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EPISODE of PARAGUS~彗星~

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今際の展望

宇宙。


宇宙を見たとき、とてつもなく広いだとか、星々が綺麗だとか、無事に帰ることができるのだろうかとか、そういうことを考える異星人がいるらしい。

我々、戦闘民族「サイヤ人」が宇宙を見て考えることといえば、せいぜい敵の戦闘力はどれくらいかとか、これから侵略する星はどれくらいの値があるのだろうかとか、とにかく、「宇宙に対しての感想」などは出てこない。

私も当然サイヤ人の一人なので、他の異星人が宇宙に対して、何かを思うという感覚そのものが、よく理解できていなかった。

宇宙はサイヤ人にとっては、いわばただの"通路"でしかなく。

それ以外の何かを感じるようであれば、それはもうサイヤ人ではない。

私ではない。

私が、私で、なくなる。

なくなる。

亡くなる。

そう。私は、今、まさに、亡くなろうとしていた。

何故宇宙の話から突然、私が亡くなろうとしている話になるのかといえば、私が今、実際に、宇宙を見て"通路"として以外の見方をしていた。

私は素直に、宇宙そのものを、美しい、と思っていた。

遠くで、あるいは近くで光っている星々が。

吸い込まれてしまいそうな底なしの闇が。

何もかもが、美しい、と思っていた、思ってしまっていた。

思ってしまうと同時に、気付く。

ああ、私も、もう終わりなんだな、と。


そもそも私が何故、宇宙を見ているのか、宇宙にいるのかといえば、先ほど、我が最愛の息子、ブロリーに投げ飛ばされたからであった。

正確に言えば、自分達のいる星がそろそろ彗星と衝突して消えてしまいそうなので、私一人だけ避難しようと脱出用ポッドに乗り込んだが、追いかけてきたブロリーに見つかってしまい、ポッドごとブロリーに握り潰され、その圧倒的なパワーで宇宙まで投げ飛ばされてしまった、からであった。

それより前の経緯については、語るには少々時間が、というより私の寿命が足りないので、そこは割愛させてもらう。

まあ、つまりは。

先程述べた、「サイヤ人と異星人の宇宙に対する価値観の違い」とかそういうのは一切関係なく、私は圧死寸前の状態で宇宙空間まで飛んできているのだ。

圧死寸前でここまで考える余裕があるとは、サイヤ人の生命力というのは本当、自分自身が呆れてしまうほどである。

話の流れとかまるで無視の「価値観の違い」についてを述べる余裕さえ可能なほどの生命力を持っているとなると、フリーザに殺されたバーダックなんかも、存外、まだしぶとく生き残っているかもしれない。

なんて、また関係のないことを考えているが、死ぬ寸前というのは、苦痛で仕方ない。

なにせポッドごと体のほとんどが機能しないほどに潰れてしまっているのだ。

いっそ痛みの感覚もなくなってくれていればとも思ったが、痛みを残しつついたぶり殺そうというのが、ブロリーの目的のような気もしてきた。

殺そうと思えば簡単に、それこそ握りつぶさずとも、気弾なり、あるいは首の骨をへし折るなりで、一思いにやれた筈だ。

それをしないで、わざわざポッドと一緒に握りつぶすなんて残忍な殺し方を選ぶとは、我が息子ながら、これほど恐ろしい奴もいまい。

だが、そんな残忍な殺し方をさせてしまったのは私――――――と、どうやら本当に終わりの時が来たようである。

寿命が足りないなどとのたまった割には、ここまで長々と付き合わせてしまったが。

私を乗せたポッドが、今まさに、私がさっきまで居た「新惑星ベジータ」に衝突する予定である、グモリー彗星に衝突しようとしていた。

衝突を避けようとして実際に衝突するより前に衝突してしまうとは、なんとも情けない話である。

握り潰すのではなく、このグモリー彗星に衝突させて、最期に屈辱を味わわせてやろうというのが、ブロリーの本来の目的だったのだろうか。

いや、あいつの真意はこの際、わからなくてもいい。

わからなくてもいいが、せめて一言、謝りたかった。

謝っても謝っても、絶対に足りないのだろうが。

それでも謝りたかった。

「……すまなかった」

生まれたばかりのお前を、守ってやれなかったこと。

成長するにあたって、ロクな教育もしてやれなかったこと。

制御装置などというものをお前に着け、道具のように扱っていたこと。

そして、お前を見限り、一人で避難しようとしていたこと。

今までのこと、全てに。





ポッドが彗星に叩き付けられ、私の体もろともに、粉々に、砕け散る。

グモリー彗星は、青かった。




「いや、ここで終わっちゃうわけにはいかないんですけどねー?」

…………んん?

続く。 
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