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【完結】剣製の魔法少女戦記

作者:炎の剣製
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第四章 空白期編
  第百六話      『魔弾の射手』

 
前書き
本日は試験的に平日でも十時にちょっとした事情で更新します。
反応がよろしかったらこのまますべてを十時に変更し更新しますのでご了承ください。

さて、今回はシホの二つ名に関してと時期的に中学二年生の時かなと予想しましてある人物を出させていただきました。
それではどうぞー。 

 


時空管理局の中では『エース・オブ・エース』といえば高町なのはが有名である。
過去の負傷のブランクから立ち直り今も空を飛ぶ姿は空戦魔導師を目指すものにとって憧れの的であるからである。
なら『魔弾の射手』は誰かと聞かれたらコアなファン達はこう答える。
“シホ・E・S・高町”と…。
いつの間にかこんな異名で呼ばれているようになったシホ。
なぜこう呼ばれるようになったのかと言うと幾度もの事件で主に使用するデバイスの形態が弓だからが一番の要因かもしれないがそれだけだったらそんな異名はつかないだろう。
ではなぜついたのか…?
答えは簡単だ。
彼女の放つ矢は種類が豊富であるからである。
まず風属性の幻影込みの矢、イリュージョン・アローから始まり、
どこまでも標的を追跡するフルンティング。
高速で突っ切るカラド・ボルク。
放った瞬間に九つの魔力矢に分裂して威力も落とさず標的を襲うナインライブズ。
…数々の種類の豊富な矢を使いこなしているのが要因である。
しかしこれをしてもまだ魔弾とは呼ばれない。
なら、後はなにか…?
追求していくとたどり着く答えがその視力のあまりの異常精度にある。
4キロメートル先まで見通せて射程圏内である千里眼、鷹の目とも…。
それゆえに“魔弾の射手”という異名、二つ名で呼ばれるようになったなによりの証拠である。
それなら士郎も呼ばれてもいいだろうという話になるのだがやはり年齢(実年齢はともかくとして)が若いシホの方が名は売れるだろうという話である。
今回はそんなシホが数々の事件でその弓で活躍する記録の一部抜粋のお話である。


◆◇―――――――――◇◆


シホは現在魔術事件対策課でデスクワーク作業をおこなっていた。
魔術師は基本アナログがデフォである。
それでシホおよび士郎もその例に洩れずこの世界に来る前はそんな作業はたいしてしたことがなかったので苦手な部類だった。
だがそれでは仕事ができないと言い、なのは達に隠れてパソコンの練習を重ねた。
シホと士郎は昔から努力タイプの人である。
人よりできないのであればその倍以上の努力を重ねて習得していく人間である。
あらゆる武術や剣術も二流の限界を極めたほどだからそれでどういう事かなどがたやすくわかるだろう。
とにかくシホは持ち前の努力がみのりデスクワーク作業はお手のもので、某有線式さとりから教えてもらったエーテライトと分割思考、さらにこの世界の並列処理(マルチタスク)も会得してそれらを全部併用して行なうためにやはり人一人分突き抜けたスピードを叩きだせる。
ブラインドタッチも軽くやってのけるので他の人が見たらやっぱりすごいと思われるらしい。
そんなシホのところに一人の女性がやってくる。
その女性はミゼであった。

「…シホさん、少しいいかしら?」
「はい。なんでしょうミゼさん?」
「ちょっと地上の武装隊から教導隊として一日短期教導をやってほしいと依頼がシホさん宛てに来ているのよ。
それで悪いんだけど向かってもらっていいかしら。
もし魔術事件が発生したら士郎さんとカレンさん達やあなたの自慢の魔術の教え子達に向かってもらうから安心していいわ」
「わかりました。それでは向かわせてもらいます」

二つ返事でシホは承諾してとある武装隊に向かうことになった。
そこに将来一緒の課に配属になるだろう一人の男がいてシホは出会うことになる。


◆◇―――――――――◇◆


Side シホ・E・S・高町


私はミゼさんに言われた武装隊の隊舎に向かった。
そういえばこの部隊には確かシグナムがいたなぁ…と思い出したり。
もしかしたらシグナムが私の名前を出したのかもしれないわね。
そしてそこにはかなりの腕の狙撃手がいるという話である。
一度会ってみたいかも。
そんな事を考えながら隊舎の中に入り受け付けをした後、部隊の人達が集まっているロビーに向かうと途中で待ってくれていたのかさっそくシグナムと遭遇した。

