領主は大変
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第七章
だから素直にこう答えられたのだ。
「では行って来ます」
「お願いします。それにです」
「弟や妹達もですね」
「ヴォルフガングとペーターの相手は決まりました」
弟達はだというのだ。
「それぞれ婿入りになります」
「婿入りですか」
「ヴォルフガングはブラウローザ子爵家に」
まずはこの家だった。
「ペーターはミューゼル子爵家に」
「両方共子爵ですか」
「はい、そうです」
辺境伯はこの帝国では伯爵より上、侯爵より下になる。爵位としては高い方にあると言っていい、そして伯爵はその辺境伯の間でもかなり広い領地と多くの民を持っている。
その伯爵がこう言うのだ。
「子爵とはいえ双方共資産がありまして」
「よい縁談ですね」
「そうなって何よりです」
「そうした家を見つけてきたのですね」
「婚姻は家と家のものです」
完全に貴族の考えだった。
「相手の家は選びそして向こうからの約束を取りつける」
「そしてその為には」
「労苦を厭わないです」
伯爵は実際にそうした。これも重要な仕事だからだ。
それで伯爵はこうも言ったのだ。
「妹達についてもです」
「あの娘達はどうなったのですか?」
「ブリギットはコロ伯爵家に」
その家の妻として入ることになったというのだ。
「ハンナはヴィトガッセン子爵家に」
「ハンナはまだ十歳ですよ」
「はい、ですから婚約だけです」
それを決めたというのだ。
「それを言えばペーターもまた十一ですから」
「婚約を決めたのですね」
「そうです、そうしました」
「決めることが早いですね」
「早いうちに決めるべきものですから」
だからそうしたというのだ。
「そうしました」
「そうですか」
「ただ。イゾルデですが」
「あの娘は流石に」
「まだ六歳ですから」
それでだというのだ。
「まだ決めかねています」
「よく選ぶべきですね」
「はい、それに私自身」
彼にしてもだった。
「相手がいないですから」
「どなたと結婚するつもりですか?」
「今考えています」
自分のこともあった。婚姻は当然ながら伯爵自身に対しても関わってくることだったのである。
「とりあえず異民族への備えもして森も落ち着く寒波の傷も癒え領地の経営も軌道に乗ってきましたので」
「それで、ですね」
「私もそろそろです」
爵位を継いだ時と比べると背はかなり高くなっていた。顔立ちも立派になっている。
その彼がこう言うのだ。
「相手を迎えます」
「幸せな結婚になることを祈ります」
「出来れば中央の方に影響力のある家から迎えたいですね」
「中央ですか」
「皇帝陛下との縁が欲しいです」
領邦国家であり貴族達の力が強い国だがそれでもだというのだ。
「ですから」
「中央ですと」
「確かリヒテンラーデ侯爵家の二番目の娘さんがまだお相手がいないので」
「その方を迎えるのですか」
「そうできたらいいですね」
伯爵は右手で頬杖をついて考える顔で述べた。
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