鷹の頭狼の心
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一匹目
頬を切裂くような冷たい風が通り抜ける。俺の立つビルの屋上から眼下を見下ろすと、街はクリスマス一色に飾りたてられ気分はウキウキ…な訳はない。
「なー騎衣。俺のやる気スイッチってどこにあると思うよ。」隣にいる騎衣にボソッと呟く。だが…。
「え?やる気とは無縁の人が何か言ってるんだけど。」信じらんなーいみたいな顔をして返された。
騎衣は俺と同じ18歳で、仕事上の良きパートナーだ。仕事上は、な。悔しいが顔も中々の美形だし…でもまぁ性格が性格だからな。うん。大丈夫大丈夫。焦る必要はないぞー俺。
「うるせーぞ。俺なんて常にやる気の塊みてーなもんだろが。」そう俺が返すが、隣からは俺の話なんて絶対聞いてない音が聞こえて来た。
「…オイ。」
「ふぁ?ふぁーに?」
「ふぁーに?じゃねーんだよ!!何パン貪ってんだテメーはあああああ!!」こいつ…これから仕事なのにパンって。しかも満足サイズって。
俺が呆れて見ている横で騎衣は超人的なスピードでパンを食い終わった。
「あーおいしかった。」と騎衣は満足そうに頷いた。
「食ったか?行くぞ…まったく。」こいつの大食いには本当に付いて行けない。
俺と騎衣はこれから仕事だ。仕事、と言っても普通の仕事ではない。
20年前…日本は他の国に習い死刑制度を廃止した。だが結果として廃止以前よりも犯罪は増加の一歩を辿るばかりだった。
罪を犯しても殺されないことの味を占めた人間は怖いもので、犯罪の中でも特に殺人なんかの凶悪な犯罪が増えるようになった。その上、日本には終身刑が存在しないので何人殺したところで、せいぜい10年ブタ箱に入れば済んでしまう。
それはまぁ犯罪も増えるよな。そこで、立ち上げられた組織が俺と騎衣のいる組織「赤狼」だ。
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