魔法少女リリカルなのは平凡な日常を望む転生者 STS編
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第20話 機動六課初任務
「………」
「どうしたのバルト?」
「なあヴィヴィオ、なのはの奴何かおかしくないか?」
「なのはお姉ちゃん?何処も変わらないよ?」
なのはとの密会?が終わって1週間。
その次の日からなのはは何事も無かったかの様に普通だった。いや、普通すぎた。
(おかしい………まるで平然を装う様に普通だ。あんなのなのはじゃねえ………)
と感じるもそれが正しいのかどうかバルト自身自信がなく、かといってフェイトやはやて達もその変化に気づいていないところを見ると自分の思い過ごしかもしれないと思ったバルトは特に何も言わなかった。
だが………
(あの時、なのはは………)
バルトは簡単に切り替えられずにいたのだった………
「ロストロギアの防衛任務?」
部隊長室。
姿勢を正した状態で話をしているはやてはいつもの関西弁ではなく。標準語で話していた。
『ああ。様々なロストロギアを移送する予定なのだが、その護衛を頼みたいんだよ』
「いきなりですね、部隊長の私も初耳の話なのですが?」
『本来であれば極秘で移送したかったのだがね………大体が第一級捜索指定ロストロギアばかりで、重要なロストロギアばかりなので護衛を付けることにしたんだ』
「そんなロストロギアの防衛を私達にやらせると言うことは………」
『………実は公には公表していないのだが、ロストロギアの強奪事件が3件ほど続いている』
「………犯人は?」
『黒の亡霊………』
「………と言うことや。明日午前10時からリニアレールにて防衛任務を開始するで」
そんなはやての一言になのはが挙手した。
「敵の詳細データは?」
「これや」
そう言って展開されるディスプレイ。
そこには黒い鎧で包まれた2種類のバリアアーマーがいた。
「これって………あの鳥みたいな方は無人?」
「不明や。転移を使ってきて捕獲すら成功していないため、この映像データだけが頼りや。武装なんかもここ10年のデータを参考にしているため増えている可能性もある」
戦闘データを公開しながらはやてがスバルの問いに答える。
更に操作し、違う映像が表示された。
「彼が黒の亡霊。………と言っても彼かどうかも怪しいんやけど。………見て分かる通り、顔はバイザーで隠してあるから分からへんけど、少なくとも人が使っている事は分かるやろ」
戦闘映像を流しながら説明するはやて。
「彼の戦闘はバリアフィールドとその硬い装甲で防御しながら攻撃。攻撃は大体4パターン。単発の魔力弾、弾速の速い魔力弾、強力な砲撃魔法、後は魔力刃での攻撃や」
「後、補足で説明させてもらうとバリアフィールドを張った状態で突っ込んで来る場合もある。これには注意してほしい」
はやてに続いて大悟も説明し、聞いていた皆が頷いた。
「他に質問は?」
その問いに今度は加奈が挙手し、立ち上がった。
「作戦目的はどうなるの?」
「第一優先はロストロギアの防衛、これが絶対厳守や。その中で出来れば敵を捕縛してほしい」
「難しい事言うわね………まあいいわ、了解」
そう言って加奈は席に戻った。
「それぞれの部隊の指揮はスターズがティアナ、ライトニングがエローシュ。リニアレール内での陸戦を対応してもらうで」
「えっ?それじゃあ空は?」
「空は神崎、なのはちゃん、フェイトちゃん、ヴィータ、シグナムに担当してもらうから。せやからキャロちゃん達新人達は空の事は気にせず戦ってな」
はやての言葉にミーティングを受けていた全員が頷いた。
「私とロングアーチはどんな状況にも対応できるように指示を出していくから、みんな頼むな。………それじゃあ今日はこれで終わり!!明日に備えゆっくり休んでな」
そんなはやての言葉でミーティングは終わりを迎えた………
「それじゃあ集まったわね」
