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ファイアーエムブレム~ユグドラル動乱時代に転生~

作者:脳貧
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エンディング2・再会

 ブリュンと言う()()を統括する者から解放された俺は、教えられた場所を目指していた。
 ……みんなもう天寿を全うしていると話を聞かされ心はどんより沈んでいた。
 そんな中、今の俺にとって唯一の慰めはアイツの存在くらいしか無いものだから、ひたすらそこを目指したのだ。
 荒野を抜け、ずっと歩き続けて辿り着いた禍々しい峰がその目的地で、辺りを捜索した。
 岩肌に刻まれた切り込みを見つけ覗きこむと、だらしなくしどけない姿を晒して眠っているアイツの姿があった。
 昔ならイラっとしたりムカついたりしたろうけど、今はなにもかも嬉しかった。
 自然に起きるのを待ちきれず、彼女を起こそうと何度も何度も大声で呼びかけた。
 まぬけな様子で飛び起きた彼女だが、似たような状況なら俺も同じだろうから笑えない。
 ……中からは開けられないみたいだったが、割と簡単に出入り口は開いた。




 久しぶりにあいつに会えて嬉しかったけど、でも、謝らなければいけないとも思っていた。

「また会えてよかった。 ……そして、いろいろとごめんよ」
「いろいろと言われてもわかりませんし、具体的にぷりーず」
「うん、まずは……こうして助けたっていうのかな? こんなに時間かかってごめん」
「ううん、それはおでんのオッサンにイジワルされただけですし。 ゆーくん悪くないよ」

 駄女神はにこにこして俺に体をすりよせてきてくれた。

「ありがとな。 でも、いろいろといろんな子と仲良くしすぎちゃって……」
「ふんふん」
「寂しかったり、むらむらしたりに負けちゃったりでほんとごめん」
「……正直ヤキモチ焼いちゃうこといっぱいだったけど、わたしちゃんがゆーくんにず~~~っと何年も何もしてあげられなかったから仕方無いですし。 それに……」
「それに?」

 彼女は俺の背に腕を回して体を預けてきた。
 伝わる体温の暖かさが心にまで染み入ってくる。

「いっつもいろんな子とえっちのチャンスはいっぱいあったのに、我慢しまくりなの見てましたし」
「でも……レイミアとはえっちどころか結婚までしちゃったし……」
「正直それは悔しいって気持ちもあるよ? でもね、ゆーくんのやさしさをほんと現すことだったとわたしちゃんは思いますし。それにレイミアの人とえっちしたかったら、もう、あの出来事のずっと前からいつだってあのひとバッチコイだったのに、誘われまくってもゆーくん我慢してたじゃん。……ずっと見てましたし、君のコトなにもかも」

 上目遣いに俺を見つめる彼女の仕草に心臓が早鐘を打ち続ける。
 ぎゅぅっと締め付けてこられ完全に参ってしまった。

「あの出来事が無かったらレイミアの人と結ばれるつもり無かったんじゃない?」
「……うん」
「あのとき、レイミアの人にあそこまで優しくしてあげられる人ってそんないないよ? 大事な彼女^^とか言っておいて、実際自分の大事なひとがあんな目に遭ったら別れるとか捨てちゃうとか、逃げちゃう男っていっぱいなんだよ? それにそういう状況でザ子供がデキちゃって生まれたとするじゃん? そしたら今度はそのことでずっとネチネチいじったりとかそんな奴ばかりなのに……ゆーくんは全然違う、逆だもん……きゅんきゅんしましたし」
「……お前ってほんとは慈愛の女神とかなの?」
「ふっふーw そう思ってもいい権利なら売ってあげますしーw」
「そういうとこは相変わらずだ、でも、かわいいって思ってしまったり」
「ほう、けいけんが生きたな」

 苦笑してから彼女を抱き寄せる腕に力を込め、十年越しくらいの口づけを交わした。
 なんの遠慮も無く舌を吸ったり、唇をついばむようにしてみたり……
 頬を上気させ、いろっぽい声を上げる彼女に興奮してしまう。
 でも、レイミアへの申し訳無い気持ちに囚われすぐに目が覚めてしまった。

「わたしちゃんには遠慮も容赦も無いですしー、でも、だいすき!」
「俺もだけど、ごめん……」
「ふふぅ。 でね、ゆーくんは『ごめん』なんて謝ることは無いんだよ。 強い気持ちは流れてくるもの……気持ちの整理が付いてからでいいですし」
「ありがと」
冥府(ココ)の雰囲気が良くないですし、移動するね」
「うん」
「あ! ちょwまっwww飛ぶ前に……」

 急にふざけた態度を改め、気品を感じる表情を作った彼女は俺の背に回した手をほどくと一歩下がる。
 恭しい動作で一礼した彼女に俺は違和感を感じた。

「……この度のあなた様のご活躍により、お望み通り元の暮らしにお戻りいただくこと叶います。 こちらにお呼び立てした時と寸分違わずということをお約束いたしますが、いかがしましょう?」
「質問してもいい?」
「なんなりと」
「呼んだ時と寸分違わずってことは、お前のことやみんなのこと、忘れたり無かったことになるの?」
「左様でございます……」

 みんなやこいつのことを忘れたくないって事もあるし……そう思いたくは無いけど記憶無いからってまた呼び出すという可能性があるよな……もし、こいつがしなくても似たような存在とかに。

「ちょと待ってくれ…………俺が戻りたいってことをお前は知っているのにわざわざ質問してくるってことはさ、とりあえず延期するってことはできるの? そして、そうしたらどうなるかな?」
「……再び冒険の旅に出ることになり、案内人(ディーシル)に与えるパワーを稼ぎに征かれることになります」
「う~~ん、じゃあ、そのパワーってのが沢山稼げたら何か特典はつくの? 記憶持ったまま帰れるとか……お前を連れていけるとか……」

