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遊戯王GX-音速の機械戦士-

作者:蓮夜
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―ジェネックス Ⅲ―

 
前書き
お久しぶりです。
まだテスト中ではあるんですが。 

 
  ジェネックスも中盤を迎えることとなり、残っているのは掛け値なしの実力者ということだろう。
俺の友人たちの中でも、もう既に何人もの脱落者が出る事態となっていた。

 その中でも印象的だったのが十代の真の弟分こと丸藤翔であり、逃げ回っていた彼は何を想ったか心機一転、自らの兄であるカイザー亮へとデュエルを申し込んだのだった。
自らがどれだけ成長したのか、翔が一番の実力者だと認めているカイザー亮に見せつけたかったのだという。

 デュエルの結果としては敗北した翔だったが、亮を追い詰めて実力を認めさせたことで、その表情はむしろ晴れ晴れしたように見える。

そして、脱落者ではないが話しておきたいのは、神楽坂というラー・イエローでの友人のことだ。
彼は、一年生の際に今も学園に展示されている、デュエルキング・武藤遊戯のデッキの盗難事件を起こした生徒である。

 神楽坂は作ったデッキが有名なデュエリストのコピーデッキばかりになってしまうという悩みを抱えていて、そのせいで対抗策も有名なために敗北を重ねていた。
そして神楽坂は自分とコピー元の違いがデッキにあると考え、武藤遊戯のデッキを使って自分の実力と仮説を確かめようと、俺にデュエルを申し込んだ。

 そして敗北し……神楽坂は、自分だけのデッキの強さを思い知り、自分だけのデッキの構築へと乗りだした。
だが、なかなか納得のいくデッキを作ることは出来ず、いくつかの候補のデッキを使い分けるデュエリストとなっていた。

 そんな彼だったが、先日の三沢と光の結社に洗脳された俺のデュエルを見たことで、再び自分だけのデッキを作る決意をした。
光の結社に洗脳されて自分だけのデッキ以外のデッキを使わせられていた俺と、変わらず【妖怪】デッキを駆る三沢に、神楽坂なりに何かを感じたのかもしれない。

 そして、ついに神楽坂は神楽坂だけのデッキを完成させ、俺へとデュエルを申し込んできたのだった。

『デュエル!』

遊矢LP4000
神楽坂LP4000

「楽しんで勝たせてもらいぜ! 俺の先攻、ドロー!」

 俺のデュエルディスクが先攻を示したが、神楽坂の新しいデッキがどんなデッキなのか解らないため、後攻の方が望ましかった気はするが。

「俺は《マックス・ウォリアー》を召喚!」

マックス・ウォリアー
ATK1800
DEF800

 決まったことをボヤいても仕方がない、いつも通りプレイすることを示すように、機械戦士のアタッカーである三つ叉の機械戦士を召喚する。

「カードを一枚伏せてターンエンド」

「俺のターン、ドロー!」

 神楽坂のデッキがどんなデッキであろうとも、神楽坂はどんなデッキでも十全に活かす事が出来るデュエリストだ。
何が相手だろうと、警戒すべきなのは変わりはない。

「俺は速攻魔法《サイキック・サイクロン》を発動! お前の伏せてある罠カードを破壊する!」

 超能力のようなエネルギーを纏った竜巻に、俺のフィールドに伏せられていた《くず鉄のかかし》が破壊される。

 《サイキック・サイクロン》は通常の《サイクロン》と違い、相手のセットカードが魔法か罠かを当てないと破壊できないが、破壊した時一枚ドロー出来るギャンブルカード。
だが、相手のデッキを見るだけで相手の性格まで解るなどという観察力を持った神楽坂には、ただの《サイクロン》の一枚ドローする効果が追加された上位互換に過ぎない。

「俺は《テレキアタッカー》を召喚する!」

テレキアタッカー
ATK1700
DEF700

「サイキック族だと!?」

 神楽坂の戦陣を切ったモンスターは、シンクロ召喚と共に、新たな種族として登場したサイキック族に属するモンスターだった。
シンクロ召喚と同時期に登場したためか、シンクロ召喚に関連する効果を持ったカードも多く、また、シンクロモンスター自体も多いという。

「ああ……これが俺の、俺だけのデッキだ」

 サイキック族という種族は新しく発売されたパックで新しく出た種族であり、その上シンクロ召喚を使うことが前提になっているため、参考の有名なデッキレシピなどは存在しない。
ならば、神楽坂の悩みである『過去に見たデッキレシピや他人のデッキに似てしまうという』のは、今のデッキにおいて不可能なことなのだ。

 ……神楽坂は、それこそ始めてデッキに触ったかのように、自分だけの力でそのデッキを作ったに違いない。

「遊矢。俺の仲間たちが勝たせてもらうぜ! さらに、速攻魔法《緊急テレポート》を発動! デッキからレベル2以下のサイキック族を特殊召喚する! チューナーモンスター、《サイ・ガール》を特殊召喚!」

サイ・ガール
ATK500
DEF300

 一見すると魔法使い族のようなデザインのモンスターだったが、チューナーモンスターと聞いたためにデザインなど気にしている余裕はまるで無かった。
一ターン目でいきなりシンクロ召喚が来るか……!?

