宇宙を駆ける一角獣 無限航路二次小説
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第一章 三話 小マゼランへ
前書き
ケータイが壊れてましたすいません。
ゼオスベルトユニオン事務所
ゼオスベルトユニオンは大マゼランから小マゼランへの唯一のボイドゲートのあるβ象限の管理をしている、0Gドッグの互助組織である。
白野秋人はその幹部で顔より巨大なアフロヘアの持ち主であるドグ・ターペパーと交渉していた。内容は、先の戦闘で回収した海賊船の残骸売却の値段交渉だ。
『装甲板5tで500G。インフラトン機関は状態がいいから1500Gでどうだい?』
ドグの提示した金額は決して少なくはない。だが、これから白野達は大小マゼラン最大の難所として知られるマゼラニックストリームを突破する予定がある。万全の状態で挑みたい白野からすれば、もう少し上乗せして欲しいところだ。
『インフラトン機関はそれでいい。装甲板の方をあと500Gほど上乗せしてもらいたい。』
『………ふむ。(ここで上位ランカーに借りを作っておけば後々便利かもね。)分かった。その金額で手を打つよ。』
交渉が纏まり、白野はドグと握手を交わし事務所を後にした。
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宇宙港
宇宙港の大型艦船停泊ポイントに白野の乗艦、ユニコーンがその銀の巨体を浮かばせていた。
その船体の周辺には修復用のロボットアームが火花を散らしユニコーンの装甲板を修復している。別に戦闘て破壊されずとも、宇宙を漂う微小なデプリなどで細かい傷ができるのだ。放置すれば、やがて装甲板が二つに裂ける。
『艦長、ユニコーンはもうすぐ動けますよ。』
ユニコーンの整備担当、ハル・バークが報告して来た。
『ああ。』
白野は別の事を考え中だった。
(確かにユニコーンはいい艦だ。だが、対多戦闘に関しては弱い。兵装は全て固定式で単体の物しかない。せめて二門は拡散プラズマ砲やパーティクルリデューサーのような多数の敵に対応できる武装が必要だ。)
彼が将来的に戦わねばならない敵は、あまりにも数が多いのだ。
(ユニコーン、いや、ゼスカイアス級の設計図を分析し発展させたグランカイアス級………アレに設計図の段階で改良を加え続けた結果、完成したグランカイアス改級。アッドゥーラで入手した自立ワープシステムを使用したボイドフレームで艦の基本にあたるフレームを構築する。こうすれば自立ワープが可能となる。)
設置型のボイドゲートに頼らず自由に銀河間を移動する事が可能になればあらゆる事態に対応できるだろう。
(主武装はグランカイアス級のハイストリームブラスターをそのまま使用した。艦砲には拡散プラズマ砲を三門、単体のプラズマ砲を一門装備している。これなら一国の軍隊ともためをはれる。)
性能的には最高だ。だが、問題がある。
(今の技術力では作れない。)
厳密には90パーセントは製造できる。問題はボイドフレーム。あれは明らかにオーバーテクノロジーの産物だった。
『だが、彼ならあるいは………』
白野が小マゼランに行く目的。グランカイアス改級の完成。そのためにマゼラン銀河最高の頭脳と呼び声の高いジェロウ・ガン教授の力を借りる事。
そして、この世界の真の主人公であるユーリを助け後の壮絶な戦いを生き延びさせる事。
『上手くいけば…いや。まだこれはいいか。』
『艦長、自己完結してないで消耗品の備蓄管理を手伝ってください。』
ハルに突っ込まれて現実に引き戻された白野は、マゼラニックストリーム突破に備えるため倉庫に向かった。
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ゼオスベルトユニオン直営酒場
マゼラニックストリームが難所たる所以は過酷な航路と乏しい補給にある。
どのような高性能艦でも動かなければ意味はない。
充分な補給が受けられる場所は、中継地点のカシュケントくらいしかない。なので、白野は消耗品を大量に購入しマゼラニックストリームを突破するつもりなのだ。