ミーティング後、シャーリーによって集められた新人達。
………と言っても呼ばれたのはティアナ、スバル、エリオ、キャロ、ルーテシアの5人だけである。
「あなた達5人に嬉しいお知らせです!………本当は任務前に試してもらいたかったんだけど………まああなた達のデータはちゃんとインプットしてあるし問題ないはずよ」
「うわぁ………」
言葉が出ないのか、そう呟いてまじまじと新品のデバイスを見つめるスバル。
「みんな気を付けてね。私の先生みたいだった人が黒の亡霊と知り合いでね。もし今回の敵があの黒の亡霊なら今は立派な大人、かなり手強いよ」
「負けませんよ。それに話も聞きたいですしね。何でこんなことをしているのか、何を考えているのか………」
シャーリーの言葉にティナアが力強く答える。
「ティアも黒の亡霊を知っているの?」
「直接は知らないけど兄さんの親友だったウォーレンさんの相棒だった人よ」
「えっ?何でそんな人が?」
「分からないわ。だから私も気になるのよ………」
ティアナがそう呟くのを見て、キャロは1人難しい顔で悩んでいた………
「エローシュ君どう思う?」
「黒の亡霊の意図か?………取り敢えず狙っているロストロギアが何なのかはおおよそ検討はついた」
エローシュの部屋に集まるライトニングの面々。
エリオを除いた4人だ。
「ロストロギア、レリック。これを狙っているのかもな」
「レリック!?嘘!?」
「嘘じゃないよルーちゃん」
そう言ってエローシュは3人に見えるように映像を展開した。
「レリックは超高エネルギー結晶体。その用途は様々でそれは説明しなくても2人は分かっていると思う」
「「………」」
「えっ?どういうこと?」
「真白ちゃん、えっとね………」
1人分かっていない真白にキャロが教えながら話は続く。
「それでな、エクスとユニゾンしてレリックについて調べたら結構色々分かったぞ」
「エローシュ君、本当!?」
「時の記憶をそんなに使って大丈夫なの!?」
キャロとルーテシアがエローシュに迫る勢いで心配する。
「は、鼻血とか出たけど大丈夫。………むしろその後の真白ちゃんの張り手が効いたけど」
まさかそんなに心配されるとは思ってなかったエローシュは少しキョドってしまった。
「だ、だって鼻血出してたし、ちょうど風でスカートがめくれて………」
「流石のエローシュもパンチラ位じゃ鼻血出さないわよ」
「そうだ!ルーちゃんの言う通りだぞ!!」
「ごめんなさい………」
「いや、エローシュ君の日頃の行いが悪いんじゃないのかな………」
「オホン!とにかく分かったことだが………」
キャロのツッコミをスルーして無理矢理話を進める。
「まず1つ目だが、旧ベヒモスはレリックコアの爆発を最大に高める事によって爆発する事が分かった」
「ベヒモスをレリックで!?」
「そう。他にもルーの父ちゃんのゼストさんの蘇生等にも使えたりする万能なロストロギアだ。………まあ蘇生はスカリエッティだけしか成功例のデータは無かったけどな」
「それを狙っているのレイ兄が?」
「お兄ちゃんは違うって」
「でもレイ兄達と連絡取れないんでしょ?」
「………まあそうだけど」
「ご、ごめんキャロ!別に私もレイ兄達を疑っている訳じゃ無いんだけど………」
「だ、大丈夫だよ!!あんな優しいお兄さんお姉さんが悪いことしないよ!!」
涙目になりつつあったキャロにルーテシアと真白が一生懸命フォローする。
「………だがあながち間違いじゃない。どうやら前に起きた強奪事件のデータに不思議な映像があった。完全に残ってた訳じゃ無いんだが、そこに炎に包まれた黒い鎧の姿があった」
「えっ………」
「キャロちゃん、それって………」
「お兄ちゃんとアギト………?」
「ふぅ………」
「零治達とはまだ連絡が取れないの?」
「そう。キャロちゃんも駄目みたいで………全く何を考えてるんだか………」
夜、六課の屋上でコーヒーを加奈に手渡した大悟は加奈の隣にそのまま手すりに背を預け、加奈の連絡機器を見た。
