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一般人(?)が転生して魔王になりました

作者:ビヨン
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執事の正体、初代登場

 
前書き
 終わった。試験と言う魔王退治が。辛かった。パソコンに向き合えない日々。タイピングできない悲しさ。それらを終了させたぜ。イヤァッハーー!!
 そしてそのテンションで書いたこの話。若干おかしい所がある気がするが、気にしてはいけません。
 では、本編をどうぞ。 

 

「……異能と魔術の融合だと?」


 此処で異能について話そう。

 異能とは人とは明らかに違う力・才能を指す名称の事である。

 霊視や魔女術は神に仕えていた女達が有した力であり、その血の系譜からなる。あれも異能といえば異能となるが、それは血統でありまったくの別物である。

 しかし異能は違う。唐突に現れるのだ。突然変異のようなものであり、大抵の場合他者から疎まれ、碌な人生を送らないのである。そして疎まれたから故に排斥され殺され、その異能という存在を消されていった。

 時代の流れによって今でも存在しているが、碌な人生を送っているのが大半である。


「ええ、私の異能は肉体操作_体の操作などを主とします。これだけ聞くと地味に聞こえますが実際は凄いものですよ」


 そう。確かにそれだけ聞くと地味だ。しかし実際この異能は凄まじい。自身の肉体を思い道理にするのだから。

 例を挙げるなら人間の体は100%の力を使えない。

 100%の力を出してしまうと体が耐えられなくなるので、脳が力をセーブしている。本当の危機が迫れば、たまにその力を使う。それが火事場の馬鹿力である。

 だが、この異能はその100%を出せ、その肉体に掛かる負荷を力を使いながら治せるのだ。
 しようと思えばそれ以上も理論的には可能である。 

 何が言いたいかというとこの異能は肉体に関する事なら大概できるのである。

 老いを止めたり、再生速度を高めたり、身体能力を上げたり、反射神経を上げたりと肉体関する様々な事を操作できるのだ。


「ただし、自身の肉体にしか出来ないんですがね」


「…で、何でそれが魔術と融合するという事態になり、吸血鬼モドキと言われるようになったんだ?」


「そうですね、簡潔に述べると不老不死を望んだ者達が私の“内”に向いている力を“外”に向けようとした結果ですね」


 シリウスの異能が不老不死を望む権力者共の目に付き拘束され、実験された。

 そして、内に向いている力を外に向ける為様々な実験を行ったが、どれも失敗。そして、最後に残った魔術の融合による実験をしたがある意味成功して失敗した。

 何故か?それは融合させた魔術の内容が血を吸った者を同じものにする吸血鬼を模した魔術であったからだ。

 その魔術は血を吸った者を一時的に従わせ、膂力を上げるという魔術で吸血鬼という存在を基にした魔術だ。

 その魔術と異能が融合し吸血鬼の血を吸うことで上がる膂力と人を越えた膂力。更には驚異的な再生能力を手にした。そして吸血鬼の弱点が“一つ”を除いて無くなっており、倒す事は難しくなっている。しかし、姿を霧や蝙蝠に姿を変えることなどは出来ない。人から外れたが人のままという中途半端な存在が生まれたのだ。

 そしてその考案し、魔術を作り出した魔術師は真っ先にシリウスに殺され、その研究を援助していた権力者も殺し、全ての研究データを破壊し、この世から葬り去ったのである。

 そして、三百年ほど放浪した中、この御剣の家を紹介され、執事として雇われ四百年ほど仕事をこなしていたが、諸事情により屋敷の地下にある階層で三百年眠っていたそうだ。そして、俺が神殺しになった日に眠りから起き、この家の執事として舞い戻ったそうだ。


「――とまあ、このようにして今此処に居る吸血鬼モドキである_シリウス・F・マクラーゲンが居るのです」


「凄い人生だったんだな。…………ん? なあ、シリウス。お前誰に紹介してもらったんだ。あとどうして眠ったんだ?それにアテナと一体何があった?」


「それはですね―」


「最初の問いについては僕が紹介したから。次の問いは僕とちょっとした出来事に遭って、“一度”死んだから。そして最後の問いは僕も知りたいね」


 シリウスが言葉を発する前に第三者の言葉によって途切れた。

 声のしたほうを向くそこには一人の男が立っていた。年は二十四、五歳くらいだろうか? 黒いコートに、黒い手袋をつけ、黒い帽子を被った男が空いているソファーへと腰をかけた。 


「お久しぶりですね_桜華様」


 そこに居たのは見知らぬ男性であった。


「うん、久しぶりだねシリウス。で、覚えていないかもしれないから初めましてかな。御剣家現当主_御剣蓮華君」


「覚えていない…だと?」


 こんな人間一目見ていたら忘れられない。何だこの男の呪力の量は!神や神殺しである俺以上だと!!