「レベル4のテレキアタッカーに、レベル2のサイ・ガールをチューニング!」

 ライフコストを支払っての高速のシンクロ召喚が、サイキック族の持ち味であるらしいが、ライフコストは使っていないものの、その前評判に違わない速度のシンクロ召喚。

「心の奥で燃える我が炎を糧に、超能力を使う悪魔が現出する! シンクロ召喚! 現れろ、《サイコ・デビル》!」

サイコ・デビル
ATK2400
DEF800

 始めて見るサイキック族のシンクロモンスターは、超能力を纏った異質な姿をした怪物だった。
その姿はもはや超能力者には見えず、どちらかというと悪魔のような姿をしていた。

「《サイコ・デビル》の効果を発動! 相手の手札一枚の種類を当てることで、このカードの攻撃力は1000ポイントアップする! 遊矢の一番右のカードは、モンスターカードだ!」

「……正解だ」

 神楽坂のセリフから察するに、一枚相手の手札をピーピング出来るという効果らしく、上昇値も1000ポイントという大幅アップ。

 更に、デッキを見たのみで相手の心理すら理解する神楽坂ならば、手札の種類を外すことは恐らくはない。
その証拠に《ロード・シンクロン》を当てられ、神楽坂に手札を一枚晒してしまう。

「そしてバトルフェイズ。サイコ・デビルでマックス・ウォリアーに攻撃!」

「くっ……」

遊矢LP4000→2400

 攻撃力が3000を超えているサイコ・デビルの攻撃には、流石のアタッカーでも適うはずもなく一方的に破壊されてしまう。

「カードを一枚伏せ、ターンエンド」

「俺のターン、ドロー!」

 神楽坂がシンクロ召喚を主軸にしたデッキを自らのデッキにしてくれるとは、元・テスター冥利に尽きるというものだが、そんなことを考えていて敗北しては堪らない。

「俺は《チューニング・サポーター》を守備表示で召喚する!」

チューニング・サポーター
ATK100
DEF300

 とは言ったものの俺の手札に《サイコ・デビルを倒す手段はなく、守備力は頼れないもののチューニング・サポーターに守備を託すしかない。

「俺はカードを一枚伏せてターンエンド」

「俺のターン、ドロー!」

 神楽坂は新たな種族によるデッキ【サイキック族】を使っているため、次に何が来るかは予想が出来ないのも辛いところだ。

「俺は《沈黙のサイコウィザード》を召喚する!」

沈黙のサイコウィザード
ATK1900
DEF0

 召喚されたのは、下級モンスターのアタッカーたるに相応しい効果を持った槍の超能力者だった。

「《沈黙のサイコウィザード》が召喚に成功した時、墓地のサイキック族を一体除外出来る。さらにサイコ・デビルの効果発動! 遊矢の手札の真ん中は、モンスターカードだ」

「……また正解だ」

 神楽坂が当てたカードは、不幸中の幸いと言ったところか再び《ロード・シンクロン》だったため、俺の手札をこれ以上見透かされることは避けられたようだ。

 それにしても、神楽坂の怒涛の効果ラッシュに《スキルドレイン》でもやりたくなるが、そんなことをすれば機械戦士もただではすまない。
……まあ、そもそもデッキに投入していないので、言っても仕方ないのだが。

「バトル! 沈黙のサイコウィザードで、チューニング・サポーターに攻撃!」

「伏せてある《マジカルシルクハット》を発動!」

 沈黙のサイコウィザードの攻撃の前にマジシャンが使うようなシルクハットが三つ出現し、その中の一つにチューニング・サポーターはすぐさま隠れ、沈黙のサイコウィザードは攻撃対象を見失った。
残り二つのシルクハットには、デッキから選んだ二枚の魔法・罠カードがモンスターとなって隠れている。

「なるほどな……バトルを続行! 真ん中のシルクハットに攻撃だ、サイコウィザード!」

 神楽坂ほどのデュエリストならば、マジカルシルクハットからどうなるかは解るだろうが、解っていても止められる術はない。
沈黙のサイコウィザードが真ん中のシルクハットに槍を突き刺すと、そこにはチューニング・サポーターが入っていた。

「よし、バトルフェイズを終了する」

 チューニング・サポーターだけでも破壊できて良かったのだろう、《サイコ・デビル》の攻撃宣言はせずにバトルフェイズを終了した。

「解ってるだろうが宣言する! バトルフェイズ終了と共に二体のシルクハットは破壊され、隠れていた《リミッター・ブレイク》の効果が発動する! 現れろ、マイフェイバリットカード! 《スピード・ウォリアー》!」

『トアアアアッ!』

スピード・ウォリアー
ATK900
DEF400

 マジカルシルクハットの破壊されるデメリット効果により、墓地に送られた《リミッター・ブレイク》の効果で二体のマイフェイバリットカードが特殊召喚される。
影丸理事長とのデュエルでも俺を助けてくれたコンボである。

「流石にやるな……このままターンエンドだ」

「俺のターン、ドロー!」

 俺のフィールドには二体のマイフェイバリットカードがおり、手札にはチューナーモンスター《ロード・シンクロン》がいる。
ならば狙うのは、やはり機械戦士たちの皇たる《ロード・ウォリアー》か。

「悪いが、ロード・ウォリアーのシンクロ召喚はさせないぜ遊矢! お前のスタンバイフェイズ時、《マインドクラッシュ》を発動! 選択するのは、当然《ロード・シンクロン》だ!」

 相手の手札のカードを言い当てることで、そのカードを捨てさせることが出来る、いわゆる『ハンデス』カードの一種が発動される。
なるほど、確かに神楽坂ならば《サイコ・デビル》の効果と併せて最大限活用出来るだろう。

「……確かに《ロード・シンクロン》は俺の手札にある」

 《サイコ・デビル》の効果で散々確認され、当然ながら俺の手札には《ロード・シンクロン》はあったため、神楽坂に見えるようにかざした後に墓地に送った。

「……なら、俺は《ドリル・シンクロン》を召喚!」

ドリル・シンクロン
ATK800
DEF300

 神楽坂の《マインドクラッシュ》に妨害されたため、狙っていたシンクロモンスターの《ロード・ウォリアー》はシンクロ召喚出来ないものの、代わりのチューナーモンスターならば手札にある。

「レベル2の《スピード・ウォリアー》二体に、レベル3の《ドリル・シンクロン》をチューニング!」

 ドリル・シンクロンが、その頭についたドリルの高速回転を始めて光の輪となり、スピード・ウォリアー二体を包み込んでいく。

 相手は俺が始めて戦うシンクロ召喚の使い手……ならば、俺がシンクロ召喚を使うに相応しくなったかどうか、神楽坂にシンクロ召喚で勝つことで証明する……!

