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国連宇宙軍奮闘記

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撤退作戦

――2199年5月28日――
――火星 観測基地――


『火星観測基地所属の古代、並びに島訓練生、応答せよ。』
「こちら火星観測基地、島大介です。」
 日付が変わった直後に入った通信を当直だった島が受けた。
『現時刻をもって火星観測基地は破棄、訓練生は採取したデータ、並びに試料を持ち移動してくる戦艦『えいゆう』に合流、地球に帰還せよ。』
「了解、合流して地球に帰還します。」
 通信の内容は撤退だった。
『戦艦『えいゆう』が火星軌道を通過するのは3時間後の0300だ、注意せよ。』
 地球からの通信は注意事項を述べるとすぐに切れた。


――火星付近 95式偵察機コックピット――


「こちら火星観測基地所属の訓練機、収容願います。」
『こちら戦艦『えいゆう』了解、収容ハッチ開放。』
 島が通信すると『えいゆう』はすぐに収容ハッチを開いた、が古代は周りを見渡している。
「おい古代、収容ハッチが開いたぞ、何かあったのか?」
 島が何か問題があったのかを尋ねる。
「艦隊は・・・兄さんの船はいったいどうしたんだ?」
 95式偵察機は『えいゆう』に収容された。


――月付近 国連宇宙軍旗艦・戦艦『えいゆう』艦橋――


「航路はどうだ?」
沖田艦長が艦橋に入ると言う。
「あ、艦長、お体は大丈夫ですか?」
 乗員の一人が怪我をしている沖田艦長を気遣った。
「早いものですね、あれからもう一週間ですよ。」
 近藤副長が沖田艦長に言う。
「ちょうど20時間前に火星軌道を離れ、もう間もなく地球周回軌道に入るところです。」
 航海士が地図を確認すると沖田艦長に報告した。
「そうか。」
 ボロボロの『えいゆう』はもうすぐ地球に帰還する。

「艦長、艦長が休まれている間に火星軌道で火星観測所勤務の訓練生二人を回収しました。」
 近藤副長が思い出したように報告する。
「訓練生?」
「はい、観測所で特別訓練中だった学生、古代進と島大介の二名だそうです。」
 沖田艦長が聞き返すと近藤副長は資料を見ながら言った。
「古代?」
 沖田提督の疑問は警報と共に打ち消された。

「どうした!」
 近藤大佐がレーダー士官に叫ぶ。
「遊星爆弾2、型式NM-3、コリジョンコース、右舷通過する!」
 レーダー士官がすぐさま報告した。
「総員戦闘配備!」
 『えいゆう』の艦内に警報が響き渡る。
「残存する全兵装をもって迎撃します!」
 近藤大佐が沖田提督に許可を求める。
「うむ、許可する。」
「攻撃準備完了!」
「撃て!」
 沖田提督の許可得て、準備が完了したことを確認した近藤提督は叫んだ。

「衛星軌道抜けた、速度変わらず。」
「くそ!」
 遊星爆弾は迎撃のかいなく地球に落下していく。
「だめだ、今はもう防げない、我々には遊星爆弾を防ぐ力は無い。」
 沖田提督がボソッと言った声が艦橋内に響く。
「もう間もなく大気圏です。」
 静まり返った艦橋で航海士が報告した。
「減速開始します。」
 操舵士が艦を操る。

「いつ見ても嫌な光景だな。」
 乗組員の一人が呟いた。
(この醜い惑星が、我々の母なる地球の姿だとはな。)
(かつてガガーリンは『地球は青かった』と言った、その美しい地球が・・・。)
(見ておれ悪魔め、儂は命ある限り戦うぞ、決して絶望しない、最後の一人になっても儂は絶望しない。)
 沖田艦長は赤くなった地球を見て決意を新たにした。
 
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