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ソードアートオンライン VIRUS

作者:暗黒少年
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大切な人

 
前書き
今回の題名はまあ、本当にてきとうだな。ここからはウィルスが本格的に出てきます 

 
 再会したユキとゲツガは脱出をしようと扉を出ようとするときに上からものすごい圧力がかかったように跪いた。

「クッ……!な、何なんだよ……これ」

「わからない……でも、なんか危ないのはわかる……」

 ゲツガとユキは手を繋ごうと手を伸ばすが更に重たい圧力が襲い手を押さえられる。すると突然、今までの部屋とは違う、真っ黒な部屋になっていた。そして、十字架と鎖のようなものが現れる。なんだと思う前に鎖がゲツガの体に巻き付いて、身動きを取れなくする。そして鎖はまるで蛇のように十字架に巻きついた。

「なんだよ、これ!?」

 ゲツガは引き離そうとするが上から来るものすごい圧力と間も隙間がないくらい巻きつた鎖のせいで力を出すことも抜け出すこともできない。そして、忌々しい声が聞こえる。

「少し、おかしいと思ってきてみれば屑が聖室に紛れ込んでるなんてなぁ」

「玖珂さん……!」

「玖珂!?テメェが玖珂って言うのか!」

 ユキとゲツガはそいつを睨む。入ってきたのは繊細な装飾の施されている鎧を着て、はたから見ればかっこいい容姿だが、その笑みからは粘着質のような気持ち悪い感覚を思わせる。

「危ないとこだったな、雪乃。もうすぐで悪魔にさらわれるとこだったじゃないか」

 そう言ってゲツガに見向きもせずにユキの方に近づいく。そして、玖珂はユキの顎に手をやり、自分を見るように顎を上げた。

「うーん、やっぱり、雪乃にはこの表情があっている。君に似せたNPCを一度作ってみたがどうもこんな表情は作り出せないからな」

「やめて!!」

「玖珂!やめろ!!」

 ゲツガは玖珂と叫ぶとようやく、自分の存在に気付いたと言った風に体をゲツガのほうに向けた。

「なんだ、誰の許可を得てその名を呼んでるんだ?えぇ!?」

 そう言って十字架に巻きつけられたゲツガの、腹を殴る。腹には少し違和感を感じるが痛みはまったくない。

「そんなの必要ねぇ!早くユキをこの世界から出せ!!」

「はあ、どこから入ったかは知らないが、ハエには然るべき処罰が必要だな」

 そう言って玖珂は手を上げて叫んだ。

「システムコマンド!!ペインアブソーバをレベルゼロに変更!」

 そう叫んだあと、玖珂はニヤニヤと不快な思いをさせる笑みを浮かべて言った。

「どうやってここまで来たかは知らないが、ちょうどいい実験台が手に入ったな。まったく、あんなに警告したのに何で来たんだ?お前は馬鹿なのか?」

 そう言って玖珂は更にコマンドを叫ぶ。

「オブジェクトID!!ロンギヌスの槍をジェネレート!!」

 そう言うと十字架の上空に二つの槍が出現する。

「どうだ?この槍、新しく導入する伝説級武具(エンシェントウェポン)の一つなんだけど、いい感じだろ?デザインを考えたのは俺なんだぜ」

「それを見せ付けるだけか……?何が……したいんだ……」

 そう言うとニヤニヤした顔で答える。

「何って、実験に決まってるだろ。どのくらいの痛みを食らわせれば現実の世界でも死ぬのか試すのさ。さすがに、三百人の実験台に手を出すと屑の上司に怒鳴られるからな。本当に、ゲツガ、お前が来てくれたのはちょうどよかったぜ」

「俺でそいつを試そうってか……?」

「そうだよ」

 玖珂は当然と言うように首を縦に振る。するとユキが玖珂に向けて叫んだ。

「ゲツガ君!知ってるでしょ!あの世界で受けた痛みを現実の肉体にも受けた場合のことを!そんなこと駄目だよ!玖珂さん、止めて下さい!!ゲツガ君を傷つけないで!!」

 そう叫ぶと、玖珂はユキの方を向いてにっこりと微笑む。

「嫌だね」

 そう言って玖珂は何のためらいもなく腕を振り下ろすと槍がゲツガの両方の肩口から突き刺さり脇腹へと貫通した。貫かれた場所からはおびただしいほどの鮮血のライトエフェクトが放出される。

「あああああああああ!!」

「ゲツガ君!!」

 ゲツガはあまりの痛みに絶叫する。槍を抜こうと腕を賢明に動かそうとするが拘束された腕は抜けることはない。しかも、動くことにより体の中を槍が少し動き逆に体を痛めつける結果となる。