「あの黒の亡霊は零治だと思う?」
「それは無いわね。だけど管理局にいるクレインが何の意図があってあの量産型のブラックサレナを出すのかが分からないわ」
「確かに………自分の懐に入る物をわざわざ襲うって言うのも訳が分からないよね………」
「一体私達の知らない所で何が起こっているのかしら………」
加奈の呟きに答える者は誰もいなかった………
「ドクターどうですか?」
『ああ、やはり明日レリックの輸送を行うそうだ。保管場所を変えるつもりなのだろう』
「でも何故クレインはこんなに回りくどい事を?」
『彼は今や世界的に有名な科学者だ。それに今管理局にいる彼にだって簡単に第一級捜索指定のロストロギアを手に入れることは難しい。だからこそ別な方法で手に入れようと考えたのだろう』
「それが………」
「黒の亡霊………」
『そうだね。………取り敢えず2人共家に帰還してくれ。2人が帰り次第明日の事についてミーティングを始める』
スカリエッティと話を終えたクアットロとディエチは、今現在いた駅ターミナルが見渡せる崖を後にしたのだった………
「で、今度の攻撃対象に機動六課が防衛にあたってるって本当なのかスカさん?」
「ああ、間違いないよ。スターズ、ライトニングだけでなく各隊長と後神崎大悟もいるみたいだね」
「まさに管理局最強魔導師オールスターですね」
そう言ってスカリエッティにコーヒーを差し出すウーノ。すっかり立派なスカリエッティの女房となっている。
クアットロ、ディエチが帰った後、早速明日の事について作戦会議を始める俺達。
有栖家の面々に加え、ダメっ子を含めたスカさん一家となっている。
因みにセッテ、オットー、ディードは今回はお留守番である。
というよりちょうど明日、学外授業で遠出するので置いてきたと言った方が正しいのだが………
「でもどうするレイ?僕達もやっぱり戦わないと………」
「それは駄目だ。バレたら俺達だけでなく六課の面々にも迷惑がかかる」
「じゃ、じゃあさ!変装して戦えば………」
「どちらにせよ魔法を使えば直ぐにバレる」
「ううっ、夜美は心配じゃないの!?」
「ライ、私達も気持ちは一緒です。だけど私達は決して正体をバレる訳にはいかないんです」
「星………夜美………」
「まあ大丈夫だって。別にガチで相手にするわけじゃないんだし………」
3人を安心させるように零治が語りかける。
「本当に気を付けてくださいね!」
「ピンチになったら僕達は後先考えずに出るからね!!」
「我等を犯罪者にせぬようにしっかりと頼むぞ」
「レイを傷つけたら全て燃やし尽くす………」
「気を付けるよ………ってか優理はいい加減にしろ!!」
暗い影を持つ優理に突っ込みながら零治は優理を揺さぶった。
キャロの一件があってから今回のように暗い影が優理を包む様な事が多くなり、有栖家の面々は毎度手を焼かれていた。
「まあ今回は零治君は陽動で、レリックの回収までの時間稼ぎだから問題無いさ。それに機動六課の面々がそんなに苦戦するとは思えないしね」
「まあなのは達を含め、大悟や加奈が負けることは思い浮かばないからな………」
「でもそれなら別に零治が出る必要無いんじゃないか?」
ノーヴェがマイカップのコーヒーを飲みながらそんな事を言う。
「そうもいかない。何が起こるか分からない以上、やはり陽動は必要。それに黒の亡霊が別にいることを示す必要もある」
「でもドクター、私達が成功しちゃったら機動六課の評判落ちちゃうんじゃ無いんスか?」
「そこはちゃんと考えてある。今回の要………いや、これから六課が防衛に入る際、要になるのはセインだ」
「………………はい?」
ビシッ!!と探偵みたいに指を指すスカリエッティにセインは口を開けたまま情けない声しかあげられなかった………
そもそもこんな状態で黒の亡霊が表に出たのは訳がある。
零治自身、それは必要な事だと気持ち的にも準備はしていたが、予想以上に早く、スカさんに提案された時は流石に慌てた。
