| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──

作者:なべさん
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

ALO
~妖精郷と魔法の歌劇~
  シルフ領:スイルベーン

「うっうっ、ひどいよリーファ………飛行恐怖症になるよ…………」

翡翠色の塔の根本、色とりどりの花が咲き乱れる花壇に座り込んだキリトが恨みがましい顔で言った。

あの後、随意飛行をどうにか習得した彼は、シルフ領の首都《スイルベーン》のシンボルでもある《風の塔》に真っ向正面から大激突したのだった。

ちなみに、レン達は涼しい顔で無事に着地し、現在進行形で隣で大爆笑していた。

あのクーという名の巨大な黒狼はさすがに飛べはしなかったようだが、放っておいてもそのうち現れるであろう存在感を振りまいていたのできっと大丈夫だろう。

「眼がまわりました~」

彼の肩に座るピクシーも頭をふらふらさせている。

リーファは両手を腰に当て、笑いを噛み殺しながら答えた。

「キミが調子に乗りすぎなんだよ~。それにしてもよく生きてたねぇ。絶対死んだと思った」

「うわっ、そりゃあんまりだ」

最高速度で激突しておきながら、キリトのHPバーはまだ半分以上残っていた。運がいいのか受身が上手いのか、本当に謎の多い初心者(ニュービー)である。

「まあまあ、回復(ヒール)してあげるから」

リーファは右手をキリトに向けてかざすと、回復スペルを唱えた。青く光る雫が掌から放たれ、キリトに降りかかる。

「お、すごい。これが魔法か」

興味津々という風に、キリトは自分の体を見回す。

すると横から、やっと笑いが収まってきたレンがヒーヒー言いながら

「高位の治癒魔法はウンディーネじゃないと、なかなか使えないんだけどね~。必須スペルだからキリトにーちゃんも覚えたほうがいいよ」

それをかなりむすっとした顔で見るキリト。気を取り直したようにこちらを向いて、訊いてくる。

「じゃあ、スプリガンてのは何が得意なの?」

「トレジャーハント関連と幻惑魔法かな。どっちも戦闘には不向きなんで、不人気種族ナンバーワンなんだよね」

「うへ、やっぱり下調べは大事だな」

肩をすくめながらキリトが立ち上がった。大きく伸びをして、周囲にぐるりと視線を向ける。

「おお、ここがシルフの街かぁ。綺麗な所だなぁ」

「でしょ!」

リーファも改めて住み慣れたホームタウンを眺める。

スイルベーンは、別名《翡翠の都》と呼ばれている。

華奢な尖塔群が空中回廊で複雑に繋がりあって構成される街並みは、色合いの差こそあれ皆艶やかなジェイドグリーンに輝き、それらが夜闇の中に浮かび上がる様は幻想的の一言だ。

ことに、風の塔の裏手に広がる《領主館》の壮麗さは、アルヴヘイムのどんな建物にも引けを取らないとリーファは信じている。

四人と一人が声もなく行き交う人々に見入っていると、不意に右手から声をかける者がいた。

「リーファちゃん!無事だったの!」

顔を向けると、手をぶんぶん振りながら近寄ってくる黄緑色の髪の少年シルフが見えた。

「あ、レコン。うん、どうにかねー」

リーファの前で立ち止まったレコンは目を輝かせながら言った。

「すごいや、アレだけの人数から逃げ延びるなんてさすがリーファちゃん………って───」

今更のようにリーファの傍らに立つ集団に気付き、口を開けたまま数秒間立ち尽くす。

「な………スプリガン!?インプも!!ケットシーも!?なんで………!?」

その時、リーファ達の背後でズゥン!という腹に響くような音が響いた。

慌てて振り向くと、目の前に赤々と光る両眼があった。

「クーもいるよ~」

大口を開け、金魚よろしくパクパク開閉させるレコン。固まる空気の中、キリトのポケットから顔を出したユイだけが「お久し振りですね~」などと緊張感の欠片もない言葉を吐いている。

フシュー!というジェット噴射のようなクーの鼻息で、やっと凍りついた時間が動き始めた。

気を取り直すように、リーファはいまだに固まっているレコンに話しかける。

「い、いいのよレコン。この人たちが助けてくれたの」

「………へっ?」

いまいち反応の遅いレコンを指差し、ひとまずレン達に紹介する。

「こいつはレコン。あたしの仲間なんだけど、キミ達と出会うちょっと前にサラマンダーにやられちゃったんだ」

「そりゃすまなかったな。よろしく、俺はキリトだ」

「僕はレンホウ、レンって呼んでね」

「……カグラと申します」

「ぐるるるぅぅぅ~!」

四者四様の挨拶を聞き、レコンが半分泣きそうな顔を向けてくる。長年の付き合いで大体わかる。あの顔は、この人たち大丈夫なの?という顔だ。

一応言っておくが、この場合大丈夫という言葉の意味は決して精神的なアレではなく、安全性の問題である。

それにリーファはウインクで返す。

レコンはそれを受けても、半信半疑といった表情でレン達を見ていたが、やがて咳払いして言った。

「リーファちゃん、シグルドたちは先に《水仙館》で席取ってるから、分配はそこでやろうって」

「あ、そっか。う~ん………」

キャラクターの装備している非装備アイテムは、敵プレイヤーに殺されるとランダムに三十パーセントが奪われてしまうが、パーティーを組んでいる場合に限って保険枠というものがあり、そこに入れているアイテムは死亡しても自動的に仲間に配送されるようになっている。

