イナズマイレブンGO AnotherEdition
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第1部 シード編
第2話『シードとなれ』
前書き
どうも皆様!今回は第2話を公開します!聖帝に導かれた海どうなっていくのか!?私が書くものですので駄作、駄文承知の上で読んでいただけたら幸いです。
聖帝と呼ばれた男に連れてこられたのは、まるでどこかの施設の場所で周りには、サッカー練習をしている多くの子供達、周りからサッカーボールを蹴る音が何度も聞こえる。だが、練習をしているプレイヤーのその全ての表情は何処か険しく、練習と言うよりはまるで訓練に近い。
「あ、あの……」
「自己紹介がまだだったな、私の名前はイシドシュウジ。だが、このフィフスセクターのトップという立場から聖帝と呼ばれている」
「フィフスセクター?」
「今は知らなくていい。だが、数日以内ですぐに我々の存在を知る筈だ」
「はぁ……それより聖帝、ここって?」
「そうだな、シード養成所とでも言っておこうか?」
「シード?」
聞きなれない単語に首を傾げる龍野だが、すぐに「シードとは……」と説明していく。
「我々フィフスセクターが訓練を叩き込んだ選手達、それがシードだ。この訓練場で何人ものシードが過酷な訓練を行い、そして超人的なキック力、スピード、テクニックを持つ。ここで訓練している選手達はそのシードとなるため特訓をしている」
「要するに、強い選手って事ですよね?」
「簡単にいえばそうだ。君もここで訓練するんだ」
「俺が、ですか?」
「強くなるんだろ?」
「……」
手段が何であれ、とにかく龍野もまた強くなりたかった。今の自分を変えたかった。その想いから、ここで特訓する事に彼は力強く頷いた。
*
そうしてこの養成所に龍野も加わった。シードとなる為の特訓は一言で言うなら過酷。普通のサッカーの練習と同じく最初は体力作りである走り込みの訓練から始まるも、体中に重りをつけ、100周というノルマも課せられ、序盤から相当きついものであった。
「ぐっ!お、重い……」
「まだ訓練初日だからと言っても、少なくとも半分以上走ってもらうぞ?」
「ただの走り込みならともかく!こんな重り付けて走るなんて無理ですよ!それも100周なんて無茶すぎます!!」
「だがこの養成所にいるプレイヤー達は何度もやり遂げている。これで根を上げるようでは、結局君は負けたままだ」
「!」
負け、という言葉に反応する。確かに無茶な特訓ではあれどここにいる他のプレイヤーが皆やり遂げているというなら自分もそれに負ける訳にはいかない。重い手足を無理矢理に上げてグラウンドを走しり出す。息が切れようとも、自分が何周走っているのかが分からなくなっても、時には疲労で何度も転倒してしまいながらも、また起き上がり、ただただがむしゃらに、ひたすら走り続ける。
*
「ハァ……ハァ……」
「ギリギリ100周はクリアだな。早速次に特訓だ」
「す、少しだけ休憩をもらえませんか?」
「駄目だ。体力が尽き果ててで訓練をやり遂げる。それがシードの特訓だ」
「で、でも……もう、限界」
「ならば諦める事だな。まだ初日だから、そんな甘い考えを少しでも持っているなら即刻降りろ。シードの特訓は君には荷が重かった。ただそれだけで済む話だ」
「……会った時言いましたよね?俺、サッカー辞めたくないし!諦めたくない!!」
体力が尽き果て披露困憊になってもまだ立ち上がろうとする。起き上がろうと壁に手をついてでも立ち上がり、その様子に聖帝は少しだけ口元を緩ませた。
「それでは次の特訓に入るぞ?」
「はい!」
*
過酷な訓練ではあったが、その成果は2、3日程度ですぐに出た。体力は2、3日前の頃よりも遥かにつき、その証拠に重りをつけての練習も少し慣れていき、キック力も遥かに上がり、確実に龍野の身体能力は上がっていた。そしてここ2、3日で得た物は身体能力だけではない、具体的な事はまだ知らないがフィフスセクターがサッカーを管理し、サッカーによる廃校などを防ぐため少年サッカー法第5条を発表した事。そして聖帝であるイシドシュウジ、彼は昔違う名前でイナズマジャパンにも所属していたサッカー選手である事を噂で知った。
「かなり身体能力は上がっているようだな」
「はい!1日訓練こなす度に前までの自分を常に超えてる事を実感できて、最高です」