「集いし刃が、光をも切り裂く剣となる。光差す道となれ! シンクロ召喚! 現れろ、《セブン・ソード・ウォリアー》!」

セブンソード・ウォリアー
ATK2300
DEF1800

 光の輪をその手に持った剣で切り裂きながら、金色の鎧を纏った剣の機械戦士がシンクロ召喚される。

「セブンソード・ウォリアーに装備魔法《ファイティング・スピリッツ》を装備し、効果発動! このモンスターに装備魔法が装備された時、相手ライフに800ポイントのダメージを与える。イクイップ・ショット!」

神楽坂LP4000→3200

 セブンソード・ウォリアーにファイティング・スピリッツが装備されたことにより、神楽坂に投げナイフが投げられ、モンスターをすり抜けて狙い通りに神楽坂に直撃する。

「バトル! セブンソード・ウォリアーで、沈黙のサイコウィザードに攻撃! セブン・ソード・スラッシュ!」

 ファイティング・スピリッツの効果は、相手フィールドのモンスターの数×300ポイント攻撃力がアップするという効果であるため、セブンソード・ウォリアーの攻撃力は2900。
沈黙のサイコウィザードを易々と切り裂いたが、破壊したサイコウィザードのいた場所に、新たなモンスターが出現していた。

「沈黙のサイコウィザードがフィールドを離れた時、召喚した時に除外していたモンスターを特殊召喚する。俺が除外していたのは《サイ・ガール》!」

 《サイコ・デビル》のシンクロ素材となっていた、少女のようなチューナーモンスターが予期せぬタイミングで神楽坂のフィールドに特殊召喚された。

神楽坂LP3200→2200

「サイ・ガールが除外ゾーンから特殊召喚された時、俺のデッキの一番上のカードを除外する」

 ……さて、メインフェイズ2にセブンソード・ウォリアーの第二の効果を発動し、攻撃力3400を誇る《サイコ・デビル》を破壊する予定だったが、チューナーモンスターである《サイ・ガール》を神楽坂のフィールドに残しておくのも不安が残る。
しかしサイコ・デビルを残してしまえば、次の神楽坂のターンで、確実にセブンソード・ウォリアーは破壊されてしまうのもまた事実だ。

「メインフェイズ2、セブンソード・ウォリアーの第二の効果を発動! 装備している《ファイティング・スピリッツ》を墓地に送ることで、《サイコ・デビル》を破壊する!」

 かといって発動しないと、残った二体でレベル8の強力なシンクロモンスターが召喚されてしまうため、結局予定通りにサイコ・デビルを破壊することとなった。

「ターンエンドだ」

「俺のターン、ドロー!」

 神楽坂のフィールドには下級モンスターである《サイ・ガール》が一体だけだが、その下級モンスターがチューナーモンスターであれば話は別だということを、俺は良く知っている。

「《寡黙なるサイコプリースト》を召喚し、自身の効果で守備表示となる!」

寡黙なるサイコプリースト
ATK0
DEF2100

 召喚されたのはいかにもな壁モンスターだったが、当然ここからシンクロ召喚に繋げてくるだろう。

「寡黙なるサイコプリーストの効果を発動。手札を一枚捨てることで、墓地のサイキック族モンスターを除外出来る」

 俺の予想に反して神楽坂が行ったのは、墓地のサイキック族を除外するという効果。
この《寡黙なるサイコプリースト》や、先程の《サイ・ガール》や《沈黙のサイコウィザード》の効果を見るに、神楽坂の【サイキック族】デッキは除外ゾーンを多用するらしい。

「行くぞ! レベル3の《寡黙なるサイコプリースト》に、レベル2の《サイ・ガール》をチューニング!」

 やはり最終的にはそうなるようで、神楽坂のこのデュエルにおいて二回目のチューニングが始まった。

「心の深淵で燃え上がる我が炎よ、黒き怒濤となりてこのフィールドを蹂躙せよ! シンクロ召喚!現れろ、《マジカル・アンドロイド》!」

マジカル・アンドロイド
ATK2400
DEF1700

 魔法使いのような外見をしたサイキック族モンスターがシンクロ召喚され、セブンソード・ウォリアーを超える攻撃力を持っていることに歯噛みする。
だが、神楽坂のコンボはそれだけでは終わらなかった。

「除外ゾーンから特殊召喚された《サイ・ガール》がフィールドから離れた時、除外していたカードを一枚ドローする。更に《寡黙なるサイコプリースト》がフィールドから離れた時、このモンスターの効果で除外したモンスターを特殊召喚する! 異次元から蘇れ、《サイコ・デビル》!」

 先のターンにセブンソード・ウォリアーが破壊した《サイコ・デビル》が、神楽坂の言う通り異次元から特殊召喚されて蘇る。
どうやら、サイコ・デビルを破壊することを選んだのは裏目に出たようだ。

