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リリカルなのは~優しき狂王~

作者:レスト
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第三十二話~R2・人と想い~

 
前書き

更新遅れました。スイマセンm(_ _)m
今回は難産でした。では本編どうぞ。

 

 


 海上での戦闘から数日後、ナナリーは正式にエリア11に新総督として着任した。
 今までのブリタニアの総督たちとは違い、敵として認識しづらいナナリーに対し黒の騎士団のメンバーは困惑する。しかしナナリーのある言葉でナナリーに対する不信感が一気に強まった。

『行政特区日本の再建』

 総督の就任式典でナナリーが発表した政策。それは日本人にとっては禁句といっても過言ではない言葉であった。しかも、それに加えて黒の騎士団とゼロもそれに参加するように公言したのだ。
 黒の騎士団のメンバーのほとんどは「今更ッ!」と憤る。ライも怒りを表すことはなかったが内心では不満であった。

(ナナリー、確かにそれは君の理想かもしれない。それに今の日本人にそれを言えるのは、君の強さかもしれない。だけど、それが受け入れられる程世界は甘くも強くもない)

 ナナリーの想いが本気であることはライも気付いていた。だがそれ以前にナナリーは『世界』と『現実』の根元をまだ知っていなかった。その根元とは『人間』である。ナナリーは良くも悪くも周りの人々が優しかった。他人の悪意や不満を知る機会がほとんどなかった彼女にとって、人を疑うことよりも人を信じようとする気持ちの方が先に来てしまう。
 それは人間としては美徳に映る。しかし組織の長や今現在のエリア11の総督としてはマイナス要素にしかならなかった。
 結果、ナナリーは内外共に少なくない敵を作ってしまうことになる。



その頃、ルルーシュは悩んでいた。ナナリーの真意を知ったルルーシュは自分の存在を見つめ直すことになった。彼にとっての行動を起こす起源となったのは、間違いなくナナリーの存在である。しかしナナリーの今の立場を考えると今の自分は邪魔にしかならない。「なら自分はもういらないのではないか?」とルルーシュは何度も自答した。
 しかしその度に思い出すのはライの言葉。

『もう僕は君たちを裏切らない』

 ライは今もルルーシュを信じて行動を起こしている。だがライにそこまで言わせた自分が、今度はライを裏切ろうとしている。その事に思い至ったルルーシュは本当の意味での覚悟を決めた。



 黒の騎士団側は正式に行政特区日本に参加することを表明した。それに伴い多くの民間人も参加し、特区日本は合計で約百万人の参加者を得ることになる。
 しかし、ゼロとブリタニア側の会談である条件が追加されていた。それはこれまでの罪状を考え、ゼロだけは国外追放とすることであった。
 そのことを知った日本人が暴動を起こすのではないかと思っていたブリタニア軍は、特区日本の設立式典の会場にスモークが焚かれた時に鎮圧行動に入ろうとした。しかしスザクはそれを押し留める。
 スモークが晴れた時、そこにいたのは百万人の『ゼロ』であった。ルルーシュはゼロと言う記号を利用し、ブリタニアに利用される日本人全てを国外追放という名の開放で合法的に逃げようとしたのだ。
 スザクは歯噛みする。

(これは卑怯な、騙し討ちだッ!)

ルルーシュは嗤う。

(さあ、スザク。貴様の正しさで認めろ。ゼロを許せ)

 それはスザクをよく知っているから、そして信じているからこそのルルーシュの行動。そしてそれにライは気づいていたがルルーシュ本人は信じていることにまでは気がついていなかった。
 結果として百万人の日本人は国外追放となった。日本人がいなくなり、閑散とした式典会場に一人佇むスザクはゼロの正体がルルーシュであると確信を強めた。
 六課メンバーはここまで大胆に、しかし的確なルルーシュの策に感嘆していた。彼らも見ず知らずの人であろうと助けるだけの覚悟はあると自負している。しかし、身内と他人を秤にかけた場合、必ず動揺してしまうことも自覚していた。だが、ルルーシュはこの場合、身内も他人も全てを救うほどの覚悟を示したのだ。その事に憧れと同時に少しだけ悲しみも感じてしまっていた。
 まだ、十代の子供が自分達の考えられないほどの人の命を自覚と覚悟を持って背負っていることに。



 皇歴の世界では、大きな勢力が3つ存在する。一つ目はブリタニア帝国、二つ目はEU、そして三つ目は中華連邦である。ゼロとして国外追放された日本人、彼らはその大国の一つである中華連邦に身を寄せた。
 元々根回しを行っていたため、特に問題もなく事が運ぶと思われたがブリタニアは思わぬ一手を打ってきた。