「そうか、訓練で君の身体能力は確実に向上している。まだ早いかもしれないが、そろそろ他のプレイヤー達と一緒に訓練をしていいだろう」
「他のプレイヤー?それって!」
「あぁ、シードとの練習だ」
言われるがままにイシドに連れて来られたのは、普通のサッカーグラウンドの約半分ほどの大きさのフィールド、その頭上にはガラス越しに観覧席のような物が設けられている。
「イシドさん、ここって?」
「ここはある程度訓練を積んだプレイヤー同士、ボールを奪い合う試合形式で対戦する場所だ。1vs1で競い合う事で互いに向上心を高める事を目的としている」
「は、はぁ。それはともかくとして、何で観戦席なのも設けられてるんですか?」
「試合の攻防、プレイスタイルを参考とする事でよりテクニックを高める。それを目的にあぁやって観戦席を設けた。しかし今日は少し観戦者が多そうだ。訓練試合とはいえ、下手なプレイをすれば見ている大勢のプレイヤー達の前で大恥をかくことになるぞ?」
「!、わ、分かってます!」
グラウンドに出ると、遅れて対戦相手となる選手もグラウンドに上がり、その対戦相手は紺色の髪に白いメッシュのような物が特徴的な選手。
『よぉ、テメェが最近入ったっていう龍野か』
「俺の事、知ってんの?」
「有名だぜ、聖帝イシド様が直接導いた選手であるってな」
「へぇどうも、そういうアンタは?」
「俺の名は磯崎研磨。今日はみんな聖帝が選んだ選手がどれほどの実力なのか、楽しみに見に来てる。まぁハンデとして必殺技は使わない事にしてやってもいいぜ?」
「フン、大口叩いて後悔すんなよ!」
「それでは二人共、今回のルールを発表する。試合形式は1vs1のボールの奪い合い、基本ルールは公式試合と同じ。制限時間30分。タイムアップ後にボールを最後にキープしていた方の勝利だ。いいな?」
「「はい」」
聖帝イシド立会いの下、まもなく始まる試合に構える二人。試合開始のホイッスルと共に中央に置かれたボールを互いに走り、取りに行く。
「もらったぜ!!」
最初にボールをキープしたのは磯崎。勿論ボールを奪われたまま黙ってる訳がなく、すぐさまボールを奪おうと磯崎の前に立ちふさがる。
「けっ!俺からボールが奪えるかよ!」
左へ動く見せかけ、右へ行くフェイントで龍野を抜くが、すぐさま体を反転させ、後ろからスライディングタックルでボールを奪い取る。
「へっ!どうだ!!」
「ぐっ!やるじゃねぇか!!だったら俺も本気を出さしてもらうぜ!」
スライディングタックルにより体勢を崩しながらも、すぐさま態勢を整えると、そのまま地面を強く蹴ると共に一瞬で龍野との距離を詰め、そのままスライディングでボールを奪い返し、強烈なタックルに思わず倒れてしまう。
「なっ!テメェ今の反則だろ?」
「はぁっ?今のは試合でもファウルギリギリでセーフになるよ、んな文句言ってる真にボール取り返した方がいいんじゃねぇの?まっ、俺の本気について来れるとは思えねぇがな」
「っ!ふざけんな!!」
ボールを奪われたのは一瞬の事。磯崎のスピードは最初の攻防よりもずっと高く、本気を出すというのはハッタリではない。悔しそうに拳を握りながら、起き上がるとまたボールを取りにいく。
「はっ!所詮新入りはまだまだ俺達の足元に及ばねぇんだよ!」
「舐めるな!」
先程のようにスライディングで奪いにいくが、今の磯崎に同じ手は通用しない。ボールを高く蹴りあげてスライディングで攻める龍野を飛び越えて避わす。
「!」
「けっ、実力は中級者程度、その程度で俺と張り合うなんて百年早ぇっ!」
「勝手に決めつけてんじゃねぇよ!俺だってこっからが本気だ!!」
とは言っても、既に最初から全力の龍野のその言葉はハッタリに過ぎない。何とか本気を出した磯崎のスピードに対応してはいるものの、既に半分の15分経過しても、ボールを奪い返されてからは一度も触れられない。
「ぐっ、ハァ……ハァ……まだまだぁっ!」
「何度やっても無駄だっての!!」
何度も立ち塞がり、積極的にボールを取りに行くが、苛立ち気味に「しつけぇんだよ!」と力強いショルダータックルに又倒される。
「ぐぁっ!」
「こんなんじゃ張り合いにもならねぇ。もっと真面目にやれねぇのか?」
「ちッ!いつまでも調子に乗れると思うな!!」
何度倒されてもまたボールに取りに行くが、ただ闇雲に龍野の体力が消耗されるばかり。タイムアップも迫り頃には磯崎に比べ消耗がとても激しくなっている。
*
「決まったな。こりゃもう磯崎の勝利で決まり。行こうぜ篠山」