「サイコ・デビルの効果発動。遊矢の一番右のカードは、魔法カードだ」

「一番右のカードは、《狂った召喚歯車》……正解だ」

 三回連続の正解ともなると流石に気が滅入るが、そんなことを思っていられる状況ではなかった。

「《狂った召喚歯車》……か。バトル! 《サイコ・デビル》で、セブンソード・ウォリアーに攻撃!」

「……ん?」

 てっきり《マジカル・アンドロイド》から攻撃するかと思っていたのに反し、神楽坂は《サイコ・デビル》から攻撃してきたが、悪いがどちらにせよセブンソード・ウォリアーの運命は決まっている。
……サイコ・デビルに破壊された方が痛いという差はあるが。

遊矢LP2400→1300

「そして、マジカル・アンドロイドで遊矢にダイレクトアタック!」

「手札から《速攻のかかし》を墓地に捨てることで、バトルフェイズを終了させる!」

 俺の手札からいつものようにかかしが飛び出し、マジカル・アンドロイドの攻撃を俺の代わりに受けて墓地に送られる。
今回は、マジカル・アンドロイドの攻撃が電撃を纏った超能力だったため、焦げながら破壊された。

「カードを二枚伏せてターンエンド。そしてエンドフェイズに移行し、マジカル・アンドロイドの効果を発動! 自分のサイキック族の数×600ポイントのライフを回復する」

 《サイコ・デビル》から攻撃して俺のライフを減らすことを優先したことから解っていたが、やはり神楽坂は俺の手札に《速攻のかかし》があることは読んでいたようで、攻撃が防がれても特に何も反応を見せずに《マジカル・アンドロイド》の効果を発動した。
その効果はエンドフェイズ時に発動するライフ回復効果で、このまま放置すればかなりの数値を回復されてしまうだろう。

神楽坂LP2200→3400

「俺のターン、ドロー!」

 《マインドクラッシュ》の被害もあって少し手札が心もとないが、神楽坂にもバレていることだしこの魔法カードで逆転を狙わせてもらおう。

「魔法カード《狂った召喚歯車》を発動! 墓地の攻撃力1500以下のモンスターとその同名モンスターを、三体まで特殊召喚する! 増殖して蘇れ、《チューニング・サポーター》!」

 お手軽に大量展開が出来る《地獄の暴走召喚》の相互互換だが、相手はフィールドにいるモンスターと、同じ種族・攻撃力のモンスターをデッキから可能な限り特殊召喚出来るという、《地獄の暴走召喚》より重いデメリット効果がある。

「……俺は特殊召喚しない」

「なら俺は、更に《ニトロ・シンクロン》を召喚!」

ニトロ・シンクロン
ATK300
DEF500

 神楽坂のデッキは不確定だったため、少々どんなモンスターが出て来るか不安だったものの、何も出て来ないようで安堵したついでに、ニトロ・シンクロンを召喚する。

「レベル1のチューニング・サポーターに、自身の効果でレベル2となったチューニング・サポーター二体と、レベル2のニトロ・シンクロンをチューニング!」

 やはりここで呼び出すのは、専用チューナーのドロー効果と、一発の攻撃の火力が一番の信頼出来る扱いやすい機械戦士。

「集いし思いがここに新たな力となる。光さす道となれ! シンクロ召喚! 燃え上がれ、《ニトロ・ウォリアー》!」

ニトロ・ウォリアー
ATK2800
DEF1800

 先程召喚に失敗した機械戦士の皇たる《ロード・ウォリアー》に次いで、機械戦士の中ではステータスが高いニトロ・ウォリアーが登場し、墓地でシンクロ素材たちがその効果を発揮する。

「シンクロ素材となったため、《チューニング・サポーター》三体と《ニトロ・シンクロン》の効果を併せて四枚ドロー! ……さらに、《手札断殺》を発動し、お互いに二枚捨てて二枚ドロー!」

 《ニトロ・シンクロン》と《チューニング・サポーター》の効果を併せた驚異の四枚ドローの後、《手札断殺》の効果によってさらに二枚の手札交換を果たす。

 そして墓地に送った《リミッター・ブレイク》の……と言いたいところだが、《マジカルシルクハット》のコンボでもう使ってしまったため、今回は自粛する。
その代わりと言っては何だが、ニトロ・ウォリアーの効果を活かすためのカードを送っておいた。

「墓地の《ADチェンジャー》をの効果を発動! マジカル・アンドロイドを守備表示に変更する!」

 墓地の《ADチェンジャー》の効果とそれを送った《手札断殺》の効果により、ニトロ・ウォリアーの攻撃の下準備が完了する。

「バトル! ニトロ・ウォリアーで、サイコ・デビルに攻撃! ダイナマイト・ナックル!」

 魔法カード《手札断殺》を使用したため、《ニトロ・ウォリアー》は効果により攻撃力が1000ポイントアップして《サイコ・デビル》の攻撃力を超えている。

「ダイナマイト・インパクトはさせないぜ遊矢! リバースカード《和睦の使者》を発動!」

 ニトロ・ウォリアーはサイコ・デビルに殴りかかったは良いものの、神楽坂の《和睦の使者》によって防がれたために破壊も戦闘ダメージを与えることも叶わなかったため、当然第二の効果たるダイナマイト・インパクトは発動しない。

「……だが、サイコ・デビルだけは破壊させてもらう! メインフェイズ2、《ワンショット・ブースター》を特殊召喚!」

ワンショット・ブースター
ATK0
DEF0

 長い付き合いだ、特殊召喚されて早速次に何をすれば良いのか解っているのか、ワンショット・ブースターはすぐにその装備されたミサイルをサイコ・デビルへと向けた。

「ワンショット・ブースターをリリースすることで、戦闘で破壊出来なかったモンスターを破壊する! 蹴散らせ、ワンショット・ブースター!」

 ワンショット・ブースターの二発の巨大なミサイルのおかげで、完璧に狙い通りとは行かずとも、神楽坂の主力モンスターの一角であるサイコ・デビルを破壊することに成功した。