『数年でランカーになったと思えば今度はマゼラニックストリームの単独突破と来た。やっぱ、うちの艦長について来て正解だ!楽しくて仕方ない!』
『全くだ。艦長、ああ見えて大胆だからな。楽しませてもらってるよ。』
『この前なんて海賊のアジトを俺たちだけで潰しただろ。アレは最高だった!』
白野は基本的に一般クルーから好かれている。
メインクルーもまたしかりである。
『マゼラニックストリームの突破か。』
『勝算は十分です。』
『医療関係も要望がすぐに通って充実している。彼は艦長として間違いなく優秀だよ。』
上からメインオペレーターのズローキン・ゲイケット、整備員のハル・バーク、船医のアンヌ・ジャン・エーヴァである。
彼らは白野が旗上げした時から行動を共にしている最古参メンバーである。あと一人、経理のバロウ・バウトがいるが、彼はシフトが合わなかったのでこの場にはいない。
『では、航海の成功を祈って、乾杯!』
ゲイケットの声に合わせて、幾つものグラスが打ち鳴らされた。
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ゼオスベルトβ象限 ボイドゲート
宇宙に浮かぶ蒼い光を放つリング。ボイドゲートはそんな見た目をしている。
ユニコーンは今まさにボイドゲートをくぐろうとしていた。
『微速前進。ゲート通過後の障害物を警戒せよ。』
ゲート付近は謎のバリア・フィールドにより絶対の安全が保証されているが、その付近はそうではない。
以前、ゲート通過直後にデカイデプリがぶつかり装甲板の修復に一週間かかったことがあった。
以来、ゲート通過後は特に周辺の警戒をつよめている。
『………ゲート通過。マゼラニックストリームです。』
遂にユニコーンは大マゼランを離れ小マゼランの領域へと足を踏み入れた。
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マゼラニックストリームには大小マゼラン間を行き来する船を専門で襲うハイエナと呼ばれる海賊がいる。彼らの殆どはリークフレア級やシャンクヤード級といったゼオスベルトユニオン製の高機動艦を扱い、難所で弱った0Gドッグを襲撃する。
ユニコーンの進路上に拠点を構える連中も、そんなハイエナの一団だった。
『リークフレア級10隻にシャンクヤード級5隻、恐らくは旗艦としてカッシュオーネ級が1隻………』
メインオペレーターのゲイケットが敵艦の艦種と数を報告する。
『操舵手、迂回できるか?』
正攻法であれだけの数を相手にするのは骨が折れる。まして、今回は戦闘が目的ではない。マゼラニックストリーム突破のために、少しでも船体の損傷は抑えたいところだ。
『無理でしょうね。相手に近すぎますから、どの道動いたらレーダーに引っかかります。』
甘くない現実を前に、白野は一つの決断を下す。
『戦闘準備、整い次第最大船速で敵拠点を正面突破する。』
敵に気づかれる前に電撃戦を仕掛け、旗艦を撃沈して指揮系統を麻痺させてその隙に離脱する。単艦で複数の敵を突破する際の
セオリーである。
『各砲門開口!APFシールド展開!機関最大!』
次々に報告を繰り返すゲイケット。そして、白野は号令を下す。
『全速前進、戦闘開始。』
ユニコーンのブースターが一斉に起動し、ぐんぐんと敵艦との距離を縮めて行く。
『敵艦、回頭開始しました!攻撃許可を!』
『よし…全砲門目標敵旗艦。撃てっ!』
ユニコーンに搭載された武装はその全てがプラズマ砲である。通常のレーザーと違い高い貫通性能を持つプラズマ砲はボーカノイドのような特殊な鉱石を用いた装甲板以外に甚大な損傷を与える。
そんな兵装に集中砲火を浴びせられたらどうなるかは明白である。
旗艦と思われるカッシュオーネ級は速やかに爆散し、インフラトンの蒼い光を撒き散らしながら消えて行った。
『敵旗艦、撃沈!』
『速度を緩めるな。このまま突破する。』
混乱する海賊を尻目にユニコーンは接近した時同様ぐんぐんと距離を離していった。
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『………ふぅ…』
