ソードアート・オンライン ~白の剣士~
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託される思い
「ぷっ、あはは、やー、逃げた逃げた!」
今キリトとアスナは安全エリアに指定されている部屋の壁際にずるずるとへたりこんでいる。あれから二人はボス部屋から猛スピードで逃げてきて、ターゲットされたモンスターをお構いなしに通りすぎて行った。そして現在に至るのだが、
「そういえばシオンは?」
「俺がなんだって?キリト君?」
するとそこに青筋たてたシオンが遅れて登場した。
その顔を見たキリトとアスナは顔がサァーっと青くなった。
「まったく、いったい何のための偵察だったんだよ。見た瞬間逃げ出すなんで、“黒の剣士”と“閃光”の名が泣くぞ。何か言いたいことは?」
「「ごめんなさい・・・」」
「よろしい。さて、話を戻すが」
シオンは先程見てきた“The Gleameyes”の装備等を伝えた。
「武器は恐らく大型剣ひとつ。特殊攻撃は覚悟しといたほうがいいな」
「前衛に堅い人を集めてどんどんスイッチして行くしかないね」
「盾装備の奴が十人は欲しいな・・・」
「盾装備、ねぇ」
アスナは意味ありげな視線を二人に向けた。
「な、なんだよ」
「君たち、なにか隠してるでしょ」
「いきなり何を・・」
「その、根拠はなんだ?」
「だっておかしいもの。普通、片手剣の最大のメリットって盾を持てることじゃない。でもキリト君とシオン君が盾持ってるとこ見たことない。私の場合は細剣のスピードが落ちるからだし、スタイル優先で持たない人もいるけど、君たちの場合どっちでもないよね・・・あやしいなぁ」
『なるほど、大した根拠だな。だが・・・』
シオンはおどけた表情でアスナに言った。
「そうか?キリトはともかく、俺はたまに盾使ってるぞ。スキル上げのために」
「でも・・・」
「それより、スキルの詮索はマナー違反だぜ、キリトにだって知られたくないスキルの一つや二つあるだろ?」
「そう、だね。ごめんねキリト君、シオン君」
「そういや、今何時だ?俺の感覚が正しければそろそろ世の中でいうおやつの時間なんだが」
そう、言われてアスナが時計を確認すると、
「ほんとだ!もう、こんな時間!遅くなっちゃったけどお昼にしましようか」
「なにっ!て、手作りですか」
「他にないだろう。アスナ、俺は持参してるからキリトにやってくれ」
そう言ってシオンはウィンドウをいじると、一個のパンが出てきた。
「それで足りるの?」
「ああ、あまり入れすぎると動けなくなるからな。とはいってもここはゲームだから関係ないけど。まあ、気にせず食えよ」
「う、うん」
そう言ってアスナたちはサンドイッチ食べていると、エリアの入り口からプレイヤーの集団が入ってきた。シオンはその集団のリーダーに見覚えがあった。
「あれ?アイツは・・」
相手も気づいたらしく手を振りながら言った。
「おお、キリト、シオン!しばらくだな!」
「やっぱりクラインか、しばらくって言っても半月くらいだろ?」
「まだ生きてたか、クライン」
「相変わらず愛想のねえ野郎だ。おっ、なんだよ!ソロのお前が女連れってどういう・・・」
するとクラインはアスナを見た瞬間石のように固まった。
そして次の瞬間、姿勢をただして頭を下げると、
「こ、こんにちは!!く、クライン二十四歳独身!!グホォォォア!!!」
意味不明なことを言い出した刀使いにキリトとシオンが両サイドから脇腹をどついた。そのまま後ろへ吹っ飛んだ。そんなリーダーをお構いなしにパーティーメンバーは我先にと自己紹介を始めた。
キリトはアスナに向かって言った。
「ま、まあ、悪い連中じゃないから。リーダーの顔はともかく」
「そうだな、“顔”だな」
今度はクラインはキリトの足を思いきりふんずけた。シオンにもとばかりに踏みにきたがシオンはそれをするりとかわした。
そんなやり取りを見てアスナはついには吹き出してしまい笑い始めた。
「ど、どういうことだよキリト!?」
「こんにちは。しばらくこの人とパーティー組むので、よろしく」
「あれ?アスナそうだったの?」
「うん。昨日シオン君が帰った後にねそういう話になったの。シオン君もどう?」
「考えとく」
「キリト!てんめぇ!」
「おいクライン。それ以上わめくんなら・・・」
シオンはいつの間にか取り出していた短剣を首筋にあてると、満面の笑みでこう言った。
「その喉元をかっ切っちゃうぞ♪」
「お、おお・・・ごめんなさい」
「よろしい♪」
この時この場にいたものはこう思っただろう。
『シオン(君)の前ではあまりわめかないでおこう・・・』
そんなところへまた一つの集団が来た。今度はクラインたちよりも大人数のようだ。あのなりからして“軍”の連中だろうとシオンは悟った。先頭にいたリーダーような人物が後ろに振り向き、
「休めー!」
次の瞬間、軍のメンバーは崩れるように座り込んだ。皆かなり疲労しているようだ。