「ああああああ!!」

「いいねぇ!!最高だよ!!人の悲鳴はなんといい響きなんだ!!もっと、もっとあげてくれ!!」

 外道が、そう思うが意識が朦朧とする。人間の安全装置としてここまでの痛みを受けると大体は気絶するはずだが、それ以上の痛みで気絶することもできない。

「やめて!お願いだから、ゲツガ君をこれ以上傷つけないで!!」

「だから、いやだって言っただろ?だいたい、ここに紛れ込んだハエなんだ。駆除しなきゃならないのは普通だろ?」

「ああああぁぁぁ……誰が、ハエだ……テメェの……外道……に……くら……べた……ら……俺の……侵入……なんて……可愛いもん……だろう……が……」

「あれ?まだそんな言える口があったのか」

 そう言って更に槍を自分の上に出現させると腕にもってゲツガに近づいた。

「確かに、僕は他人から見たらどう見ても、外道だ。だけど、それのどこが悪い?俺がどんな性格をしていたってお前には関係のないことだろう?」

 そう言ってゆっくりとゲツガの腹に槍を食い込ませていく。

「ああああああああ!!」

「やめてぇえええええ!!」

「これだよ、これぇ!!こういうのが聞きたかったんだよ!!」

 そう言ってぐりぐりと体の中にめり込ませていく。そこからは鮮血のライトエフェクトが絶え間なく流れ出す。

「ホラ、どうだ?体の感覚はあるのか?死ぬ前の感覚ってどんな感じなんだ?なぁ!!」

「あああああ!!」

 ゲツガはこの世界でもこの台詞を聞いたのでデジャブを感じたがこの世界で奴らは一度も干渉してこない。だから、この世界で死んでしまうという恐怖がこみ上げる。槍が背中の十字架まで届くと玖珂はようやく槍から手を離したが、ゲツガの意識はもうほとんど虚ろになっている。

「お願いです……お願いします……これ以上……これ以上はもう、止めて下さい……ゲツガ君を……傷つけないでください」

 玖珂はそれを聞くとにやりと笑ってからユキの前に膝を着いた。

「早く言って欲しかったな。早く言ったら、彼、あんなに傷つかなかったのに。やめてあげるけど、ただし条件がある」

「聞くな……ユキ……」

 ゲツガは喉から絞るような声を出すが、それを聞いた玖珂にはいいと思われなかった。

「何、喋ってんだよ!屑が!!」

 そう言って新たにギロチンの刃のようなものを出現させるとそのままゲツガの腕に向けて飛ばしてきた。意識が朦朧とする中で、まったく見えてなかったゲツガは、トンという音が耳の横で聞こえたため力を振絞ってその方向を向く。そこには黒い刃物があり、自分の肩より少し下を切断していた。腕が切られたのだ。しかし、意識が朦朧として思考がまったく働かないゲツガはいまだそれを理解していない。だが、ポリゴン片が消える音と同時に絶叫する。

「ぁぁぁぁあああああああ!!腕がぁあ!!」

「ゲツガ君!!」

 ユキはゲツガの名を叫ぶがゲツガの大きな叫び声によりかき消される。

「さあ、雪乃。これ以上あいつを傷つけたくなかったら誓うんだ。俺の物になると。そうすればあいつを解放してやる。それにな、俺はお前を洗脳したくないんだ」

 玖珂はそう言ってユキの手を取る。

「ぁぁぁあああ……やめろ……お前が……ユキに……触れて……言いと……思って……んの……か……」

 そう言うと玖珂の動きが止まり、こちらにゆっくりと振り向く。

「相変わらずうるさいハエだな。いい加減黙れよ」

 そう言って、再びギロチンの刃を出現させるとゲツガの残っている手足を切り落とした。

「あああぁあぁぁぁあぁあぁぁぁぁぁ……」

 ゲツガは叫び声を上げたがすぐにもう、その力も尽きたのか頭を下げた。

「ゲツガ君!!」

 しかし、ユキの言葉をかけてもゲツガはピクリとも動かない。そして、ゲツガの体はポリゴン片に変わって消えていった。脱出したのではない。玖珂によって閉じ込められているのに脱出することは不可能。つまり、死んだということになる。

「やっぱり、この世界でも痛みのあまり死ぬことがあるのか……実験結果は申し分ないな」

 人を一人殺したのにこの言い方だ。ユキは体から力が抜けて恐怖が体を蝕む。

「さあ、死んだことだし。もう、いいだろ。さあ、俺の物になれ」

「……」

 ユキは動かなくなった。玖珂も動くのがめんどくさくなったのか、ソファーを出してその上に座る。

「来い、雪乃」

 そう言って手をかざすとユキの体は引っ張られて玖珂の上に乗せられる。

「……」

 しかしユキは無言のままだった。それもそのはず。あの世界でも、この世界でも大切な人をまた目の前で無くしたことによって相当なショックを受けたのだから。

 放心状態のユキを見た玖珂は体をいじり始める。しかし、ユキはまったく動かない。まるで人形のように。

 しかし、突然、異変が起きた。部屋の所々からノイズが発生したのだ。玖珂は何事かと思いウィンドウを確認したが何もなかったのか叫ぶ。

「おい、技術者!これはなんだ!?バグなのか!?」

 叫ぶがなにも帰ってこない。玖珂はいらいらしてきたのか脱出をしようとするが何かに殴られたかのように吹き飛んだ。ユキはその方を見る。そこにはノイズが発生していてその間から腕が突き出されていた。そしてノイズは広がっていく。先は見えないが中からはもう一本の方の腕が出てくる。そしてようやく体が出てきた。

「よう、玖珂……あの世から追いだされちまったから戻ってきたぜ……」

 そこから出てきたのは先ほどの妖精の姿ではない、SAO時代の格好をしたゲツガであった。 
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