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戦国異伝

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第百二十二話 蘭奢待その三

「恐れ多いにしても」
「切れ端をじゃな」
「はい、切り取られては如何でしょうか」
 大谷は信長に述べた。
「帝と。そして民達の為に」
「あれの一部を切り取って帝にも献上し」
「そしてです」
「もう一部はわしが持って民達に見せるか」
「そうすればどうでしょうか」
「それがよいであろうな」
 信長も大谷の案に頷く。
「この場合は」
「さすれば」
「大和に向かう場合にはそうする」
 こう前置きしての言葉だった。
「まずは事前に帝に申し上げよう」
「それがよいですな」
「確かに」
 周りにいる筒井に島、大谷も信長の話に頷いて返す。
「さもなければ何をしても筋が通りませぬ」
「だからこそ」
「ここはそれがよいかと」
「では朝廷に参上し」
 そしてだった。
「後はじゃ」
「はい、さすれば」
「お話を進めていきましょう」
「またえらく大きな話が出てきたのう」
 信長は真剣な面持ちでこうも言った。
「蘭奢待とはな」
「そうです。しかしこの件を上手に進めば」
「帝に蘭奢待を切れ端といはいえ献上もでき」
「民達にも見せられます」
「そうなる。ただよう」
「ただ?」
「ただといいますと」
「政じゃな、今回も」
 それに他ならないうのだ。
「まさにな」
「はい、帝への献上や万人いに見せるだけでなく」
「わしが拝領すればな」
「殿は一の人であることを天下に知らしめることが出来ます」
 大谷は答える。88
「その権勢がそれだけのものであることを」
「大きいのう」
「やる意味はあります」
「しかし朝廷のこと、公のこともある」
「その通りです」
「その辺りの兼ね合いが大事じゃ、ではじゃ」
「まずは都に向かわれますか」
「そうする。今の政が収まったところで都に向かおう」
 その時にだというのだ。
「勘十郎とも細かく話がしたいしのう」
「先にどなたか言って頂くということが」
 筒井が言う。
「そうされては」
「では新五郎じゃ」
 朝廷といえば織田家では彼になっていた。
「あの者に行ってもらおう」
「林殿ですか」
「先に行ってもらい地均しをしてもらう」
 だから行ってもらうというのだ。
「そうしようぞ」
「さすれば」
 その場合先に送る者も決められた、だがだった。
 信長はまだ断を下さずこう言うのだった。
「明日言う」
「明日ですか」
「ではそれまでは」
「これは急ぐ話ではないからのう」
 信長は急ぐ話とそうでない話の見分けがはっきりしている、そうしたことの見分けの上手さも彼の政の特徴である。
 それで彼はこの件についてはこう言うのおだ。
「明日じゃ」
「では明日に」
「その時に」
 島達も応じる、そうした話をしてだった。
 信長は一日じっくりと考えた、そうしてその次の日の朝だった。
 朝彼の前に参上した家臣達の中から林を見て言った。 
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