「待てよ!光良」
「どうする御門?」
「これ以上は必要はない。行くぞ、龍崎」
時間ももう残ってなく、この時点で勝敗に見切りをつけ観戦席に居た他のシード達は何名かその場から立ち去っていく。
「他の奴等、続々と帰り始めてるな」
「そりゃもう時間も残ってないし、勝敗も磯崎に決まったようなもんだし、あの龍野って奴の実力も大体分かったしな。井出ちゃん、浪川、俺達もそろそろ行かね?」
水色のドレッドヘアーを束ねた一人の少年、湾田七雄人。もう二人の井出と浪川と呼ぶ二人の少年に自分達も帰るかどうか尋ね、井出と呼ばれた大柄な男は「そうだな」と立ち上がる。
「浪川、お前はどうするんだ?」
左目についた傷と鮫を模したかのような髪型が特徴的な浪川という少年。他のプレイヤー達と違い、彼だけはじっと試合の行方を見守っていた。
「……野郎ども、先に行ってろ。俺は最後まで見届ける」
「へぇ~、何?お前あの選手の事気になってる訳?」
「…………」
「俺はあの選手で気になるとこなんて特にねぇけどな。あの選手のどこがお前の気を引いてるのやら」
「さぁな?」
「まぁお好きなようにキャプテン。行こうぜ井出ちゃん」
*
「ハァ……しつけぇな、いい加減諦めろっての!」
しつこくボールを奪いに来る龍野。次第に磯崎も息が少しだけ乱れ始め、龍野はそれ以上に体力を消耗しているも、既に時間はなく、再びボールを取りにいく。
「しつけぇっての!!」
タックルで突き飛ばそうとする磯崎。だが苛立ちによる行動は単調的になってしまい、その単調的な動きは簡単に見切れる。
「(避けれる!)」
そのまま右に寄ってタックルを避ける。タックルを避けられ、思わず態勢が一瞬崩れる。千載一隅チャンス、再び足を突き出してボールを取りにいく。
「もらったぁっ!」
「ぐっ、やらせるか!!」
体制を崩しながらも、ボールを奪われる事を彼の意地が許さない。ボールを真上に蹴りあげ、龍野の足がボールをかすりながらも、何とかボールをキープする。
「終わりだ!」
千載一遇のチャンスを逃し、体力もすでに限界。本来ならこの時点で大抵は諦めるだろう。だがそれでも、今の彼に諦めると言う言葉などない。
「取る!」
「ちぃっ!しつけぇつってんだよッ!!」
再び前に立ちふさがる龍野に磯崎はボールを強く踏みつけ、急激に力を加えられたボールはまるでブーメランのような形状に変形する。
「ブーメランフェイントォッ!」
ブーメランのように変形したサッカーボールを足に掛け、それを投げ、戻ってくるボール見事に取り、龍野を避わす。その瞬間、終了を意味するホイッスルがその場に響き、タイムアップとなる。
「!」
「ハァ……けっ!これが実力差って奴だよ」
息を整え、悠々とその場から立ち去っていく。結局かすりはすれどボールは奪い返す事が出来ず、悔しさに歯を食いしばる。
「やはりこの訓練は早かったか?」
試合を終えるなり、水の入ったボトルを投げ渡しながら龍野に声をかけるイシド。負けたこと以上に試合時間の9割以上、磯崎がボールをキープしていたのがとても悔しく、その龍野の気持ちは見るだけで読みとれた。
「次は、俺!絶対勝ちます!!」
「……今日の試合の様にどこまでも喰らいつくような勢いがあれば、必ず行ける」
「はい!」
「(最後で最後で磯崎に技を使わせるとはな)」
試合の行く末を見届け終えると、立ち上がり浪川もまたその場から立ち去って行く。
*
「だからさ~今日会ったシード候補の喜峰達が入れば、俺達海王学園は全員シードって事になるから、全員が驚異的な身体能力有したシードならもう俺達無敵じゃね?あ~あ、勝敗指示がなけりゃ俺達優勝狙えんのにな」
「湾田、俺達はフィフスセクターの指示を守るだけだ。それがシードとして誇りだ」
「わぁてるよ、浪川キャプテン」
訓練も終わりの時間。続々とその場から立ち去っていく選手達。湾田達も3人もまたその施設から帰ろうとしているが、道中サッカーボールを蹴る音が聞こえてくる。
「ん?あいつまだやってんのか?」
「もう訓練終わってんのに、残って自主練とは真面目だね~」
「……」
ひたすらにボールを蹴り続けるその様子を浪川だけは黙って見ている。
「ま~た浪川、あいつの事気になんのかよ?」
「……そんな所だ」
「お前がそこまで気にしてるとは珍しいな」
「別に、野郎ども先に行ってろ」
「またそれかよ?まっ、お好きなように。当初の予定は済んだし、俺は帰るぜ」