 こくんと彼女は頷いた。
 だったら答えは決まってる。

「だったら、また冒険に行くよ。 あー、だからと言ってすぐに飛ばすなよ! 聞きたいことは山ほどあるし。 そうだ、今まで戦ってたユグドラル大陸の特定の時点に俺を送ったりはできる?」
「前半はオッケーですし。そして後半はごめんね。 それは出来ないの……少なくともわたしちゃんには無理ですし……」
「そんなすまなさそうな顔すんなってwらしくないぞw」
「うん!」


 

 俺と彼女は、例の殺風景どころか真っ白で何も無い空間へとまたやってきた。
 気を効かせたのか一面の緑の草原に風景が変わってるのは彼女が何か端末を操作したからだ。
 頭上には大きな木が作り上げた木陰があり、思わず大の字になって仰向けになると気持ちがいい。
 前回は途中で邪魔が入ってしまったから気を付けて聞いてみようかと質問を投げかけた。

「なぁ、また答えたら攫われたりとかそういうのなるなら答えなくていいんだけど」
「ふんふん」
「お前のこと、なんて呼んだらいいのかなって……」

 前回この質問に答えようとした彼女は大神(オーディン)に連れ去られ、先ほどの岩屋に閉じ込められた。
 今まで通りなんだっていいよーって答えた彼女だったが、糞女神だけはやめてーwと補足は忘れない。 
 当たり前だ、もう二度とそんな呼び方をするものか。




 その後彼女が言うには、もともと彼女も俺と同じように異世界を巡る戦士だったのだけど、元の暮らしに戻るよりも転移先で永住したいって思ったそうだ。
 その時彼女に憑いていた案内人(ディーシル)はそれでいいか一度だけ確認したのだが……
 深く考えもせずそれでいいと答えたら彼女の案内人(ディーシル)は解放され、自分がその後釜にされてしまったのだ。
 その際、自分の名前と記憶の一部を大神(オーディン)に奪われてしまったのだという……
 この仕組は戦士の側に知らせることは禁じられていて、"こんなトコ嫌だ! 元の暮らしに戻りたい!"って思うようなとこに飛ばされたりしたのは彼女なりの優しさなんだと思い、胸が熱くなった……

「知らなかったとはいえ、今まで酷いこと言ったり態度に出して……ほんとにごめん」
「全然悪くないですしーw でもそうやって悪いと思ったら率直に謝るとこだいすきですし……わたしちゃんだって説明不足過ぎだもん」
「そして、ほんとにそういうこと俺に教えちゃってよかったの? また大神(オーディン)に何かされない?」
「ダイジョブ! ゆーくんのおかげで今は女神(フレイヤ)さんの管轄に入っちゃったからw手出しはされませんし」
「じゃあ、名前はとられたままなの?」
「うん……」
「………あのさ、お前が嫌じゃ無くて、名前を取り返すまででいいんだけど、ん~」
「なになに?」
「いらなくなったって訳じゃ無いよ? 俺にとっても大事な名前だ。 だけど悠稀に戻ったからさ……ミュアハって名前をね、そっくりそのままじゃなくていいんだ、モジったりしてさ……もらってくれない?」
「……ゔぅぅ」

 凄い勢いで泣き出した彼女を抱きしめ、ほんとにびえぇぇぇんなんて聞こえる泣き方ってあるんだな……とか思っていた。
 鼻水や涙でぐしゃぐしゃになった彼女の頬なり目の下なりを拭って唇を塞いだけど、新たに流れてきたのが混じって少し塩味が効いていた。




「ミュウだとネコとかモンスターぽいですし」
「ん~、ミアは? かわいいじゃん」
「……わるくないけど………レイミアの人の替わりみたいで妬けちゃう」
「そんなつもりは無かった! ごめん!」
「ううん、わたしちゃんが気にしすぎだよね。 ねー、みははダメ?」
「ミハ、みは、みは、いいね!」
「わたしちゃんはミハ、コンゴトモヨロシク………」

 思わず噴き出した俺と……ミハはしばらく笑いころげていた。







「他に質問なーい?」
「そうだなぁ、女神(フレイヤ)さんはほんとに契約果たしてくれたか確認したいかな……」
「レイミアの人の腕を直してほぴい、レイミアの人がザ子供宿してたらノヴァの聖痕を誕生と同時に発現させてほぴい……これはゆーくんの遺伝子伝わってなかったらどうしてたの?」
「そんときは同じ色の痣が出るようにしてくれって頼んだんだ」
「ふーん……最後の願いはわたしちゃんを助け出してほぴいだから、これはもう叶ってるね。 簡単にあの出口開いたのもそーいうことでしたし」
「なるほどね」
「でもー、これ3つ使っちゃったけどね」

 ミハはよくやるドヤ顔決め込んで得意そうな様子を見せつける。
 昔ならブチ切れたりイラついたりなんだけど、微笑ましく思う俺は……

女神(フレイヤ)さんと同じ能力ぷりーずってお願いしたら1個で済んだよ?」
「……お前とレイミアのことで頭いっぱいだったんだもん………」
「そうやってすぐ自分のことより相手のことに気持ちが行っちゃうんだもんバカデスネーw でも、そういとこ好きですし……そいでは記録映像を出すから、一緒に見よ?」
「ありがと……」


 ……俺は自分が関われなくなってからのユグドラルでのみんなの姿を見せてもらい、その行く末をしっかりと心に刻んだ。
 そして新たな世界へと送り出された。
 いつか必ず、今の想いを遂げようと誓いながら。


 
 

 
後書き
みはちゃんみたいなお願いしたら女神ぱわーを1回使ったらもう使えなくなりますし。 
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