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有栖キャロの小学校物語

作者:blueocean
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第3話 1年1組はとっても良いクラスです

さて、私が小学校に入って3日経ちました。
クラスのみんなとも仲良くなれて、毎日がとても楽しいです。

「さあ皆さん、今日は昨日あった事を作文で書いてみて下さい。枚数は自由でいいですけど、最低1枚は書いてくださいね」

国語の授業、私はハッキリ言って苦手です。
算数と英語は得意なんですけど………

「ルーちゃん」
「何?」
「作文………得意?」
「苦手………」

やっぱり…………
私達はひらがなを覚えたばかりですし、漢字もまだ完璧には覚えていません。

「取り敢えずやれるだけやろう」
「そうですね」

私は作文に集中しました。




20分後………………

「出来たあああああ!!」

いきなりの大声にクラスのみんながビックリしました。
どうやら声の主はエローシュ君みたいです。

「先生、どお?どお!?」
「まだ読んでないわよ………」

呆れながら先生は作文に目を通し始めました。

「………………まあいいでしょう。しかしよく難しい漢字知ってるわねエローシュ」
「エローシュちゃいます!俺ってこんなだけど勉強好きで幼稚園の頃から天才で名が通ってたから」

うわっ、先生凄く驚いた顔をしています。

「何でそんな顔!?」
「だって、自分から天才って言うなんてね……………」
「そっち!?それと痛い子を見るような目で見ないで!!時々先生は俺の事をいじめてるのかと思っちゃうよ!!」
「…………………」
「反論しないの!?」

まあ先生があんな態度を取るのはエローシュ君だけだろうな…………

「いいから、後は寝るなりボーッとするなり好きになさい。だけどこの教室から出るのだけは駄目よ」
「うぃーっす」

そう言ってエローシュ君は自分の席に戻って寝始めました。
先生、流石に寝ていいよって言うのは駄目だと思います………でも………

「エローシュ君凄いね」
「私負けない、キャロは私の物」

ちょっと怖いんだけどルーちゃん……………





「昼飯ターイム!!!」

今いるのは中庭。
ここで5人で円を描いてお弁当を食べています。

「ちょうどいい気候ね。気持ち良いわ」
「そうですね、昨日は曇ってたので今日は特にそう思います」

そう言いながら私はお弁当を取り出しました。

「今日も星姉?」
「うん、そうだよ。本当はお兄ちゃんも作りたいって言ったんだけど、『お弁当は私が作ります!!レイは邪魔しないでください』ってお兄ちゃん追い出されてた」
「やっぱり星姉は強い」

私もそう思います。

「ねえキャロ、話に出るお兄ちゃんは一人だとして、お姉ちゃんは何人いるの?」

「えっと…………4人だよ」

「えっと、そうなると8人家族?」

「8人?家には6人しかいないよ」

「えっ、それって…………」

「そう、私の家には親がいないの」

そう聞くと、申し訳無さそうな顔をする夏穂ちゃん。
そんな顔、友達にしてほしくないなぁ………

「そんな顔しないで。私は今とっても幸せだし、何よりみんなに会えたから」

「キャロ………」
「素晴らしい………」
「いい子や!」

「エローシュにキャロは渡さない」
「フハハハ、私は欲しいものは必ず手に入れる!例え………あっ、ルーさん、俺のおかずそれ以上食べられるとご飯しか残らないのですが………」

「この世は弱肉強食、悔しかったら強くなれ」

「じゃあ、私はソーセージ」
「僕は、グラタン」
「あっ、なら私は卵焼きをもらいます」

「あああああ!?俺のおかずがあああ!!」

この世は弱肉強食です、エローシュ君。
あっ、卵焼き美味しいです。





「や、やめてください!」
「うるせえ!!いいからよこせ!!」

昼食後、トイレに行った帰り道、男の子の怒声が聞こえてきました。

私は声のした方へ行くと、そこでは一人の女の子が4年生位の男の子5人組に囲まれてい
ます!!

「か、返して!」
「見ろよ!こいつ生意気に高そうな宝石持ってるぜ!!」
「本当だ!すごい高そう!」
「お願いします、返してください………」

「へん、俺にぶつかった罰だ。これは俺が没収する」

「!?返して!!」
「うるせえな!!」

そう言って腕をつかんできた女の子を突き飛ばしました。
上級生なのに、なんて人達………!!

