもこう告げた。
「ユーリちゃんのこともお願いするから」
「いえ、私のことは」
「悪いのは全部私ってことにすればいいから」
それで他の皆が助かるからいいというのだ。
ユーリはムッチリーニのその顔を見た。そこには揺るがない決意があった。
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