ソードアート・オンライン~冥界を司る女神と平和の創り手~
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第1.5話 過去話 詩乃SIDE
「へぇ~、綺麗にしてるんだね」
「ただ単に物が無いだけよ。コーヒーでいい?」
「おう」
彼を座らせ私は台所に行く。
棚からインスタントコーヒーを取り出し、二つコップに淹れる。
お湯を沸かしているとあることに気付いた。
そういえばパジャマのままだ。
パジャマは緑色の地味なジャージで女子高生がパジャマにするのは少し変に思える。
溜息をつきお湯が沸くのを待つ。
「はい、どうぞ」
「ありがとさん」
彼にコーヒーを渡し、私も向かい側に座る。
彼が一口飲むのを見てから私も一口飲む。
うん、インスタントだ。
「椎名はどうして一人暮らしをするの?」
疑問に思っていてことを聞く。
「秋人でいいぜ。そうだな、まぁ、簡単に言えば償い・・・かな」
「え?」
償い、それがどういう意味があるのか私には一瞬理解できなかった。
彼は自分の過去を話してくれた。
ご両親と弟さんの話を。
子供なのにそんな辛いことを経験しているのに秋人はソレを受け止め事件と向き合ってる。
私には無い強さだ。
「ごめんなさい。そんな理由があるなんて・・・」
謝るしかなかった。
土足で彼の心に入り、聞いてはいけないことを私は聞いたんだ。
「いいよ、気にすんな。俺自身事件はもう受け入れたんだ。詩乃が気に病むことはないよ」
それでも、秋人は私を責めようともせず、笑って許してくれる。
やっぱり強い。
「秋人は強いのね。それに比べて私は・・・」
「・・・詩乃はどうして一人暮らしを?」
聞かれた。
一人暮らしの話を持ち掛けた時から来るかと思っていたが、いざとなると体が震える。
でも、言わなきゃ。
秋人は自分の過去を話してくれたんだ。
私の話もしないといけない。
それに・・・秋人には私の過去を知っといて欲しい。
そう思った。
「・・・いいわ。教えてあげる。でも、これを聞いたら貴方多分引くわよ」
私は話した。
父のこと、母のこと、そして5年前のあの事件と私が人を殺したことを。
話を聞き終えると秋人は驚いた顔をした。
それもそのはず。
11歳の子供が強盗犯から銃を奪い取り、それで人を殺したんだ。
引かない方がおかしい。
あのときの事件のことを思い出すといまだに吐き気を催すが今だけは堪える。
彼に無様な姿を見せたくはなかった。
「驚いた?引いたでしょ?」
自嘲気味に私は笑い秋人に問う。
「どうして、その話を俺に?」
「何故かしら?秋人が自分のことを話してくれたから・・・
いえ、秋人に隠し事はしたくなかったからね。・・・私は逃げてきたのよ。
私のことを知らない人しかいないこの土地に。でも、結局そのことがばれて学校でも一人よ。
元々一人が好きだからいいけど」
一人でいることに寂しさもないし悲しさもない。
別に平気。
でも、秋人に嫌われたと思うと涙が出そうになった。
でも、泣くのはみっともない。
一人でもいい、でも秋人には嫌われたくない。
秋人が席を立った。
出ていくのだろう。
彼がいなくなったら私はどうするのだろう?
泣くだろうか?
いや、泣くだろう。
そう思った時背後から誰かに抱きしめられた。
誰かはわかる。
秋人だ。
「な、何を!?」
あまりの出来ことに驚きを隠せなかった。
だけど、秋人に抱きしめられるのか心地いいと思えた。
「俺は強くなんかない。ただ事件のことを受け入れたに過ぎないんだ。
受け入れて自分への負担を減らしただけだ」
「でも、私は・・・」
「詩乃。事件のことは辛いだろう。俺にそれがどれだけ辛く苦しいのかはわからない。
でも、少しだけなら分かち合うことができる。詩乃が耐え切れなくなったら俺が受け止めてやる。」
今まで私にそう言ってくれた人はいなかった。
皆私が人殺しだと知ると手の平を返して私を罵り、蔑む。
だけど、秋人は違う。
私が人殺しだと知っても最初と変わらない態度で接してくれる。
「秋人は私を抱きしめてくれるの?こんな、人殺しの私を?」
「違う。詩乃は守ったんだ。詩乃の母さんを。人殺しじゃない。
仮に人殺しでも俺が抱きしめてやる。だから・・・今は泣け」
その言葉に私は耐えられなくなるのを感じた。
目から涙が溢れるのを感じる。
「・・・ありがとう」
ただ一言そう言って私は秋人の胸の中で泣いた。
秋人の温もりを感じながら。
後書き
なんか詩乃さんが乙女になってる気がする。
それでも気にしないでいこうと思います。
この先もこんな感じで主人公視点、詩乃視点という感じにします。
それでは次の更新を御期待下さい。
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