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IS《インフィニット・ストラトス》~星を見ぬ者~

作者:白さん
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第二十八話『漆黒狂乱』

学年別トーナメントまであと数日と迫り、学園も盛り上がりを見せ始めたこの頃。当のスウェンは未だにパートナーを見つけられていない状態であり僅かながら焦りを感じ始めた。

そして放課後の事


「スウェンさん、少しよろしいかしら」

「?」


廊下でセシリアに呼び止められたスウェンは足を止め、セシリアの方を向く。


「この後お暇ですか? もしよろしければ模擬戦をお願いしたいのですが」

「すまない、俺はこれから格納庫へ行く予定だ。俺宛に荷物が届いたらしいのでな」

「そうですか……残念ですわ」

「織斑でも誘ったらいいだろう」


ポケットに手を入れたままスウェンは言う。セシリアはその言葉に首を横に振り


「一夏さんも予定があるらしいですの。仕方ありませんわね、私一人で特訓をする事にします。それでは失礼しますわ」

「ああ」


アリーナへ向けてセシリアは歩いていった。


「……そろそろ行くか」


セシリアの姿が消えるのを確認すると、スウェンも自分の目的地へと向かう事にした。




/※/




「あら? わたくしが一番乗り……という訳ではありませんね」


アリーナの入り口へやって来たセシリアであったが、どうやら先客が居たようだ。


「奇遇ねセシリア。あたしはこれから月末の学年別トーナメントに向けて特訓するんだけど」

「あら、本当に奇遇ですわね。わたくしも全く同じですわ」


互いに視線を反らさず睨みあう。そしてゆっくりとアリーナ内へ入って行き


「ちょうど良い機会だし、この前の実習のことも含めてどっちが上かはっきりさせとくってのも悪くないわね」

「珍しく意見が一致しましたわ。どちらの方がより強くより優雅であるか、この場ではっきりとさせましょうではありませんか」


セシリアと鈴音はそれぞれIS展開し互いの武器を構える。


「ほう、中国の甲龍とイギリスのブルーティアーズか」

「「!?」」


二人は声のする方を向く。そこに居たのは、灰色のISスーツを身に纏ったラウラであった。


「あんた何時からそこに居たのよ」

「始めからだ。貴様等がそれに気づかずにここへ来ただけの事だろう」


呆れ返った声を上げるラウラ。セシリアは一歩前に出て


「ラウラさん、貴女のその眼帯、何処かで見たときがあると思って調べましたの。どうやら貴女はドイツの特殊部隊シュバルツェ・ハーゼの隊員だったようですね」

「シュバルツェ・ハーゼ!? あんたあの部隊の隊員なの!?」

「ああ、そうだ。まさか我が隊の事を知っているとはな、過小評価はしていたが少しは評価を上げても良さそうだ」

「あ、あんたねぇ……」


ラウラの言葉が癪に障った鈴音は「ふん」と鼻を鳴らし


「あんたみたいな頭かたそーな隊員が居る部隊じゃどうせ隊長も大したことないんでしょうね」

「最強の部隊なんて言われてる様ですけど、所詮名ばかりなのではありません?」

「何……?」


先程の二人を見下すかの表情から一変し、何時もの冷たい表情からは考え付かない怒りの形相へと変わっていた。ラウラはレーゲンを展開、装備の最終安全装置を解除し鈴音にレールカノンを放つ。