『ブリタニア第一皇子と中華連邦の最高権力者・天子との結婚』

 戦略結婚であるこの婚儀が成立した場合、中華連邦とブリタニアの友好関係が築かれ、ブリタニアにとってのテロリストである黒の騎士団はブリタニアに差し出される形になるのだ。
 黒の騎士団には友達である神楽耶がいることと想い人がいる天子は、その結婚が受けたくはなかった。だが、取り巻きである大宦官にとっての飾りである彼女にはそれを強く言うことはできなかった。
 女性が多い、六課のメンバーはまだ幼い天子が想い人のいる中、政治の道具としてほとんど面識のない、しかも約20歳も年の離れた男と無理矢理結婚させられることに怒りを覚えた。
 結婚の前夜に行われた婚約祝賀パーティーにゼロはカレンと神楽耶と共に姿を見せる。その際、ブリタニアの出席者として参加していた第二皇子シュナイゼルと鉢合わせ、座興としてゼロとシュナイゼルがチェスをすることとなる。
 チェスはお互い一歩も譲らず、引き分けになるようにみえた。しかし、そこでシュナイゼルはルルーシュのキングの前に自らのキングを置き一言言う。

「チェックメイト」

 その場にいた誰もが驚く。ルルーシュはシュナイゼルのキングを獲ることは相手に屈服することになると考え、自らのキングを下げる。再びどよめくギャラリーを気にせず、シュナイゼルは不敵に笑う。

「ゼロ、今の一手で君の性格が少し見えたよ」

 その言葉でルルーシュは自分が試されたことが分かり、悔しさに口元を歪めた。もっとも、それはゼロの仮面で誰にも分からなかったが。
 その後、結局チェスはノーゲームとなりその場は収められた。



 中華連邦の内部には元々、今の国のあり方に不満を持つ者が多くいた。その為、今回の結婚を切っ掛けにクーデターを行い、天子の権力を回復させる計画を立てていた人々がいた。その筆頭は天子の想い人であり、中華連邦の武官である黎星刻。
 彼は武勇と知略の両方を兼ね揃えており、その能力の高さから天子から権力を奪っている大宦官からも一目置かれる程の人物である。
 結婚式の当日、星刻の計画通りクーデターは行われる。しかし、それに乗じるように黒の騎士団は天子を誘拐し、彼女を黒の騎士団側に抱き込もうとする。
 星刻の計画を乗っ取るように行われたその誘拐はかなりスムーズに行われた。それは星刻の能力の高さを証明することにもなるのだが、彼にとっては自分の計画の万全さが裏目に出たことになるので喜ぶことはできなかった。
 星刻は一度、クーデターの実行犯として捉えられるが、大宦官との取引により黒の騎士団との戦闘を行うことになった。星刻は指揮をとるだけでなく、自らもナイトメア、神虎に乗り込み戦場を駆ける。
 彼がそこまでして行動を起こす理由はただ一つ。天子と交わした約束。

『二人で外の世界を見る』

 その約束を守るためだけに彼は行動を起こしていた。ただ一人の少女の為という部分では彼はルルーシュと最も似ている人物であった。
 彼の能力の高さと機体性能が合わさった結果、補給が万全でない紅蓮弐式をカレンごと無傷で生け捕り、戦略でもルルーシュを追い込むことに成功する。
 だがそこで大宦官が保身に走る。追い込んだ黒の騎士団を驚異と認識しなくなった大宦官はクーデターを起こした星刻達を始末しようとする。
 更に増援としてブリタニア軍とナイトオブラウンズまで戦線に参加する。その事に星刻は歯噛みし、言葉を吐き出す。

「わかっているのか大宦官。自国の領内でブリタニアの力を借りるということがどういうことなのか!!」

 星刻の言葉も虚しく状況は進む。それも星刻にとっては最悪の方向に。
 大宦官は黒の騎士団の元にいる天子を見限り、始末しようとしたのだ。大宦官達の真意を正そうとゼロは通信を繋げる。

「どうしても、攻撃をやめないつもりか?!このままでは天子も死ぬ」

『天子などただのシステム』

『代わりなど、いくらでもいる』

『取引材料にはならんの』

「貢物として、ブリタニアの爵位以上を用意しろと?」

『耳聰いこと』

『安い見返りだったよ、実に』

「領土の割譲と不平等条約の締結がか?!」

『我々には関係ない』

『そう、ブリタニアの貴族である我々には』

「残された人民はどうなる!」

『ゼロ、君は道を歩くときアリを踏まないように気をつけて歩くのかい?』

『汚れを拭いた紙は捨てるであろう。それと同じだよ』

「国を売り、主を捨て、民を裏切り、そのはてに何を掴むつもりだ!」

『驚きだな、ゼロがこれほどの理想主義者とは』

『主や民などいくらでも湧いて出てくる』

『虫のようにな、ハハハハハハハハ』

「腐っている!何が貴族か、ノーブル・オブリゲーションも知らぬ官僚が!!!」

 ゼロは侮蔑を込めて吐き捨てる。自分の持つ力を利用し、責任を他人に押し付け、権力と自らの利益のみを貪るその考え方は貴族とは程遠いものであった。
 国ほど大きな組織ではないにしろ、管理局という権力を持つ組織で働いている六課メンバーは考える。「自分たちは権利を行使すると同時に義務は果たせているのか?」と。
 ライを危険視していた局員は思う。「彼は我々を助けることはしていたが、見返りを求めていただろうか?」と。
 シャリオは後悔する。ライの持つ技術が出処を探るために、ライの過去を無遠慮に掘りこそうとしたことを。



