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第二章

「安心して下さいね」
「何か本当に洒落にならないお部屋なんですね」
「そこまで言うなんて」
「だから今も言ってるんですよ」
 おじさんはまた二人に言った。
「一応お札とお塩、それに松ヤニも用意しておきますので」
「お祓い用ですね」
「そうです」 
 今度は小百合に答える。
「とにかく買いたいというのなら売りますので」
「じゃあそれでお願いします」
「買わせてもらいます」
 二人は安くていい物件ということで躊躇なく答えた、そしてだった。
 深刻に考えることなくその部屋を買った、日当たりもいいし設備も充実している非常にいい部屋だった。
 部屋に入って数日、二人はそれぞれの仕事から帰って部屋の中で夕食を食べながら明るい笑顔で話していた。
「いい部屋だよな」
「そうよね」
 笑顔でおかずの鮭のムニエルを食べながら話す。
「しかも安いしな」
「何も出ないしね」
 噂にあったそれもないというのだ。
「こんないいお部屋ないじゃない」
「そうだよな。おじさん凄く怖がってたけれど」
「怖がり過ぎよね」
「全くだよ。じゃあ今からお風呂に入って」
「もう寝るのね」
「そうしような」
 高雅は小百合に明るい笑みを見せていた、それは小百合も同じだった。
 二人で食器も洗って風呂にも入って同じベッドで休んだ、新婚生活も満喫していた、それで共に眠っていると。
 チャイムが鳴った、それを聞いてだった。
 まずは小百合が目を覚まして高雅に言った。
「ねえ、今だけれど」
「何かあったのか?」
「うん、チャイムが鳴ったけれど」
「うちの?」
「うち以外ないじゃない」
 小百合は寝ぼけ眼でほぼ完全に寝ている高雅に答えた。
「そうでしょ?」
「それはそうだけれどさ」
 高雅はここでやっと目を開けて枕元の目覚まし時計を見た、その時間は。
「今二時だよ」
「真夜中もいいところよね」
「こんな時間に誰が来るんだよ」
「誰かはわからないけれど」
 それでもだと返す小百合だった。
「チャイムが鳴ったわ。ほら、また」
「ああ、俺も聞いたよ」
 今度は高雅も聞いた。
「ちゃんとな。じゃあお客さんか」
「誰かしら、本当に」
「ちょっと見てくるな」
 高雅は嫌々ベッドから出ながら新妻に言った。
「本当に誰か」
「そうして。ただね」
「ああ、こんな真夜中だからな」
「碌な奴じゃないかも知れないから」
 その可能性は高いというのだ。
「だから迂闊に扉を開けないでね」
「覗き穴から見るか」
「あとね」
 それに加えてだというのだ。
「念の為にバットあるから」
「それ持ってか」
「ううん、やっぱり私も行くわ」
 心配なので自分も行くと言う小百合だった。 
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