ロミオとジュリエット
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第三幕その五
第三幕その五
「こうしてやる!これならどうだ!」
「むっ!」
剣を投げてきた。その突然の動きにティボルトは対処しきれなかった。
それは喉に深く突き刺さった。致命傷であるのは言うまでもない。
「ティボルト様!」
「やったな!」
双方また言い合う。
ティボルトは後ろに倒れていく。それを周りの者が抱きかかえる。
「御気を確かに」
「いや、駄目だ」
周りの者達に対する彼の返事は絶望であった。
「私はもう」
「何の騒ぎだ」
そこにキャブレット卿までやって来た。
「ティボルト!御前まで!」
「叔父上・・・・・・」
彼は死にゆく顔を叔父に見せてきた。
「私はもう駄目です」
「くっ、一体誰が」
「ロミオです。ですから私の願いを御聞き下さい」
「うむ」
キャブレット卿もそれに頷く。
「わかった。では御主の仇はわしが討つ」
「お願いします」
そこまで言うとティボルトは息を引き取った。キャブレット卿は怒りと悲しみを露わにして甥の亡骸へ歩み寄る。そしてその目を閉じさせた後で喉の剣を引き抜いた。それからロミオを見据えてきた。
「貴様だな」
「はい」
ロミオはその問いに頷いた。
「隠しはしません」
「まずはこの剣を返そう」
そう言って彼の足下へ剣を放り投げた。
「受け取れ。今から死合う」
「えっ、旦那様」
「それは」
「わしとてキャブレット家の主。逃げも隠れもせぬ。そのキャブレット家の主として貴様に果し合いを申し込むのだ」
「貴方と」
「そうだ。不服か!?」
ロミオを見据えて問う。
「言っておくが断ることは許さぬ」
「くっ・・・・・・」
「断るならばそれで死だ。だがわしは武器を持たぬ者には害はなさぬ」
それが彼の誇りであった。
「だからだ。来い」
そのうえでロミオに決闘を挑む。
「ティボルトを殺したその剣で。どうするのだ!?」
「ロミオ様」
モンタギュー家の者達もロミオを見てきた。
「どうされますか!?」
「やはりここは」
(この人はジュリエットの)
だがロミオは彼との戦いはとてもできはしなかった。
(駄目だ、僕には)
ジュリエットの父と剣を交えることなぞ彼には考えられなかった。だが逃げることはできなかった。彼もまたモンタギューの嫡子なのだ。それでどうして逃げることができようか。
迷っていた。悩んでいた。だがそこにいきなり大勢の者達がやって来たのだ。
「何事だ!?」
「控えるのだ、無頼の者達よ」
大勢の兵士達がその場にやって来た。それは両家の者達ではなかった。
「下がれ、下がれ」
「公爵様が来られたぞ」
「何っ、閣下が」
それを聞いた両家の者達は思わず動きを止めた。そしてそれぞれ離れた。
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