消えたソウルフード
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第一章
消えたソウルフード
ロサンゼルスに住むアフリカ系アメリカ人のブライアン=ジョーンズの好きな食べ物はハンバーガーだ。
その仕事は好きが昂じて就職したハンバーガーショップだ。そこの雇われ店長をしている。
その彼の食事もやはりハンバーガーであることが多い。昼に店の賄いであるそれを食べながらだ。
彼は笑顔でいた。そこに一応マッシュポテトやフライドチキンにサラダ、それにコーラもある。
だがハンバーガーを幾つも食べながらだ。彼は笑顔で言うのだった。
「やっぱりアメリカ人はこれだよ」
「ハンバーガーですか」
「それだっていうんですね」
「そうだよ。これがないとな」
こうだ。店の裏の従業員用の部屋で店員達に話していた。
「一日一回食わないと駄目だよ」
「ううん、店長って本当にハンバーガー好きですね」
「もう病みつきですよね」
「アメリカ人のソウルフードだろ」
ここまで言う彼だった。
「アメリカ人の味の友だよ」
「中国人の饅頭、日本人のお握りですね」
「そんな感じですよね」
「だからこの店も繁盛してるんだよ」
ブライアンは笑顔で言う。その間もハンバーガーを食べ続けている。大きなハンバーガーを両手に持ってだ。そのうえで同席している店員達に話すのである。
「アメリカ人は皆大好きだからな」
「ですね。アメリカ人にはこれですか」
「ソウルフードですか」
「そうだよ。だから美味いんだよ」
実際に美味そうに食べながらの言葉だった。
「ハンバーガーまずいって言うアメリカ人いないだろ」
「世界中で食われてますしね」
「これは」
「アメリカの食い物がまずいか」
ブライアンはよく言われることをだ。一笑に伏した。
そしてそのうえでだ。そのハンバーガーを食いつつ言うのだった。
「それは嘘だ。それならな」
「ハンバーガーも世界中に広まってないですね
「フライドチキンとかも」
「そうだよ。アメリカも美味いものが多いんだよ」
白い歯を見せつつも言う彼だった。
「それは俺が保証するぜ」
「店長がですね」
「そうされますか」
「ああ、事実だからな」
彼は断言さえした。
「だからそうするさ」
「じゃあこれからもですね」
「美味いハンバーガーをですね」
「作って売りますか」
「そうしますか」
「それでだけれどな」
ここでだ。ふとだった。
ブライアンはだ。店員達にこんなことも言ったのだった。
「ハンバーガーとかフライドチキンだけじゃなくてな」
「その他の食い物もですか?」
「店に出してみますか?」
「今チキンナゲットとかフライドポテト、それにホットドッグも出してるよな」
全てアメリカの定番の料理だ。所謂ファーストフードだ。
だがそういったもの以外にもだとだ。彼は店員達に話すのだった。
「この他にもな」
「マッシュポテトやアイスクリームもありますが」
「他にもですか」
「ああ、ちょっと考えてるんだよ」
こうだ。腕を組んで話したのである。
「今な」
「ううん、新しいメニューですか」
「それをですか」
「一応本社にも話してみるな」
彼を雇っているだ。上の方にもというのだ。
「ちょっと考えてみるってな」
「けれどアメリカ料理ですよね」
「ああ、それはな」
確実だというのだ。何しろハンバーガーショップだ。それならばこれは外せなかった。
それでだ。彼も言うのだった。
「だから。他にもな」
「ピザはイタリアですしね」
店員の一人はピザを話に出したがすぐに自分で打ち消した。
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