リリカルなのは~優しき狂王~
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第三十話~R2・目覚め~
前書き
過去編の後半です。
今回から、セリフの前に名前を入れるのをやめています。
読んでみてそのことについての感想を貰えればと思います。
では、本編どうぞ
少年は世界を変えるために反逆した。
手に入れた力を支えに、たった一人の妹のために。
少年は世界を正しい方法で変えようとした。
蔑まれ、疎まれようともその先に望んだ答えと世界があると信じ。
少女は抗い続けた。
奪われたモノを取り返すために、ただ必死に。
少女は望み、祈っていた。
ただ皆が笑っていられる優しい世界を。
そして
無くした少年は守るために一度立ち止まった。
しかしその願いも虚しく彼の願いは叶わなかった。
機動六課の一同はルルーシュとスザクが引き金を引いた瞬間、目の前が一旦暗くなりその後にライの思考が頭の中に流れ込んできた。
ぬるま湯に浮かぶような感覚の中、ライはただその光景を見ていた。
それは自分にとっては最も守りたかった人達の内の2人。しかしその光景ではその2人は何かを叫び合い、銃口を向け合っている。
(………や……め…ろ……)
声を出すことができないため、ライはそう願う。しかし願い虚しく、その2人の表情は憎悪に彩られていく。
(………やめろ!)
2人の声は聞こえなかったが、なぜか銃声は鮮明に聞こえた。その瞬間ライの視界は暗転する。
(僕はこんなこと、望んでいなかった!………僕は…僕は!)
初めのぼやけた思考ではなく、今ライは鮮明な思考を行っていた。
ライが気がつくとそこは自分が眠った遺跡の中心。何故目覚めたのか一瞬疑問に思ったが、自分がそう望んだのだと思いすぐにその遺跡から出ることにした。
神根島の砂浜に行くとそこには示し合わせたように1人の少女が立っていた。
「C.C.」
「ん?………なんだもう目を覚ましたのか。案外、優柔不断なんだな」
ライの言葉に反応したC.C.は一瞬驚いた表情をしたが、すぐにいつもの不敵な顔に戻る。だがライは真剣な表情をしながらC.C.に問いかけた。
「何があった」
「………」
「夢で見た。ルルーシュとスザクが銃口を向け合っていた。僕が眠りについた後何があった?」
「………」
「C.C.!」
沈黙を続ける彼女に業を煮やしたライは声を張り上げた。
「やれやれ」
一言そう呟いたC.C.はいきなりライに近づくと躊躇わずにライにキスをした。するとライが眠ってから起こったブラックリベリオンまでの出来事と黒の騎士団の敗北、そしてゼロの正体。そして今がブラックリベリオンから約二ヶ月後であること。一連の情報がライに流れ込む。
「………」
唇を離されてもライは動かずに情報を整理する。そして結論が出たのかライの瞳には力強い意志が宿っていた。
「C.C.」
「なんだ?」
「僕を起こすつもりだったのか?」
「………」
質問に沈黙を返すC.C.を見て軽くため息を吐いたあと、ライは尋ねる。
「………これから僕は君の共犯者のために動く。君はどうする?」
「……答えが決まっている質問をするな」
少し拗ねた表情をしたC.C.に苦笑しながらライは歩き出す。掛け替えのない友のために。
短い掛け合いだけでお互いの気持ちを分かり合える2人の関係に六課の内の何人かは嫉妬していた。
そこからライは動き出す。幸い、ライのことを覚えているのはC.C.だけとなっているため、そのことを活かしライはブリタニアの本国に趣いていた。理由は黒の騎士団へ合流する前に、機密情報及びナイトメアの技術を欲した為である。
機密情報は手に入れるには、派手に動くことになるため断念したがナイトメアの技術は案外簡単に手に入れることができた。
「あれは………ランスロットの改造機か……」
ライがポツリと呟く。その視線の先にはブリタニアのプロパガンダに使われている映像が街頭の大きなスクリーンに流れている。
その映像に映るのはスザクのランスロットよりも赤くて派手な機体。その機体はランスロットの後継機に当たる機体、ランスロットグレイルであった。
(機動は確かにスゴイがスザクの方が全体の能力は上か。ランスロットの飛び抜けている性能を乗り手を選ばずに使えるように造っているのか。ならブリタニアはもう量産を………)
刷り込まれている知識と自分の感じた意見を検討しながらライはナイトメアのデータを纏めていく。ライが行っているのは自分に刷り込まれたナイトメアのデータでランスロットタイプの性能を出すにはどんなパーツが必要となるかの検証である。
ライの戦闘スタイルは王の時代に使っていた体術が基本となっている。その為、ライが使うのに適した機体は月下タイプの機体ではなく、より人間の形に近いランスロットタイプなのだ。
その為、ライはブリタニア本国に向かい情報収集を行う。データが簡単に手に入る理由は至極簡単。先のブラックリベリオンによりブリタニアの一般市民の中には強い不安を持つ者が多くいる。その為、ブリタニアの軍の動きはあまり報道規制されず、さらには戦果を上げた戦闘をそれなりに一般に公開されているのだ。
「………望んでない力が役に立つのは複雑だ……」
作業を中断し休憩のために街を歩いていたライはそう呟く。バトレーに刷り込まれたナイトメアの知識を便利に感じる反面、複雑な気持ちになるライの本音であった。その時、注意力が落ちていたのかライは道の曲がり角で女性とぶつかる。
ぶつかった女性は尻餅をつきそうになるがライは反射的に腰に手を回し助け起こす。自分が倒れると思っていた女性は一瞬ぽかーんとするがすぐにお礼を言ってきた。
「ありがとう、助かったわ」
「いえ、こちらこそ不注意でした」
高圧的な物言いではなく、素直に感謝の言葉を使った彼女に「ブリタニア人にしては珍しい」と思いながらライもそう答える。
その女性の後ろに2人の違う女性がいた事にライはその時気づいた。
「オズ~、騎士ともあろうお人が助けられるとはどうなのかにゃ~~」
「ソキア、これは突然だったから!」
「お怪我はないですか?」
「トト、見てのとおりこの人が助けてくれたから。大丈夫よ」
いきなり目の前で話始めた3人を見ていたライはある単語に引っかかった。
(……騎士?)
