久遠の神話
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第四十二話 表と裏その四
「上城君、今度はです」
「今度は?」
「鯨自身を凍らせてくれますか」
「鯨をですか」
「はい、今動けなくなっている鯨をです」
「徹底的に凍らせるんですね」
「そうです」
まさにだ。そうするというのだ。
「そしてそのうえで」
「神父さんが攻撃をするんですか」
「装甲の様な皮を攻撃するよりはかなり効果があります」
「ですが氷ですと鎌ィ足は」
効果はこのままよりも薄いのではとだ。上城は問うた。
「違いますか?」
「風は一つではありません」
だが、だった。大石は怪訝な顔で問う上城にこう言ったのだった。
「それは決して」
「一つではないですか」
「はい、ですから」
それでだというのだ。
「鯨自身を凍らせた後はお任せ下さい」
「わかりました。それじゃあ」
「鯨自体を凍らせることはできますね」
「はい」
それは可能だとだ。上城はこくりと頷いて答えた。
「それはできます」
「それならです」
「今からですね」
「お願いします」
大石は上城の顔を見てこう言った。
「その様に」
「わかりました。それじゃあ」
上城は再び頷いてそれからだった。
もう一度その剣を振り被りそうしてだった。その氷の柱を今度は鯨自身に当てた。それによって鯨は氷の塊になった。
その鯨にだ。大石はというと。
その剣から風を出した。今度の風は。
巨大な、十メートルはある竜巻だ。それを出してだった。
氷になった怪物を襲う。そのうえで。
竜巻は生き物の様に暴れ回り怪物を砕いた。氷になったそれを。
それが終わった時怪物の欠片は消えた。後に残ったのは。
まだ凍っている海面、それにだった。
その上には黄金があった。二人は凍った海面の上にあるその黄金の前に並んで降り立った。それからだった。
上城は大石に対してだ。こう尋ねたのである。
「この黄金は」
「二人で倒しましたので」
「二人で、ですか」
「はい。ですが」
ここでだ。大石は微笑んで上城に述べた。
「私は贅沢には興味がありません」
「そうなのですか」
「ですから。私は一本だけは受け取らせてもらいますが」
「生活の為にですか」
「それも余った分は寄進です」
バチカンんだ。そうするというのだ。
「そうします」
「そうですか。実は僕もですね」
「上城君もですか」
「はい、お金にはあまり興味がないです」
このことをだ。上城は大石にはっきりと答えた。
「棒を一本貰えれば」
「そうですか。では私も一本」
「一本ずつですね」
「それで残りは」
「寄付ですね」
「はい」
そうするというのだ。残りの黄金は。
「多く持っていても仕方がないですからね」
「そうですよね。それじゃあ」
「残りの黄金はそうしましょう」
二人でこう話を決めた。それで黄金を手に取ってだ。
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