「あ、やっぱり覚えていなかったか。まあ、あそこは悟りを開いた人間くらいしかそこで起こったことを覚えられないからね。……仕方ない」


 そう言うと桜華は懐から一つの小瓶を取り出し、瓶の蓋を開け、こちらに瓶を向け、息を吹きかけた。

 すると瓶の中にあった液体は消えていき、瓶は空になった。

 甘い香りが鼻腔をくすぐったが、次の瞬間脳に激痛が走った。


「……グッ!……何を…した……ッ!」


「なに、欠けている記憶を戻す為の霊薬を使っただけさ。暫らく痛いかもしれないが我慢してくれ」


 蓮華はその言葉を聞く余裕も無いほどに頭痛は酷くなっていった。

 灰色の空間、スレンダーな体つきをしながらも『女』としての魅惑さを感じさせる少女。そこで唐突に金縛りのように動けなくなり、その少女と話ていった男性の者と思われる声。そして、意識を肉体に戻させられた。

 忘れていた記憶を思い出させるように脳を混ぜられたような感覚は最悪であった。


「…はあ……はあ……くっ…! 思い…出した…さ。…この野郎……!」


 頭の痛みのせいで足元でフラフラになっていた。

 それでも、この頭痛の元凶を睨みつけた。


「そう怖い顔をしないでくれ。記憶を戻させ、話を進めるにはこっちの方が早かったからね」


 そのお蔭でこっちは頭の中をかき混ぜられる様な痛いみを味わい最悪な目に遭ったぞ!


「―――じゃあ、僕が誰か分かるかな?」


「……御剣家初代当主_御剣桜華…」


「うん、思い出せたようで何よりだね。いやー、忘れっぱなしだと自分が誰かを説明しないといけないから面倒なんだよね」


 やれやれだぜ。と言いながらこちらを見て、シリウスに視線を戻した。


「でさ、実際何をしたのかな、シリウス?」


 それは俺も気になるので睨むのをやめて席に着き、シリウスの方に視線を向ける。


「まあ、何と言いますか。少しばかり事実を言っただけなんですよ」


「……いや、それだけであそこまで怒るものか?」


「ええ。落魄した女神の来歴を語っただけですからね」


「………そう言う事か」


 少しばかり怒気を込めて蓮華は言った。ギリシャ神話を一通り教わり、八割ほど理解している蓮華はアテナの来歴も知っている。それが彼女にとっての最悪の出来事と知っているから口には出さないが。


「そう怒らないで下さい。流石の私でも“御剣千年の集大成である”『王』の怒りを真正面から受けてられるほど肝が据わっていないので」


 シリウスは肩をすくめながらそう言った。


「ただただ、試しただけですよ。御剣の家を見守り、『王』である蓮華様の育てた女神がどれ程のものであったのかを。そして蓮華様をね」


「――で、結果はどうだい、シリウス?」


 紅茶を飲みながら、桜華は元従者に問う。


「それはもう、大変満足ですよ桜華様。『王』としてはまだまだ未熟ですが、先を考えれば仕えるに足る主です。それに幾分も力を落とされているとは言え、流石は最強の女神と言ったところですね」


 どうやら話が全然見えないが、全ては試されていたようだ。この二人――特にシリウスに。


「で、気になったんだけど実際何をどうしたら庭がああなる訳?」


「ああ、そうですね。話しますか。あれは―――」


 そう言いシリウスは蓮華がカンピオーネになった日に何が起こったのかを語りだした。



◇ ◇ ◇ ◇


「智慧の女神である貴女からして見れば私は人に見えない者。しかしながらその在り方は人のそれ。御剣家専属執事_シリウス・F(フォルベルツ)・マクラーゲンと申します。以後お見知りおきを__落魄せし女神様」


「……貴様、妾の来歴を知っているのか?」


 怒気を込めながらアテナは問いを投げかける。


「無論、知っております。神々の頂点として君臨しておきながら、力を持つ男たちに謀反を起こされその地位を剥奪され、さらにはゼウスの娘と貶められた女神d」


 言葉は最後まで言われる前に終わった。

 アテナがその首を鎌で刎ねたからだ。

 シリウスの首は地に転がり、首を失った胴体は血を噴き出し、その部屋を赤に染めた。


「……妾の来歴を語るでない」


 忌々しい出来事を思い出させられ機嫌が急降下して行ったアテナ。

 その来歴を語っていた男の首を刎ね、戻ろうと踵を返し、階段を上がろうとするが


「……痛いですね」


 首を刎ねた筈の男の声が聞こえ、アテナの足は止まり、振り返った。

 そこには首を胴体に戻しているシリウスの姿が在った。 


「首を切り落とされるのは何年振りでしたっけ?まあ、随分昔の事だと記憶しているんですがね」


 年には敵いませんね。とシリウスはそう言いながら肩をすくめた。


「……貴様は一体“何”だ」


 警戒心を上げながらアテナは問う。目の前にいる男は危険だと智慧の女神としてのそれが囁いていた。


「智慧の女神であるあなたでも、初見では分かりませんか。なら――」


 足元が光だし、部屋を照らし出す。


「教えて差し上げますよ」


 そして、その部屋から二人は消えたのであった。 
 

 
後書き
 アテナとシリウスの戦い。何故か書いている内にこうなってしまった。恐ろしいな、若さゆえの過ちと言うのは。
 因みにやる事が多すぎて、執筆できるか結構微妙ですが、頑張って更新していきます。 
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