先程からレーダーに集中していたゲイケットが安堵の息を漏らした。
『レーダーに反応無し。追撃はありません。』
『よし、エンジン出力を通常モードに切り替え。………乗組員は次のシフトまで休息だ。』
いかにユニコーンとはいえ、常に戦闘速度でいるわけではない。
巡航速度でのんびり航海することも重要なのだ。主に乗組員の精神衛生面において。
つまり、今はつかの間の休息である。
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ユニコーン シップショップ
このショップではユニコーンが寄港した惑星で手に入れた名物や嗜好品が購入できる。長い航海に潤いは不可欠だ。
『ゴーヤ・オレ?………買ってみるか。』
『おい、やめとけ!それ、アンヌさんも音をあげたほどマズイんだぞ!』
時にはこのような妙な商品も並ぶ。
『タバコ………』
いつの時代にもタバコが趣味の人間はいる。
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ユニコーン食堂
『Bランチ』
『ラーメン』
『焼肉定食』
『つくね』
『へい!お待ち!』
食堂では、常にコックが走り回っている。1000人を越すクルーの食事を賄わなければならないのだ当たり前である。
『………ラーメン』
『おわ!?艦長?』
『詰まるぞ。早くしてくれ。』
『は、はい!ただいまー』
白野秋人は無類のラーメン好きである。
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マゼラニックストリームを今のところ順調に航海するユニコーンを見つめる影が一つ。
『ふん。まさか、こんなところであんな大物にぶつかるとはな。』
大海賊ヴァランタイン。そして、彼の乗艦で宇宙一の船と名高い戦艦グランヘイム。それが影の正体である。
『お頭、レーダーに反応アリですぜ。奴等、お頭の睨んだ通りエピタフを持ってます。』
『あれだけの艦が相手ならいつも通りゆうゆうとはいくまい。楽しくなってきたじゃねえか。野郎共!戦闘準備だ!』
『アイサー!』
続く
後書き
用語解説
アッドゥーラ教国・・・大マゼラン最古の国家。アッドゥーラ教が国教でかつては大マゼラン銀河の殆どを統治したが人々を地上に縛り付けたため多数の独立国が生まれた。銀河連邦とは敵対関係にある。
ゼオスベルトユニオン・・・大マゼランの国家、エンデミオンとアイルラーゼンの交易の要であるゼオスベルトを管理する0Gドッグの互助組織。何故か関係者にアフロヘアが多い。
パーティクルリデューサー・・・艦船に搭載する兵装。着弾点を収束させる通常のレーザーと異なり、エネルギーをばら撒くように攻撃する。
ボーカノイド・・・大マゼランの資源国、ネスカージャで採掘される鉱石。プラズマを遮断する特性を持つため対プラズマ装甲として広く知られている。
艦船解説
グランカイアス級・・・対ヤッハバッハ決戦に向け極秘に建造されていた巨大戦艦。ロンディバルドとジーマ技術陣が造り上げた究極的な戦艦で、宇宙に一隻しか存在しない。
グランヘイム級・・・大海賊ヴァランタインの愛艦。ボイドフレームを備え、任意にゲートイン・ゲートアウトが可能になっている。また、主力兵器として反物質砲『ハイストリームブラスター』を搭載している。
カッシュオーネ級・・・銀河連邦で広く活動している海賊たちの旗艦。ゼオスベルトユニオンやロンディバルドへも勢力を持つため、航続能力が高い。
グランカイアス改級・・・主人公が対ヤッハバッハ及びオーバーロードとの決戦のためにグランカイアス級を再設計した戦艦。
対多戦闘能力を極限まで追求し、兵装はほぼ全てが拡散プラズマ砲である。グランヘイム級と同じくボイドフレームを備えているが、技術的な問題により建造できない。設計図は完成している。
また、グランカイアス級と同じく主力兵器として反物質砲『ハイストリームブラスター』を搭載する。
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