「何してるんですか!?」

私は注意しようと走って行きましたが、

「おい、これ以上は面倒だ行こうぜ」

そう言って男の子は行ってしまいました。
くっ、顔が分かりませんでした………

「大丈夫ですか?」
「ぐすっ………えっぐ…………有栖さん?」
「真白さん?」

絡まれていた女の子は真白雫さん。
私のクラスメイトでした。

いつも物静かで少しみんなから距離を置いているような子だったので、話すのは今回が初めてです。

「どうしたんですか?」
「私の大切な物を取られちゃって…………」
「大切なもの?」
「蒼色の宝石………」

そう言えば宝石がどうとか…………

「どうしよう………あれがないと…………」

目に涙を一杯に貯めて泣きそうになってます。
手伝ってあげたいけどどうしよう…………

「どうしたんだ!?」

そんなとき、慌てた様子でエローシュ君がこっちにやって来ました……………






「……………なんのつもり?」

五時間目の授業をしにきた細野先生が言いました。
教卓にはエローシュ君が立っています。

「先生ごめん、今から大事な話があるんだ。少し時間を貸してくれ」

いつもとは違う雰囲気のエローシュ君に私とルーちゃんは驚いてます。

「みんな聞いてくれ!!さっきの昼休みに俺達クラスの仲間、真白ちゃんが上級生の男の子5人組相手にいじめにあっていた。その時真白ちゃんの大切なものがその男5人組に取られた。これは俺たち1年1組に対しての宣戦布告だ!!俺は断じてクラスの仲間をいじめたやつを許せない!!だからみんな、俺と真白ちゃんに協力してくれ!!」

エローシュ君はみんなに頭を下げてお願いしています。
何かいつもと雰囲気が一転して同一人物か疑う程です。

エローシュ君の偽物………?

「気持ちは分かるけどエローシュよ。いつもはふざけてばっかのエローシュだけど友達の事になると真面目になるのよ」
「「へえ………」」

私とルーちゃんは夏穂ちゃんに説明されて一応納得しましたが、まだ信じられません………

「………何水臭いこと言ってるんだよ」
「そうだぜ、同じエロ紳士同盟の仲じゃないか」
「それにエローシュ君に振り回されるのはいつものことだしね」
「私もこのクラスのためなら力を貸すよ!」

男の子も女の子もみんな賛同します。
こんなにエローシュ君は信頼されているんだ…………

本当にただのエッチな変態さんじゃなかった。

「ありがとう、みんな。…………それじゃあ次の休み時間に作戦を………」

「いいわよ、このまま続けなさい」
「先生!?」
「本当は私が行きたいくらいだけど、あなた達が行くって言うなら私はそっちを尊重するわ。思いっきりやりなさい!後のことは全部先生に任せてね」
「ありがとう先生、大好きだ!!」

そう先生に言って、再びみんなの方へ向く。

「さあ、みんな、作戦会議を始めよう」

エローシュ君による作戦会議が始まった…………





放課後…………

今、私達は4年3組の前にいます。
人数はクラスの半分の男の子と女の子。

先生にお願いして、帰りの会を短縮。
4年3組が終わるよりも速く、こっちに来て待ち伏せています。

『勝負はあっちの担任が職員室に戻る前までに話をつけて、返してもらう。』

これが今回の作戦目的です。
佐助くんの調べだと、宝石を奪った男の子の親がPTAの役員らしく、しかもモンスターペアレントらしいです。
PTAとモンスターペアレントは意味が分かりませんが、エローシュ君と夏穂ちゃん、先生に佐助くんは険しい顔つきになっていました。
何か良くない要因なんだと思います。

「よし終わったぞ!」

4年3組のクラスの中が騒がしくなってきました。
どうやら帰りの会が終わったようです。

「よし、夏穂班、先生を確保!話が終わるまで絶対に教室から出すな!」

「「「「「「「「了解!!」」」」」」」」

「よしエローシュ班、今からターゲットに接触する!!」

『了解、武運を祈る。』

エローシュ君は耳に付けている小型マイクで佐助君に言いました。
佐助君は今は一人別行動しています。

何をしてるかは先生と夏穂ちゃんしか知りませんが…………
何でも特別任務らしいです。

って言うか小型マイクやカメラって学校に持ってきていいのでしょうか?

「行くぞ、みんな!!」

私達は4年3組の中に入りました。








「何だお前ら!!」

教室の窓側、そこに5人組の男の子がいました。

「真白ちゃん、あいつら?」
「う、うん、間違いない………」

真白ちゃんは少し震えながら答えます。

「そうか。おい、よくも昼休みは俺のクラスの仲間をいじめてくれたな!」

エローシュ君はわざといじめたって所を強調しました。
クラスに居た4年生達全員が注目します。

「おい、一体何を言ってるんだ?どこに証拠がある?」
「「「「そうだ、そうだ!」」」」

「この子がお前らを見ている」
「本当に俺か?お前は実際に見たのか?」

余裕の表情でリーダーの男の子が言いました。

「そう言うだろうと思ってたさ。だかな、お前らは一つミスをした。確かにいじめただけだと証拠を立証するのは難しい。だって誰も見ていなかったんだから。だけどな……………」