「俺もだ。先に行っとくぞ」
「あぁ」
出口に向けて歩きだす湾田と井出達とは別に、浪川は逆方向に向けて歩きだす。
*
「ハァ……ハァ……もっと強く!」
”バンッ”
ひたすらにサッカーボールを蹴り続ける中、突然真後ろから自分とは違うボールを蹴る音が聞こえ、即座に振り返った瞬間に飛び込んでくるボールが視界を捕え、咄嗟に反応してそのボールを勢い良く蹴り返す。
『へぇ、中々いいシュートじゃねぇか』
「いきなり何すんだよ!」
物陰から顔を出す浪川、龍野の言葉に悪かったな、と軽い様子で言いながら龍野の前へと歩み寄る。
「え~っと、アンタは?」
「海王学園2年、浪川蓮介。まぁシードって言った方がいいかな?」
「シード!?シードの訓練生じゃなくて!?」
「悪いな、俺は「なる」じゃなくて、「なってる」んだよ」
「えっと……浪川先輩シードなのに、なんでこの養成所に?」
「浪川でいい。シードになったつっても、自分達の学校に来るかもしれない新しいシード候補がどんな奴かを確かめに来たり、聖帝に呼ばれてきたり色々あるんだ」
「へぇ~」
「それより今日の試合見てたぜ?」
「……冷やかしかよ?」
「別にんなんじゃねぇ。お前入ってまだ数日だろ?今日の磯崎って奴、あいつ既にシード候補として名前上がってんだぜ?そいつに喰らいついていったんだ。それは自信持っていいんだぜ?」
「そうかな、でも喰らいつったって言ってもほとんどボール取れなかったし」
「でも最後の最後であいつに必殺技使わせただろ?」
「……」
「もっともっとレベルアップすりゃ行ける筈だ」
「……何で浪川、んな事言ってくれんの?嫌、勿論嬉しいんだけど、お前みたいにそんな声掛けてくれるのここじゃ多分いねぇだろ?」
「まぁ確かに、シードになるための訓練は競い合いだからな。情の掛け合いはたぶんねぇ。まあでも俺はシードだし、もう競う必要ねぇからな」
「いいですね、養成所卒業生は!」
笑いながら言う浪川に少しだけ怒ったように返答する。
「冗談冗談。それよりお前まだここでの自主練すんだろ?付き合うぜ?」
「えっ?良いの?」
「あぁ、多少力にはなれると思うぜ?」
「じゃぁお言葉に甘えて、頼む!」
*
「もっとボールをよく見ろ!ドリブルはもっとスピードを上げてかないとすぐに追いつかれて止められるぞ!ボールのカットならただ突っ込めばいいってもんじゃねぇ!一瞬で反応して、瞬発力をつけてけ!」
「はい!」
浪川との練習もまた厳しいものではあれど、悪い個所はしっかりと指摘してくれ、今後のプレイの向上にも役立つ。数時間練習をようやく浪川から「この編で終わるか」という声を聞くと、その場に倒れ込む。
「ハァ……ハァ……疲れた~」
「こんなんでへばってたらシード候補にも選ばれねぇぞ?」
「分かってるよ。でも、ありがとう」
「ん?」
「練習で来てまた強くなれた気がする。浪川は何で、練習付き合うなんて言ってくれたんだ?」
「他人の気がしねぇからかな?」
「?」
「シードなる前は無名の学校の名も亡き選手で、試合にも勝てなくてよく大差で負けてたんだ」
「へぇ~、シードの浪川がそうだなんて信じられねぇ」
「中々強くなれない事に嫌気が差し始めた時、フィフスセクターが声を掛けてくれた。そのお陰で俺は今シードになれるまで強くなれた。だから俺はシードであることに誇りを持ってる」
「……何か似てるな、俺もさ同じ境遇みたいな感じ」
イシドに話したように、浪川にも自分が今の状況に至るまでの事を話す。それにうんうんと頷きながら、その話を黙って聞いている。
「それで聖帝が手を差し伸べてくれて、俺今頑張ってんだ」
「なるほどな、それ聞いて尚更他人の気がしねぇな」
「はは、浪川みたいに俺も頑張る!絶対強くなる!」
「頑張りな、俺は色々用事で数日の間は毎日ここに来る。そん時も訓練後残って自主練するなら、また付き合ってやるよ」
「ありがと。俺!必ずシードになる!」
「おぉ、それじゃあまた明日な」
「おぉ!」
この日新しいサッカー友達が出来た。彼が今日自分のために付き合ってくれた練習の成果に応えようと、龍野は強く決意した。
後書き
いかがでしたでしょうか?第2話!!GOシリーズで出たキャラ達も少しだけ出てます!中でも浪川が一番目立ってます!
第3話「海龍発動」
また次回もぜひ読んでいただけたら幸いです!
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