「……よし、カードを一枚伏せてターンエンド」

「俺のターン、ドロー!」

 だが、いくら厄介な《サイコ・デビル》を破壊したところで、神楽坂は手札もライフも未だに潤沢であるために、全く喜べる状況でも無かった。

「俺はチューナーモンスター、《メンタルシーカー》を召喚!」

メンタルシーカー
ATK800
DEF500

 神楽坂が召喚したのはまたもチューナーモンスターであり、俺も神楽坂もシンクロ召喚を使ってのデュエルで引かないようだ。

「レベル5の《マジカル・アンドロイド》にレベル3の《メンタルシーカー》をチューニング!」

 《マジカル・アンドロイド》の優秀なライフゲイン効果によってライフを回復し、その後はレベル5というレベルを活かして高レベルのシンクロ召喚に繋ぐ。
神楽坂のやっていることには無駄がなく、第三者の立場からすれば拍手喝采を送りだいところだろうが、今はデュエルしている立場なのでそうもいかない。

「逆巻け、我が炎! その炎をもって、領域の支配者たる悪魔を呼び出せ! シンクロ召喚! 《メンタルスフィア・デーモン》!」

メンタルスフィア・デーモン
ATK2700
DEF1400

 新たに登場したシンクロモンスターの外見は、《マジカル・アンドロイド》や《サイ・ガール》とは違い、デーモンの名に恥じぬ《サイコ・デビル》と似たような悪魔のような外見だった。
同じように機械戦士の中では、珍しく悪魔のような形相をしている《ニトロ・ウォリアー》とお互いに睨み合っている。

「バトル! メンタルスフィア・デーモンで、ニトロ・ウォリアーに攻撃!」


 神楽坂が攻撃力の劣るモンスターで攻撃してくるとなると、メンタルスフィア・デーモンに戦闘補助の効果があるか、手札か墓地からコンバットトリックがあるかのどちらか。
どうやら後者のようで、神楽坂は墓地のカードを発動しようとデュエルディスクに手を伸ばしていた。

「墓地から《スキル・サクセサー》の効果を発動! メンタルスフィア・デーモンの攻撃力を700ポイントアップさせる!」

 自分の《寡黙なるサイコプリースト》の時か、俺の《手札断殺》の時かは知らないが、いつの間にやら墓地に送っていた《スキル・サクセサー》が発動し、メンタルスフィア・デーモンがニトロ・ウォリアーの攻撃力を超える。

 だがこちらとて、やられっぱなしではいられる訳も無い。

「こっちも墓地から《シールド・ウォリアー》の効果を発動! ニトロ・ウォリアーは戦闘では破壊されない!」

 メンタルスフィア・デーモンがその強靭な爪をニトロ・ウォリアーに振り下ろす寸前に、その間にシールド・ウォリアーが割って入ってニトロ・ウォリアーを守り抜くが、ダメージまでは防げず俺のライフポイントが削られる。

遊矢LP1300→700

「くっ、《シールド・ウォリアー》があったか……カードを一枚伏せ、ターンを終了する」

「俺のターン、ドロー!」

 俺のフィールドにいるニトロ・ウォリアーは、神楽坂のメンタルスフィア・デーモンの攻撃力を上回っているものの、モンスターの大量展開が持ち味の神楽坂相手にこの俺のライフは心許ない。

「俺は《シンクロキャンセル》を発動! ニトロ・ウォリアーをエクストラデッキに戻し、《チューニング・サポーター》三体と《ニトロ・シンクロン》を墓地から特殊召喚する!」

 通常魔法ではあるものの、シンクロモンスターバージョンの《融合解除》と言えなくもない魔法カード《シンクロキャンセル》により、再び俺のフィールドに四体のシンクロ素材が揃う。

「もう一回やらせてもらう! レベル1の《チューニング・サポーター》に、自身の効果でレベル2となった《チューニング・サポーター》二体と、レベル2の《ニトロ・シンクロン》をチューニング!」

 録画していた映像のように再び前のターンと同じ光景が繰り返されていくが、今からシンクロ召喚するのは《ニトロ・ウォリアー》ではなく、黄色の鎧を纏ったラッキーカード。
「集いし願いが新たに輝く星となる。光さす道となれ! シンクロ召喚! 現れろ、《パワーツール・ドラゴン》!」

パワーツール・ドラゴン
ATK2300
DEF2500

 ラッキーカードである機械龍の登場と共に発動した、シンクロ素材となった《チューニング・サポーター》のドロー効果をありがたく使わせてもらい、とりあえずの指針を決める。

