ペルソナ4 プラス・エクストラ
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#03
旧校舎の扉をくぐって霧が立ち込める空間に戻った青野達はさっそく周囲の探索を始めた。
霧が深く足元すらまともに見れなかったが、それでも注意深く辺りを見るとそこはまるでテレビ局のスタジオみたいな場所だと分かる。
「何なんだこの場所は? 改めて来るとやっぱり変な場所だよな」
「それにやっぱりジュネスに帰れそうなところないよ」
「落ち着け。まずは辺りを調べてみよう。……青野とキャスターもいいか?」
悠が陽介と千枝に声をかけた後、北斗とキャスターに聞くと二人とも頷く。
「ああ、それでいいと思うぞ」
「他にあてもありませんからね。まずは調べることが大事かと」
「よし、行こう」
悠の言葉を合図に五人は探索を開始した。
※※※
それから北斗達五人は特にあてもなく周囲を探索しているうちに、今までとは雰囲気がことなる場所にたどり着く。さっきまではまるでテレビ局のスタジオみたいな場所だったのに、今いるのはマンションが建ち並ぶ住宅街のようで、それを見た北斗が呟く。
「なんだか急に雰囲気が変わったな?」
「ええ、それになんだか人がいたような気配も感じます。……これはあの辺りかと」
北斗の言葉に頷いたキャスターは何かに気づいてマンションの一室を指差す。
「そんなことも分かるのか?」
「スゲー、魔術師スゲー」
「いや、確かにそれは凄いけど、何でキャスターさんってばそんな格好しているの? ……コスプレ?」
悠と千枝が感心する横で陽介がキャスターの姿につっこむ。確かにキャスターの格好は露出が多い着物に狐の耳に尻尾で、一般人というのは苦しいだろう。
「失礼な! これはサーヴァントとしての私の正装です! この狐耳も尻尾も私自慢の自前です! 次に偽物扱いしたら灰も残らないくらい焼きつくしますよ!?」
「す、すみませんでした……」
自分の格好をコスプレ扱いされたキャスターが尻尾を逆立てて烈火のように怒り、それを北斗がなだめる。
「落ち着けよキャスター。……そういえば説明していなかったな。キャスターは魔術師ではなくてサーヴァントというムーンセルによって実体化した英雄のデータを持つ電子生命体で、いうなれば現代に甦った英雄というところだ」
『英雄?』
声を揃えて驚く悠達三人にキャスターが自慢げに胸を張る。
「ふっふーん。その通りです! キャスターというのは仮の名前。その正体は由緒正しい日本の英雄なんですよ。……まあ、英雄の前に『反』がつきますが」
「反? 反英雄?」
「お、おほほ……。その話は後にして今は調査を続けましょう」
悠達の視線から逃げるようにキャスターはマンションの部屋へと向かっていった。
※※※
キャスターに案内された部屋は異様な部屋だった。
基本は落ち着いた女性らしい部屋なのだが、壁には顔が切り抜かれたポスターが無数に張られていてそこから怨念めいた迫力が感じられた。
「なんだこの部屋は?」
「呪殺のプロから見てこの部屋から感じられる怨念はかなりのものかと。ちゃんとした呪殺の作法を知っていたら人一人は簡単に殺せそうですね」
キャスターの物騒な独り言を無視して北斗が部屋を見回すと、天井から吊るされたロープとそれに繋がれた輪っか、そして椅子が目についた。
「この椅子とロープ……明らかにマズい配置だな。それにこの輪っか、スカーフか?」
天井から吊るされたロープを見上げて冷や汗をかく陽介の隣で、悠は部屋を見回してから首を横にふる。
「この部屋には出口らしきものはなさそうだな……」
「そ、そうだね。それにここ気味悪いし……。行こう。早くこの部屋を出よう?」
千枝に促され、青野達五人が別の場所を調べ行こうと部屋を出た時、彼らは「ソレ」と出会った。
ソレは子供くらいの背丈で、何かの動物をデフォルトした着ぐるみのような外見だった。
「き、君達は誰クマ!?」
謎の着ぐるみは驚いたように北斗達を指差す。
「喋った?」
「何だコイツ?」
「クマはクマクマ。ずーっとここに住んでるクマ! そんなことより、君達は早く『あっち』に帰るクマ」
陽介と千枝の質問に、クマと名乗る着ぐるみは何かに怯えるように辺りを見回しながら答えると、悠に何かを押しつけるように手渡した。
「……これは、眼鏡?」
「そ、それを使って早く帰るクマ。じゃないとシャドウが、シャドウが……」
そこまでクマが言ったところで……、
ぐぅおおお……!
何処からか獣のような声が聞こえてきた。
「シャ、シャドウが来たクマーーーーー!」
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