リーダーの男はそんな仲間たちに目もくれずシオンたちのところに近づいてきた。
「私はアインクラッド解放軍所属、コーバッツ中佐だ」
「キリト。ソロだ」
「同じくソロのシオンだ」
コーバッツは頷くと、
「君らはもうこの先も攻略しているのか?」
「・・・ああ。ボスの部屋の手前まではマッピングしてある」
「うむ。ではそのマップデータを提供して貰いたい」
「な、提供しろだと!?手前ェ、マッピングする苦労が解って言ってんのか!?」
そう、マッピングとは苦労が付き物であり、そのためマップデータは貴重な情報源であり高値で取引されるほどだ。それをタダで提供するということは相手にはメリットがあっても自分にはただ苦労して迷宮区をさまよっただけというなんとも理不尽なものしか残らないということ。
当然、普通の人なら断るに決まっている。
「我々は君ら一般プレーヤーの解放のために戦っている!諸君が協力するのは当然の義務である!」
「ちょっと、あなたねえ・・・」
「てめぇなぁ・・・」
今にも怒りが爆発しそうなアスナとクラインをキリトとシオンが制すると、
「どうせ街に戻ったら公開しようと思っていたデータだ、構わないさ」
「そうだな、持ってたところでしょーがないし」
「おいおい、そりゃあ人が好すぎるぜキリト、シオン!」
シオンはウィンドウを操作してコーバッツにマップデータを送った。
「協力感謝する」
コーバッツが立ち去ろうとしたとき、キリトが言った。
「ボスにちょっかい出す気ならやめといたほうがいいぜ」
「それは、私が判断する」
「さっきちょっとボス部屋を覗いてきたけど、生半可な人数でどうこうなる相手じゃないぜ。仲間も消耗してるみたいじゃないか」
「私の部下はこの程度で音を上げるような軟弱者ではない!貴様等さっさと立て!」
コーバッツの声にメンバーたちものろのろと立ち上がると再び前進しはじめた。やがてその姿はどんどん小さくなっていった。
「大丈夫なのかよあの連中・・・」
「・・・シオン、どう見える?」
シオンは目を閉じ、うーん、と唸ってから言った。
「妥当な判断とは言えないな。あのコーバッツって中佐、あの軍の状態で攻略する気だな。あの軍はたしか低層フロアを支配してるからおそらくここで攻略すれば軍の支持率が上がるだろうと考えてるんだろうな。だが、あの状態で行けば攻略できたとしても部隊の大半を失いかねないな」
「そんな・・・」
「かといってこのまま放っておくわけにはいかないよな~、キリト」
「お、俺!?」
キリトはすっとんきょうな声を上げた。シオンは呆れた顔で、
「お前な、さっきから行きたい行きたいみてーな顔してるぞ。分かりやすいんだよ、お前は。で、どうなんだ?行くのか行かずにこのまま街に戻るか?」
「・・・一応様子だけでも見に行くか・・・」
キリトがそう言うと、やれやれとシオンは首を振りながらいってキリトについていく。他のメンバーも相次いでついていった。
そんな後ろでクラインがアスナに何か言っていた。
「あー、そのぉ、アスナさん。ええっとですな・・・アイツ等の、キリトとシオンのこと、宜しく頼んます。キリトは口下手で、無愛想で、戦闘マニアのバカタレで、シオンはああいうちょっとSっぽいところやたまにドジるところもありますが・・・」
それを聞いたアスナは、クスッと笑い、答えた。
「はい。任されました」
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
あのあと不運にもリザードマンの集団に遭遇。現在、迎撃中である。安全エリアを出て三十分、一向に軍の連中に追い付く気配がない。
「ひょっとしてもうアイテムで帰っちまったんじゃねぇ?」
おどけたようにクラインが言う。
「そうだといいんだがな、その方がお利口だ」
すると遠くから嫌な予感を知らせるかのような音が聞こえてきた。
「うあああああああああ!!!」
聞こえてきたそれは、まぎれもなく悲鳴だった。
「くそっ!やな予感が当たっちまった!」
シオンたちは悲鳴を聞いたと同時に走り出していた。
「バカッ・・・!」
アスナは悲痛と言えるだろう叫びを上げると、さらに加速する。
扉の手前で急ブレーキをかけて止まると、キリトが叫んだ。
「おい!大丈夫か!」
しかし、状況はあきらかに大丈夫な状態ではなかった。
目の前に写る景色はとてつもなくひどいものだった。
この景色を見た者はこう思うだろう。
「なんだよ・・・これ・・・」
そして、シオンが見た目の前の景色についてこう言った。
「まるで・・・地獄絵図じゃねーかよ!」
後書き
イヤー大変でした。
シオン君のSっぷりが書けてよかったです!
あっ、そうだ!シオンの声優、どんな人がいいか、望があればジャンジャン感想と共にお送りくださーい!
ではでは(^-^)/
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