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トーゴの異世界無双

作者:シャン翠
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第四十八話 壊したのは……オレじゃないよな?

「なあおい」


 闘悟は未だ目が飛び出るほどの表情で固まっている、吹き飛ばされた男の子分に向かって話しかける。
 しかし、反応が無い。
 そこで今度は強めに言葉を掛ける。


「おい!」


 すると、その声に気づいたのか、ようやく子分の二人が闘悟を視界に入れる。
 だが次の瞬間、腰を抜かして怯(おび)え始める。
 闘悟の魔力を感じてしまったせいだろう。
 闘悟は魔力を抑える。


「なあおい、今さ、アイツ吹き飛ばしてドア壊れたんだけどさ……これ、お前らが弁償しといてくれる?」


 闘悟は笑顔で言う。


「へ? だ、だってこれはおま……ア、アナタ様が……」


 ガリガリ男が体を震わせながら言う。
 いきなりお前からアナタ様に格上げされてしまったみたいだ。


「おいおい、殴ってもいいって言ったのはお前らだろ? アイツがもう少し踏ん張れば、ドアは壊れなかったよな?」
「で、でもっすね……」
「壊れなかったよな?」
「…………はいっす」


 闘悟の笑顔の威圧感に、とうとう観念した。
 怯えてる二人をよそに、闘悟はまだ続ける。


「ああ、そうそう。お前らに頼みがあるんだけど……聞いてくれるよな?」
「へ?」
「聞いてくれるよな?」
「「…………仰せのままに」」


 闘悟は部下を二人手に入れた。
 ゲームならそんな文字が浮かんでくるのかもしれない。
 二人は片膝を立てて忠誠を誓っていた。
 だがその顔は、間違いなく青ざめていた。





 闘悟は子分達に話をしていたところ、ようやく正気に戻ったのか、アンシーがハッとなって闘悟に視線を送る。


(本当だったんだ……トーゴ・アカジ……)


 闘悟が最初に書いたプロフィールを見ながら心の中で呟く。
 ジュネイの言っていたことがようやく真実なのだとアンシーは納得した。
 その時、二階から誰かが下りてくる足音が聞こえた。
 その正体は、ジュネイその人だった。
 少し不機嫌そうな表情をしている。


「何だい何だい、何の騒ぎだい?」


 ジュネイは一階の騒ぎで、落ち着いて仕事ができないと気分を害したようで、その原因を突き止めようと思い一階に降りてきた。
 ジュネイは、視線を入口のドアの方に向ける。
 その先に、倒れている男に気づき、目を開く。


(あやつは……)


 そして、再びギルド内に視線を戻して、今度は闘悟の存在に気づく。
 闘悟の傍にへつらうようにしている男達を見て、ジュネイは何が起こったのかを把握する。


(やれやれ……)


 面倒そうに溜め息を吐いてから、アンシーに向かって声を出す。


「どうやら、とんでもない奴が入って来たようだね」
「えと……でも、トーゴさんは、あの人に絡まれただけで……」
「そんなこと分かってるよ」


 アンシーが闘悟の立場を擁護(ようご)しようとした時、それを見抜いたようにジュネイは言葉を放つ。
 そして、未だ子分達と話している闘悟にキッと視線を送る。


「カードができたよ!」


 闘悟はその声にピクッとなる。
 視線を受付側に送ると、そこにジュネイの姿を見つけて、少しバツが悪い顔つきをした。
 ドアを破壊したことを怒られると思い、申し訳なく思った。


「じゃあ、そういうことで頼むぞ?」


 子分達に話の締めくくりを決める一言を言う。


「へ、へい!」


 子分の二人は元気よく返事をした。
 この数分で、すっかり闘悟に逆らう気持ちは失せていた。
 闘悟は怒られることを覚悟決めて、ジュネイが待つところまで行く。


「まったく、登録初日くらい静かに過ごせないのかい?」
「はは、ホントに申し訳ありません」


 闘悟は素直に謝った。
 非は完全に闘悟の方にある。


「あ、でもしっかり弁償はしますから」


 アイツらが。
 とは言わなかった。


「当たり前だよ」


 ジュネイがそう言うと、テレホンカードのような物を見せてきた。


「これがギルドカードだよ」


 闘悟は受け取り礼を言う。
 触った感じは金属板みたいだった。
 そこにプロフィールがざっと書かれてある。


「さて、これで依頼を受けられるよ。さっそく受けるのかい?」
「あ、はい。ちょっと受けたい依頼がありましてね」
「ほぅ、どんな依頼だい?」
「ちょっと待って下さい」


 闘悟はそう言うと、掲示板の方へ足早に行き、目的のものを探す。


「ん~と…………あ、あったあった!」


 闘悟は掲示板に貼ってある依頼の紙を剥ぎ取り、またジュネイの所へ戻って来る。


「これです」


 闘悟から差し出された紙を受け取りジュネイとアンシーは目を移し目を大きく開く。


「え? こ、これ……ですか?」


 
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