間一髪で鈴音は空中へと飛び、回避に成功した。


「ちょっと! 危ないじゃない!」


鈴音は指を指しながら言う。ラウラも鈴音と同じ高度まで飛び


「見せてやろう……私とレーゲンの力を……」




/※/





「あれ? 一夏と箒だ」

「おう、シャルル」


アリーナへ続く廊下でばったりと鉢合わせたシャルルと一夏と箒。


「お前もアリーナに行くのか?」

「うん、トーナメントも近いしね。特訓しようかと思って」

「私達も同じだ。ところでスウェンは居ないのか?」

「用事があるって言って、格納庫に行ったよ」

「へぇ~、そうなのか……ん?」


なにやらアリーナの方が騒がしいと気づいた一夏。シャルルと箒もそれに気づき


「何だろう……何かあったのかな」

「わからん。早く行くとするか」


一夏達は走りゲートをくぐり、観客席へと到着した。その時、目の前で爆発が起こった。


「何だ!?」

「一夏! 箒! あれ!」


シャルルの指を指す方向には鈴音とセシリア、そしてその向かいにはラウラが居た。





「じょ、冗談でしょ……」

「まさかラウラさんのISにも“アレ”が搭載されているなんて……」

「どうした? もう終わりか?」

「くっ! このぉー!!」


双天牙月を構え、ラウラ目掛けて突進する鈴音。ラウラは僅かに笑みを浮かべ


「愚かな……“シュヴェルドストライカー”!!」


そう叫ぶと、左肩に装備されているレールカノンが一瞬にして消え、両肩に黒い剣……ソードストライカーの装備。シュベルトゲベールを思わせる大剣が装備される。ラウラはそれを両方抜くと、ビームの刀身を発生させる。


「はぁあ!!」

「ふっ!!」


向かってきた鈴音の振り下ろした双天牙月を両手に持った“ティーア・ナーゲル”で受け止める。


「踏み込みが……甘い!!」

「っ!? きゃあ!!」


ラウラは一旦後ろへと引き、鈴音は一瞬の隙が生まれそこをティーア・ナーゲルによって切り裂かれた。鈴音は攻撃を受けながらもラウラと距離を離す。

空中に居たセシリアは鈴音がラウラから離れたタイミングを見計らい、スターライトmkⅢをラウラへと放つ。


「ちっ……」


ティーア・ナーゲルは粒子化し、両肩のアンロックユニットには鋭い形状をしたスタビライザーが付いた大型の、脚部には小型のブースターがそれぞれ装備され、右手にハンドレールガンを手にする。

ブースターで加速し姿勢を変えつつレーザーを回避、左腕にプラズマで形成したブレードを展開しそのままセシリアへと接近する。


「たぁああ!!」

「ッ!!」


プラズマブレードによる薙ぎ払いをかわしたセシリア。だが、ラウラは脚部のブースターを吹かし身体を回転させ勢いの付いたままセシリアを蹴り飛ばす。


「どうだ?“シュツルムストライカー”の加速力は」






「何という力だ……」

「まさか……あれって……」

「間違いない……ラウラのIS、シュバルツェア・レーゲンには“ストライカーシステム”が搭載されてる」


一夏達はラウラの戦い方とそのISに驚愕する。しかし、ラウラの行動はあまりにも度を越している。ラウラの容赦の無い攻撃は二人を襲い、シールドエネルギーは瞬く間にに減少し機体維持警告域を超えかける。


「もう止めろよ! 勝負は付いてるだろ!!」


ステージと観客席との間に展開されているエネルギーシールドによって一夏の声はラウラには届かない。


「くっ! こうなったら!!」


一夏は白式を展開し零落白夜を発動させてアリーナのシールドを破り、ラウラへ迫る。


「このぉおお!!!!」

「織斑……一夏」


鈴音達への攻撃を止め、シュヴェルドストライカーへと換装。ティーア・ナーゲルと雪片弐型との鍔競り合いが繰り広げられる。


「まさか貴様自ら向かってくるとはな。感心したぞ?」

「お前……何でこんな事を!」

「貴様には関係無い事だ!!」


ラウラは一夏を蹴り飛ばし、ティーア・ナーゲルの背を合わせ合体させビームの出力を上昇させる。ラウラは両手でティーア・ナーゲル構え、一夏に振り下ろす。

だがそれよりも先に、ラウラの頭上から銃弾が降り注いできた。ラウラは直ぐに回避行動を行う。


「一夏! 二人を!」

「ああ!」


一夏はセシリアと鈴音を抱え、瞬時加速によりラウラから一気に距離を離す。シャルルはラウラと対峙する。


「模造品が私の前に再び立つとはな」


ラウラはシュヴェルドからシュツルムへと換装しハンドレールガンを構え、シャルルは両手にアサルトライフルを構える。


「……模造品にだって……意地はあるんだよ!!」


 
 

 
後書き
この作品でラウラの使用するレーゲンの設定は近日公開いたします。

次回シャルルVSラウラ、お楽しみに! 
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