もし、目の前にいる女性が軍属なら長居は無用とライは考える。それに3人の内の1人が給仕服を着ているため、この中に少なくとも位の高い人間がいるかもしれないのだ。
現時点でライは顔を覚えられることにデメリットこそあれ、メリットはないので早々にライは立ち去ることにした。
「急いでいるので僕はこの辺で失礼します」
一言そう言うとライは去っていく。その後ろ姿をぶつかった女性はしばらく見つめていた。
「どうかしたのかにゃ?」
「いや……なんというか、今の人がマリーと雰囲気が似てる気がして……」
その呟きはライに届くことはなかった。
ある程度情報が揃ったライは日本の黒の騎士団残党に合流する。
最初はブリタニア人ということで警戒されていたライであったが、C.C.の推薦とライ個人の能力の高さからすぐに騎士団内での信用を取り戻す。しかしそれは新人を頼らなければならないほどに追い詰められていたということかもしれないのだが。
そしてライはカレンとも再開する。
顔を合わせた時、ライは動揺せずに自己紹介した。だが、カレンの方はそうならなかった。ライの顔を見ると呆然とし、目を潤ませ、少ししてから嗚咽を漏らし始める。
いきなりのことと、記憶を失っているカレンがそんな反応をすることにライは驚いた。
「………ご……めん、でも……止めら……れなく………て……」
そう呟いたカレンはそのままライの胸を借りて泣き出した。ライはそのままカレンの頭を撫でながら彼女が落ち着くのを待つことになった。
カレンが落ち着いてから、なぜ泣いたのかライは尋ねる。その質問にカレンはこう答えた。
「失った何かが戻ってきた感覚が来たあとに、気持ちが溢れて耐えれなくなったというか……その……」
最後のほうはしどろもどろになっていたがハッキリとカレンは答えた。
それを聞いた六課のメンバーは少しだけ気持ちが楽になった。ライにも少しではあるが救いがあったのだと、自分が消えることを望んだ彼の願いでも消えないモノがあったのだと思えた。
特にその想いが強かったのははやてである。記憶の消去を願ったとき、リィンフォースを思い出した彼女は消えても残るものがあると考え、そしてリィンフォースへの想いを強くした。
そこからライは再びカレンと戦場でタッグを組むことになる。ライの乗機はC.C.が残しておいたライの蒼の月下であった。だが損傷した紅蓮弐式の修理のため、甲壱型腕は取り外されノーマルの月下と同じになっていた。
ライが合流してからの黒の騎士団の動きは格段に良くなった。黒の騎士団の残党の規模は小さかったが、ライという指揮官が加わったことで場当たり的な行動がなくなり小規模であるが組織戦が出来るようになったのだ。
そして………
「いよいよ明日か……」
感慨深げにライはそう呟く。
「………」
いつも通り何を考えているのかわからない表情を浮かべるC.C.。
「待ってなさい……………ルルーシュ」
決意の表情を浮かべるカレン。
彼らが次に行う作戦の名前は『飛燕四号作戦』。それは魔女が魔人を目覚めさせる儀式であった。
後書き
と言う訳でR2の序盤に入る前まででした。
途中で出てきた三人はゲスト出演ということで。
細かい時間軸の設定が特になかったので、そのあたりの矛盾は広い心で許していただけたらなと思います。m(_ _)m
あと、どうしてもR2ではセリフが多くなり、回想っぽくなりづらいのですがそれでも読んで頂ければと思います。
ご意見・ご感想お待ちしております。
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