リーファ達も今日の狩りで入手したアイテムのうち価値のあるものは保険扱いにしていたので、最終的にはリーファが全ての稼ぎを預かることになり、サラマンダー連中もそれを知っているゆえにしつこく追ってきたわけだが、レン達の助力によってどうにか全てをスイルベーンまで持ち帰ることができた。

このような場合は、死亡して先に転送された仲間と馴染みの店で改めてアイテム分配をするのが慣例となっていたが、リーファは少々悩んだ末にレコンに言った。

「あたし、今日の分配はいいわ。スキルに合ったアイテムもなかったしね。あんたに預けるから四人で分けて」

「へ…………リーファちゃんは来ないの?」

「うん。お礼にキリト君達に一杯おごる約束してるんだ」

「………………………………………」

先ほどとは多少色合いの異なる警戒心をにじませながらレコンが隣のレン達、とくにキリトを見る。

「ちょっと、妙な勘繰りしないでよね」

リーファはレコンのつま先をブーツでこつんと蹴っておいて、トレードウインドウを出すと稼いだアイテムの全てを転送した。

「次の狩りの時間とか決まったらメールしといて。行けそうだったら参加するからさ、じゃあ、おつかれ!」

「あ、リーファちゃん…………」

なんだか照れくさくなってきてしまったリーファは、強引に会話を打ち切るとレンとキリトの袖を引っ張って歩き出した。










「さっきの子は、リーファの彼氏?」

「コイビトさんなんですか?」

「ひょっとして元彼?」

「恋仲なんですか?」

「ハァ!?」

キリトと、その肩口から顔を出したユイ、その隣を煙管を吸いながら歩くレンと、更にそれに追従するように歩くカグラから異口同音に訊ねられ、リーファは思わず石畳に脚を引っ掛けた。慌てて翅を広げて体勢を立て直す。

ちなみにクーは、何食わぬ顔でのっしのっしと一行に付いて来る。

「ち、違うわよ!パーティーメンバーよ、単なる」

「ふーん、それにしちゃあずいぶん仲が良さそうに見えたけど?」

「リアルでも知り合いって言うか、学校の同級生なの。でもそれだけよ」

「へぇ………クラスメイトとVRMMOやってるのか、いいな」

どこかしみじみとした口調で言うキリトに、軽く顔をしかめて見せる。

「うーん、いろいろ弊害あるよー。宿題のこと思い出しちゃったりね」

「ははは、なるほど」

朗らかに笑うリーファとキリト。だが、レンだけはなぜか笑っていなかった。どこかきょとんとした表情で、こちらを見ている。そして、連れ歩くカグラも同様に笑ってはいなかった。

どこか、憐れむように斜め前を歩く小さな背中を見ていた。

時折すれ違うシルフのプレイヤーは、キリトの黒髪、そしてカグラの肌の色を見てギョッとした表情を浮かべた後、後ろを皇帝のごとくずんずん歩いてくるクーを見て腰が抜けそうな感じになるが、隣で歩くリーファに気付くと不審がりながらも何も言わずに去っていく。

「リーファねーちゃん強いんだね。それに人から信用されてるみたいだし」

唐突に、のんびり笑いながらレンが言った。

それほどアクティブに活動しているわけではないリーファだが、スイルベーンで定期的に行われる武闘大会イベントで何度か優勝しているので顔はそこそこ通っているのだ。

あははと照れ隠しに笑いながらリーファは答える。

「ま、まーね。少しは腕が立つわよ」

そう言って力こぶを作るような動作をふざけてやって見せるが、それでも紅衣の少年は笑わない。

漆黒のマフラーに埋もれた口元は全く見えないが、それでもリーファは目の前を歩く少年が意味深な笑みを浮かべていることくらいには気付いた。

その真意はわからない。

その心の中はわからない。

だが、紅衣の少年はどこか優しげな笑みを浮かべていた。

その意味を、リーファが訊こうとした時───

「なぁリーファ~。その店ってまだなのか?俺、腹減ってきちゃったよ」

隣のキリトが情けない声を出す。

「もう少しよ。って言うか、いくらおごるってったってあんまり高いの注文しないでよね」

情け容赦なくリーファがいったとき、前方に小ぢんまりとした酒屋兼宿屋が見えてきた。 
 

 
後書き
なべさん「はい、始まりました!そーどあーとがき☆おんらいん!!」
レン「原作に沿いすぎてつまんなーい」
なべさん「な、何てことを言うんだ!これでも一生懸命にオリジナルを盛り込んでいらっしゃるのに!」
レン「日本語がおかしくなってるぞー。でーもーなー、あまりに目立たないからつまんないよー」
なべさん「はい出たよー。本音がー」
レン「もっと暴れたいー、もっと殺りたい~」
なべさん「やめい!駄々をこねるな!もちっとしたらしっかりした出番があるから、な?」
レン「…………自作キャラ、感想を送ってきてください」
──To be continued── 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