FULL魔法ブリッツ学園~魔法使「えな」い~
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むしろ今からが2度目な気がする
「つか校長、今日じゃないですか!? しかも今からじゃ間に合わないですよね!?」
白々しくも、校長は遠くを見るようにだんまりを決め込んでいる。そのさなかに、一度地面が緩やかに揺れた気がした。そして、微弱な電撃が体を通り抜ける。あぁ、奴が来た。
「揺れたね。揺れるのは女の子の乳だけで良い」
(この人、いきなり何言ってんの?)
「しかし、ちっぱいも捨てがたい」
(このロリコンめっ!!)
「黙れ童貞!! 貴様に何がわかる」
「なんかごめんなさい」
でも、あんたが校長に向いてないことだけは良くわかる。
「うむ。わしもそう思う」
あぁ、つっ込むのも面倒だから、放置しよう。
「君、意外とつれないねぇ」
もう一度、次は地面が突き上がるような揺れ方をする。揺れの間隔が次第に早くなり電撃も強さを増してくる。あまりの痺れと揺れで立つのもままならなくなった。校長が甘い声を上げながら机の下で丸くなったので、命からがら四つん這いで机の下に移動した。
「麻義、この痺れが癖になりそうだよ」
「校長失格と言うよりも、人間失格っすよ」
「恥の多い生涯を送ってきました」
「さすが校長、その台詞に違和感ゼロですね」
とんでもない揺れと同時に体を通り抜ける電撃が、校長室をノックする音と共に治まった。しかし、校長は意外にテンパっているのか返事を返さない。すると、またノックが聞こえる。なんてタイミングの悪い来客なんだろうか。
「おーい、麻義はここか? ブリッツから来てやったぞ」
ドアの向こうから辻の声が聞こえた。やはり奴も今日から選抜交換なのか。俺は辻に会えない。それは校長も知っているはず、俺は帰って貰うように念じた。
「はいりたまえ」
とち狂った校長が彼女を迎え入れた。
「えぇっ!!」
驚きを隠せずに立ち上がると、机の下に俺を仕舞い込んだ。同時にドアが開く。
「校長、選抜交換でお招きいただきありがとうございます」
辻らしからぬ、真面目な挨拶だった。
「いやいや、こちらの腐ったミカンの代わりに君の様な優秀な生徒を招き入れれるんだ。こちらの方こそありがたい話だよ」
「お気づかい、痛み入ります」
「ところで、麻義を探しているのかね?」
「はい、少し殺したい野暮用があるので」
殺すと言う概念に、少しと言うものが適用されるなら、今よりずっと世界は平和だろうが!!
「全くその通り」
校長、今のはどっちに向けた賛成意見だよ。
「で、魔法つか榎井くんはどちらに?」
なんでお前が俺の、魔法小学校でのあだ名を知ってんだよ。
「あいにく、彼も交換選抜の一人なんだよ」
「なるほど、てっきり机の下で震えているのかと思いましたわ」
こいつ、業とか? いや、辻が知っているなら、俺は即死している。
「まさかだよ」
「では麻義ーしんじはブリッツにいるのですね」
何で中学校の時のあだ名をお前が知ってんだよ。お前、辻ぺディアかよ。
「さっきからユニークなミドルネームだね」
「麻義ーに関しては、魔法が使えない苦しまぎれに、手品を披露したからだとか」
「君はなんでも知ってるね」
「なんでもは知りません。知ってることだけ」
なるほど辻キャットんの方だったか。長らくの社交辞令と会話をひとしきり終えると、辻は退室の言葉を口にした。
「では、失礼します」
「うむ。模範となるように努めてくれたまえ」
辻は、ドアを置けると思い出したように言葉を付け足す。
「あ、そうそう。刺客を送るとお伝えください」
その言葉を残し、「ごきげんよう」と扉を閉めた。とても穏やかな話ではなかった。どちらかと言うと、身震いさえしてしまいそうな内容を、通勤ラッシュのように畳み掛けられた。怖いの意味のベクトルが七割がたは違うけどな。
「ってか。さっきのやり取りは、なんですか?」
「気にするな」
「気になります」
「気になるな。ただの世間話だ。悪意はない」
その顔、悪意に満ちてますが……。
「ところで刺客って刺す客のことですよね」
「そうそう、君の命日は来年の今頃だね」
縁起でもない。しかも刺客が来るのに、のこのことブリッツ学園に行くとかどこのドMだよ。
「そうと決まればすぐ行きなさい」
「いやです」
無理やり背中を押して、校長室から叩き出されそうになったので、ドアノブにしがみついた。
「絶対?」
「絶対!!」
突然、校長は俺から手を離して、嫌な笑いを浮かべた。
「ばらすよ」
「えっ!? 何をです?」
もう一度、不敵な笑みを浮かべ懐から、とある写真を取り出した。これは一言で言うなら黒歴史っ!!
「ばーらーすーよー」
仕方なく、本当に仕方なく、この言葉が似合うほど仕方なく。俺はため息の後で、校長室を後にした。
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