出るまでも無いと判断出来れば零治も断る事もできるが、断れない内容であったため協力することになったのだ。
その内容とは………
「先日、ドゥーエの調べで最近管理局でレリックが横流しされていることが分かった」
原作を知っている零治にとっても見過ごす事が出来ない内容だったから………
翌日………
『それじゃあ皆、配置についたな?』
連絡を受けた新人10人がそれぞれ頷く。
『今回運搬するリニアレールは5両。その中心の1両に重要貨物専用車両がある。そこにロストロギアを保管しているんや。1両目と5両目には本局の魔導師が、私達はスターズが2両目、ライトニングが4両目に配置し挟むように重要貨物専用車両を守ってもらうで。この車両は普通の車両より堅固に出来ておるからそう簡単に外から攻撃して奪取するのは難しいはずや。それと見て分かる様に車内は資財の運搬にも利用されるため、かなり広い作りになっておるから、あまり訓練していない室内戦もこなせる筈や』
はやての説明を受け、それぞれ返事をする新人達。
『いい返事や。皆、気を付けてな』
そう言ってはやては通信を切った………
『新人の皆は配置OKや』
「うん、じゃあ私達もヘリでリニアレールを追うね。ヴァイスさんお願いします」
「了解だ」
ヴァイスがそう返事を返すとヘリのプロペラが大きな音を立てながら回り始めた。
「今回は私がリインとユニゾンするな」
「ああ、それで構わん」
「ヴィータちゃん、一緒に頑張るです!!」
「おう!!」
「………」
「なのは?」
「えっ、何?」
ヴィータ達が話している反対側の席で俯いていたなのはにフェイトが声を掛けた。
「大丈夫?」
「大丈夫だよ?おかしなフェイトちゃん」
そう言って笑うなのはだがその顔に少し影があることにフェイトは気がついていた。
恐らくはやてもその事に気がついていたが2人共特に言葉をかけるような事はしなかった。
(おそらくバルトさんの事だろうな………)
あの密会の後、なのはの後に部屋に入ったフェイトは布団に潜り込んで丸まって寝ていたなのはを見て、自分の思った様な展開にはならなかったのを感じた。
(あの時は聞けなかったし、その後も普通にしてたからあまり気にしなかったけど………)
だからこそフェイトもはやても最初は気がつかなかった。だが最近になってなのはの様子がおかしい事に気がついた。………というよりなのはの方が徐々に変わり始めて来たのだ。
例えば今みたいに俯く場面が度々現れ始めた。と言っても普通の人じゃ気がつかない変化だ。
それでもフェイトとはやては深くその話を持ち上げなかった。
気が引けるのもあるが、掘り返してヴィヴィオを含めた3人の中を壊したく無かったのだ。
(でも本当にバルトさんはカリムさんを選んだのかな………)
バルトに聞こうにも中々聞けないフェイトはモヤモヤとした気持ちとしばらく付き合うのだった………
「ふぁ………眠い………」
「ちょ、バルトさん何欠伸してるんですか!!シャキッとしてください!!」
「やかましい。今から気張ってたら本番で持たねえぞ」
「バルトさんの言う通りよ。バルトさんみたいに完全にリラックスしてなさいとは言わないけど少し落ち着きなさい」
「ギン姉………」
ギンガに言われ、しゅんとするスバル。
まさか注意したはずが、自分がダメ出しされるとは思わなかったスバルは2倍分のダメージを受けた。
「何をそんなに落ち込んでるのよ。落ち着きなさいって言われただけでしょうが………全く、スバルは直ぐ態度に出るんだから………しっかりしなさい」
「はぁ~い………」
まるで母親の様な言葉にスバルも普通に言葉を返す。
「ふふ………」
「加奈さん、人事だと思って………」
「まあティアナの苦労も分かるわよ。私の相棒も最強とか言われてるけど基本ヘタレで頼りないからね………」
「加奈さん、加奈さん!!何で加奈さんは大悟さんと付き合う事になったんですか!!」
