DQ4TS 導く光の物語(旧題:混沌に導かれし者たち) 一~四章
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二章 やんちゃ王子の観光
2-04山間の村テンペ
ブライとクリフトも戦えるとはいえ、前に出るわけではない。
護衛付きで後ろに庇われる旅より、よほどマシか。
「わかったよ。ふたりとも、よろしく頼む」
「おわかりになれば良いのです。さて、サランも良いところですが、特に物珍しくもありませんからな。王子の気がお済みになりましたら、テンペの村にでも参りますかな」
なんで急に前向きなんだ。
「良いですわね。テンペのある辺りは山並みも美しく、避暑地として人気だそうです」
「滋味溢れる山の幸も、新鮮で美味であるそうで」
「……俺は力試しに出たんだが」
「だから道中の魔物をお倒しになれば良いのです。さ、行きますぞ」
だから、わざわざ女性神官を連れてきたのか。観光気分が盛り上がるから。
何も問題は無いのだが、とても複雑な気分だった。
「やはり外はいいな!」
複雑な気分で始まった旅だったが、手加減せずに倒して良い魔物と戦うのは、楽しい。
まだ強い魔物は出ないが、初めて見る敵の行動や弱点を見極め、少ない手数で倒す工夫、複数を相手取る方法など、新しい発見がいくつもある。
「伊達に学問をさぼって鍛錬ばかりしているわけではありませんな」
「アリーナ様がお楽しそうで、良かったですわ」
ブライとクリフトは積極的には戦わず、寄って来る敵をあしらう程度に留めている。
その様子から、クリフトが優秀であるのは本当らしい。連れ回して楽しいというだけではないようだ。
観光好きらしいだけあってブライは健脚で、合わせろなどと言った割に、徒歩の旅が堪えた様子も無い。
日暮れ時、テンペの村に着いた。
「噂に違わぬ美しい山並みですね。夕焼けが素敵ですわ!」
「見事なものじゃの。良い時分に着いたわい」
「……何か、様子がおかしくないか」
まだ日も落ち切っていないのに、村は静まりかえっている。
クリフトが、近くの墓場に目をとめる。
「新しいお墓が多いようですね。流行り病でもあったのでしょうか」
「それならば、城に報告があるはずじゃ」
「話を聞いてみよう」
遅くなる前にと宿を先に取り、村人に話を聞く。
村の近くに棲みついた魔物が、村を滅ぼさぬ代わりにと、生贄に若い娘を要求し、差し出し続けて最後に残った村長の娘も明日、差し出さねばならないという。
「よし倒そう」
「致し方ありませんな」
「見殺しにはできません」
「いいのか。」
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