「パワーツール・ドラゴンの効果発動! デッキから三枚の装備魔法を選び、裏側で相手に選ばせる! パワー・サーチ!」

 俺がデッキから選んだカードは《団結の力》・《魔界の足枷》・《魔導師の力》と、どれも優秀な戦闘補助用の装備魔法カードで占められていた。

「……俺から見て一番右だ」

 散々《サイコ・デビル》の効果で、俺の手札のカードの種類を宣言してきた神楽坂の選択した装備魔法は、運良く今最も上昇値が低い《団結の力》。

 早速《パワーツール・ドラゴン》に装備……はせず、新たにモンスターを召喚する。

「俺は、チューナーモンスター《エフェクト・ヴェーラー》を召喚する!」

エフェクト・ヴェーラー
ATK0
DEF0

 エフェクト・ヴェーラーの登場によって、俺のフィールドにラッキーカードが二体並んだのだから、やることと言えば一つしかない。

「レベル7の《パワーツール・ドラゴン》と、レベル1の《エフェクト・ヴェーラー》をチューニング!」

 エフェクト・ヴェーラーが光の輪となりパワーツール・ドラゴンを取り囲むことにより、自身の力だけでは外せない黄色の鎧を外し、神話のドラゴンがその姿を炎と共に現した。

「集いし命の奔流が、絆の奇跡を照らしだす。光差す道となれ! シンクロ召喚! 現れろ、《ライフ・ストリーム・ドラゴン》!」

ライフ・ストリーム・ドラゴン
ATK2900
DEF2500

 ラッキーカード同士のチューニングによって、シンクロ召喚されたライフ・ストリーム・ドラゴンが空高くへと飛び立っていった。

「ライフ・ストリーム・ドラゴンがシンクロ召喚に成功した時、俺のライフを4000にする! ゲイン・ウィータ!」

遊矢LP700→4000

 空中から俺へとライフが降り注ぎ、神楽坂のサイキック族にやられたライフが初期ライフへと回復する。

「そして、ライフ・ストリーム・ドラゴンに《団結の力》を装備し、バトル! ライフ・ストリーム・ドラゴンで、メンタルスフィア・デーモンに攻撃! ライフ・イズ・ビューティーホール!」

「ぐああっ……!」

神楽坂LP3400→2400

 パワーツール・ドラゴンの効果によって手札に加えられていた《団結の力》を伴った一撃が、神楽坂のメンタルスフィア・デーモンを貫いた。
シンクロ召喚する前に《団結の力》をパワーツール・ドラゴンに装備した方が攻撃力は上がったが、神楽坂には未だに二枚のリバースカードがあるため、破壊耐性があるライフ・ストリーム・ドラゴンをシンクロ召喚してから攻撃することを選んだ。

 メンタルスフィア・デーモンを破壊出来たことから、二枚のリバースカードは攻撃反応系では無かったためにそれは杞憂だったようだが、メンタルスフィア・デーモンを破壊出来たのだから良しとしよう。

「カードを二枚伏せ、ターンエンド!」

「俺のターン、ドロー! ……《強欲な壷》を発動!」

 強欲な壷が破壊されると共に神楽坂が二枚ドローするも、その表情はあまり浮かない。

 それもその筈、俺のフィールドには破壊耐性を持つライフ・ストリーム・ドラゴンに、リバースカードが三枚でライフは4000という布陣。
それに対し、神楽坂はライフは4600と勝っているが、フィールドは攻撃反応系ではないリバースカード二枚のみなのだから。

「速攻魔法《サイキック・サイクロン》を発動! お前の真ん中のリバースカードは、罠カードだ!」

 神楽坂の後攻一ターン目以来となる、超能力を纏った竜巻であるサイキック・サイクロンが、神楽坂の予想通りの種類である俺の《攻撃の無力化》を破壊した。

「サイキック・サイクロンの効果により……一枚ドロー!」

 逆転の思いを込めた《サイキック・サイクロン》による一枚のドローに対し、神楽坂のデッキはその思いに応えたのだった。

「……よし、リバースカード《リビングデッドの呼び声》を発動し、墓地から《寡黙なるサイコプリースト》を特殊召喚する!」

 万能蘇生カードの一角である《リビングデッドの呼び声》で特殊召喚されたのは、手札一枚をコストに墓地のサイキック族モンスターを除外し、自身がフィールドから離れた時に除外したモンスターを特殊召喚するというトリッキーな効果を持った《寡黙なるサイコプリースト》。

 また、効果を使った後にシンクロ召喚によってフィールドから離し、二体のシンクロモンスターを並べるコンボだろうか……?

「手札を一枚捨て、墓地のサイキック族モンスターを除外する。……そして、これが俺の逆転の一手だ! 寡黙なるサイコプリーストをリリースし、《マックス・テレポーター》をアドバンス召喚!」

マックス・テレポーター
ATK2100
DEF1200

 『逆転の一手』と銘打って予想外だったアドバンス召喚をされたのは、上級モンスターにしてはステータスが低めな《マックス・テレポーター》というモンスターだった。

「《寡黙なるサイコプリースト》がフィールドから離れたため、除外されていた《メンタルシーカー》を特殊召喚」

 《マックス・テレポーター》の効果という巨大な波が来る前に、まずは小さな波のように、リリースされた《寡黙なるサイコプリースト》の効果が発動する。

 そして、満を持して神楽坂の逆転の一手が起動した。

「マックス・テレポーターの効果発動! 2000のライフポイントを払うことで、デッキから二体のレベル3のサイキック族モンスターを特殊召喚出来る! 来い、二体の《寡黙なるサイコプリースト》!」

神楽坂LP2400→400

 初期ライフポイントの半分の数値である2000のライフを払うというド派手な効果と共に使われたのは、レベル3のサイキック族という縛りはあるものの、デッキから好きなモンスターを特殊召喚出来るという効果。

 その効果によって特殊召喚されたのは、先程《マックス・テレポーター》をリリースするために使われたモンスターと同じの、《寡黙なるサイコプリースト》。
だが神楽坂の手札は一枚であるため、二体召喚しても一体しか効果を使うことは出来ないので、《寡黙なるサイコプリースト》の危険度はやや下がる。

「そして、もう一枚のリバースカード《サイコ・チャージ》を発動! 俺の方がライフポイントが少ない時、墓地のサイキック族を二体除外することで二枚ドローする!」

 そんなことが神楽坂の計算に入っていない訳がなく、ライフ・ストリーム・ドラゴンの回復効果も逆利用され、神楽坂に《寡黙なるサイコプリースト》の効果コストを用意されてしまう。