エローシュ君は一旦切って、名探偵みたいにリーダーの男の子に指を指しました。

「お前は真白ちゃんの大事なものを奪った。…………言わなくても分かるな?」

5人組はしまったって顔をしています。

「俺達の要求は2つだ。1つ目はそれを真白ちゃんに返して謝る。2つ目は俺達1年1組に一生関わらないだ。そうすれば今回は見逃す。……………どうする?」
「な、何を勝手な事を言ってる!!俺たちが持ってるとは限らないだろ!!」
「だったら荷物を調べてもいいだろ?もちろん服のポケットやロッカーの中も念入りにな」

凄いエローシュ君!!
確かに宝石が見つかればいじめは立証されたも同然。
見ているギャラリーも多いので逃げ場が無いです。

「ああ、宝石………確か………もしかしてこれか?」

そう言って大輝と呼ばれた男の子がポケットから、真白ちゃんの大切な蒼い宝石を取り出しました。
追い詰められているのにその余裕が少し気になります………

「あっ!?」
「返すのか?」

「ああ。………ほら返すよ!!」

そう言って窓から宝石を思いっきり投げました!!

「ああ!!」
「くははははははは、ざまあみろ!!これで証拠も無くなった!!俺がそこの女をいじめた証拠は完全になくなったんだよ!!ほらどうする?どうやって俺のやったことだって証明する?ガキンチョ?」

大笑いしながら大輝と呼ばれた男の子は言いました。

「狂ったか?俺達以外にも証人はいるんだぞ?」
「お前たちこそ甘い!俺の親はPTAの役員だ。それも上位のな。このクラスの先生含め、誰も俺に逆らえない!!」

そ、そんな!!
私は夏穂ちゃん達が確保している先生を見ると、夏穂ちゃんたちが止めているのを振り切って、教室から出ていました。

「さて、形勢逆転だな。どうする?全員で土下座したら今回の言いがかりを無かった事にしてやってもいいぜ?俺の母ちゃん容赦無いからな………覚悟しておけよ?………まあそこのクソガキ以外は許してやってもいいぜ」

エローシュ君を指さして言いました。
悔しい………何でこんな人に土下座なんて………
みんなもとても悔しそうです。

エローシュ君、どうするの?

「おい、どうした?せっかくチャンスを上げてるのに、不意にするつもりか?」

勝ち誇った顔でみんなに言います。
お兄ちゃん…………お兄ちゃんならこんな時どうするのかな………?

『俺は家族の為なら例え全てを敵に回しても戦う!!』

かつてお兄ちゃんの言っていた言葉を思い出しました。
そうだ、私だって友達の為に………
お兄ちゃん達にも迷惑を掛けるかもしれないけどごめんなさい………

「おいどうするんだよ!!!いい加減にしないと全員しめるぞ!!」
「謝るもんか………」
「ああ?」
「謝るもんか!!私は絶対に謝りません!!あなたみたいな人は大っ嫌いです!!!」

そんな私の大きな声に相手おろか、私のクラスのみんなも驚いています。

「ああ!?良いのか?お前だけで無く家族にも迷惑をかけることに………」
「私のお兄ちゃんお姉ちゃんは絶対に味方になってくれます。だって私のお兄ちゃんは家族の為なら全てを敵に回しても戦う人ですから!!それに………」

そう言って私はお腹に大きく息を吸い込んで………

「友達の為に戦えない弱虫には絶対になりたくないです!!!!」

そうしっかりと宣言した。

「………全く、大人しい子と思ってたけど怒ると凄いわね………だけど私は大好きよ」

そう言ってくれたのは夏穂ちゃん。
私の隣に来て、肩に手を当てました。

「そ、そうだ!!僕も友達の為に!!」
「私も!!」
「僕も!!」

私の叫びに皆が賛同してくれます。

「みんな………」

真白ちゃん、私達はあなたの味方ですよ………!!