そんな会話をした加奈にスバルがまるで抱きつくかと思われる程の勢いで聞くスバル。
「ちょっと今そんな話は………」
「私も聞きたいです!!」
そこにまさかのギンガまでも抱きつく勢いで加奈に迫る。
「ギンガまで………」
「………」
「はぁ………ティアナ、聞きたいならこっちに来なさい」
「!?わ、私は別に………」
「ティアは良いんだ………じゃあ加奈さんにとっても恥ずかしい話だと思うし小声で………」
「わ、私も聞くわよ!!」
スバルのからかう様な物言いに慌てて近づくティアナ。
「………先ず言っておくけど出来ればあまり広めないでね。本当にあの時の私って結構情けなかったから」
「はい」
「分かりました!」
「私も了解です」
3人の了承を得て加奈は付き合うきっかけの話を始めたのだった………
「さ、さあエローシュ君、ジョーカーを取れるものならとってみなさい!!」
「………何も知らない人に言っておきますがこれはババ抜きですから」
「誰に言ってるのエローシュ?」
さて、場所が変わってライトニングの守る4両目。
そこでは広い両の中心で6人の少年少女が円を組んでトランプをしていた。
「でもいいの………?こんなに呑気してて?」
「まあ大丈夫よ。私達はエローシュの指示に従ってるだけだから」
「ちょっとルー様?最初にやらないって提案したのはルー様では無くって?」
「うるさい、良いから早くしろ」
「エクスも普通に馴染んでるね………」
「エリオ、もう諦めたさ………エローシュの奴、俺の空間に干渉出来るようにしやがった。全く、魔力はノミみたいな奴だが、キチガイみたいな天才なのは確かだ」
「何で俺、こんなに貶されなくちゃならないんだろう………」
瞳に涙が溜まるも誰もフォローしない。
「いつもの事でしょ。早くしないとキャロが茹でダコみたいに真っ赤になるわよ」
そうルーテシアに言われ、キャロの方を見ると、キャロは表情を読まれないように、息を止めてムッとした顔でエローシュを睨んでいた。
「………キャロちゃんって時々かなり幼い時があるよね」
「というより素直なんでしょ………確かに表情は変わらないでしょうけど、長く続く筈が無いのに………」
結局耐えきれなかったキャロはむせてしまい、ルーが優しく背中をさすってあげた。
「エ、エローシュ君………」
「あ、ああ………」
ふらふらと、トランプの持った手をあげるキャロにエローシュは恐る恐るカードを引いた。
「あっ、揃った………」
結局、キャロの頑張りは無駄となってしまった………
『リニアレール、発車したわ』
「了解。………でも本当にいいのか、スカさん?」
『大丈夫、私の娘は優秀だからね』
「本当に大丈夫かな………」
1両目、車内………
(絶対無理だよ………)
椅子の下の床から目まで出し、辺りを見回すセイン。
零治達の作戦は単純。
黒の亡霊と零治、機動六課組が戦闘を始めると同時にセインが自身のISディープダイバーでレリックを盗み出す作戦だ。
セインはかなり反対したが、実際に機動六課の評判を下げずに遂行するには撃退したと思わせるのが一番で、今回レリック以外にも重要なロストロギアは多い。
完全に撃退した状態で盗まれても機動六課の評判はあまり下がらないだろうろ思ったからだ。
そしてそれを可能にできるのは………
(私だけだもんな………私のISがやっと役に立つと思うと確かに嬉しいけど、今回はな………)
実際セインは失敗できない。
それはレリックを確保できなかった場合ではなく、セインが捕縛され、身元がバレてしまうのだけは避けなければならない。
セインにとってそれが一番も不安だった。
(しかも2両目には加奈がいるんでしょ?なのに何でわざわざこっちなんだろう………)
始め、スカさんもセインも皆、キャロ達がいるライトニングの車両からだと思っていた。
室内であればキャロはフリードを大きく出来ず、ルーテシアは地雷王を出せず、戦力が下がるのだ。
だが………