「来たか、シュバインオーグ」
「えぇ。今日一日よろしくねシグナム」
「あぁ。隊舎の中を案内しよう」
「お願いね」

それでシグナムに案内されながら色々と話を交わす。

「シュバインオーグ、魔術事件対策課で士郎はしっかりと仕事をしているか?」
「えぇ。アインスとツルギ君のために一生懸命働いているみたいよ」
「そうか。それならなによりだな」

そこに一人の背が高い男性が走ってくる。

「シグナムの姐さん、シホ・E・S・高町二等空尉は来ていますか?」
「あぁ、“ヴァイス”。ちょうど今一緒にいるぞ。おまえも顔は知っているだろう?」
「えぇ。同じ狙撃手としては憧れですからね。
初めまして、自分は“ヴァイス・グランセニック”一等陸士です」
「シホ・E・S・高町二等空尉です。気軽に名前で呼んで結構ですから。後、堅苦しいのもアレなんで気軽にいきましょう」
「そうっすか? でしたらそうさせていただきますよ、シホさん」
「えぇ、ヴァイスさん。それよりもしかしてヴァイスさんが噂の凄腕のスナイパーなの…?」
「あぁ。ヴァイスはウチの隊の狙撃手だ。かなりの精度をつけられるぞ」
「ははっ。恥ずかしいっすね…」

ヴァイスさんはそれで照れていた。
でもシグナムは持ち上げといて落とすというのを忘れないで実践しているようで、

「…まぁ、シュバインオーグと士郎の腕に比べれば断然劣るがな」
「手厳しいっすね…」
「調子付かれては気を緩めるからな。私はそこは厳しくいくと決めている」
「そうっすか。それよりシホさん、今日は一日よろしくっす」
「わかったわ」

それから私は短期教導を行なっていった。
でもその最中で事件の報告が入ってくる。
ミッドチルダの市街地で立てこもり事件が発生して人質を何人もとられているという話である。
それでシグナム達と私は現場へと向かうのだった。


………………
……………
…………


現場に到着すると先に到着していた部隊が犯人と何度も話をしていて口論となり膠着状態に陥っているという。
それで私も遠目で犯人を確認すると一人の少女が犯人によって捕らえられているようだった。

「なっ!? ラグナ!」

そこにヴァイスさんが突然声をあげる。

「ヴァイスさん、知り合い…?」
「俺の、妹です…。でもよりによってなんで…」

それでヴァイスさんはどこか悔しそうな顔をする。

「…今日はショッピングに行くって言ってたからタイミング悪く捕まったんだと思います」
「そうなの…」

そんな話をしていると作戦が伝わってくる。
犯人は一人だけだからアウトレンジからの魔力ダメージによる狙撃で犯人を昏睡させるというものだった。
それで役目は部隊一の狙撃の腕を持つヴァイスさんが選ばれた。
でも見ているかぎりヴァイスさんは妹さんを助けようと躍起に駆られている。
だから冷静な判断ができていないと思う。
その証拠に、

「落ち着け、落ち着くんだ俺…犯人をただいつも通りに撃ち抜くだけじゃないか…? 俺とお前でならできるはずだよな? ストームレイダー」
《あなたならできますよ。自信を持ってください》

デバイスのストームレイダーに何度も話し掛けて気持ちを落ち着かせている。
そこにシグナムが話し掛けてきて、

「今のヴァイスはかなり不安だ。シュバインオーグ、もしもの時は頼めるか…?」
「えぇ、任せて。私も少し離れた地点から狙ってみるわ」
「よろしく頼む」

それで私は構えているヴァイスさんよりさらに後方に下がって弓を構える。
視力を強化して見てみればヴァイスさんの手は少し震えているように見える。
そのたびにストームレイダーがヴァイスさんを落ち着かせているというある意味悪循環。
妹さんのために集中力も欠いていればああもなってしまうわね。
それから少ししてヴァイスさんは魔力銃から魔力弾を放つ。
でも私は瞬時にそれが妹さんの目に直撃するビジョンを見た。
そこからは行動は早かった。
私は即座に魔力矢を放ちいまだ直進している魔力弾に追尾し当たる前に弾く。

