黒と白
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第一章
黒と白
如月麻美の特徴はその髪にある。
黒く長い見事なロングヘアだ。絹の様な髪には光沢がある。
それが細めに先の尖った顔立ちに似合っている。背はあまり高くなくしかも胸はかなり薄いがそれが余計にだ。黒髪を際立たせていた。
その麻美の彼氏の斑鳩龍輝はだ。背は一七〇程で茶髪のやや癖のある、パーマに似た髪形にしている人懐っこい顔の男だ。性格は軽いことで知られている。
その彼がだ。麻美に尋ねたのである。
「あのさ、もうすぐ麻美ちゃんの誕生日だよね」
「うん、そうだけれど」
麻美もそのまま答える。そしてこう龍輝に問い返したのである。
「あっ、あれね」
「そう、誕生日プレゼントだけれど」
「別にそんなのいいわよ」
麻美は笑ってだ。龍輝にこう返した。細い目がさらに細くなる。
「カラオケ行って楽しくやるだけで」
「カラオケねえ」
「そう。スタープラチナでもね」
彼等の通っている八条学園高等部の生徒達に行きつけの店の一つだ。カラオケボックスである。
そこに入ってだ。楽しくやろうというのだ。
「そうすればいいじゃない」
「いや、それは当然だけれどさ」
「まだ何かあるの?」
「やっぱり誕生日じゃない、麻美ちゃんの」
龍輝はこのことにこだわって言う。
「だから何かプレゼントさせてよ」
「ううん、どうしてもなのね」
「そう、どうしても」
笑顔で麻美に言い続ける彼だった。
「そうしていいかな」
「そこまで言うのなら」
仕方ないといった顔になりだ。麻美もだ。遂に折れた。
そしてそのうえでだ。龍輝に述べたのである。
「お願いしていいかしら」
「それじゃあ楽しみにしておいてね」
こうしてだ。龍輝は麻美の誕生日に彼女にプレゼントすることになった。しかしだ。
いざ何をプレゼントするかというとだ。これがだった。
非常に悩みだ。そして言うのだった。
「何をプレゼントするといいんだろうな」
こうクラスの自分の席でだ。腕を組んで考えるのだった。
おの机には色々な雑誌がある。プレゼントについて書かれているものばかりだ。
それを山の様に積み上げながらだ。彼は言うのである。
「いや、いざとなったらわからないな」
「っておい、何だよこの雑誌の山」
「どんだけ買っただよ雑誌」
「今度は一体何だ?」
その彼のところにだ。クラスメイト達が来てだ。呆れた顔で尋ねてきた。
「麻美ちゃん絡みだと思うけれどな」
「それだろ、やっぱり」
「あの娘に今度は何するんだ?」
「デートスポットでも探してるの?」
「プレゼントだよ」
そのままだ。彼はそのクラスメイト達に答えたのである。
そしてそのうえでだ。こう彼等に言ったのである。
「麻美ちゃんへの誕生日プレゼントな。何がいいかなって」
「また随分ストライクゾーンの広い悩みだな」
「そうよね」
クラスメイト達は彼のその言葉を聞いてだ。まずは微妙な顔になった。
そしてそのうえでだ。こう彼に言ったのである。
「っていうか麻美ちゃん自身に聞いたらどうだよ」
「何が欲しいかってな」
「そうすれば何をあげればいいかわかるだろうに」
「そうしたら?」
「いや、サプライズでいきたいんだよ」
クラスメイト達のアドバイスにだ。龍輝はこだわりを述べた。
「そうすれば喜びも一層ってなるだろ?だからさ」
「それはそうだけれどな」
「で、それを狙ってか」
「それでなんだな」
「麻美ちゃんには尋ねないのね」
「そうなんだよ。実はな」
クラスメイト達にこう答える龍輝だった。そしてだ。
彼はだ。こう言ったのである。
「だからこうして雑誌読んで悩んでるんだよ」
「深刻な悩みだな、ある意味」
「具体的に何がいいかっていうと」
「判断に困るよね」
「本当に何がいいのか」
「雑誌を幾ら読んでもわからないんだよ」
それで買って来てだ。読んだというのだ。
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