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黒と白

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第五章

「それにこれもね」
「スイーツ?」
「そう、お菓子だよ」
 それだとだ。ここでも笑顔で話す龍輝だった。
「よかったらこれもね」
「プレゼントはいいのに」
「俺からの気持ちだから」
「気持ちだから」
「受け取って欲しいんだ」
 龍輝は幾分かすがる様な目になっていた。子犬の様と言えば言い過ぎだろうか。
 しかしその目で麻美に対してだ。言ったのである。
「よかったらだけれど」
「悪い筈ないじゃない」
 麻美はだ。ほどけた、そんな顔で龍輝に答えた。
「そんなことないわよ」
「じゃあ受け取ってくれるんだ」
「勿論よ。有り難う」
 鏡の中の自分、その白いマーガレットの髪飾りを黒い髪につけた自分を見ながら言うのだった。
「大切にするわね」
「そう言ってもらえると嬉しいよ。それでね」
「それで?」
「今から何処に行くの?」
 今度は麻美からだ。龍輝に尋ねてきた。
「やっぱりカラオケ?そこ?」
「そうだね。そこに行こうか」
「私歌うから」
 満面の笑みでだ。麻美は龍輝に対して言った。
「それも思う存分ね」
「歌ってくれるんだ」
「そうさせて。だって私今とても嬉しいから」
 それでだというのだ。
「二人で。今日は最後まで歌いましょう」
「うん、御互い気が済むまでね」
 龍輝もだ。笑顔で応えるのだった。そうしてだった。
 龍輝から貰った髪飾りをつけてだ。麻美は彼と共に歌いに向かった。そしてその日は二人で心ゆくまで歌ったのである。
 その次の日だ。満ち足りた顔でだ。龍輝はクラスメイト達に話すのだった。
「いや、凄く喜んでくれたよ」
「そうか、大成功だったんだな」
「上手くいったのね」
「いや、自分でも思うけれどさ」
 自画自賛をだ。ここで言うのだった。
「よくあんなの選んだって思うよ。ほらこれ」
「あっ、これは中々」
「似合ってるじゃない」
「へえ、いいセンスしてるなあ」
「悪くないわよ」
 クラスメイト達は龍輝が出した携帯の画像を見た。そこにはだ。
 その白いマーガレットの髪飾りをつけた麻美がいる。彼女の黒いロングヘアの左のところにちょこんと付いている。そのワンポイントがだ。
 麻美に黒髪をさらに際立たせている。それが彼女全体をさらに奇麗に見せている。カラオケショップの部屋の中でだ。気恥ずかしそうに笑っている映像だった。
 その彼女を見てだ。クラスメイト達は言うのだった。
「何選ぶかって思ったけれど」
「まさかそう来るとはなあ」
「意外っていうか何ていうか」
「凄いセンスいいな」
「俺もそう思うよ」
 また自画自賛を述べる龍輝だった。そしてだ。
 携帯を懐に戻してからだ。また言うのだった。
「それで今度さ」
「今度?」
「今度っていうと?」
「二人でアクセサリーショップに行ってさ」
 そのだ。髪飾りを買った店にだというのだ。
「他のアクセサリーも買おうってことになったんだ」
「へえ、新たなデートスポットの発見か」
「今度はそこに行ってなの」
「そうだよ。いや、本当によかったよ」
 満面の笑みで言う龍輝だった。
「黒い髪には白い花が最高に似合うよな」
 そのことがよくわかった彼だった。そしてそのうえでだ。黒髪に奇麗な麻美とだ。これからもずっと一緒にいようとだ。最高の喜びの中で決意するのだった。


黒と白   完


                                2011・12・22 
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