「だ、大輝君、ヤバイんじゃない………?」
「お、俺今日用事あるからこれで!!」
「僕も!!」
「あ、待って!!僕も行く!!」

「あっ、おいお前ら!!」

リーダーの男の子の周りに居た男の子達はそう言ってさっさと帰ってしまいました。

「くそっ、1年生のガキにびびりやがって………だが、お前逹覚悟はいいな?もう、泣いて謝っても許さねえぞ!!」

そう言って携帯を取り出したその時でした。

『準備OKだ。』
「………………了解した」

エローシュ君が一人、前に出て、男の子と対峙します。

「さて、もういい加減終わりにするか。これ以上付き合ってもらうのも悪いしな」

いきなりエローシュ君がそんな事を言い始めました。

「何だ?いきなり壊れたか?」
「今、何時だ?」

えっとちょうど4時ですけど……………

「先生の話は聞いてるかい?先輩。今日はこの学校でPTAの会議をするみたいだぜ。ちょうど4時から」
「一体何を言ってるんだ?」
「黙ってな、直ぐに分かる。……………佐助、やってくれ」

『了解。』

そう言うと、教室にあるスピーカーから音が流れ始めました。

『くははははははは、ざまあみろ!!これで証拠も無くなった!!俺がそこの女をいじめた証拠は完全になくなったんだよ!!ほらどうする?どうやって俺のやったことだって証明する?お前らの負けだよ!!』

「何だこれ!?」

放送でさっきの話が流れて来ました。

「これなーんだ?」

そう言って取り出したのは何かの機械です。
あれって………

「もしかして盗聴器?」
「キャロちゃん正解」

なんでそんなものが……………

「しかし、こいつは本当にバカだったな!!好き勝手にペラペラ話してくれたおかげで証拠はバッチリ取れた。いい仕事だぜ相棒!!」
『これくらい問題ない………』

放送を流してるのは佐助君か!!

「さて、もうお前に逃げ場はないぜ。俺達以外に先生もあんたの親もこれを聞いてるだろうな」
「くうううう…………」
「精々大好きな親への言い訳を考えておくんだな。お馬鹿さんな先輩」
「くそおおおおおおおお!!」

相手は怒りに身を任せてエローシュ君に殴りかかって来ました!!

「エローシュ君!!」

だけど、その拳はエローシュ君に届く事はありませんでした。

「ぐあっ!!」

夏穂ちゃんが自分より大きい相手をぶん投げていました。

「私、家が合気道の道場やってるのよ。アンタみたいな屑野郎をぶちのめす為にね」

夏穂ちゃん言葉遣いが……………

「サンキュー夏穂。さて、俺達はクソでバカな先輩が投げた真白ちゃんの大事なものを取りに行きますか」
「でも、宝石は……………」

投げ捨てられちゃって……………

「問題無いさ。取り敢えず下に行こうぜ」

そう言ってエローシュ君はみんなに下へ行くように指示を出します。

「あっ、それと最後に………」

そう言って倒れている男の子に近づきました。

「俺達のクラスはバカばっかでさ、友達の為ならどんな痛みでも乗り越えて助けようとする奴らなんだよ。だからな………」

そう言って耳元に顔を近づけます。

「今度手を出したら社会的に抹殺してやる」

何かを言い残して、エローシュ君も教室を出ていきました。






「エローシュ」

下に行くとルーちゃんと上に居なかったクラスメイトがいました。
みんな泥だらけです。

「お疲れ、それで見つかった?」
「これ?」

そう言ってルーちゃんは蒼い宝石を見せました。

「これです!!本当に良かった……………」

真白ちゃんは大事そうに宝石を握りしめてます。

「本当にありがとう」
「気にしないで。それとエローシュ、かっこよかったよ」

そう言ってルーちゃんはエローシュ君の頭を撫でました。
エローシュ君は恥ずかしそうにされるがままになっています。

「だけどすっかり汚れちゃったから、みんなにジュースね」

「鬼ですか!?ルー様!!」

そのやりとりを見てみんなで笑い合いました。

「本当にみなさんありがとうございます!」

真白ちゃんはもう一度、頭を深々と下げ、みんなにお礼を言っています。

「何言ってるんだよ、真白ちゃんもクラスの仲間なんだ。気にすることないよ」

真白ちゃんの頭を撫でながらエローシュ君が言いました。

「さて、相棒が帰ってきたらみんなで帰るか!あっ、それと…………」

そこでエローシュ君が一旦話を切って、

「キャロちゃんかっこ良かったよ。プランに無かったから流石にビックリしたけど………」
「………そうね。キャロのおかげで皆も心が折れずに済んだし………ありがとうキャロ」

夏穂ちゃんがそう言うとみんな私にお礼を言い始めました。

「わ、私はあの人が許せなくて咄嗟にお兄ちゃんならどうするのかなって思って………つい………」

「いいや、上級生にあれだけ負けずに言えたのは凄かったよ。おかげで時間もたっぷりあったし相棒もやりやすかったろ?」
「確かにかなり余裕だった………」

そう言いながらいきなり現れる佐助君。
本当に神出鬼没です………

「さて相棒も来たし………みんな本当にお疲れ!!ミッションコンプリートだ!!」

私、本当にこのクラスの一員になれて良かったです!!  
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