「手札を二枚捨てて二体の《寡黙なるサイコプリースト》の効果を発動し、レベル3の《寡黙なるサイコプリースト》二体と、同じくレベル3の《メンタルシーカー》をチューニング!」

 合計レベルは俺も見たことがない9という数値であり、この局面で特殊召喚されるとあれば、名実共に神楽坂のエースカードであろう。

「最強の超能力者たる魔弾の射手、我が炎を撃ち出して敵を焦がせ! シンクロ召喚! 現れろ、《ハイパーサイコガンナー》!」

ハイパーサイコガンナー
ATK3000
DEF1800

 見るからに強そうな二対の大砲を持ったサイキック族がシンクロ召喚されたのは確かに脅威だったが、俺はそれよりも、ハイパーサイコガンナーのシンクロ召喚によってフィールドを離れた、二体の《寡黙なるサイコプリースト》のことについて考えていた。
あの二体がシンクロ素材となる前に、神楽坂が効果を発動して除外していたモンスターが何なのか……!

「フィールドを離れた二体の《寡黙なるサイコプリースト》の効果発動! 除外していた二体のモンスター……《メンタルスフィア・デーモン》と、《サイコ・デビル》を特殊召喚!」

 《マックス・テレポーター》からの脅威の大量展開により、空だったフィールドがこの一瞬で、四体の大型サイキック族モンスターが出現していたのだった。

「サイコ・デビルの効果発動! お前のその手札は、魔法カードだ!」

「……確かにそうだ」

 俺の二枚の手札の内の一枚は、神楽坂が言った通り魔法カードである、装備魔法《ダブル・バスターソード》。
優秀な効果を持っているのだが、戦士族モンスターにしか装備が出来ないデメリット効果があるために、手札で腐っていたのだった。

「まだだ! 墓地から罠カード《ブレイクスルー・スキル》を発動し、ライフ・ストリーム・ドラゴンの効果を無効にし、メンタルスフィア・デーモンには装備魔法《サイコ・ソード》を装備する!」

 先程発動された《スキル・サクセサー》と同じ効果を持った罠カード、《ブレイクスルー・スキル》によりライフ・ストリーム・ドラゴンの破壊耐性効果は無効にされてしまい、メンタルスフィア・デーモンには何やら剣が装備された。

「《サイコ・ソード》は、俺のライフが相手のライフより下の場合、最大2000までその数値だけ攻撃力がアップする! 俺のライフは400でお前のライフは4000……よって、2000ポイントの攻撃力がアップする!」

 《マックス・テレポーター》の多大なライフコストを、《サイコ・トリガー》以外にもまだ利用してくるか。
これで神楽坂の手札も0枚でリバースカードもない為に、神楽坂のコンボはここで終わりを告げたものの、もはや何度もトドメがさせるオーバーキルにまで発展していた。

「バトル! メンタルスフィア・デーモンで、ライフ・ストリーム・ドラゴンに攻撃!」

 最大値の2000ほど攻撃力をアップさせる《サイコ・ソード》を持ったメンタルスフィア・デーモンが、先のターンで破壊された恨みを持ってか見事な一文字斬りでライフ・ストリーム・ドラゴンを破壊した。

「くうっ……!」

遊矢LP4000→2000

「さらに、メンタルスフィア・デーモンが相手モンスターを戦闘破壊した時、破壊したモンスターの攻撃力分のライフを回復する。ライフ・ストリーム・ドラゴンの攻撃力は2900のため、俺のライフは2900回復する!」

神楽坂LP400→3300

 神楽坂のライフが俺のライフを上回ったため、メンタルスフィア・デーモンに装備された《サイコ・ソード》は効果を失うが、もはや用済みも同然の代物が使えなくなろうと、神楽坂にとっては痛くもかゆくも無いだろう。

「二回目の攻撃! ハイパーサイコガンナーで、遊矢にダイレクトアタック!」

「これ以上はやらせない! リバースカード、オープン! 《ピンポイント・ガード》! 相手のダイレクトアタック時、レベル4以下のモンスターを表側守備表示で特殊召喚出来る! 来てくれ、《スピード・ウォリアー》!」

 俺の伏せてあったリバースカード、《ピンポイント・ガード》からマイフェイバリットガードが高速で出現し、俺とハイパーサイコガンナーの間に割って入った。

「なるほどな……攻撃を続行する! ハイパーサイコガンナーで、守備表示のスピード・ウォリアーに攻撃! ハイパーサイコガンナーは、貫通効果を持っている!」

「なにっ……! 手札から《牙城のガーディアン》の効果を発動し、スピード・ウォリアーの守備力を1500ポイントアップさせる!」

遊矢LP2000→900

 ハイパーサイコガンナーのビーム砲をスピード・ウォリアーは受け止めきれず、加勢した牙城のガーディアンですら防ぎきれなかった分が俺に直撃した後、神楽坂の元へと帰っていった。

「トドメをさせなかったか……! だが、ハイパーサイコガンナーが守備表示モンスターを攻撃した時、こちらの攻撃力と守備力の差分だけライフを回復する。よって、俺は1100のライフを回復する!」

神楽坂LP2400→4300

 マックス・テレポーターの効果で2000ものライフを支払ったにもかかわらず、あっさりと初期ライフポイント数値と出来るサイキック族とそれを扱う神楽坂に戦慄する。
《ピンポイント・ガード》により、一ターンだけ破壊耐性効果を得たスピード・ウォリアーのおかげで、後続の《サイコ・デビル》と《マックス・テレポーター》の追撃を受けずに済むのは不幸中の幸いか。

「俺はもう出来ることは全てやった。ターンエンドだ」

「俺のターン、ドロー!」

 引いたカードは、墓地のモンスターを五枚デッキに戻すことで、二枚ドローすることが出来る効果を持った汎用的なドローソース《貪欲な壷》。

「俺は《貪欲な壷》を発動し……二枚ドロー!」

 神楽坂も先程、《サイキック・サイクロン》のドロー効果に、自分のデッキを信じて願いを込めていた。
ならばそれを、自分だけのデッキを信じる心を伝えた自分が、それを出来なくてどうするか……!