「セイン、1両目からスターズを抜いて3両目に向かってくれ」
零治だけ違っていた。
「何故だい零治君?」
「ライトニングは確かに戦力的に比べても圧倒的に低いだろう。だけどエローシュ、アイツが不気味だ」
「まあ確かにあの変態は不気味っスよね………」
「お前が言うか」
「私は変人ってだけで別に不気味じゃないっスから良いんスよ」
ノーヴェの言葉もウェンディは動じない。
「彼に何かあるのかい?」
「変態は紙一重ってね。アイツ天才だ。まだ未知数って感じだけど爆発したら一番恐ろしい存在になるかもしれない」
「そこまで彼を買っているのかい?」
「私にも理解出来ないっス」
「まあ買いかぶりってのもあるかもしれないけど、アイツは避けたほうがいいと思います」
「………分かった。そういう事だからセイン」
「ええっ………」
と言った会話があり、今に至るのだが………
「やっぱり無理だよ………」
セインは1人、かなり弱気になっていた。
潜り込んだのは良いものの、1人で敵の真っ只中でかなり不安に押しつぶされそうになっていた。
戦闘経験も自分のISの影響で皆無に等しく、こういった仕事をこなしたことが無い状態でいきなり抜擢されたのだ。
「でもここまで来ちゃったしな………もうやるしかないか………頑張れ私………!!」
自分を奮い立たせながらセインはチャンスが来るのをひっそりと待っているのだった………
「ん?」
リニアレールが走り出して30分ほど。
バルトはふと嫌な感覚を感じた。
「どうしたんですバルトさん?」
「お喋りはそこまでだ。………来るぞ!!」
バルトがそう言った後、いきなりリニアレールが急停車した。
「はやてさん、どうしたんですか!?」
『やられた!!先の線路を破壊された!!一両目と五両目も寸断されてしもうた!!皆、来るで!!』
はやての通信の後、2両目の入り口が破壊され、外からぞろぞろと黒い鎧のバリアアーマーが入ってきた。
「黒の亡霊………」
「やられたわね。リニアレールがこの位置だと救援が来るのに時間がかかるし、線路を破壊されたら逃げようがない………」
「言っても仕方がないわ。1両目が突破された以上、これ以上突破されるわけにはいかないわよティアナ」
「分かってます。加奈さんは3両目の扉の前で守りを私がセンターガード、バルトさんはガードウィングでスバルとギンガさんがフロントアタッカーでお願いします!!」
そんな指示を1から説明している内に、ブラックサレナ目掛けて突進する男がいた。
「バルトさん!!」
「ティアナ!!のんびりと指示してるな!!訓練みたく敵は待ってくれねえぞ!!」
ヴォルフバイルを横なぎに振るい、敵を吹っ飛ばす。
「それにここは広いと言っても車両の中だ!!それを忘れんな!!」
「は、はい!!」
そう言って向かってきた敵をティアナの新デバイス、クロスミラージュで地面に叩き伏せ、脳天に向かって連続で魔力弾を与えた。
いくら弱い攻撃でも一点に集中的に攻撃すれば攻撃は通る。
ティアナの射撃は少しの狂いもなく同じ場所に着弾した。
「凄い………始めてのはずなのに前のデバイスよりも使いやすい………」
そんな驚きを抱きながらも次々に向かってくるブラックサレナに魔力弾を発射するティアナ。
しかし元々の魔力の低さを変えているわけではなく、攻撃が追い付いていかない。
「くっ………!!」
「ティア!!」
そんなティアナにスバルが駆け付け、刃を向けてきたブラックサレナを吹っ飛ばす。
「凄いよマッハキャリバー!!前のデバイスよりもずっと速い!!………リボルバーキャノン!!」
リボルバーナックルのスピナーの回転によって巻き起こる衝撃波をそのまま拳に纏わせ、その拳でブラックサレナを殴りつけた。
「インパクトバンカーより威力は無いけど、これで!!」
インパクトバンカーは一点に魔力を集中して打ちだし、一点に攻撃するのに対し、リボルバーナックルは衝撃波を纏わせ殴りつける。そのため、その衝撃波が広範囲に伝わるのだ。