「なっ!? いったいどこから…!」

ヴァイスさんは驚きの声をあげているが私はすぐに再度イリュージョン・アローを放ち犯人の脳天に直撃させる。
それによって犯人は昏睡し妹さんは解放される。

「ふぅ…なんとかなったわね」

そう言って一息をつく。
それから事件は解決し私もシグナム達のところに戻る。

「戻ったか、シュバインオーグ。さすがだな。私ではあそこまで正確には移動し続けている魔力弾を撃ち抜くことなどできんからな」
「ま、なんとかなってよかったわ。あのままだとヴァイスさんの妹さんの目に直撃コースだったから」
「私もそれは分かっていたが…それがわかってから即座に構えて放ち追尾させる腕とは…さすが魔弾の射手と異名で呼ばれるほどの腕前だな」
「シグナムまでからかわないでよ。私としては恐れ多い二つ名なんだから…」
「まぁそう言うな。その腕のおかげでヴァイスの妹も傷なく無事に帰って来れたのだからな」

それで見る。
シグナムと見た先ではヴァイスさんと妹さんが抱きしめ合っている光景が目に入った。
それからしばらくしてヴァイスさんがこちらに歩いてきて、

「シホさん…俺のミスショットを射抜いてくれて感謝します。もしあれが当たっていたら今頃俺はラグナに一生消えない傷を残して後悔しているところでした。ほら、ラグナも…」
「…えっと、シホさん。助けてくれてありがとうございます」
「気にしないでヴァイスさん。妹さんも無事に助かったんだからよかったじゃない?」
「そうっすね…。でも今回の件で俺は自分の腕がまだ未熟だということを心底思い知りました。ですから今日限りで当分の間は狙撃手の道を一度封印しようと思います」
「お兄ちゃんッ!? いいの!?」

妹さんがそう叫ぶ。

「ああ、ラグナ。でも自粛の意味もあるからまたそのうち復帰はする予定だ。それに今俺はヘリパイロットの道も目指している。だからそっちに今は集中したいんだ」
「ヴァイス、それでいいんだな…?」
「うっす。シグナムの姐さん」
「ではしばらくしたら復活して今以上に腕の上がったお前をいずれ見せてくれ」
「了解っす!」
「でも私から見てもヴァイスさんの腕はかなりのものだと思うのにもったいないですね…」
「言わないでください、シホさん。もう決めたことですから」
「そう…。でも復活する時は教えてね? 私も色々と腕の上達の手助けをするから」
「うっす!」
「さて、それでは帰って事件解決のパーティーでもするとしようか。シュバインオーグ、今日は一日まだ時間はあるか?」
「あるけど…なに? 料理を作ってとかいう提案?」
「そうだ。わかっているじゃないか」

やっぱりね。シグナムも私の料理は美味しそうに食べてくれるから腕の振るいようがあるしね。

「え? シホさんの料理っすか?」
「ああ、ヴァイス。シュバインオーグの料理の腕は主はやてを超えているからな。期待したほうがいい」
「それは楽しみですね。ラグナも参加させてもらっていいですか?」
「構わないわ。せっかくだから盛大に行いましょう」

それから私達は隊舎に戻ると調理場を借りて久しぶりに大人数用の料理を振舞った。
それを食べてヴァイスさんが、

「ッ!? シホさん、これすごい美味しいっすね!」
「うん。とっても美味しいね。お兄ちゃん」
「さすがだな。いつもながら素晴らしい腕だ」

ヴァイスさんとラグナちゃんとシグナムからそんな言葉をもらう。
嬉しいものね。

「それとシホさん。その“ヴァイスさん”ですけどなんか聞いていてどうにも呼びにくそうですからヴァイスのままでいいっすよ…?」
「え? いいの?」
「ええ。俺は気にしませんから」
「そう? なら私もヴァイスって呼ばせてもらおうかしらね。そっちの方が気を使わなくていいから」
「こちらこそ。これからもよろしくお願いします、シホさん」
「ええ、ヴァイス」

そして私達は友人関係になったのだった。


◆◇―――――――――◇◆


…本来の歴史であればヴァイスはラグナの左目をミスショットで傷つけてしまい後悔して銃をろくに握れなくなってしまうハズだった。

だがシホの存在がヴァイスを知らず知らずのうちに救っていた。

この世界の彼も結局は一度狙撃手としては引き下がったが、それでも普通に構えられるしトラウマもないからやろうと思えばすぐに部隊に復帰できるだろう。

これからもシホ達のなにかのきっかけ、行動があるとすれば歴史は少しずつ変わっていくだろう。

すでにシホ達の介入という布石によって本来の歴史はすでに意味をなさず辿っていないのだから。

そしてこれからも本来の歴史を変え続けるのだろう。

それでも世界は黙認する。

それもひとつの世界の在り方だというのだから…。


 
 

 
後書き
原作キャラであるヴァイスを救済しました。
結局ヘリパイロットになってしまいましたがそれでも原作のようにトラウマもなく銃は握れますし兄妹仲もいい方です。 
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