「……俺は、《ハイパー・シンクロン》を召喚!」

ハイパー・シンクロン
ATK1600
DEF800

 青色のボディが煌めく人型のシンクロンが召喚され、背面についたモーターを轟かせて胸部のパーツを開けて四つの光の玉を出した。

「……気が早いぜ、ハイパー・シンクロン。レベル2のスピード・ウォリアーと、レベル4のハイパー・シンクロンをチューニング!」

 ハイパー・シンクロンが自身の出した四つの玉と共に光の輪となり、マイフェイバリットガードを包み込んでいく。

「集いし事象から、重力の闘士が推参する。光差す道となれ! シンクロ召喚! 《グラヴィティ・ウォリアー》!」

グラヴィティ・ウォリアー
ATK2100
DEF400

 まさに満を持してというタイミングでシンクロ召喚されたのは、獣型の機械戦士である重力の闘士《グラヴィティ・ウォリアー》。

「グラヴィティ・ウォリアーがシンクロ召喚に成功した時、相手モンスターの数×300ポイント攻撃力がアップする! パワー・グラヴィテーション!」

 神楽坂のデッキの展開力をせいぜい利用させてもらい、攻撃力が3300にまで上がったところで、更に攻撃力を上げるための装備魔法を装備させた。

「グラヴィティ・ウォリアーに装備魔法《ダブル・バスターソード》を装備することで、攻撃力を1000ポイントアップさせ二回攻撃を得る!」

 神楽坂のメンタルスフィア・デーモンに装備されているサイコ・ソードに倣って、グラヴィティ・ウォリアーは二振りの剣をその両手に装備した。
攻撃力1000ポイントアップに二回攻撃と、戦士族にしか装備できないとはいえ優秀な効果であるが、エンドフェイズ時に装備したモンスターが自壊するという強烈なデメリット効果がある。

 そのため、このターン中に神楽坂の4300を誇るライフを0にすることが出来なければ……俺は、敗北をすることになるだろう。

「行くぞ神楽坂! グラヴィティ・ウォリアーで、メンタルスフィア・デーモンに攻撃! グランド・クロス・ファースト!」

 まずは一対の剣が強靭な機械の爪と共に同じく剣を持ったメンタルスフィア・デーモンを襲い、そのままメンタルスフィア・デーモンに装備されていたサイコ・ソードごと切り裂いて破壊した。

「うわああっ!」

神楽坂LP4300→2700

 あまり認めたくはないのだが、このデュエルを通して解ったことは、シンクロ召喚のことならば神楽坂の方が使うのは上手いということだった。

 だが、俺はそれでもずっと愚直に【機械戦士】を使用してきた。
シンクロ召喚では負けてしまうかもしれないが、このデュエルに負けるわけにはいかない……!

「さらに、マックス・テレポーターに攻撃! グランド・クロス・セカンド!」

神楽坂LP2700→500

 今度はダブル・バスターソードの左手側に持っていた剣で切り裂き、そもそも戦闘向けではないマックス・テレポーターは呆気なく破壊されてしまう。

「ぐっ……だが、これでグラヴィティ・ウォリアーの攻撃は終わりだ!」

「いや、まだだ! 最後のリバースカード、オープン! 《シンクロ・オーバーリミット》! このターン、戦闘で相手モンスターを破壊したシンクロモンスターは、戦闘後に破壊される代わりにもう一度だけ攻撃出来る!」

 グラヴィティ・ウォリアーが再び動き始めると、まだ神楽坂のフィールドに残っている相手モンスターに向かって行った。

「くそっ……!」

「終わりだ神楽坂! グラヴィティ・ウォリアーで、ハイパーサイコガンナーに攻撃! グランド・クロス・ラスト!」

 グラヴィティ・ウォリアーの三連続攻撃の最後の一撃は、神楽坂の残りライフを削り取った。

神楽坂LP500→0


「紙一重だったが……だからこそ、楽しいデュエルだったぜ、神楽坂」

 息詰まるシンクロ召喚同士のデュエルに疲れて神楽坂は座り込んだが、その表情はどこか晴れ晴れとしていたように見えた。

「悔しいが……これからこのデッキと一緒に成長出来ると思うと、なんだか嬉しいもんだな」

 自分のデュエルに迷走していた神楽坂はもうおらず、ここにいるのは、正真正銘の自分だけのデッキを持ったデュエリスト。

 そんな神楽坂から勝者の証たるメダルを貰い、ジェネックスの中盤はそろそろ終わりを告げようとしていた。
 
 

 
後書き
テスト中、行き帰りの電車内でずっと書いていたものを今日書き終わらせたのですが……どうしてこんなに長くなった。
やはり、もう少しデュエル自体を短くしたり文章を短くする工夫が必要でしょうか……?

それはともかく、VS神楽坂。
彼も三沢と同じくガチデッキ気味になってしまいましたが、シンクロVSシンクロが書きたかったので後悔はしていません。

そしてターボさんや、君が一番輝く時だろうに何故出なかった……

では、感想・アドバイス待ってます。
 
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