 六課の面々が考え込む中、記録の中のライも戦線に参加していた。カレンが捕らえられた時、機体の補給をしていたため自らが出撃できなかったことを後悔していたライは、いつもより過激な戦闘をしていた。

「やはり、ブリタニアはランスロットの量産をしていたか」

 センサーに映る光点を確認し、そちらに蒼月のカメラを向けるとスザクのランスロットに続くように4機ほどの次世代の量産機がその姿を現していた。
 航空戦力が限られている黒の騎士団側において、ライや藤堂、四聖剣の存在は大きなものであった。ライはスザクの、藤堂と四聖剣は敵の残りの航空戦力の相手をしていく。
 スザクの持ち前である鋭い動きのランスロットに対処しながらライは呟く。

「そう言えば、直接対決は初めてか」

 自分の動きを見透かしているような戦い方をするライの蒼月に驚きながらスザクは自分の驚きを口にする。

「黒の騎士団にカレン並のパイロットが他にいたのか?!」

 2人が互角の戦闘を繰り広げていると戦局が動いた。ゼロが自らのナイトメア、蜃気楼を操り前線に出てきたのだ。
 蜃気楼は天子と星刻を庇うため、蜃気楼の特殊兵装である『絶対守護領域』を使い敵の集中砲火から2人を守る。
そのタイミングと同じくして中華連邦の各地で暴動が発生し始める。それは星刻が用意しルルーシュが利用した策。メディアを通じ、大宦官の実態を公にするという策が成功した証であった。先ほどのゼロと大宦官の会話はリアルタイムで各地に流され、更に大宦官の指示する軍が天子を殺そうとした映像が流されたのだ。
 それの映像を見たシュナイゼルもブリタニア軍を撤退させ、大宦官を見限る。
 完全に“国”から孤立した大宦官は最終的に星刻に殺され、中華連邦での戦いは一度幕引きとなった。
 六課のメンバーはこれまで皇歴の世界を見て来て、どんな人であっても死ぬ際には少なからず悲しみを覚えたが、大宦官が死ぬ際にはそんな感情は全く湧いてこなかった。



 戦いが終わり、天子と星刻の再会を見守っていた一同の中、黒の騎士団の参謀を務めるディートハルトがゼロに進言する。

「天子がブリタニアとの婚儀を破棄したことを世界に知らせる必要があります。その際、我々との関係を明確にするために、日本人の誰かと結婚していただく必要があるかと」

「フム………」

 ルルーシュは仮面の下でほくそ笑みながらディートハルトの言葉に納得しかけるが、その場にいた女性陣が非難の声をあげる。その女性の中にはC.C.も混じっており、ルルーシュは狼狽する。
 完全に困惑しているゼロは声だけは冷静のまま、隣にいるライに意見を求めた。

「ムゥ………ライ、お前はどう思う?」

「ゼロ、例え話をしようか。もし君の身内に妹がいて、その妹が政治的理由で見ず知らずの男と結婚―――」

「天子よ!!未来は君のものだ!!!」

 ライが全てを言い終える前にゼロは声高に宣言した。いきなりの言葉に皆が唖然としたが、ディートハルトは未だに異を唱える。

「しかし!力関係を明確にしなければ」

 ゼロが何か言おうとする前に今度はライが言葉を発した。

「上下関係だけで他者を縛るのはブリタニアと同じやり方だ。僕たちは敵対国と同じやり方を選ぶべきではない」

「だが……」

「今回の戦闘で、人の持つ想いの力はあなたも理解したはずだ。もしそれを無視すれば、今度は僕らが大宦官と同じ存在になることになる」

 ライの言葉に一理あると感じたのかディートハルトは納得した。その遣り取りを見ていた星刻は微笑を浮かべながらゼロとライに言う。

「ゼロ、今回のことで君のことが少し分かった気がするよ。そして……ライ君と言ったか、君もただの士官にしておくには勿体無い程の人物だ」

 そしてゼロと星刻は握手を交わす。
 この時から黒の騎士団は『国』という力を手に入れる。それは黒の騎士団が日本だけでなく世界に一歩を踏み出すための大きな力であった。








 
 

 
後書き

と言う訳で、中華連邦編でした。

今回はところどころ、内容的におかしい部分があるかもしれません。
それほどにこのあたりの内容は複雑でした。(--;)
何度DVDを見直したことか………

最近、過去編以降のネタとか、Vividや空白期のネタが浮かんで来るのが止まりません。
早くStrikers完結できるように頑張りたいと思います。
目標としては今年中

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