「スバル、あんた何で!!」
「ティア、こうなるともう混戦でやるしかないよ!!加奈さんの方はギン姉がフォローしてる。バルトさんは先頭で暴れてるから私達は突破してきたブラックサレナの相手をしよう!!」
「………そうね、そっちの方が最善ね」
ティアナは背中合わせにそう言い、魔力弾を発射した。
『みな、それぞれその場での対応をお願い、ギンガさんと加奈さんは何としても3両目に敵を通さないで!!』
『『了解!!』』
『バルトさんは暴れまくって!!私達を楽させて!!』
『良いのか?俺は手加減を知らねえぞ!!』
『車両を壊さなければよし!!』
『思いっきりの良い女は好きだぜ!!分かった、乗ってやるよ隊長!!』
そんな念話が返ってきた後、大きな爆発が巻き起こった。
「………大丈夫かなバルトさん」
「………大丈夫だと思う」
そんな不安を抱きながらもなお向かってくるブラックサレナを相手する2人だった………
「はあ!!!」
エリオのデバイス、ストラーダの斬撃がブラックサレナの装甲を斬り裂く。
しかし固く分厚い装甲にエリオの刃も浅くしか入らない。
「くそっ!!」
「フリード、ブラストレイ!!」
「キュー!!」
小さなフリードが連続で炎弾を発射し、動きを止める。
「ガリュー!!」
そして動きの止まったブラックサレナにガリューの拳が直撃し、後ろにいるブラックサレナを巻き込み、吹っ飛ばした。
「よし!!」
「ルーちゃん、駄目だ、大したダメージを与えられてない」
「うそ!?あれでも駄目なの!?」
「エクス、クリスタル展開もっと!!」
『分かってる、落ち着け!!お前は皆のブーストに集中しろ!!』
エローシュは1人皆のブーストと防御と足止めの為の障害物、クリスタルと言った大きなスフィアを複数展開し続けていた。
「真白ちゃん、カウント3…2…1…皆、バック!!」
「サンヴァルカンカノン!!」
スカイシャインの先端に集束した魔力を発射。
ブラックサレナの中心辺りに行くと大きな音と共に破裂し、散弾した魔力弾がブラックサレナ達に向かって襲いかかる。
「よし!!引き続き、集束。同じパターンを続けるぞ!!」
エローシュの指示の元、再びライトニングの面々が動き出した………
「フェイトちゃん!!」
「任せて!!プラズマランサー!!」
なのはの掛け声と共にフェイトが同時に発射した4発の砲撃は全てブラックサレナのフィールドを貫いて直撃した。
「ヴィータ、突撃してくるぞ!!」
「うっとおしい!!」
『打ち返します!!』
フィールドを張って突撃してくる飛行型のブラックサレナを巨大化したハンマーで打ち返すヴィータ。
打ち返したブラックサレナは他のブラックサレナを巻き込んで爆散した。
「大悟、数が多い!!これじゃあ新人達を援護出来ない!!」
「スターズは加奈ちゃんやバルトさんがいるから大丈夫だと思うけどライトニングは………!!」
「くっ、まだ転移してくるか!!どけええええ!!!」
魔力をチャージして伸びた大剣を振るい、ブラックサレナ達を破壊していく大悟。
だが次から次へと転移してくるブラックサレナに空中で足を止められたままになっていた。
(もしかして敵の狙いは………だとしたらライトニングが………!!)
大悟が4両目に向かおうとするが立ちはだかるブラックサレナ。
「大悟君!!」
そんななのはの声が聞こえ、急停止する大悟。
そこに立ちはだかっていたブラックサレナが砲撃魔法に包まれた。
「これは………!!」
発射された方向。
視線を向けるとそこにはブラックサレナと同じだがバイザーをつけた魔導師がいた。
「黒の亡霊………」
「ユニゾン・イン………」
小さく呟くと黒の亡霊の鎧が代わり、漆黒の鎧から体の関節部分から炎が吹き出した。
「さあ、始めさせてもらう………」
そう呟くと、黒の亡霊もとい、有栖零治が動き出した………
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